ファクタリングを利用するとき、必須になるものとして契約書へのサインがあります。売掛金の売買契約を結ぶことで、ファクタリングすることができるようになるのです。

ただ、このとき事前に契約書の中身や記載項目、支払条件などについて理解しておくことは重要です。契約の詳細について把握しておくことで、変な契約内容になっていないことを確認することができるからです。

しかし、ファクタリング契約を結ぶときにどのような中身になっているのか事前に把握している人は少ないです。

そこで、どのように考えてファクタリング契約を結び、契約書の中身や書式を理解すればいいのかについて注意点を解説していきます。

金銭消費貸借契約(融資)とは異なるファクタリング

まず、ファクタリング契約のとき金銭消費貸借契約を結ぶことは確実にありません。融資のときに必要な契約書が金銭消費貸借契約であり、売掛金の売買は借金ではないため、これとは異なる契約書を用意することになるのです。

ちなみに、ファクタリングでは「あなたの会社」「ファクタリング会社」「取引先」の3つで契約を結ぶ3社間ファクタリングをもとに法律が作られています。

3社間契約の場合、取引先を巻き込むことになるので利用割合は少ないです。そうではなく、取引先・得意先に通知が行かない2社間契約が圧倒的に多いです。2社間契約だと「あなたの会社」「ファクタリング会社」の2つだけで契約を結ぶことになります。

売掛債権譲渡契約書以外に必要な2社間契約

ただ、2社間は正式なファクタリングではないので契約書の種類が多くなってしまいます。具体的には、以下のような契約書にサインする必要があります。

  • 売掛債権譲渡契約書
  • 業務委託契約書
  • 債権譲渡担保設定契約書

参考までに、私が初めてファクタリング契約を結んだときについても、以下のようにいくつもの種類の書類にサインしました。

なぜ、売掛債権譲渡契約書だけでなく他にも契約書が必要になるのでしょうか。これは、そのように設定しないとファクタリング会社が債権回収できなくなるからです。

2社間ファクタリングの場合、売掛金の早期買取をしてもらったあとに「得意先からあなたの会社に振り込まれたお金について、ファクタリング会社へそのまま送金する」という作業が必要になります。要は、ファクタリング会社の事務手続きを代行するのです。そのため、事務代行のために業務委託契約書が必要になります。

また、債権譲渡担保設定契約書も必須です。あなたの会社が得意先から振り込まれた売掛金を使い込んでしまうなど、不正を犯した場合に「売掛金の支払先をファクタリング会社へ変更できる」ようにする契約になります。

事前にテンプレートとして書式・ひな形を学ぶのは意味がない

このように、契約書にはいくつもの種類があります。そのため、実際のところファクタリング契約前にテンプレートを理解し、書式・ひな形を学んでおくのは現実的ではありません。契約書が一種類で内容も少ないのであればいいですが、実際のところそうではないのです。

また、ファクタリング契約ではサインする書類が異常なほど多いです。そのため、一つずつ確認していると1日では終わりません。2~3日の時間を要するようになります。

そのため、一般的にファクタリング契約では担当者に要点を話してもらい、内容に問題ないか確認しながら進めていくのが一般的です。契約書を一つずつ詳細に読んでいる暇などないのです。参考までに、私が初めてファクタリング契約をしたとき、かなり急いで実施しましたがそれでも1時間半ほどの時間がかかりました。

そこで、以下の項目について契約時に確認するようにしましょう。

  • 手数料の金額や対象となる債権
  • 返済のタイミング:支払期日
  • 契約期間や解除
  • 償還請求権について(ノンリコースかどうか)
  • 債権譲渡通知のタイミング
  • 債権譲渡登記の有無

内容についてどう考えればいいのかについて順に解説していきます。

手数料の金額や対象となる債権

契約の段階で最初に確認するべきものとして手数料の金額があります。多くの場合、ファクタリングでは事前に手数料金額について教えてくれます。そのため、その通りになっているかどうか確認するようにしましょう。

実際の手数料については、契約書に限らず別の書類でも提示してくれることがほとんどです。私が契約したときについても、手数料が記載された書類を契約書とは別に提示されました。

また、同時に今回の契約で対象となる売掛金がどれに該当するのかも確認するといいです。参考までに、私のファクタリング契約時に提示された手数料や対象売掛金に対する書類の一部が以下になります。

こうした書類を見せてもらい、契約内容に問題ないかどうか確認するといいです。

・手数料が違うときは契約しない

なお、業者によっては契約段階になって「〇〇の手数料が必要」などのように伝え、意味なくファクタリング利用時の費用が上がってしまうことがあります。要は、事前に聞いていた手数料の内容とは異なるのです。

しかし、これは良い状況とはいえません。ファクタリングは元々の手数料が高額なので、より費用相場が上昇してしまうとキャッシュフローが悪くなってしまいます。そうしたとき、契約しないという選択肢を用意しておきましょう。

