非常に高額なお金が動く業界として建設業があります。ただ、建設会社の利益率は非常に低く、一般的には4~5%ほどといわれています。

なぜ、このように利益率が低くなるのかというと、材料費として原価が高かったり、外注を利用したりすることはありますが、コスト削減を適切に行えていないことが一つの理由として挙げられます。事実、利益率10%以上の建設会社は存在し、これはコストダウンを意識しているからです。

工務店については、建築コストやその他の固定費・変動費を下げることを考えましょう。このときは誰でも簡単に行える経費削減があれば、経営努力が必要となるコスト削減もあります。

ただコストダウンをするとはいっても、どのように実践すればいいのか正しく理解している人は少ないです。そこで、どのように建設業界で固定費・変動費削減を考えればいいのか解説していきます。

建築コストを下落させる方法はいくつかある

最適な経営をするためには利益を出さなければいけません。このとき建築に携わる会社の場合、ほとんどのケースで資金繰りに悩むことになります。お金については次々と出ていくものの、お金の入金は後払いになるケースが多いからです。

そのため、できるだけ必要のない経費は減らさなければいけません。そうしたとき、工務店が可能なコストダウンの方法はいくつかありますが、以下の対策は利益を出すために重要です。

  • 損害保険料を削減する
  • メーカーフリーにしてもらう
  • 外注の利用法を工夫する
  • 電気代削減を行う

これらを検討するだけでも、非常に高額なコストダウンになります。工事の質には特に影響しませんが、単純に支払いだけ少なくなります。それぞれ、どのように考えればいいのか確認していきます。

損害保険料の削減は工務店の効果が大きい

すべての建設会社で損害保険に加入していると思います。主に火災保険と賠償責任保険がメインになりますが、特に建築・土木工事では賠償責任保険が高額になりやすいです。

工事現場ではあらゆるトラブルが起こる可能性があります。そうしたとき、建設工事・土木工事中に第三者に対してケガを負わせてしまうことがあります。こうした事故はこれまで何度も発生しており、ニュースにもなっています。

さすがに死亡事故はほぼ起こることがないにしても、「不注意で隣の建物の壁に傷をつけてしまった」などであれば起こる可能性が高いです。そうしたとき、賠償責任保険に加入していれば問題なく補償されます。

ただ、これら損害保険の費用(保険料)は高額になりやすいので削減しましょう。損害保険の保険料については自由に値段設定ができるため、保険会社の切り替えであれば「補償内容は同じだが値段だけ安くなる」ことが可能です。一般的には、以下の保険料金額についてコストダウンできます。

  • 火災保険:10~30%を削減
  • 賠償責任保険:30~60%を削減
  • 火災保険と賠償責任保険の両方:50~60%を削減

例えば以下は、建設業の会社について実際に保険料の見直しをしたときの結果です。

財産に対する補償(火災保険)と賠償責任に対する補償(賠償責任保険)について、損害保険の見直しになります。

この建設業者では、年間の損害保険料が766万3,080円でした。そこで損害保険会社の切り替えを行い、年365万1,480円に値下げできました。削減率は約53%であり、大幅な固定費削減となりました。損害保険の見直しについてはリスクなく行えるため、いますぐ行うようにしましょう。

外注の積極的な活用で節税する

また工務店にとって節税は、無駄な税金を減らすことになるので重要です。このとき節税とはいっても、利益の繰り延べのようなキャッシュフローを悪くする節税対策ではなく、お金として消えていく税金を減らすことで資金繰りを良くする節税も存在します。

代表的な方法が外注の活用です。建設業であれば外注は既にたくさん利用していると思いますが、社員についても外注化しましょう。社員として雇うよりも、外注のほうが税金面では非常に安上がりになります。

このときは「社員のように自社に職人が在籍しているものの、給料のように毎月決まった金額を支給するのではなく、外注と同じような形式でお金を支出する」ようにします。

なぜ、そのような面倒なことをするべきなのかというと、給料として支払う場合だと以下の税金が上乗せされるからです。

  • 社会保険料:約15%(会社負担分)
  • 消費税:10%(支払った金額分の消費税を控除できない)

