マッサージや鍼治療などをサービスとして提供している法人は非常に多いです。ただお客さんの健康に関わるビジネスである以上、施設や業務上に関わる患者さんの健康被害について常にリスクを負っているといえます。
そのため、こうした鍼灸整骨院やマッサージ院では賠償リスクに備えなければいけません。そうしたリスクに対応する損害保険が賠償責任保険です。
ただ賠償責任保険とはいっても、鍼灸接骨院やマッサージ店は一般的に広く販売されている保険商品に加入してはいけません。補償範囲が限られており、意味がないからです。そうではなく、施術家向けの専用の賠償責任保険を利用する必要があります。
ただ、具体的にどのような損害保険を利用すればいいのか理解している人は少ないですし、補償内容について熟知している人はほとんどいません。そこで、マッサージや鍼灸をサービスとして提供する法人はどのように損害保険を利用して、ビジネスでのリスクに備えればいいのか解説していきます。
もくじ
お客さんに健康被害の危険性がある鍼灸やマッサージ
あらゆるビジネスでリスクはあるものの、その中でも鍼灸整骨院やマッサージ院では特に、患者さんの健康被害によって高額な慰謝料や和解金の支払いが必要になるリスクがあります。
- 整体院
- 鍼灸接骨院
- 美容鍼灸サロン
- マッサージ院・リラクゼーションサロン
- カイロプラクティック
このようにさまざまな形態はあるものの、すべてに共通するのが健康リスクです。例えば鍼灸院であれば、鍼治療によって肺気胸が起こる事故は非常に有名です。鍼治療では、鍼を深く刺しすぎると簡単に肺気胸が起こってしまいます。
過去に起こった高額賠償の実例
ただ、肺に穴が開くなど広く知られている事例でなかったとしても、大きなトラブルに発展することがよくあります。こうした施術側の不注意による事故については、常に付きまとうようになるのです。
例えば以下は、過去に起こった整体院で起きたマッサージでの骨折事例です。
整体マッサージ院にて施術をした結果、お客さんが骨折してしまったという事例です。このケースについては、裁判所が店舗に350万円の賠償金支払いを命じました。
今回の件については、資格のない素人によるマッサージによる事故なので、マッサージ院側に責任があるといえます。ただ、たとえ資格者であったとしても「老人に対して施術をする」などのケースであれば、施術中に患者さんが骨折してしまうリスクは誰にもあります。
整体師や鍼灸師、マッサージ師の事故は法人の責任
なお重要なのは、「賠償命令が下されたのは店舗」という事実です。お客さんを実際に施術したのは社員ではあるものの、お客さんに対して慰謝料を支払わなければいけないのは法人となります。
この理由としては、法人は社員に対して使用者責任があるからです。要は、法人は社員について監督する義務があります。
整体師や鍼灸師、マッサージ師などの人たちが働いてくれているため、会社は利益を作ることができます。そのため、会社は社員が起こした事故を含めて責任を負うことになります。
柔道整復師や鍼灸師、整体師などが個人的に賠償責任保険に加入してもいいですが、個人事業主以外はあまり意味がありません。従業員として働いているのであれば、そもそもの責任は監督者である法人が負うのが一般的だからです。
施設賠償責任保険では業務中の事故に対応できない
そこで、整体院やマッサージ・リラクゼーションサロン、カイロプラクティックなどを経営している法人は必ず賠償責任保険に加入するようにしましょう。
このとき、一般的には施設賠償責任保険を利用します。施設や業務中の事故について、広く対応できるのが施設賠償責任保険です。施設が関わる事故を補償してくれるため、例えば「店舗内の機材が倒れて患者さんがケガをした」などのときに補償対象になります。
また、業務中に発生した事故も広く補償してくれるのが施設賠償責任保険です。ただ、整体や鍼灸などに関する施術行為は対象外となります。
「預かっていたお客さんの荷物を壊した」など業務中に発生した普通の事故は補償してくれるものの、マッサージや鍼灸の業務については例外であり、施術に関して補償の対象外なのです。そのため、一般企業向けに販売されている施設賠償責任保険に加入するのでは不十分といえます。
鍼灸整骨院やマッサージ院が加入するべき施術行為への賠償責任保険
そこで最適な補償を加えるため、一般向けの施設賠償責任保険ではなく、施術行為に対応している賠償責任保険へ加入するようにしましょう。
損害保険会社によっては、柔道整復師や鍼灸師、カイロプラクター、セラピストを含めて、施術行為に対する業務中の事故について広く補償しているケースがあります。こうした施術行為が補償に含まれている賠償責任保険を利用しましょう。
なお、補償の対象となるケースは異なります。資格者向けの賠償責任保険があれば、リラクゼーションサロンのように無資格の人によるマッサージを含めて補償してくれる保険もあります。例えば以下の賠償責任保険については、資格保有者向けの損害保険商品になっています。
