非常に多くのコストがかかるのが介護施設です。また病院やクリニックに比べると利益率が低いため、積極的に固定費削減を行わなければ適切な利益を出すことができません。

ただ実際のところ、多くの介護施設で間違った経費削減を実施しています。例えば人件費を減らしたり、消耗品の利用を抑えたりします。こうしたダメなコスト削減をしているため、介護職員と経営陣の仲が悪くなります。また、利用者にとっても介護の質を落とすことにつながります。

そうではなく、質を落とさずに大幅な固定費削減を行うのが正しいやり方だといえます。

職員の士気や利用者に対しての質を落とすことなく、どのようにして介護施設は大幅なコストカットを実現すればいいのでしょうか。ここでは、介護施設が行うべき正しい経費削減の方法を解説していきます。

特養からグループホーム、デイサービスと経費削減可能

介護施設とはいっても種類があり、それぞれ利用者の状況は異なります。例えば以下のような介護施設が知られており、それぞれビジネスをしています。

  • 特養(特別養護老人ホーム)
  • 有料老人ホーム
  • 老健(介護老人保健施設)
  • グループホーム
  • デイサービス

これらの施設では利用者が住んでいるため(デイサービス以外)、専門職によるサービスを提供することで、高度な専門性が施設には求められます。例えば特養などであれば、看護師が常に利用者を管理することになります。

一般的に医療が関わる分野だと、やり方を間違えると大幅にサービスの質を落としてしまいます。これら介護施設も同様です。

介護職員の人件費削減はサービスの質を落とす

実際のところ多くの介護施設では、経費削減というと「従業員の人件費削減を行う」とほとんどの経営者が考えます。その結果、施設の質が大幅に落ちます。

看護師や介護職員など、利用者に対して必要な人員が配置されていなければ適切なサービスを提供することはできません。職員の配置基準はありますが、これらを満たしていればいいわけではないのです。

介護施設では看護師や介護職員、事務員など多くの人が働くことになります。ただ、これらの人の給与カットを試みると士気低下につながります。

賞与(ボーナス)をカットするために人事評価基準を見直してもいいですが、従業員にとってみれば実質的な給与カットと同じなので、職員はやる気をなくしてしまいます。これは、正しい固定費削減の方法とはいえません。

パート職員の活用なら有効

もちろん、無駄を省くためにパート職員を有効活用するのであれば問題ありません。

  • テーブルやイスの消毒
  • 食事の配膳
  • ベッドメイキング
  • 清掃・洗濯
  • 送迎

これらの作業は誰でも行うことができ、もちろん無資格者であっても問題ありません。介護施設は常に忙しいわけではなく、むしろほとんどの時間は暇です。そこで、忙しい時間だけ2~4時間ほど介護助手としてパート職員に手伝ってもらえば、正社員の人数を減らしても影響は出ません。

食事や入浴、排せつの介助、ベッドや車いすなどへの移乗についても無資格者で可能ですが、これについてはさすがにすべてパートに丸投げはできません。ただ正職員と介護助手との仕事の範囲を区別することで、問題なく正職員に適した仕事を行うことができます。

1日のうちで大変な作業が発生する時間を集中させ、その間にパートの介護助手に手伝ってもらうようにしましょう。実際のところ入浴時間を朝や昼にしても問題ないはずなので、あなたの介護施設の現状に合わせて仕事内容を調節しましょう。

介護用材・医療用品の削減も不可能

また人件費以外だと、消耗品の削減を考える介護施設が多いです。特養や有料老人ホーム、老健、グループホーム、デイサービスなどと、すべての介護施設で介護用材・医療用品を含めた消耗品を利用します。

ただ実際のところ、意味のない経費削減をしている介護施設は多いです。例えば、コピー用紙の裏面活用などです。紙の値段は安いため、裏面を活用したとしてもコスト削減効果は非常に薄いです。

また介護用品や医療用品の使用量を少なくするのは不可能です。本当に必要な介護用材について使用量を削減すると、適切なサービスを施設利用者に対して提供することができません。