要は、給料を支払うと「社会保険料+消費税」の税金が増えると考えましょう。非常に高額な税金ですが、社員ではなく外注として仕事を投げる場合、これらの税金がゼロになります。そのためそれまで支払っていた給料よりも高めの外注費を支払ったとしても、節税メリットを考えるとコストダウンできます。

社員のようだったとしても、支払いを外注費にすれば無駄な税金が減ります。なお、この場合は給与課税(実質的に給料を支払っている)と認定されない必要があるため、疑義を抱かれないように支払い形態には注意が必要です。

電気代削減で毎月の資金繰りを良くする

また電気代削減について積極的に行うようにしましょう。建設業では大きな店舗は必要ないかもしれませんが、オフィスがあるのは普通ですし、モデルルームを運営している場合はそれだけ高額な電気代がかかります。

こうした電気代については、電力会社の見直しをすることで簡単にコスト削減できます。「空調を弱める」などの努力をしなくてもコストダウンできるのが電気代です。

日本には中小合わせて何百もの電力会社が存在します。そのため電気の小売価格を大幅に圧縮できます。発電と送電のコストはカットできないものの、小売部分のコストカットは可能です。

例えば以下は、ある法人について電気代削減をしたときの結果です。

この会社については小規模オフィスであり、年間の電気代は78万7,644円でした。そこで電気代の見直しをした結果、年間で13万7,017円の削減に成功しました。削減率は17.4%です。

13万円ほどの削減であったとしても、利益率4%であれば325万円の売上に相当します。このように考えると、それなりにインパクトは大きいといえます。もちろん高額な電気料金を支払っている場合、電気代の削減金額はより大きくなります。

メーカーフリーで原価を下げ、コストダウンを図る

また建築での原価低減を考えることもしましょう。これについて、質を低下させるのではなく、単純にあらゆるメーカーの中から「品質は高いが原価の安い商品・部材」を利用します。

実際に工事をするとき、あらゆる製品・部材を使用します。

  • キッチン
  • フローリング材
  • サッシ
  • エレベーター
  • ユニットバス

もちろん、他にもあります。これらについて設計事務所が品番を書いていたとしても、自由にメーカーを選べないか交渉しましょう。ゼネコンが「このメーカーでなければいけない」と明確な指示を出している場合は無理ですが、そうでない場合は可能です。

メーカーによって製品の原価は大きく異なります。それでいて、「同じ品質だが原価の安い商品」を使ったとしても、あなたの会社に支払われるお金が大きく減るわけではありません。それなら、こちらでメーカーを選べるようにするコストダウンは意義が大きいです。

ゼネコンからの下請け脱却が最も建築コストを下げる

なお実際のところ、一般的な固定費・変動費削減であっても利益を出せるようになりますが、これだと根本的な解決になっていない場合が多いです。

そこで工務店が建築・土木工事を行うに当たり、さらに根本的なコストダウンを考えましょう。これを実現するためには、大手のゼネコンや建設会社からの下請け体質の脱却が必須です。

下請けによって仕事を受けている以上、どれだけ頑張って業務改善したとしても利益率7〜10%ほどではないでしょうか。

参考までに、一般的な工事仲介のポータルサイトは仲介手数料が受注金額の10~15%です(工事金額によって変動する)。大手ゼネコンだと手数料が30%以上になるのも普通なので、これに比べると良心的ですが、重要なのは「自ら集客できれば簡単に利益率を上げられる」という事実です。

工務店で営業利益率15%を超えているケースでは、どれも自社にて集客しています。そのためにはWebサイトやSNSを活用しましょう。また建設会社の場合、お客さんは必ず地名を入れて検索します。

