貿易業を営んでいる人はたくさんいます。例えばいまでは個人であっても輸入や輸出を副業ですることができます。社員を雇ってビジネスを展開している会社だけが貿易業をしているわけではなく、誰でも貿易をスタートできます。

ただ国内取引とは異なり、こうした貿易ビジネスをする場合は高額な手数料を課せられることになります。為替レートが高かったり、送料でのコストが大きかったりするのです。

こうしたとき、貿易業での経費削減はどのように検討すればいいのでしょうか。貿易では大量の商品を取り扱うため、一つの商品で10円の経費の違いであったとしても、高額な利益額の違いになることはよくあります。そのため、固定費削減に着目するべきなのは当然だといえます。

海外ビジネスでは適切なコスト削減方法が存在します。そこで、どのような経費削減を検討しなければいけないのか理解しましょう。

為替レート手数料は銀行以外で削減する

貿易業の場合、国内取引では考えなくてもいい多くのコストがかかるようになります。その中でも、特に重要になりやすいのが、為替と物流です。為替レートと物流コストの両方を考えることが最も重要だといえます。そこで、この2つの削減を考えるようにしましょう。

貿易でのコスト削減としては、為替レートはやり方が非常に簡単です。少しの工夫をするだけで、年間にして何十万円、何百万円レベルでの無駄な経費削減が可能です。

為替レートを考えるとき、最もダメな方法は銀行の利用です。日本の銀行を利用して海外送金をする場合、ネット銀行を含めてすべての銀行でぼったくられます。例えば、以下は過去に私が銀行を利用して日本円のまま海外送金したときの計算書です。

このように、1万円以上の手数料です。それに加えて、米ドルやユーロなどで着金させるとなると、ぼったくりレートが加わります。そのため、例えば100万円を送金したとしても「現地通貨で95万円ほどの価値」で着金されます。送金額の5%以上が手数料で消えるのが、銀行を利用した送金です。

そのため貿易ビジネスをする場合、銀行を利用しないことが第一のポイントです。これは輸出でも輸入でも同様です。たとえあなたがお金を受け取る立場であったとしても、相手企業に銀行を利用しない送金方法を教えることで、今後も優れた取引が可能になります。

500万円未満の送金はWise

海外送金での貿易コストをカットする方法では、最も有名な方法としてWise(ワイズ)の利用があります。海外送金の手数料が送金額の1%ほどなので、これだけで大幅な為替コストを削減できます。

Wiseの場合、為替レートによる差益を取っていません。つまり、ぼったくりレートがゼロです。Wiseへ支払う1%ほどの手数料を支払うだけで問題ありません。

そのため非常に優れていますが、デメリットとして1回100万円までしか送金できません。

※ちなみに実際には100万円に対して、Wiseの手数料が差し引かれるため、「100万円の送金をしようとしたとしても99万円ほどが送金される」ようになります。

日本ではダメな税制が多く、その一つが「100万円以上の海外送金では税務署に報告しなければいけない」というルールです。このルールのため、一回の送金で設定できる金額が100万円です。以下のように、100万円を超えて送金しようとしても無理です。

そこで100万円を超えて海外送金したい場合、複数回に分けてお金を送るようにしましょう。この方法によって、銀行が設定しているぼったくりレートや高額な送金手数料を回避できるようになります。

500万円未満のお金を海外送金する場合、最も為替手数料を低くできる方法がWiseの活用です。「Wiseの公式サイト」から会員登録できるので、輸入など貿易によって海外送金する機会がある場合は必ず利用しましょう。

500万円以上の送金はFX会社を利用する

なお場合によっては、500万円以上を海外送金しなければいけない場合があります。その場合、FX会社を利用しましょう。私についても、高額なお金を海外送金する場合は何度も利用したことがあります。

FXを利用するとなると、何だか怖いイメージがあります。ただ、これは何倍ものレバレッジをかけてトレードをするからです。あくまでも海外送金目的であるため、1倍にて取引をするので怖いことはありません。

なぜ、FX会社を利用するのでしょうか。それは、Wiseだと100万円が上限なので高額なお金の送金に向いていないのと、1%ほどの手数料支払いが発生するからです。これがFXの利用であれば、より手数料を安くできます。

例えば、米ドルにて海外送金したいとします。このときFX会社に日本円で送金します。その後、FX会社を使って日本円を米ドルに交換します。その後、FX会社からあなたの日本の銀行(米ドル口座)にお金を移した後、米ドルのまま相手先に海外送金します。

銀行を利用して日本円を米ドルやユーロなどに交換するとなると、異常なほどのぼったくりレートとなります。一方でFX会社であれば、為替レートの差は非常に少なく、とても良心的な為替レートになります。

その後、あなたの銀行(外貨預金)に米ドルやユーロを移した後、海外送金します。海外送金するときに送金手数料が5,000~10,000円ほどかかるものの、為替によるぼったくりレートはありません。その結果、Wiseを利用するよりも安い手数料になります。

なお、参考までに私は以下の会社を利用しています。

  • FX会社:セントラル短資FX
  • 銀行:SMBC信託銀行

これらの個人口座を開設しています。法人口座のお金を海外送金するとき、法人口座は非常に不便です。そこで、個人口座にて上記の会社のサービスを利用します。お金については、法人から社長個人に立て替え分として前もって移動させればいいだけなので、そこまで大きな問題にはなりません。

