ビジネスをするとき、車を保有している会社はたくさんあります。車の保有台数が多い会社ほど、維持コストが大きくなります。
そうしたとき、社用車の経費削減をすることは可能なのでしょうか。法人車両費を少なくできれば、それだけで資金繰りは大幅に改善されます。
これについて、方法によっては営業車のコストを大きくカットすることが可能です。また社用車の保有台数が多く、毎月の固定費が膨れ上がっている会社であるほど、法人車両費に着目したコスト削減は大きな威力を発揮するようになります。
それでは、どのようにして営業車のコスト削減をすればいいのでしょうか。費用が大きくなりやすい社用車について、経費削減の方法を解説していきます。
もくじ
ビジネスで法人車両費はコストが大きい
法人車両費について、コストを低く見積もっている経営者は多いです。毎月支払うガソリン代(電気自動車なら電気代)だけでしか考えていないケースが案外多いのです。
ただ、社用車については燃料代以外にも以下のような費用がかかります。
- 車自体の購入費用
- 自動車保険(車両保険)
- 重量税
- 駐車場代
- 車検・点検
- 消耗品(タイヤ、パッドなど)
- 高速料金
これらをすべて含めると、毎月の維持費や突発的な支出は非常に高額になっていることを理解しなければいけません。そのため、一台についてコスト削減を実施するだけでも経費削減の効果は大きくなります。
燃料代や車検代など、削減不可な項目は諦める
そうしたとき、車についてはコスト削減が不可能な項目がそれなりに存在します。例えば燃料代は基本的には削減ができません。よほどの大企業で大量購入している場合を除き、ガソリン代が安くなることはありません(クレジットカードの特典を利用して少し安くすることは例外的に可能です)。
同じことは車検代にもいえます。メンテナンスに必要な費用について、値段を下げてもらうことで経費削減することはできません。
- 重量税
- 駐車場代
- 車検・点検
- 消耗品(タイヤ、パッドなど)
- 高速料金
これらについては、基本的にコストカットできません。重量税については「軽自動車に変える」などが可能かもしれませんが、物流会社など業態によっては無理なこともあり、やはりあまり現実的ではありません。
固定費として営業車の経費を削減するアイディア
そこで、その他の方法によって法人車両費の経費削減を考えるようにしましょう。これには、主に以下の3点があります。
- 中古車の利用
- 自動車保険の見直し
- プライベート利用の阻止
これらを実践することによって、営業車のコストカットが可能になります。
新車は不要!中古車の利用で十分
日本ではなぜか、ほとんどの人が新車を購入する傾向にあります。ただ、ビジネスにおいて新車は不要です。無駄に値段が高いだけであり、メリットがほぼありません。しかも利用するのは社員であり、ビジネスで新車を購入するのは単なる自己満足だといえます。
また海外では、アメリカを含めて中古車の購入が普通です。事実、海外では10年落ちの日本車を多くの人が乗っており、しかも見た目はそこまで悪くありません。
もちろん実際に10年以上が経過した中古車を購入する必要はありませんが、それでも新車である意味はまったくありません。そこで、中古車のみの営業車に揃えるようにしましょう。
これだけで3~8割ほど安い値段で車を購入できます(車の種類や何年落ちなのかによって割引率は大きく変わる)。車の購入費用は高額になるため、これだけで一回の支出を50~100万円ほど抑えられるのは普通です。
車の買い替え時期は一台ごとに数年周期で必ず訪れるため、こうした費用のカットを考えなければいけません。
4年落ちの社用車で節税する
なお、購入する営業車については4年落ち以上に限定しましょう。これは、節税の意味合いが大きいです。節税で「4年落ちのベンツを購入する」という方法が有名です。ただ実際には社員が運転する車なので外車を購入することはないものの、4年以上が経過している中古車を購入するという意味では同じです。
なぜ4年落ちであると優れるのでしょうか。これは、それだけ節税できるからです。
高額な資産(車を含む)については、減価償却として徐々に経費に計上しなければいけないというルールがあります。この面倒なルールによって会計処理が大変になり、さらには「車の購入費用としてお金は先に出ていくものの、経費額が少なく法人税が大きい」という状況に陥ります。
ただ4年落ちの車であれば、1年での償却率が100%となり、支払ったお金のうち1年で全額損金算入が可能です。例えば300万円の車を購入する場合、新車と中古車での経費額は以下のようになります。
新車 | 4年落ちの中古車 | |
耐用年数 | 6年 | 2年 |
償却率 | 33.3% | 100% |
購入1年目 | 99万9,000円 | 299万9,999円 |
購入2年目 | 66万3,333円 | - |
購入3年目 | 44万5,433円 | - |
購入4年目 | 29万8,006円 | - |
購入5年目 | 19万8,472円 | - |
購入6年目 | 13万2,182円 | - |
実際には中古車のほうが値段は安いため、この表は正確ではありません。ただ重要なのは、4年落ちの車だと1年ですべての購入費を経費に計上できるため、その分だけ無駄な税金を減らすことができ、資金繰りが良くなるというわけです。
新車ではなく中古車を購入すれば、購入費用が安くなるだけでなく、節税面でのキャッシュフロー改善にも貢献するようになります。
自動車保険の法人契約を見直す
法人車両費のコスト削減では、他に高額になるものとして自動車保険があります。損害保険料については大幅な経費削減が可能ですが、自動車保険は割引率が低くなります。自動車保険の見直しについては10%未満の割引率であり、多くは5~6%ほどの割引率です。