保険金を支払わないケースとして、無資格の人による施術が記されています。そのためフットマッサージやリラクゼーションサロンの場合、別の賠償責任保険を利用しなければいけません。マッサージ行為によるビジネスで施術者向けの賠償責任保険を利用するとはいっても、損害保険によって対象者がこのように異なるのです。
なおこうした施術者向けの賠償責任保険では、業務中の事故だけでなく、施設が関わる事故についても広く補償してくれるケースが大半です。要は、一般的な施設賠償責任保険に加えて、施術行為による事故も含めて補償されるのが「施術者向けの賠償責任保険」と考えましょう。
こうした損害保険の名前としては、鍼灸賠償責任保険や整体師賠償責任保険など、それぞれの損害保険会社によって商品名は異なります。また当然ながら、鍼灸院とリラクゼーションサロンでは損害保険会社によってターゲットとしている人たちが異なります。
ただいずれにしても、マッサージや鍼灸を含めた施術行為に対しても補償を加えることができます。
・美容鍼も補償の対象になる
なお通常であれば、こうした施術者向けの賠償責任保険では美容鍼なども補償対象に含まれるのが一般的です。美容行為は補償対象に含まれないケースがあるものの、施術については特に問題ありません。
もちろん損害保険商品によって補償内容は異なるため、美容鍼など美容行為がサービス内容に含まれている場合、損害保険への加入時に必ず確認するようにしましょう。
初期対応費用や弁護士費用を含めて保険金が下りる
なお、実際に患者さんに対して健康被害が起こってしまい、法人が慰謝料・和解金の支払い責任を負ってしまった場合、法人側も弁護士を通じて交渉しなければいけないケースが多いです。
当然ながら弁護士費用は高額になりがちですが、そうした費用についても賠償責任保険で出されます。中には弁護士特約がオプションになっているケースもあるため確認は必須ですが、被害者の入院・治療費・和解金だけでなく、弁護士費用や仲裁・調停に関わる費用も補助してもらえます。
また患者さんが帰宅した後に症状が悪化したケースではなく、施術直後に具合が悪くなるという場合もあります。
こうしたとき、その場ですぐに応急処置をしなければいけません。こうした応急処置や損害拡大の防止に出した初期対応費用についても賠償責任保険で補償してもらえます。慰謝料だけでなく、これら周辺費用についても損害保険の対象に入っているのが基本だと理解しましょう。
院長でなく、スタッフが含まれるか確認するべき
ただ、施術者向けの賠償責任保険であれば何でもいいかというと、そういうわけではありません。施術内容や美容サービスを含めて提供サービスが補償に含まれているのは当然として、補償の対象者がどのように設定されているのか必ず確認しなければいけません。
施術者向けの賠償責任保険の中には「院長だけが対象になっている」というケースがあります。この場合ではスタッフの施術が100%免責となり、業務中にスタッフによる事故が起こったとしても損害保険を利用して保険金を受け取ることができません。
この場合、正しく補償を加えることができていないため、損害保険に加入している意味がないといえます。
例えば以下の施術者向けの賠償責任保険であれば、法人契約ではあるものの、「損害保険の加入者として名前が入っている人が起こした事故」のみ補償対象になります。
こうした賠償責任保険の場合、注意しなければいけません。アルバイトも含めてそのつど加入させなければならず、社員やアルバイトの入れ替わりが激しい整体業界では非常に使い勝手が悪いです。また社員が加わるたびに、そのつどお金の支払いや代理店とのやり取りも必要になるので面倒です。
施術者向けの賠償責任保険の中には、対象となる施術者を一人ずつ登録するタイプではなく、売上規模から損害保険の金額を算出し、院長やスタッフを含め施設全体にて補償対象にできる賠償責任保険もあります。加入するのであれば、こうしたタイプの賠償責任保険のほうが優れています。
賠償責任保険というのは、加入して満足してはいけません。あなたがビジネスをするに当たり、法人で想定されるリスクに対してすべて備える必要があります。そのためには、業務中の事故についてスタッフまで含めて補償対象範囲に含まれているかどうかのチェックは必須です。
整体やマッサージで重要な損害保険での補償
お客さんの体を施術する場合、どうしても問題になりやすいのが健康被害です。施術した後にお客さんの容態が明らかに悪化してしまうことがあるのです。
このとき慰謝料・和解金の支払いに備えるため、法人では賠償責任保険を活用しなければいけません。ただ整体師や鍼灸師、マッサージ師を含め、お客さんの体を触る職業の場合、一般的な施設賠償責任保険に加入しても業務中の事故に対して補償してくれません。
そこで一般法人向けの施設賠償責任保険よりは値段が高くなるものの、必ず施術者向けの賠償責任保険を利用しましょう。ただ、加入するだけでは不十分であり、弁護士特約や補償の対象者(スタッフも含まれているか)なども確認しましょう。
これらの注意点を理解して損害保険を利用するからこそ、ビジネスでのリスクを避けられるようになります。正しい賠償責任保険の見分け方を理解して、いまの保険が適切かどうか確認しましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。