なお、FX会社の中で最も手数料が安いのがセントラル短資FXです。また外貨預金で非常に多くの通貨に対応しており、海外送金手数料が2,000円(一回の送金上限は500万円相当以下)と安いのがSMBC信託銀行です。なお、送金額がより大きい場合は海外送金手数料が高くなります。いずれにしても、これらを有効に利用して貿易コストを下げましょう。

プラットフォーム利用ならWorld First

また貿易業をしている人の中には、米国Amazonなどを利用して輸出している人もいます。その場合、既にほとんどの人が知っていると思いますが、プラットフォームを利用した海外送金の仕組みを利用するのが一般的です。

こうしたプラットフォームとしては以下が有名です。

  • Payoneer
  • World First

これらのサービスを利用することによって、米ドル口座やユーロ口座を持てるようになります。その後、米ドル口座などで現地通貨を受け取った後、日本円に変換して送金してくれます。World Firstは手数料が送金額の0.15~0.5%と最安なので、特別な理由がない限りはWorld Firstを利用しましょう。

米国Amazonなどを利用しての輸出では、「現地通貨から日本円へ、格安レートにて変換してくれるサービス」を利用するのが、貿易コストを下げるコツです。

物流コストは船便や国際郵便を比較する

こうして輸入や輸出での為替レートコストを削減した後は、物流コストの見直しをするようにしましょう。輸入でも輸出でも、必ず物を輸送する作業が発生します。このときの送料を見直すのです。

一つの商品を送るとき、一個10円の送料の違いでも月5,000個の商品を仕入れる(または送る)という場合、年間では以下の違いになります。

  • 月5,000個 × 10円 × 12ヵ月 = 60万円

ここから、物流コストの見直しが非常に重要だと分かります。ただ物流コストについては、見直し方法はあなたの状況によってバラバラです。取り扱う商品の重量や大きさが異なるため、最安値となる輸送方法が違うのです。

また、ある程度のリードタイムがあっても問題ない場合は船便を利用すればいいです。ただ多少は値段が高くても、船便より航空便のほうがリードタイムを短くできるので優れているケースもあります。これについては一概にどれが最適かは分かりません。

  • 船便と航空便
  • EMS(国際スピード郵便)とSAL便(エコノミー航空便)

これらのうち、どの方法を組み合わせるのが最も値段が安くなるのか、あなたの貿易ビジネスに当てはめて考えるようにしましょう。例えば「商品の70%は船便で安く輸送し、残り30%を航空便にする」など、さまざまなパターンがあります。

物流業者の乗り換えでコスト削減

なお、例えば貿易で商品を送るときは多くのケースで輸送代行会社を利用します。そこで、「海外から商品を仕入れる(輸入)」または「海外へ商品を送る(輸出)」のとき、利用する代行会社の値段が適切かどうかを確認しましょう。

例えば日本から海外へ個別発送による輸出をする場合、ECMSジャパンが最安値です。法人しか契約できないというデメリットはありますが、個人ではなく法人で貿易ビジネスをしている場合、この会社を利用すると輸出での物流コストを省けます。

なお、同じ輸出であっても「海外に住んでいる個人に個別発送するのではなく、米国Amazonの倉庫に商品を送りたい」という場合、別の物流業者を利用することになります。同じ輸出であっても、あなたの業態によって利用するべき最安値の業者は異なります。

いずれにしても、輸入でも輸出でもいま使っている会社を漫然と利用するのではなく、適正価格かどうかを見極めるようにしましょう。

倉庫の自社または外注で考える

なお貿易コストとしては、他にも重要なのが利用する倉庫です。ただ倉庫については、人によってビジネスの目指すべき方向性が異なるため、一概にコストが安ければいいわけではありません。

最も固定費を低くする方法としては、ド田舎に倉庫を借りて格安にてパート社員を雇って商品発送することがあげられます。輸入でも輸出でも、田舎であるほど倉庫代は安くなります。ただ、ド田舎に住みたいと考える人は少数なので、あまり現実的ではありません。

また私の場合、例えば輸出ビジネスをしています。ただ自社倉庫はゼロであり、賃貸倉庫やパート社員の雇用もありません。物流コストとしては割高になりますが、日本Amazonの倉庫にすべての在庫を入れ、海外から注文があれば遠隔にて荷物をAmazon倉庫から出し、海外輸送代行業者によって発送してもらいます。

私は荷物管理やパートの採用&管理が面倒ですし、値段が高めの商材を取り扱っていて利益率が割と良いため、多少はコストがかかったとしてもこうした方法を採用しています。そのため倉庫代については、私の会社は「田舎に倉庫を借りる」などの経費削減は特に考えていません。

倉庫代についても固定費削減は可能です。ただ、これについては人によって貿易ビジネスで目指すべき姿が大きく異なるため、一概にコスト削減ばかりを求めるのが最適とは限りません。

貿易コストを下げることは可能

海外との取引で輸入または輸出をする場合、貿易コストを下げることを意識しましょう。具体的には、以下の経費削減が可能です。

  • 為替取引
  • 物流費用

為替レートについては、銀行を利用しないだけで大幅なコスト削減が可能です。WiseまたはFX会社を利用して、為替手数料をできるだけ下げるようにしましょう。

また為替手数料以外では、物流コストも重要です。人によって許せるリードタイムや取り扱う商材が違うので一概にはいえませんが、船便や航空便、発送形態、物流会社の見直しをすることで最安値となるように調節しましょう。

これらを行うことで、貿易コストの引き下げが可能です。貿易業では10円単位の経費の違いが後になって大きなコストの差になるため、できるだけ無駄な経費を使わなくても問題ない方法を探しましょう。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【貨物保険】

貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。