歯科医師として活躍する経営者は多く、街中に歯医者があふれかえっています。そのため競争は激しいですが、患者さんに対して適切な医療を提供する必要があり、丁寧な対応をしなければいけません。

ただ医療であるため完ぺきではなく、どうしても誤診をしてしまったり、手術ミスが起きたりします。そうなると歯科医院の経営者は賠償責任を負うことになります。

そこで、すべての歯科医院で加入しなければいけないのが歯科医師賠償責任保険です。何かトラブルによって患者さんに被害を与えてしまった場合であっても、歯科医師賠償責任保険を利用すれば慰謝料・和解金の支払いを損害保険で出してもらえるようになります。

しかし損害保険の内容について熟知している歯科医師は少なく、どのような場面で利用できるのか理解しなければいけません。そこで歯科医師賠償責任保険について、補償内容や保険金請求できる場面を含めて解説していきます。

歯科医師で治療行為でのトラブルリスクがある

当然ながら、歯科医師として医院経営をする場合はすべての経営者について治療上のリスクがあります。このときは医療行為でのミスがあれば、歯科医院としての施設が関わるリスクもあります。

例えば、以下のような事例が該当します。

  • 誤診によって患者さんの症状が悪化した
  • 手術ミスによって後遺症が残った
  • 施設の床が濡れており、患者さんが転んで骨折した

想定される場面はさまざまですが、いずれにしてもこうした事故が起こってしまう可能性があります。そのため、医院経営をする場合は歯科医師賠償責任保険に加入しなければいけないというわけです。

歯医者は誤診や手術ミスで高額賠償を負う

なお実際のところ、医療行為なので過去には歯医者自身が高額賠償を負ってしまったケースがあります。このときは明らかな手術ミスに限らず、誤診によって正しく病気を見極めることができなかったケースであっても賠償命令が出されます。

例えば以下は、過去に起こった誤診に関する賠償命令です。

受診した歯科医院について、歯科医師が舌がんを見逃したことによって治療が遅れ、結果として死亡してしまったという事例です。これにより、京都地裁は300万円の支払いを命じました。

明らかな手術ミスによって後遺症が残ったのであれば、数百万円・数千万円の賠償金となるのは当然です。ただ知識不足によるこうした誤診であったとしても、数百万円の高額賠償になります。当然、こうしたミスはどの歯科医師であっても起こす可能性があります。

また勤務医師や歯科衛生士が起こした事故についても同様であり、この場合はすべての責任を経営者が負うことになります。職員が起こした事故は医療機関側の責任です。これを使用者責任といいますが、監督者である法人が賠償責任を負うと理解しましょう。

歯科医師賠償責任保険の主な内容

こうした状況を理解すれば、すべての歯科医院で歯科医師賠償責任保険への加入が必須になると理解できます。

それでは、歯医者にとって重要な歯科医師賠償責任保険はどのような補償内容になっているのでしょうか。これについては、以下の内容が含まれていると理解しましょう。

  • 医師賠償責任保険:医療上の事故に対する補償
  • 医療施設賠償責任保険:医療施設が関わる事故への補償
  • 勤務医師賠償責任保険:勤務医師に対する補償

損害保険会社によって内容は異なりますが、これらが歯科医師賠償責任保険の保険契約で最も重要な部分になります。これに加えて、個人情報漏洩保険など必要なオプションを加えるようにしましょう。

医師賠償責任保険で医療上のミスを補償する

賠償責任保険の中でも、歯科医師賠償責任保険でメインになるのが歯科医師に対する補償です。歯科医院である以上、当然ながら資格者が勤務することで治療行為に当たります。そうなると手術ミスをしてしまったり、誤診をしたりと医療上のミスをしてしまうことがあります。

治療をしたその場で欠陥が見つかるかもしれませんし、治療後に不具合が発見されるかもしれません。いずれにしても、医療ミスによって生じた賠償責任に対して保険金を利用できるようになります。

このときは慰謝料・和解金の支払いに限らず、弁護士費用についても補償されるのが一般的です。被害金額が大きく訴訟に発展したケースでなかったとしても、調停・示談などのケースについても補償対象になります。

日本の弁護士費用は高額になりやすいものの、損害保険に加入していれば弁護士費用を心配する必要はありません。以下のように、どの歯科医師賠償責任保険であっても争訟費用として弁護士費用の補償が入っているはずです。

また実際に医療ミスが起こったとき、被害が拡大しないようにするために処置をした内容についても補償対象になります。そのため治療中や治療後に起きたトラブルについて、患者さんの後遺症が残らないように処置をした場合の費用も保険金でカバーされるようになります。

美容歯科による治療行為は対象外

ただ注意点として、治療行為でない場合は歯科医師賠償責任保険の対象外です。要は、美容を目的とした治療行為は歯科医師賠償責任保険で補償されないと理解しましょう。

美容歯科に関わる施術項目はそれなりに多いです。例えば、以下のようになります。

  • ホワイトニング
  • セラミック矯正
  • 口元・輪郭矯正
  • 歯肉整形

もちろん他にもありますが、いずれにしても病気とは関係がなく、これらは自費治療になります。自分を美しく見せるための美容歯科治療は歯科医師賠償責任保険を利用できないため注意しましょう。

これについては、以下のようにあらゆる歯科医師賠償責任保険のパンフレットに記されているはずです。

保険医療と自費治療を組み合わせている歯科医院はたくさんあります。このとき、自費治療であっても病気の治療に関わる場合であれば歯科医師賠償責任保険を利用できます。ただ美容目的では保険金を下ろせないというわけです。