例えば以下は、実際に自動車保険の見直しについて毎年の保険料を安くしたときの見積書です。
31台の社用車を保有している会社ですが、自動車保険を全体で5%引き下げることができました。補償内容はほぼ同じですが、年間で約14万円のコスト削減となりました。
損害保険料の削減の中では、自動車保険は威力が弱いです(火災保険や賠償責任保険だと30%以上の削減が可能)。ただそれでも、こうした見直しによって経費削減できるようになります。自動車保険の見直しについては、10台以上の営業車を有する法人が対象になります。
車での社員のプライベート利用を防ぐ
会社によって状況は異なりますが、社用車として社員にずっと貸しているケースもあります。これがトラックなどを有する会社だと起こりにくいですが、そうでない一般車を営業車として利用する場合、社員によるプライベート利用が高確率で起こります。
これについて仕方ない側面もありますが、無駄な経費が出ることによってその分だけ会社経営を圧迫してしまいます。特に社員数が多く、たくさんの社用車を有している会社であるほど車関係の不正が発生しやすいです。
例えば「法人カードを利用して、社用車ではなく自分の車に給油する」などは代表例です。
その他にも、「営業車を利用して休日にドライブに出かける」「プライベート利用の高速道路代を法人ETCカードで支払う」などもあります。ただ、これらはアイディア次第で防ぐことができます。
例えば燃料代については、法人カードやETCカードを社員に渡すのではなく、必ず支店に保管させるようにすればいいです。利用するときだけ貸し出せば、本当に必要なときだけ法人カードをもつことになるため不正利用が減ります。
また高速道路についてはETC利用照会サービスが存在し、これに登録すれば「入口・出口インター名と通過時間」がすべて記録されます。これにより、高速道路利用の不正はほぼなくなります。簡単にバレるからです。
このようにいくつかアイディアを記しましたが、これらの対策をしていきましょう。社員を疑うのは良くないですが、社用車については社員の不正が頻発しやすい項目なので、この対策をするだけでも無駄なコストが大きく減ります。
手当を出し、社員の車に依存する
ここまでの営業車の経費削減法については、会社が社用車として車を保有するケースに関してのコスト削減アイディアです。ただ、発想を変えることによってさらなるコスト削減が可能になります。
そもそも、車を営業車として会社が用意する必要はあるでしょうか。会社が法人車両費として車を保有しなくても、社員は既にプライベートで車を保有しているケースが多いです。
これが東京や大阪など都市部の会社だと、地下鉄での移動が基本なので社員は自動車をもっておらず、会社が営業車を用意する必要があります。ただそうでない地域であれば、会社がわざわざ社用車を購入しなくても、社員が車をもっているはずです。
それなら、社員の車を社用車の代わりとして利用すれば問題ありません。社員が営業に出るとき、自分の車を使ってもらうのです。もちろん、ガソリン代(EV社なら電気代)についてはすべて会社側が負担しなければいけません。また、社員の車を社用車代わりに利用するため、そのための手当てを出さなければいけません。
しかし車を購入する必要はなく、自動車保険には既に加入してあるため、会社が出さなければいけない法人車両費は圧倒的に低くなります。世の中には、大企業でこうした仕組みを取り入れているケースがあるため、当然ながら中小企業であっても導入可能です。
保有台数が多いならリース契約もあり
ただ中には、物流企業など特殊な車を利用する場合があります。この場合だと、会社が車を用意しなければいけません。また、社員の車を利用するコスト削減法だと、社員の同意を取る手間が発生します。
その場合、保有台数が20~30台以上なのであればリース契約を検討しましょう。社用車の数が少ない場合、車のリース契約をすると支払総額が高くなり損をしてしまいます。つまり、やる意味がありません。
一方で20~30台以上などと、ある程度の自動車を有している場合、リース契約の意味が大きくなります。リース契約すると、総額での支払額は多くなってしまいます。ただ、その代わり「自動車保険の管理」「毎年の自動車税計算」「車検やその他の手入れ」「車を管理するための人件費」などの維持管理費を考慮すると、リース契約したほうがコスト削減になることは多いです。
車の保有台数がある程度なければリース契約での経費削減はできません。ただ社用車の多い会社の場合、リースによってトラックやタクシーを含めすべての車で経費削減できるようになります。
通常、リース契約はコスト高になるので経費削減に向かず、利用するべきではないといわれています。ただ、例外的に「法人営業車の多い会社については、リース契約のほうが経費削減になる」といえるのです。
法人は自動車の経費削減をするべき
固定資産の中でも、車は非常に高額な部類に入ります。自動車やトラックなど、車がなければビジネスにならない会社は多く、たくさんの会社で自動車のコスト削減を諦めています。ただやり方によっては、高額な固定費削減が可能です。
車について減らせない経費はあるものの、問題なく削減できる項目も存在します。その代表が車の購入費用や自動車保険です。これに不正利用対策を加えて無駄なコストを減らせば、より削減額は大きくなります。
またより大きな改革をしたい場合、「社用車を全廃して社員の車を有効活用する」「リース契約によって管理コストを減らす」などの対策をしてもいいです。この場合、より大きな経費削減を実現できます。
法人車両費はコストカットが難しいと考えている経営者は多いものの、正しく行えば問題なくコストカットできます。営業車の台数が多いほど経費は膨れ上がるため、利益を確保するために積極的な固定費削減をしましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。