複数の店舗をもつことで、どうしても経費額が高額になりやすいのがアパレル業界です。アパレルショップを経営している個人事業主や法人経営者であれば、全員がコスト削減を考えなければいけません。
一般的にアパレル業界の利益率は5%ほどといわれています。また赤字に陥っている店舗は珍しくありません。それでいて毎月の経費額は高いため、アパレル店舗については少しの経営努力によってコスト削減することができます。
ただアパレル店でコスト削減するとはいっても、具体的にどのように考えて経費削減すればいいのでしょうか。
いますぐ簡単に大きなコスト削減が可能な方法があれば、多少の経営努力を必要とするやり方もあります。そこで、アパレルで可能な固定費・変動費の削減方法を解説していきます。
もくじ
最も大きなコストは家賃と人件費
アパレルであれば商品の仕入れや物流コストなど、多くの経費支払いがあります。その中でも、最も大きなコストは家賃と人件費といえます。
1坪あたり5万円の家賃であれば、20坪の店舗であっても月100万円の賃料です。アパレル店舗は立地が非常に重要であり、都市部の駅の周辺に出店するケースがよくあり、どうしても家賃は高くなってしまいます。
またお客さんの数はまばらであったとしても、スタッフがいなければ商品が売れていくことはありません。また土日を含めて休みなく営業するため、社員2人(月25万円)とアルバイト1人(日給1万円)で運営すると、給料だけでも月80万円です。
これに福利厚生や交通費を含めると簡単に月100万円以上の固定費になります。このように考えると、どうしても主な経費がこれら家賃と人件費になります。
家賃は交渉によって簡単に削減できる
そうしたとき、毎月の賃料削減は可能なのでしょうか。多くの経営者は家賃の下落が無理だと考えています。ただ、実際には可能です。方法は単純あり、大家または管理会社と交渉するだけです。
もちろん交渉するとはいっても、あなたが自ら値下げをお願いしても断られます。そうではなく、家賃最適化サービスを広く実施している専門会社に依頼しましょう。こうした会社に対して、賃貸契約したときの契約書を提示し、後は丸投げするだけで賃料交渉が進んでいきます。
一般的には、家賃交渉によって平均11%の削減が可能です。このように家賃が減るのは、日本だと建物価値が毎年下落するからです。
例えば以下は、30店舗を運営する法人について賃料削減の交渉をしたときの最終結果です。
この場合については削減率8.8%であり、相場よりも賃料下落の割合は少なかったです。ただそれでも、年間では賃料だけで約6,537万円の経費削減となりました。
家賃を月30万円以上、支払っている個人事業主や法人であれば、全員が家賃最適化サービスを利用できます。アパレル店の経営者であればほぼ全員が利用条件に当てはまっているはずなので、こうした賃料削減によってコストを減らしましょう。
仕組みを変えることで人員削減するのは可能
またコストが大きい人件費に関して、人員削減についても考えましょう。理解しなければいけないのは、「本当に店内に何人ものスタッフが必要なのか?」についてです。
レジ打ちは確かに必要かもしれません。ただ、それ以外は不要です。アパレル店では、なぜかお客さんが店内に入ってくるまでマネキンのようにスタッフが立っており、お客さんが店内に入ってきたと同時に頑張って話しかけて営業しようとするケースが大半です。
しかしお客さんからすると、積極的な声掛けは迷惑な行為でしかありません。
そもそもアパレル業界で利益率の高い大企業はどのような接客スタイルでしょうか。基本的には、店員からお客さんに声掛けすることはありません。「お客さんが勝手に選ぶ」「お客さんから聞かれたときに答える」という方式を採用しています。
まずはこの事実に気づかなければいけません。つまりスタッフが頑張って接客するスタイルではなく、お客さんが勝手に商品を選び、レジに持ってきてくれる(または困ったときにお客さんからスタッフに声をかける)というスタイルにできないでしょうか。
もちろん、何の経営努力もせずにこうした仕組みを作り上げることはできません。
- 特定の地域に特化したWebサイトを作り、見込み客にアピールする
- 経営者がSNSで情報提供し、商品のアピールをする
これらを簡単な仕組みから構築していきましょう。例えば私の知り合いのアパレル社長はメンズ特化のオーダーメイドアパレル店を経営しています。以下のように、生地を見ながら服を作っていくという特殊なスタイルです。
彼はアパレル店の経営者にしては戦略が上手であり、男性経営者を狙ったWebサイトやSNSで情報発信することで効率的に集客しています。
この方法であれば、常時何人ものスタッフを店内に配置する意味はありません。一人のスタッフで問題ないですし、客数が多いのであればそれに応じて店員を増やせばいいです。
スタッフが常に接客しており、多くの売上を作っているのであれば必要な人件費だといえます。ただ実際のところ、多くのアパレルショップでは客がまばらであり、店員が暇そうに立っているケースが多いです。また客が入ったら、ここぞとばかりに話しかけようとします。この営業方法を見直せば人件費は大幅に少なくなります。
季節性の在庫削減など、一般的な対策はもちろん重要
なお、当然ながら一般的なコスト削減も重要です。例えば季節性の商品について在庫削減することについては、多くのアパレル店が頭を悩まし、何とかして処分しようとしているはずです。以下のようにバーゲンセールによって在庫処分するアパレルショップは多いです。
売れ残りの製品については、積極的に見切り処分をしなければいけません。これは在庫が少ないほど、無駄な税金が減るからです。
在庫を売ればお金になります。つまり、いくら仕入れたとしても金券と同じなので経費になりません。売れた瞬間にようやく経費になるのです。詳しい説明は省きますが、こうした仕組みでは、在庫が多いほど会計上の利益額が無駄に多くなってしまい、法人税や消費税をたくさん支払わなければいけなくなります。
