社員のやる気アップのために広く取り入れられているのが福利厚生です。社員全員に対して福利厚生の各種制度を導入することで、社員のモチベーションアップにつながります。
ただ実際のところ、多くの会社で無駄な福利厚生を取り入れているケースが多いです。その結果、無駄に福利厚生費を計上することで利益を圧迫しています。また、むしろ福利厚生によって社員のモチベーションを押し下げているケースもあります。
そこで、福利厚生が本当に必要かどうか見直さなければいけません。無駄な福利厚生ではなく、本当の意味で必要な福利厚生費だけに絞るのです。
それでは、具体的にどのような福利厚生費が無駄になりやすいのでしょうか。また、どのように福利厚生を利用すればいいのでしょうか。コスト削減まで見据えた、正しい福利厚生による節約法を解説していきます。
もくじ
無駄な福利厚生費は節税ではない
福利厚生に関する出費はすべて経費になります。法人税や消費税を減らすことができるため、福利厚生の導入は高額な節税になります。
ただ福利厚生費の支払いについては、実際のところ節税ではなく、単なる無駄遣いになっているケースがよくあります。節税と無駄遣いは明確に区別しなければいけません。無駄遣いするよりは、税金を支払ったほうがいいからです。
例えば、100万円の福利厚生費を支払う場合、100万円が手元から消えます。一方で無駄な福利厚生費を支払わず、100万円が手元に残る場合はどうでしょうか。この場合、法人税は約30%なので、法人税30万円を差し引いた70万円が手元に残ります。
福利厚生費を増やすことで節税した場合と節税しなかった場合だと、税金の金額は増えます。ただ、内部留保として手元に残る金額は多くなります。
当然ながら、ビジネスを継続するためには手元に多くのキャッシュが残っているほうが優れています。無駄遣いは経営を大きく圧迫するだけなので、福利厚生費の支払いによる無駄遣いを節税と勘違いしてはいけません。
無駄な福利厚生をやめると大幅なコスト削減になる
そこで、いま採用している福利厚生費の中で無駄なものはないか確認するようにしましょう。コスト削減をやりすぎると社員のモチベ―ションや満足度を下げるものの、そこまでモチベーションや満足度の低下に影響しない内容の福利厚生はいくつもあります。
例えば、以下のようなものが該当します。
- 社員旅行
- 歓送迎会や忘年会
- アウトソーシングの福利厚生
これの見直しをいますぐ実施するだけでも、毎年にして何百万円もの無駄な経費削減を実現できるようになります。
社員旅行はいまの時代にそぐわない
社員旅行を採用していない会社であれば問題ありませんが、慰安旅行を実施している場合、やめるだけで高額な経費を抑えられるようになります。
社員旅行は社内コミュニケーションの活発化に役立つと一般的にいわれています。ただ、「社員旅行によって社員の生産性やモチベーションが上がり、利益の向上につながった」という話を私は一度も聞いたことがありません。
ほとんどの経営者は薄々感じていると思いますが、社員旅行を実施してもしなくても利益向上には貢献しません。それどころか、JTBの調査によると「55%の社員は社員旅行に行きたくないと思っている」という調査結果が出ています。
つまり社員旅行をやめたほうが従業員のモチベーションを維持することにつながります。無駄な経費を支払い、従業員のやる気を下落させる社員旅行は無駄でしかありません。
しかも、社員旅行は費用が高額になりやすく、税務調査で否認されやすいです。これは、社員旅行には以下のような規定があるからです。
これらの条件すべてを満たしていない場合、税務調査で否認されます。つまり、正しく実施されなければ節税にすらなりません。
あらゆる福利厚生の中でも、社員旅行はメリットが薄くデメリットが目立ちます。そのため、無駄な福利厚生費の代表である社員旅行を削るだけで、大きなコスト削減によって利益を出せるようになります。
歓送迎会や忘年会などの飲み会をやめる
同じように社員のモチベーションや満足度を押し下げるものとして、歓送迎会や忘年会があります。いまの時代、社員旅行が微妙なのと同じように、会社が従業員に対して飲み会参加を強要させるのもモチベーション低下につながりやすいです。
そもそも本当に歓送迎会や忘年会が必要な場合、社員が勝手に企画し、自費で開催します。またプライベートな時間にて、勝手に同僚同士で飲みに行って交流を深めてくれます。会社が福利厚生費としてお金を出す必要はありません。
参考までに、私が会社員時代に在籍していた会社は東証一部上場の会社であり、社員数は何万人といました。ただ、自主的な飲み会の費用はすべて自費でした。しかし歓送迎会の会社負担がないことについて、従業員で文句を言っている人は一人もいませんでした。
飲み会があってもなくても、社員のモチベーションは変わりません。むしろ、歓送迎会や忘年会で社員のやる気が落ちる可能性があることを考えると、飲み会費用を会社が出すのは経費削減で必須だといえます。
アウトソーシングの福利厚生は誰も使わない