もちろん介護用品の価格比較については、卸会社に依頼することであらゆる施設が既に実施していると思います。

経費削減というのは、「効果があり、サービスの低下を招かない方法」でなければ意味がありません。実際のところ、多くの介護施設で実施しているコスト削減方法は、パートの活用を除き意味がありません。

介護施設で可能なコスト削減の種類

それでは、どのような方法であれば介護施設でのコスト削減に対して有効なのでしょうか。パート職員の活用については既に述べましたし、実際に多くの介護施設が実施済の固定費削減方法だといえます。そうしたとき、ほかの経費削減方法はないのでしょうか。

多くの介護施設は着目していないものの、非常に高額な固定費削減が可能な方法は他にもあります。もちろん特養や有料老人ホーム、老健、グループホーム、デイサービスとほぼすべての介護施設で利用できます。

具体的には、介護施設の経営者は必ず以下のコスト削減をいますぐ実施するようにしましょう。

  • 電気代の削減
  • 損害保険料の見直し
  • 固定資産税の削減&還付

これらを行うことで、1~2ヵ月以内に年間で数百万円レベルの経費削減になるのは普通です。そこで、内容を詳しく理解しなければいけません。

電気代削減で労力なしに固定費削減を行う

特養や有料老人ホーム、老健、グループホーム、デイサービスなどの介護施設で電気代削減を行うとなると、多くの経営者は空調や照明の管理を考えます。

ただ空調(クーラーや暖房)については、利用者の満足度に直結します。また高齢者は体温調節機能が低下しているため、その人に合わせた温度管理をしなければいけません。例えば夏は熱中症が多く発生します。ただ空調管理が十分でないと、熱中症で利用者が倒れたとき、空調の管理不十分を理由に訴えられたら反論できません。

つまり介護施設で空調管理による電気代削減は最悪だといえます。

またLED照明に切り替えることで電気代を削減することは可能です。そのため効果的ですが、初期費用が必要になります。

ただ電気代削減については、初期費用なしに電気代だけ大幅に削減できる方法があります。また電気利用に応じた費用だけでなく、基本料金(電気を利用しなくても発生する費用)についても減額できます。それが電気会社の見直しです。

電気を送る送電線や発電所は同じです。そのため品質の低下がなく、電気代の費用をカットできる手法になります。例えば、以下は小規模施設に関する「電気代削減の提案に関する最終見積書」の一部です。

この施設では月45,992円の電気代でしたが、月5,845円の削減によって月40,147円の削減ができました。削減率は12%ほどです。電気代削減では10~30%(平均は15%)の削減が簡単に可能になります。

もちろん、介護施設ではより規模が大きくなるケースが多いです。あなたの施設でいくらの電気代になっているのか分かりませんが、専門のコスト削減会社に依頼することで、1~2ヶ月後にはいまの電気代がすぐに10~30%下落します。

火災保険、賠償責任保険などの損害保険を見直す

同時に必ず見直さなければいけないのが損害保険です。医療事故を含めたインシデントと隣り合わせの介護施設では、高額な損害保険に加入しているのが一般的だからです。

特養や有料老人ホーム、老健、グループホーム、デイサービスでは、すべての施設で火災保険に加入しているのが当然です。火災保険によって、火事や台風などの自然災害が起こったときに補償が下りるようになります。

利益を確保するため、介護施設は地価の高い都市中心部ではなく、郊外に建てるのが普通です。その結果、山沿いや川沿いにほとんどの介護施設が集中します。その結果、自然災害のリスクが高まるのです。

事実、毎年の豪雨災害では常に介護施設が特集されます。自然災害を受けやすい立地に建てられているにも関わらず、体の不自由な高齢者が暮らしているため、結果として逃げ遅れが起こりやすいのです。ただ火災保険に加入していれば、火災や台風を含めた自然災害による補償を受けられます。

