不動産オーナーやマンション管理組合など、マンションやビルなどの不動産を保有する場合、共用部の管理をすることになります。これらの共用部で高額な電気代が発生し、年間の運用利回りに大きく響いていることはよくあります。
そこで、こうした無駄な電力料金は可能な限りカットしなければいけません。電気代の見直しにより、利回りが大幅に改善するからです。
それでは、どのようにして大型不動産の共用部の電力料金を削減すればいいのでしょうか。これには、いくつか方法があります。
そこで大家やマンション管理組合が実施するべき、マンション・ビルの電気代削減方法を解説していきます。
もくじ
アパートと違い、共用部の電気代が大きいマンションやビル
不動産投資の中でも、アパートであれば共用部の電気代について考える必要はほぼありません。アパートでは部屋のドアが建物の外にむき出しになっているため、空調の管理が不要です。またエレベーターがないケースは多く、住人は勝手に階段を上ってくれます。
一方でマンションやビルでは、共用部で高額な電気代がかかります。空調や照明の管理が必要であり、エレベーターの利用で電気代の支払いをしなければいけないのです。
そのためマンションやビルへの投資効率をよくするため、すべての不動産投資家は電気代の削減を考えなければいけません。
不動産の大小で契約は高圧・低圧に分かれる
なお、電力会社と契約するときは2つの契約があります。それが低圧電力と高圧電力です。
ビルやタワーマンションなど、大型施設の場合は高圧電力になります。発電所などから送られてくる電気は6600Vなどであり、変電施設を敷地内に設置することで、これらの電気を使えるようになります。もちろん、マンションでも高圧電力のケースはよくあります。
一方で同じ不動産であっても、小型のマンションやビルでは低圧電力のケースがよくあります。一般家庭が使うのが低圧であり、変圧器によって100Vや200Vなどに変換されています。
電気料金という意味では、単価は高圧よりも低圧のほうが高いです。低圧だと、1kWhあたり10~15円ほど高くなります。ただ高圧では大量の電気を利用する契約なので、基本料金(電気を利用しなくてもかかる費用)が高くなる傾向にあります。
不動産投資で消費電力を節約するポイント
それでは、不動産投資で保有しているマンションやビルの電気料金を節約する方法としては何があるのでしょうか。不動産の共用部の消費電力を下げるとき、主に以下の方法を考えることができます。
- 空調と照明の見直しを行う
- 電子ブレーカーを導入する
それぞれの方法について、より詳しく確認していきます。
空調と照明の見直しを行う
共用部の消費電力としては、最も高額なのが以下の3つです。
- 空調(クーラーや暖房)
- 照明
- エレベーター
このうち、エレベーターの電気代を節約することはできません。エレベーターを使えないとなると、確実に利用者からクレームが出ます。一方で空調と照明については簡単に節約できます。
まず、そもそも論として共用部のクーラーや暖房は必要でしょうか。これらの空調を完全にゼロにすることで、空調代をゼロにしてもクレームが出る可能性は低いです。マンションやビルでは空調なしでも、建物内だと夏はある程度涼しいですし、冬はある程度まで暖かいです。
もし空調を利用している場合、これらを思い切ってゼロにしてもいいのではと思います。事実、周囲にある不動産を見ても空調ゼロのマンションやビルはわりと多いはずです。
これが高級タワーマンションや商業施設であれば、さすがに空調は必要です。ただ、それ以外ならクーラーの温度を1度上げる(暖房なら1度下げる)ことでクレームが出ることはありません。
また同じようにコスト削減で有名な方法が電球の取り換えです。LED電球は高額であるものの、消費電力が少なく、その後の取り換え作業もほとんど発生しないことが知られています。初期費用はかかりますが、照明を交換することでコスト削減が可能になります。
さらには、照明は人感センサーを利用することで常に点灯させないようにしましょう。これによっても、電気代を大幅に削減できます。
電子ブレーカーの導入で基本料金を下げる
また不動産経営での電気代削減で非常に重要なのが電子ブレーカーの導入です。一般的な家庭用のブレーカーであれば、一定以上の電気が流れることでブレーカーが落ちます。
一方で電子ブレーカーであれば、一定以上の電気が流れたとしても、その瞬間に電気が切れるわけではありません。設定している許容値の150~190%などの電気が流れたとしても、すぐにブレーカーが落ちることはないのです。
例えば、「設定している許容値を3分連続して超えると、ブレーカーが落ちる」などのように設定できるのが電子ブレーカーです。
これを設定することで、電気代の基本料金を下げることができます。マンション共用部では、常に使う電気として例えば給水ポンプや排水ポンプなどがあります。一方で以下の電気代は常に消費するわけではありません。
- 照明(人感センサー付き)
- エレベーター
- 機械式駐車場
例えば、以下の消費電力だとします。
設 備 | 1回の使用時間 | 消費電力 |
---|---|---|
エレベーター | 30秒 | 10kW |
機械式駐車場 | 3分 | 12kW |
排水ポンプ | 連続 | 3.0kW |
給水ポンプ | 連続 | 7.0kW |