そのため時間にある程度の余裕をもっての契約は必須です。資金ショートするギリギリのタイミングだと、足元を見られる可能性があるからです。当然、複数社へのあいみつも必要です。一つの業者がダメでも、次があると思えば契約時に締結を断ればいいのです。

このように支払条件として手数料を確認するのは、それだけ重要なポイントでもあります。

返済のタイミング:支払期日

また、お金を返すタイミングについて理解することも大切です。要は、支払期日について確認するのです。

売掛金の売買であるため、取引先・得意先からお金が振り込まれなければ当然ながら返済はできません。そうしたとき、特に問題なく得意先から振り込みがあれば、そのときのお金をそのままファクタリング会社へ送金すればいいです。

しかし、場合によっては取引先からの入金が遅れることもあります。2社間ファクタリングでの契約書には支払日を明記するものの、その支払期日に間に合わないことがあるのです。

そうしたとき、取引先の支払日にあわせて「ファクタリング会社への入金日を遅らせることができるか」を確認するようにしましょう。真っ当なファクタリング会社の場合、得意先の入金日に合わせて支払日を遅らせることのできる契約書を作成しています。

ちなみに、反対に得意先から期日よりも早めに入金されることもあります。この場合、支払期日よりも早めに送金するのが基本です。ファクタリングを利用した時点で売掛金の権利はファクタリング会社に移っているからです。

契約期間や解除

同時に契約時は期間を確認しましょう。通常、ファクタリングは一回だけの取引になります。つまり、単発で売掛金買取をしてもらうのです。

しかし、悪徳業者だと特に通告もなく「半年間は継続して取引をしなければいけない」「契約は自動更新となる」などのように記載した契約書を提示してくることがあります。当然、同意していない限りこうした取引にサインしてはいけません。

そのため契約が「今回の一回限りに関するものであるかどうか」を聞き、契約書のどこに記載されているのか確認するといいです。

また、継続的な取引にサインしてしまった場合、いつでも解除できるようになっていなければいけません。そのため、解除項目がどうなっているのか確認しましょう。

償還請求権について(ノンリコースかどうか)

ファクタリング取引において重要なものに償還請求権もあります。これは、得意先の倒産リスクを誰が背負うのかに関するものです。

一般的な売掛金売買だと、たとえ売掛先が倒産したとしてもあなたの会社が責任を背負うことはありません。売掛金の買取をしてもらった以上、得意先の倒産リスクをファクタリング会社が負うのは当然だといえます。

これを専門用語でノンリコースといいます。ファクタリングはノンリコースが基本であり、これについては以下のようにファクタリング会社の公式サイトでも明記されていることがほとんどです。

そこで、契約がノンリコースになっているかどうか確認するといいです。

もし、得意先の倒産リスクをあなたが背負う契約内容になっている場合、正常な取引とはいえません。この場合、ファクタリング会社は得意先の倒産についてまったくリスクを背負っていないため、「実質的にお金を貸しているのと同じ」といえます。

そうした契約は無効であり、そもそも契約書として成り立っていません。これについては過去の裁判でも明らかになっているため、正常なファクタリング取引であるか確認するためにもノンリコースかどうか聞くといいです。

債権譲渡通知のタイミング

3社間ファクタリングであれば、契約の段階で取引先の担当者が印鑑をもった状態でその場に同席する必要があります。そのため、取引先にファクタリングの事実が必ず知られるようになります。

一方の2社間ファクタリングだと、得意先に知られずに売掛金の売買をすることができます。そのためほとんどのファクタリングが2社間ですが、この場合は「買取してもらった売掛金について、期日になってもファクタリング会社に送金しない」という不正をすると、取引先あてに債権譲渡通知書が内容証明郵便で発送されます。

契約書とは別の書類になりますが、私の場合も以下の債権譲渡通知書に契約時はサインしました。

あとは日付だけ入力すれば、いつでも債権譲渡通知を内容証明郵便で送れる状態にするのです。こうした法的書類が発送された場合、得意先は今後の支払いをあなたの会社ではなく、ファクタリング会社に変えなければいけません。

ただ、こうした郵便が内容証明で届くと100%の確率で取引先とトラブルに発展します。そのため債権譲渡通知の発送は阻止しなければいけませんが、どういったときに内容証明郵便が発送されるのか必ず聞くようにしましょう。

基本的には、不正をしなければ特に大きな問題が発生することはありません。ただ、個人事業主や法人を含め経営では万が一のことを考える必要があるため、債権譲渡通知書が発送される条件を事前に聞いておくことは重要です。

債権譲渡登記があるか

個人事業主だと関係ないですが、法人であれば多くのケースで登記をすることになります。動産(売掛金)に関わる登記をすることになり、これを債権譲渡登記といいます。

債権譲渡登記をすると法務局に掲載されます。また、国が提供する登記情報提供サービスでも閲覧できます。

当然、得意先がこうした有料サービスを利用して内容を確認することはありません。また、銀行融資にも影響がないことが広く知られています。そのため登記自体は特に問題ないですが、登記なしで契約するケースもあります。