また介護施設で賠償責任保険に加入しているのは当たり前です。

  • 施設で提供された食事で食中毒が発生した
  • 施設内の備品に利用者が転んでケガした
  • 食事介助中にミスがあり、誤嚥性肺炎が発生した

介護施設である以上、こうしたあらゆるインシデントのリスクがあります。そうしたときの補償が賠償責任保険であり、これに加入していないと万が一のときにお金を支払えず、簡単に破産するのが介護施設です。

ただ介護施設だと一つの建物であっても規模が大きくなりやすく、損害保険の掛金額も高額になるのが一般的です。そうしたとき、損害保険の補償内容はほとんど同じだが、見直しによって掛金額だけ大幅にカットすることができます。通常だと、保険料として以下の固定費削減が可能です。

  • 火災保険:10~30%を削減
  • 賠償責任保険:30~60%を削減
  • 火災保険と賠償責任保険の両方:50~60%を削減

例えば、以下は大型施設で支払っている賠償責任保険の契約内容です。

一年間の契約で109万5840円ですが、賠償責任保険であれば30~60%の下落が可能です。また火災保険とセットでの見直しであれば、両方合計で50~60%を削減できます。

特に労力なく、専門会社に見直しを依頼するだけで高額な経費削減を実現できるのが損害保険です。施設では火災保険も施設賠償責任保険も高額になりやすいため、利用する介護用品の見直しよりも圧倒的に効果が高いコスト削減法です。

固定資産税の見直しで節税と還付を行う

さらなる高額な固定費削減が介護施設で可能です。それが固定資産税です。人が住んでいないデイサービスでは関係ないですが、それ以外の特養や有料老人ホーム、老健、グループホームでは人が住んでいます。

こうした施設だと、高確率で固定資産税の計算ミスが起こっています。介護施設は固定資産税のミスが起こりやすい代表例であり、役所の人が無知なために高額な固定資産税を払い続けていることがよくあるのです。

具体的には、小規模住宅用地の特例を利用します。住宅やマンションなど、人が住む土地については「固定資産税を6分の1にしてもいい」というルールがあります。

そうしたとき、多くの老人施設で人が住んでいます。これらはビジネス目的なので事業用と判断しがちですが、人が住んでいるので小規模住宅用地の特例を利用できます。役所の担当者はこの事実を知らないため、多くのケースで固定資産税の過払いが発生しているのです。

また、介護施設の敷地内に駐車場は存在しないでしょうか。入居者のための駐車場が必要な場合、同様に固定資産税の計算ミスが頻発します。

介護施設は固定資産税の計算ミスが起こりやすい不動産の典型です。これらの間違いを指摘すれば、毎年の固定資産税が安くなるだけでなく、過去20年にさかのぼって固定資産税の還付が可能です。払いすぎていた税金を取り戻せるため、固定費削減だけでなくお金まで戻ってくるようになります。

老人施設で質を下げない経費削減を行うべき

医療に関わる側面があるものの、どうしても病院やクリニックに比べると利益率が低くなるのが介護施設です。そのため特養や有料老人ホーム、老健、グループホーム、デイサービスでは経費削減が必須です。

しかし間違ったコスト削減であったり、ほぼ効果のない固定費削減を試していたりする施設が多いです。そこでサービスの低下や社員の不満増加につながるコスト削減ではなく、その他の方法によって固定費削減するのが正しい経営法だといえます。

そうしたとき介護施設だと適切な方法によるコスト削減を実施しているケースは少ないですが、電気代や損害保険、固定資産税を含めて見直しをしましょう。もちろん他にもコスト削減可能な方法はありますが、この3つが質を落とさない経費削減法として重要であり、いますぐ行える効果の高い手法になります。

1~2ヶ月後に毎年100~200万円以上のコスト削減をするのは介護施設だと簡単です。この状態で5~10年が経過すると1,000万円以上の違いになるため、できるだけ早くコスト削減に着手する必要があります。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【貨物保険】

貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。