そこで節税のため、在庫を少なくしなければいけません。無駄な税金を抑えることもコスト削減の一つなので、こうした節税対策については積極的に行う必要があります。
販路を世界中に拡大させる戦略が優れる
また在庫を何とか削減することを考えるとき、なぜか多くのアパレル経営者は店舗の商圏内だけで頑張って商品を売ろうとします。
ただ、「半径数km圏内だけでビジネスをしなければいけない」というルールは存在しません。インターネットを活用して、ECサイトにて商品販売してもいいはずです。このとき自社のECサイトを立ち上げても基本的に売れないので、Amazonなど大手のプラットフォームを利用して日本全国で売りましょう。
またECにて販売しているアパレル経営者であっても、なぜか日本だけの販売に留まっている人が多いです。ただ、本来は全世界に売ることを考えなければいけません。
日本人の人口はたかだか1億人くらいです。これがアメリカでは人口が3億人以上であり、さらにはずっと人口増です。また米国Amazonは誰でもアカウント開設して輸出できます。それなら、こうした市場に拡大させていけばいいです。
店舗運営者は「自分の商圏で頑張って売る」「日本人顧客だけをターゲットにする」ことを考える人は多いものの、より視野を拡大させればターゲット顧客は多くなります。
こうして国外の人向けに販売すれば、値下げしなくても季節外れの商品が売れていきます。また、海外への発送なので常に手元に在庫がなければいけないわけではありません。在庫が切れそうなときに卸へ連絡すればいいです。つまり、過剰在庫を減らせる可能性が高いです。
ネットを利用して販路拡大させるというのは、不良在庫を減らすなどコスト削減の側面もあります。高額な家賃や水道光熱費、人件費の支払いなしに販路拡大できるため、こうした対策はアパレル経営者にとって重要です。
電気代削減で店舗の固定費を下げられる
また、同時にその他の固定費を減らすことも考えましょう。アパレル経営者であれば、店舗運営をするときに必ず高額な電気代が発生します。こうした電気代を削減すれば、店舗の利益が大幅に改善されるようになります。
中小を合わせると何百もの電力会社が存在するため、そうした会社に対して競争入札させましょう。その中で最安値の電力会社と契約するだけで電気代を削減できます。またやり方は簡単であり、専門のコスト削減会社に依頼するだけです。
電気について発電所や電線は同じであり、品質に違いはありません。異なるのは電気料金だけなので、デメリットのない手法となります。
特に複数店舗をもつ経営者だと、店舗ごとに見積もりを取るのが面倒で電気代削減をしていないケースが多く、そうした場合は特に有効です。一気に競争入札をかけるため、店舗ごとの最安値の電力会社が自動的に分かります。あとはそれぞれ電力会社と契約するだけです。
参考までに、以下は実際の電気代削減に関する最終見積もりです。
この会社では年間459万3,812円の支払いでした。そこで電気代の削減をしたところ、395万406円まで下げることに成功しました。差額は年間で約64万円です。
利益率5%のアパレル会社なら1,280万円の売上に相当します。専門会社に依頼するだけですが、これだけでも大幅なコスト削減となります。
損害保険料のコスト削減はいますぐ可能
また損害保険料の削減についてもいますぐ行いましょう。損害保険はすべての経営者が利用しており、簡単に保険料の下落が可能です。
店舗運営者の場合、損害保険としては火災保険と賠償責任保険がメインになります。火災保険に加入しなければ、テナントに入れないことはよくあります。また賠償責任保険をかけていれば、店内でお客さんがケガをしたとしても補償してくれます。
こうした損害保険は各社が自由に保険料の値段を設定できます。そのため保険会社の切り替えであれば、まったく補償内容は同じであるものの、値段だけ下落させることができます。
例えば以下は、店舗運営者について賠償責任保険の切り替えをしたときの結果です。
この賠償責任保険では、当初は年31万7,260円の年間保険料でした。それが年26万2,550円となり、5万4,710円のコスト削減です。
今回は元々支払っている損害保険料が少なかったため、削減金額は少ないです。ただそれでも削減率は17%以上です。また前述の通りアパレルショップの利益率は低く、利益率5%なら売上109万円以上に相当するのでかなり効果は大きいといえます。
また支払っている保険料が多ければ、その分だけ削減金額も大きくなります。コスト削減の専門会社に依頼すれば、こうした固定費削減が可能になります。
アパレル店の経営者でコスト削減は重要
優れた資金繰りの状態をできるだけ維持しながら、利益を作らなければいけません。ただアパレルのように在庫をもつ業態だと、売上を大きくしようとするほどキャッシュがなくなっていき、経営状態が悪くなりがちになります。
そうした状況を改善するため、可能な限りコスト削減をしましょう。もちろん無理のあるコスト削減ではなく、将来に渡って会社に対してプラスとなる経費削減でなければいけません。
そこで家賃を下落させ、人がいなくても売上を作れる仕組みを構築しましょう。また販路は多いほど良く、売り先を日本に限定する意味はありません。これに加えて、電気代や損害保険料などその他の固定費まで経費削減していくといいです。
ここまで解説した手法について、どれもお客さんの満足度低下には影響しません。これらの方法によって、顧客サービスの質を低下させずに無駄を排除していけば、アパレル店の利益率が大きく改善するようになります。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。