そのため、「今回の契約では債権譲渡登記があるのかどうか」を確認しましょう。

また登記をする場合、司法書士への報酬が発生します。一般的には2~5万円の費用負担になるため、こうした費用金額がどうなっているのか確認しておくのも重要です。

支払条件を確認し、書類すべての控えをもらうべき

こうして、手数料や支払期日、登記の有無などの支払条件を確認したあと、契約書やその他の書類を含めてすべてのコピーを取ってもらい、控えを手元に残すようにしましょう。

問題なく運営しているファクタリング会社の場合、すべてのコピーを渡してくれます。私についても、契約内容について後で確認できるように全書類のコピーを依頼しましたが問題なくすべて提供してくれました。

しかし、ダメな業者だと「いつも渡さないようにしている」などのように伝えて言葉を濁します。ただビジネスの場で契約書類を渡さないのはあり得ません。不動産の契約であったり、業務委託契約であったり、あらゆる契約で原本またはコピーを双方が保有しているのが当然だといえます。

そもそも、売掛金の売却をした場合は「本当にファクタリングの事実があるのか」を顧問税理士に示し、処理をしてもらわなければいけません。そうしたとき、契約書やその他の書類がないと適切に処理できません。

・闇金などの違法業者だと書類を渡さない

なお、どのようなときにファクタリング会社が契約書などのコピーを渡すことを拒むのでしょうか。これは単純であり、契約書の内容が違法なときです。

契約が違法であり、そもそも契約書として有効でないときについては、闇金業者はコピーを渡そうとしません。実際に裁判になったとき、違法な契約書のコピーを渡すと裁判で負けるため、最初から書類を渡さないようにしているのです。

そのため、契約段階になって全書類のコピーを拒むファクタリング会社であれば、闇金業者の可能性が非常に高いので契約自体を打ち切るようにしましょう。そうしないと、資金繰り改善のためにファクタリングを利用しているのに、闇金業者に捕まってしまって経営状況がより悪くなります。

ボイスレコーダーを回しても問題ない

当然、万が一の事態に備えるために契約の場でボイスレコーダーを回しても問題ありません。ここまで述べたことについて、きちんと質問したうえで音声として残っているのであれば証拠として活用できます。

もし、契約書の内容と違うことを担当者が言っていた場合、音声の証拠があれば裁判で指摘できます。

私はこれまで何度もファクタリングを利用しており、当然ながら不正などはしておらず問題なくお金を期日に返しています。そのためトラブルになったことはありません。ただ、ダメな業者に当たるとトラブルに発展し、裁判になることもあります。

そうしたとき不利にならないように、契約時の音声を残すのは意外と重要な自己防衛策になります。ちなみに、ボイスレコーダーを新たに買わなくても、携帯電話にアプリをインストールすれば問題ありません。例えば、以下のようなものを事前にインストールしておきます。

ファクタリング契約するとき、ボイスレコーダーを起動して机の上に携帯電話を置いておくだけで問題ありません。これだけで、万が一にでもトラブルに発展したときに防衛できるようになります。

不利な契約をしないように気を付けるべき

ビジネスにおいて、契約書へサインするときは慎重にならなければいけないと全員が理解していると思います。ただ、実際のところ売掛金を売買する場面ですべての書類に目を通すのは現実的に無理です。書類が多すぎるためです。

そのため、事前にテンプレートや書式・ひな形について学んでおいても意味がありません。そうではなく、契約当日に担当者へ質問することで不利な契約内容になっていないかどうか気を付けるようにしましょう。

どのような注意点があるのかについては、ここまで述べた通りです。手数料や返済期日、契約期間など支払条件がどうなっているのか確認するといいです。場合によっては、ボイスレコーダーなどを利用しても問題ありません。

これらの注意点を理解したうえでファクタリング契約に臨むようにしましょう。書類が多いからこそ、契約書の記載項目について要点を把握したうえで契約するといいです。

ファクタリング会社の選び方とは

資金調達のためにファクタリングを利用する場合、ファクタリング会社はたくさんあります。このとき、会社によって審査基準はバラバラですし、申し込みをしないと手数料は分かりません。そのため、複数社にあいみつ(相見積もり)を取るのが失敗しないコツです。

また、「素早い資金調達は可能か」「手数料相場は低いか」「土日対応できるか」「少額買取に対応しているか」など、ファクタリング会社によって方針がバラバラです。そうした中で優れた業者を選ぶ必要があります。

当然、偽装ファクタリングをしている闇金業者ではなく、真っ当なファクタリング会社を選ばなければいけません。利用業者に失敗すると、後で大変なことになります。

以下のページでは、私が実際に何社ものファクタリング会社を利用した中から、特に優れた業者だけ厳選しています。それぞれの特徴を理解したうえで複数社に申し込みをすれば、売掛金売買での失敗をなくすことができます。

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