会社経営をするとき、非常に高いコストになりがちなのが自動車保険(車両保険)です。法人では個人よりも保険料が高いのは基本であり、さらには何台もの社用車を保有するのが一般的です。
そうしたとき、安い自動車保険に加入する方法はあるのでしょうか。また、自動車保険の金額相場は存在するのでしょうか。
損害保険では、それぞれの損害保険会社で同じスペックの補償内容を作ることができます。その場合、値段が安いほどコスト削減になるため、無駄な経費が減って経営状態が改善されるようになります。これには特約を見直したり、見積もり比較したりいくつか方法があります。
そこで法人にて自動車保険・車両保険の保険料を安くする方法について、どのようにすればいいのか解説していきます。
もくじ
自動車保険・車両保険の相場・目安は存在しない
まず、いま加入している法人での自動車保険・車両保険が適正価格なのかどうか知りたいと考える人は多いです。自動車保険について、相場・目安はどのようになっているのでしょうか。
ただこれについて、特に相場は存在しません。もし、明確に「法人の自動車保険の相場は〇万円」という情報を見つけた場合、すべてウソと理解しましょう。理由は単純であり、以下のように自動車を保有する会社の状況・条件によって保険料が大きく変わるからです。
- 等級の内容
- 車の保有台数
- 社用車の種類
- 特約の内容
もちろん、他にも保険料が決まる要素や基準はたくさんあります。
相場・目安が存在しない事実について分かりやすい例でいうと、上記で示した等級があります。まったく同じ車であり、運転者が同一人物だったとしても、等級が違うことで金額が2倍以上も違うのは普通です。これは、等級が良いと割引が適用されるからです。以下のようになります。
この会社の場合、優良割引として70%の減額があります。等級が悪いとこうした減額はなく、等級が優れるほど減額度合いが大きくなります。個人でも法人でもこうした割引があり、一概に保険料金の相場を出すことはできません。
また他にも値段を決定する要素が無数に存在する以上、大まかな値段であっても相場・目安を算出するのは不可能と理解しましょう。
最安は可能?格安の自動車保険に加入するには
実際のところ、法人の自動車保険・車両保険について金額を出すためには、損害保険の代理店に相談して見積もりを出してもらうしか方法はありません。
そうしたとき、どのようにして最安での自動車保険に加入することができるのでしょうか。自動車保険・車両保険の金額を安くする方法は少ないですが、少しでも格安にするには以下のポイントに着目しましょう。
- 保険内容を見直し、無駄な特約を省く
- 10台以上の社用車保有はフリート契約にする
個人向けに比べて必ず高額になる法人の自動車保険ですが、これらのポイントに着目すると内容を安くできます。それぞれについて確認していきます。
保険内容を見直し、無駄な特約を省く
損害保険では基本となる契約に対して、さまざまな特約を付けることができます。ただ無駄な特約を付けていたり、内容が重複していたりすることはよくあります。
例えば、法人の自動車保険では受託貨物責任賠償特約という特約があります。運送業であれば他人の商品をトラックなどに載せて輸送しますが、事故を起こすと積んでいた荷物が破損します。そうしたとき、荷主に対する補償を加えられるのが受託貨物責任賠償特約です。
ただ特別な理由がない限り、荷物の運送に関わる法人では賠償責任保険に加入しているのが当然です。そうなると賠償責任保険と補償内容が重なるため、特約を付ける意味がありません。そのため、内容が重複している特約は外すべきです。
他には、法人の特約で法人他車運転特約があります。例えば業務のために取引先の車を運転したとき、このときの事故について補償してくれます。
ただ、実際のところレンタカーを除いて、業務中に他人の車を運転することはよほどのことがない限りありません。つまり、不要な特約といえます。
このように、無駄であったり重複していたりする特約はわりと見受けられます。そこで無駄な特約を排除することによって値段を安くすれば、経費削減できるようになります。
10台以上の社用車保有はフリート契約にする
また法人で多くの車を保有している場合、通常の契約よりも割引することができます。これをフリート契約といいます。
一般的な法人契約はノンフリート契約です。1~9台の社用車をもつ会社の場合、ノンフリート契約しかできません。また法人は個人のようなセカンドカー割引などはなく、ノンフリート契約では、特に保有台数が増えたといっても割引はありません。
一方で10台以上の営業車をもつ会社の場合、フリート契約が可能になります。フリート契約では、それぞれの車ごとではなく、事業者で一つの契約をします。
フリート契約 | ノンフリート契約 | |
車の台数 | 10台以上 | 1~9台 |
契約方法 | 事業者で一つ | それぞれの車ごと |
フリート契約にすれば、一般的に5%ほどの値引きが可能です。参考までに、以下はフリート契約によって5%引きが適用されたときの実際の見積書です。