例えば歯列矯正であったとしても、虫歯など治療上の理由であれば補償対象になります。ただ単なる歯列矯正の場合、美容目的なので補償対象外というわけです。

医療施設賠償責任保険で歯科医院施設の事故を補償

なお、歯科医師賠償責任保険に含まれる他に重要な内容が医療施設賠償責任保険です。歯科医院では、施設が関わる事故も存在するのです。

  • 床が濡れており、患者さんが転倒した
  • ドアの不具合によって子供が挟まれた
  • 販売した製品に欠陥があって患者さんがケガをした

いずれにしても、これら病院・医院施設が関与する事故が発生することはよくあります。治療上のミスでなかったとしても、医療施設を構えてビジネスをする以上、施設リスクがあるというわけです。

もちろん対人だけでなく、対物による被害についても対象になります。歯科医院の中で起こった事故については、広く補償してもらえると考えましょう。

勤務医師賠償責任保険で従業員の医師もカバー

なお注意点として、医師賠償責任保険でカバーされるのは開設者(院長)となります。つまり、歯医者として複数の人が勤務している場合、勤務医師は補償されません。

歯科医師として在籍するのが開設者一人の場合、医師賠償責任保険の内容だけで問題ありません。

ただ歯科医院としての規模が大きかったり、チェーン展開していたりする場合、必ず歯科医師免許をもつ従業員(またはアルバイト)に対する賠償責任保険を加えるようにしましょう。前述の通り、使用者責任によって従業員やアルバイトが起こした事故は法人の責任になるからです。

そこで、歯科医師賠償責任保険ではオプションで勤務医師賠償責任保険を追加できるようになっています。損害保険に加入している医療施設について、開設者に限らず勤務医師が実施した医療行為についても包括的に補償されるというわけです。

法人として従業員やアルバイトの歯科医師を雇っている場合、勤務医師賠償責任保険の特約は必須です。歯科医師として働く人が開設者だけでないのであれば、こうしたオプションに加入しましょう。

個人情報漏洩保険はオプションになる

これに加えて、必要であれば個人情報漏洩保険を加えるようにしましょう。歯科医師賠償責任保険では、個人情報漏洩保険を追加できるからです。

歯科医院にはさまざまな患者さんが来院します。当然ながら個人情報を広く取り扱うようになり、そうなると個人情報流出のリスクを生じます。もし個人情報が流出してしまうと、賠償責任を負うことになります。

例えば、以下は過去に起こった顧客情報流出による賠償命令です。

歯科医院の事例ではないですが、1人当たり3,300円の支払いを命じられました。このときは622人が対象でしたが、総額は約200万円です。

歯科医院の場合、平均患者数は一店舗で1日25人です。月に20日稼働するとなると、月に500人が来院します。もちろん、忙しい歯科医院だとより患者数は多いです。月にこれだけの人が来院することを考えると、年間では非常に数が多くなります。

医療事故のように何千万円もの被害額になるケースは少ないものの、それでも数百万円ほどであれば賠償責任を負うリスクがあります。そうしたとき、歯科医師賠償責任保険に個人情報流出への補償を加えておくのです。

保険料の金額は高くなくお手頃

それでは、実際に歯医者として歯科医師賠償責任保険を利用する場合、保険料の金額はどれくらいになるのでしょうか。

一般的に賠償責任保険は金額が安いです。実際に事故が起こったときに利用されるのが賠償責任保険であり、自動車事故のように頻繁にトラブルが発生するわけではないからです。また歯科医師の場合、医者に比べると訴訟リスクは少なく、賠償責任を負ったとしても被害額は少なくなりがちです。

これらの理由から、歯科医師賠償責任保険については保険料の値段がそこまで高くないというわけです。

なお具体的な費用はオプションの内容によって異なりますし、施設の規模によっても変わってきます。そのため一概にはいえません。ただ損害保険会社が出している保険料の事例を見れば、いくらくらいの保険料になるのかザックリと推測できます。

例えば、以下は東京海上日動が出している歯科医師賠償責任保険の保険料目安です。

保険契約の期間は1年間です。このときの料金は1施設につき5,000~6,000円ほどになっています。また、これに勤務医師を1名追加すると5,000円ほどアップします。

値段は高くないものの、実際に医療事故が起こったときは高額な補償をしてくれます。そのため、歯科医院の経営者は必ず歯科医師賠償責任保険に加入したほうがいいです。低料金にも関わらず、ビジネスでのリスクを避けられるようになっているのが歯科医師賠償責任保険です。

歯科医院向けの損害保険でリスクを避ける

いかにしてビジネスでのリスクを避け、利益を作り続けるのかを経営者は考えなければいけません。そこでリスクを避けるため、歯科医師賠償責任保険を利用しましょう。

歯科医院は患者さんの治療をするため、思いがけないトラブルが発生することはよくあります。ただ、単に歯科医師賠償責任保険に加入すればいいわけではありません。開設者や施設の事故は防げるものの、他に勤務する歯科医師がいる場合は勤務医賠償責任保険についても追加加入することで、ようやくすべての事故を補償できるようになります。

さらには、必要と判断する場合は個人情報漏洩保険を加えましょう。個人情報流出による賠償額が何百万円にもなるのは普通です。

ただ歯科医師賠償責任保険の保険料は安いです。金額は良心的であり、低い料金で高額な補償を加えることができるため、歯科医院の経営者は全員が利用するようにしましょう。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。