他にも重要な無駄な福利厚生費があります。それがアウトソーシング費用です。特に社員数が多く、規模の大きな会社だと取り入れがちですが、福利厚生の代行会社のサービスに加入していることがあります。
例えば、以下のような福利厚生のアウトソーシング会社は有名です。
ただ、実際のところ社員はこれらの福利厚生をほぼ利用しません。私がサラリーマンとして働いていたときの会社についても、まさに福利厚生のアウトソーシングサービスを利用していましたが、私が実際に利用することは一度もありませんでした。
理由は単純であり、メリットがほぼないからです。宿の予約をするにしても、楽天トラベルなど他の比較サイトを経由したほうが安いです。またこうした福利厚生サイトを経由しなくても、そもそも公式サイトでもまったく同じ割引サービスを展開していることが非常に多く、提供サービスに意味ないケースが頻繁にありました。
これら福利厚生のアウトソーシングサービスは無駄金になりやすいですし、やめたとしても従業員からの不満は出ません。利用している社員がほぼ存在しないからです。そこで経費削減のため、福利厚生のアウトソーシングサービスはカットしましょう。
昼食代の負担など、意味のある福利厚生にするべき
一方で、意味のある福利厚生もあります。導入することによって社員のモチベーションアップにつながり、従業員が会社に対して感謝してくれるようになるのです。
その代表的なものの一つがランチ代の負担です。社員は毎日、必ず昼食を食べます。このときの費用を負担してあげれば、当然ながら社員としては非常にありがたく感じてくれます。ただ昼食代を経費にするためには、以下の注意点を守るようにしましょう。
- 月の負担額上限は3,500円以下
- 社員本人が費用の半分以上を負担している
この2つの条件については、国税庁の公式サイトにも明記されています。
通常だと、会社が社員の食事代を負担した場合、給与課税されます。つまり、「食事代として給料を支払った」とみなされて、従業員には所得税や住民税、社会保険料の支払い義務が余分に生じます。ただ、上記の2項目を満たしている場合、福利厚生費として経費にできます。
社員旅行などの費用に比べると、ランチ代の年間負担額は低いです。それであっても、社員にとっては非常にありがたい福利厚生の制度となりやすいです。
社宅制度も社員のやる気を向上させる
また社宅制度も福利厚生で重要です。社宅によって賃貸マンションに安く住める場合、従業員は会社を辞めにくくなります。
社宅制度をうまく活用すれば、社員はほぼお金を出すことなく賃貸(借り上げ社宅)に住むことができます。家賃の一部は社員が負担しなければいけないものの、大部分の費用は会社負担として問題ないのです。
社宅として負担した家賃は、すべて経費に計上しながらも、社員の満足度を向上させることができます。しかも社員にとってみれば、会社が負担してくれた家賃については給与課税されることがありません。つまり、所得税や住民税、社会保険料などあらゆる税金が課せられないのです。
実際のところ、社宅制度があるかどうかによって、社員にとっては実質的な手取りが大きく異なってきます。これが、社宅制度の有無によって「社員が辞めにくくなるかどうか」に影響する理由です。
ワクチン代など、必要な健康代は必須
また福利厚生費として計上するべき費用は他にもあります。例えば、インフルエンザの予防ワクチンがこれに該当します。
インフルエンザに感染すると、熱が治まるまでの一週間ほどは出社できません。その間、従業員はフル稼働できなくなります。一方でワクチン代を負担してあげれば、社員はインフルエンザに罹ることなく働いてくれるようになります。
ワクチンは分かりやすい例ですが、健康診断を含め、こうした費用は削ってはいけない福利厚生費になります。健康に関する福利厚生については、むしろ拡充させるほうが「社員が休むことによる損失が少なくなり、結果として会社全体のコストが低くなる」ようになります。
福利厚生費については、社員旅行のように完全に無駄なものがあれば、健康関連のようにむしろ積極的に整備したほうがいい費用もあります。これらを見極めるようにしましょう。
意味のない福利厚生の支出は削減するべき
多くの会社で福利厚生を利用しています。ただ、福利厚生の内容について疑問をもたず、「去年も実施していたから」という理由だけで無駄な支出をしている会社は非常に多いです。その代表例が社員旅行や飲み会費用、福利厚生のアウトソーシングサービスです。
これらはほぼ無駄なので、いますぐカットしましょう。それだけで、社員の満足度を下げずに大幅な経費削減が可能になります。
一方で優れた福利厚生も存在します。本当の意味で社員の満足度を上げたり、社員が会社を辞めにくくなったりするのです。無駄な費用を削減しつつ、これら本当に重要な福利厚生に経費を使うようにしましょう。
福利厚生は使い方を間違えると、単なる無駄遣いになってしまいます。そのため現状の福利厚生費の明細を見直すだけでも、大幅なコスト削減が可能になります。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。