すべての消費電力を足すと、30kWになります。そのため、例えば32kWの電力で契約することで、すべてが同時に稼働したとしても問題ないようにするのが一般的です。
そこで電子ブレーカーを導入して、例えば12kWの契約にしましょう。低い電気契約にした分だけ、基本料金が大幅に安くなります。この場合だと、契約する電気が半分以下になるため、当然ながら基本料金も半分以下になります。
また電子ブレーカーなので、エレベーターなどが稼働して契約電力より大きい電気が流れたとしても、ブレーカーが落ちることはありません。このような理由により、電子ブレーカーの利用によって電気料金の節約が可能です。
新電力を含め、電力会社の見直しで大幅削減できる
ただ消費電力を下げるにしても、機器類への初期投資が必要だったり、利用者への配慮が必要だったり面倒です。そうしたとき、より簡単な共用部のコスト削減方法が電力会社の見直しです。新電力会社を含め、契約する会社を見直すのです。
電気については、通っている電線は同じです。また発電所も同じです。つまり、電力会社を変えたとしても品質の違いはゼロです。費用だけが安くなり、切り替えには初期費用もかかりません。あらゆるコスト削減法の中でも、デメリットがほぼ存在しない珍しい手法が電力会社の見直しです。
具体的には、あなたのマンションやビルがあるエリアに対応している50社以上の業者に対して、競争入札をかけます。またあなたが複数エリアに不動産を保有している場合、それぞれのマンション・ビルに対して競争入札を実施します。
そうして多くの電力会社に競争させることで、電気代の底値を出させます。その後、最も金額の安い新電力会社と契約します。
小型マンションでの見直し事例
それでは、どれくらいの電気代削減効果を見込めるのでしょうか。これについて、いくつか実例を見ていきましょう。例えば、以下は小型マンションを保有している大家が電気代削減をしたときの実際の見積書です。
この大家の場合、年間で78万7644円の電気代になっていました。月に換算すると、共用部に約6万5000円の電気料金がかかっていることになります。そこで電気料金の見直しをすることで、年間65万627円に金額を落とすことに成功しました。
削減率は約17%であり、年間で13万7017円のコストを削っています。運用利回りが5%だとすると、これだけのコスト削減は賃料収入274万円ほどに相当します。
- 13万7017円(削減コスト) ÷ 5%(利回り) = 約274万円
そのため、非常に大きな効果を得ることができているといえます。しかもこれが毎年続くため、利回りの改善効果は高いです。
ビル一棟での見直し事例
もちろん、より不動産の規模が大きくなると電気代削減による効果は大きくなります。例えば、以下はオフィスビル一棟(地上5階、地下1階)で電気代削減の競争入札をしたときの最終結果です。
この不動産では、年間1629万5172円の電気代となっていました。そこで電気料金のオークションをした結果、基本料金は年間で約141万円減りました。また、1kWhあたりの電気料金単価も安くなり、電気の使用料金は年間で約108万円を削減できました。
その結果、両方の合計で年間約249万円のコスト削減に成功しています。年利5%だとすると、4980万円の賃料収入に該当します。いずれにしても、このように高額な経費削減が可能です。
一棟所有でない場合、個別より管理組合で契約すると安い
なおマンションやビルを一棟所有している場合であれば、ここまで述べた施策を実践するようにしましょう。ただ中には、一棟ではなく区分所有のケースもよくあります。
そうした投資家の場合、マンション管理組合などで共用部の管理をすることになります。そこで、区分所有の個人として交渉するのではなく、マンション管理組合として交渉すれば大幅に電気代が安くなります。
区分所有マンションとして、一室分だけの共用部の電気代を下げる交渉をすることはできません。ただマンション管理組合であれば、利用する電気会社を変えることが可能です。
マンション管理組合に提言できる場合、積極的に電力会社の切り替えを行うことで電気代を安くできれば、マンションを区分所有する全員にとってメリットが大きいです。一棟所有でない場合は共用部の電気代削減が難しいものの、マンション管理組合を利用することでやり方によっては経費削減が可能になります。
不動産の電気代削減は空調・照明以外に幅広い
一般的に不動産の共用部の電気代を削減するとなると、空調や照明のコスト削減を考えます。実際のところ、これらの電気料金を抑えるだけでも効果は大きいです。
ただ不動産の場合、他にも電気料金を抑えられるポイントがあります。一つが電子ブレーカーです。電気代の基本料金を抑えることによって、半分以下の基本料金にできるのは普通です。
またマンションやビルを経営しているのであれば、必ず電力会社の見直しをしましょう。50社以上に対して一気に競争入札をかけることで、電気代の底値を出すことができます。これだけでも、年間の不動産運用利回りが圧倒的に改善されます。
不動産経営では入居者を増やしたり、賃料を上げたりして収益を確保しようと努力します。ただ、それと同じだけコスト削減に注力しましょう。そうすれば、より多くの現金を手元に残せるようになります。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。