17台の営業車を保有する会社がフリート契約を行い、多数割引を適用させることで5%引きを可能にしました。法人の自動車保険は複数台保有での割引が難しいものの、フリート契約であれば可能です。
代理店を利用した価格の見積もり比較は効果的
なお前述の通りノンフリート契約では、特約を見直す以外に値引きは難しいです。ただフリート契約であれば、損害保険の代理店を利用することでさらなる安い自動車保険・車両保険に加入できます。
方法としては、「損害保険会社と強いコネクションをもち、コスト削減に強みをもつ代理店を通して交渉する」ことがあげられます。
損害保険については、特に明確な値段や相場が決まっているわけではなく、すべては損害保険会社の言い値です。つまり、交渉次第で値段を下げることができるのです。これが車ごとの契約(ノンフリート契約)では難しいものの、事業者ごとの契約(フリート契約)であればさらなる値引き交渉が可能というわけです。
参考までに、以下は実際に自動車保険の会社を見直したときの最終見積書です。
この会社では優良割引が43%適用されおり、フリート多数割引も5%が適用されています。それに加えて、さらに5%の上乗せ割引に成功しました。
31台の社用車を有する会社なので、自動車保険の金額は高額です。そのため5%の値引きであったとしても、大きな固定費削減が可能になりました。
口コミ・評判のおすすめ人気ランキングは存在しない
このように強いコネクションをもつ代理店を利用すれば、最安値にて自動車保険を契約できます。
そうしたとき、格安保険について「口コミ・評判に優れるおすすめの人気ランキングはあるのか?」と考える経営者がいます。ただこれについても、特におすすめの人気ランキングは存在しません。
すべての損害保険に共通しますが、それぞれの損害保険会社について「まったく保険内容が同じ」ように設計することが可能です。もちろん損害保険会社によっては「フリート契約の自動車保険に対応していない」などのケースはあるものの、多くで同じ保険設計が可能です。
そうしたとき、違いとしては保険料だけとなります。つまり、まったく同じ内容の損害保険を比較したとき、単純に値段が安い自動車保険・車両保険であるほど優れるといえます。
そこで損害保険会社に影響力のある代理店を利用し、まったく同じ保険設計にていくつもの保険会社に金額を出させ、最も格安料金を提示した保険会社と契約するようにしましょう。
そうしたとき、どの損害保険会社が最安値になるのかは、そのときの会社の状況によって異なります。これが、損害保険会社について口コミ・評判のおすすめ人気ランキングが存在しない理由です。
自動車保険の保険料金額が安くなりにくい理由
なお、自動車保険で特に相場・目安が存在せず値引き交渉が可能なのは本当ですが、火災保険や賠償責任保険など他の損害保険商品に比べて、自動車保険・車両保険の値引き率はどうしても低くなりがちです。
事実、これまで説明した通り1~9台を保有するノンフリート契約では値引きが特にありません。またフリート契約では、交渉によって追加で割引されるにしても、5~6%ほど安くなるのが一般的です。
このとき火災保険や賠償責任保険では、30~60%ほど安くなるのは普通です。こうした他の損害保険商品に比べると、自動車保険では保険会社の乗り換え・切り替えによるインパクトが弱いです。
この理由としては、自動車保険には等級が存在し、優良割引として既に値段が割引されているからです。ここまで記した自動車保険の見積もりについても、優良割引として既に43%や70%などが割引されていたと思います。既に割引があるため、さらなる割引では数字が低めになります。
一方で何度も事故を起こしている場合、リスクの高い法人といえます。そうした会社について、むしろ損害保険会社は損をする可能性が高いため、割引したいとは思いません。このように自動車保険では、他の損害保険商品に比べて割引が難しいさまざまな理由が存在するのです。
料金の安い自動車保険・車両保険に加入する
すべての損害保険に共通しますが、保険料について特に価格の相場・目安は存在しません。すべては損害保険会社の言い値です。格安の自動車保険に加入しようと思っても、等級や保有する社用車の種類・状況によって値段はまったく違ったものになります。
ただ、最安値にて自動車保険・車両保険に加入する方法は存在します。そのためには特約を見直し、10台以上の営業車をもつ場合はフリート契約に変えましょう。
またフリート契約なのであれば、損害保険会社の乗り換え・見直しは効果的です。自動車保険について、人気となるおすすめランキングを作るのは不可能ですが、強いコネクションをもつ代理店を通すことで「補償内容はまったく同じだが、値段だけ下げる」ことが可能になります。
こうして損害保険会社から見積もりを出させ、納得した後に金額の安い保険料にて契約すれば、大幅なコスト削減になります。法人が自動車保険の経費削減をする方法は少し特殊ですが、こうした手順によって固定費削減(保険料の削減)が可能になります。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。