  • 浜松市 解体工事
  • 神戸市北区 一戸建て住宅

例えば、このような感じです。大手のゼネコンや建設メーカーだと特定の地域に特化しての集客は実施しないため、むしろ地域特化している工務店は集客が容易です。そこで地名集客に力を入れてWebサイトやSNSを運営すれば、お客さんから直接問い合わせを受けられるようになります。

これに気づいていないライバル会社がほとんどであり、下請け工事を請けることばかり考えているため、少し工夫すればお客さんからの直接受注を簡単に行えます。

小さい工事を増やし、敢えて売上を下げる戦略

なお中には「ゼネコンから大きな工事を請けるのが基本なので直接集客できない」と考える経営者がいるかもしれません。

ただ、本当にゼネコンからの大きな工事ばかりが必要でしょうか。大きな工事だと、入金が施工を開始して6ヵ月以上も後になることはよくあります。しかし、それでも人件費や材料費はあなたが出さなければいけません。こうして資金繰りが圧倒的に悪くなります。

それなら、いま保有する工事技術を活かして一般人相手の工事を行い、小さい工事をたくさん受注することにも力を入れたほうがいいです。

300万円以下の工事であれば、「最初に全額を入金してください」と要求しても特に嫌がられることはありません。これが直接受注なら、なおさらです。

この場合は後から入金ではなく、最初から入金となります。つまり資金繰りに苦労することがありません。建築工事・土木工事を行う会社では、むしろゼネコンからの大きな工事を断り、敢えて売上を少なくしたほうがキャッシュフローが良くなり、経営が安定することはよくあります。

コスト削減を考えるのであれば、こうした経営面からも業務改善を行い、会社のお金の流れを根本的に変えてみるといいです。

・利益を出し、資金繰りを良くするのがコストダウンの目的

なおこうした経費削減を工事会社が積極的に行うべきなのは、利益を出すと同時に、資金繰りを良くすることがあります。

利益が出れば、その分だけ手元にキャッシュが貯まります。当然、現金があれば会社は潰れないですし、お金の心配をしなくても経営できるようになります。

特に建設会社はキャッシュフローで悩みやすいため、コストダウンと同時に「どのような仕組みであれば資金繰りの悩みから解放されるのか」を考えるといいです。特に下請け体質から脱却すれば、わりと簡単に資金繰りの問題から解放されるようになります。

品質を下げるのは経費削減ではない

なおここまで解説してきたことについて、工事の品質低下に関してはまったく触れていません。コストダウンというと、「手抜き工事によってダメな施工をする」「原価を落とすとき、低品質な材料に変える」などを考える経営者がいます。

ただ、これは本当の意味での経費削減ではありません。確かにコストダウンにはなりますが、お客さんが損をすることになります。工事の質を保つために必要な部分については、経費削減できない項目といえます。

そこで、コストダウンの正しいやり方を理解しましょう。経費削減とはいっても、建築・土木工事の品質にまったく影響を及ぼさない方法はいくつも存在します。

固定費・変動費削減について、間違った認識をしている経営者は多いです。そこで、建築・土木工事の品質とは関係ない部分について、業務改善を含めた対策を行い、キャッシュフローを良くするようにしましょう。

業務改善で建設業の土木工事・その他費用を削減する

大きな金額が動くものの、建設業界では利益率が低くなりがちです。そこで、できるだけコストダウンを図るようにしましょう。

工事の内容そのものを見直すことによって、コスト削減することは可能です。ただ、それよりも簡単で威力の大きい経費削減の方法があります。例えば損害保険料や電気代の削減であり、まずはこれらに着手しましょう。

その後、外注費の利用や下請け体質の脱却を図るといいです。多くの工務店は利益率が4~5%ほどであり、常に資金繰りに困っているものの、これらを行えるようになれば営業利益率が15%以上になるのは簡単です。

建設業が利益を出すには正しい方法があります。そのためにはどのようにすればいいのか理解したうえで、まずは簡単なコスト削減から着手し、同時に業務改善することによってさらに大きなコストダウンを実現させましょう。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【貨物保険】

貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。