会社経費の中でも、非常に高額な費用の一つが残業代です。残業代の見直しをすることで、高額なコスト削減が可能になります。
実際のところ、やり方によっては残業代をほとんどゼロにすることができます。完全ゼロは無理でも、無駄な残業代の支払いは働き方を大幅に見直すことによって実現可能です。
もちろん、単に残業代をなしにすると社員は猛反発します。また、従業員は辞めていきます。そのため、正しい手順を理解しなければいけません。一般的にいわれている残業代削減のアイディアは意味ないため、本当の意味で役立つ対策を実施しなければいけません。
そこで残業代を減らすことでコスト削減をするため、どのように考えて実施すればいいのか解説していきます。
もくじ
残業代をなくすことでの経費削減効果は大きい
あらゆる経費削減の中でも、非常に効果の大きい手法の一つが残業代の削減です。法定労働時間は週40時間と決められていますが、実際のところこうした時間よりも長く働いている人のほうが多いです。そこで、残業時間を減らせば一気に無駄なコストをカットできるようになります。
例えば月32万円の給料だと、時給2,000円の換算になります。このサラリーマンが1日3時間の残業をしている場合、残業代はいくらでしょうか。月の労働日数は20日が一般的であり、法定労働時間を超過した場合は25%の割増賃金になるため、以下の計算になります。
- 時給2,000円 × 20日 × 3時間 × 1.25 = 15万円
つまり一人につき、月15万円もの上乗せになります。年間では180万円です。これが10人だと1,800万円にもなります。
ここから、いかに残業代が高額になるか分かると思います。残業代の費用削減をすることは、それだけで会社の利益を大幅に押し上げることにつながります。
社会保険料など、無駄な税金も省ける
また残業代を削減するのは、会社にとって無駄な出費を減らすだけではありません。節税という意味でも効果は大きいです。
社員に給料を出すと、その分だけ税金負担が増えます。特に会社の場合、給料を出すことで社会保険料を約15%負担しなければいけません。例えば先ほどの例で出したように年間180万円の残業代を出す場合、会社側の社会保険料は以下の分だけ増えます。
- 180万円 × 15% = 27万円
こうして、27万円の社会保険料が上乗せされます。残業代だけでなく社会保険料も増えた結果、年間にして一人当たり200万円以上のコストが増えてしまいます。
法人経営者が経費削減するとき、着目しなければいけない高額なコストの一つが残業代です。この費用を何とかして削減できないか考えるようにしましょう。
お客さん都合の業態以外は残業代ゼロが可能
なお実際のところ、残業代ゼロであっても特に困らないケースは多いです。実際のところ、優秀な人であるほど残業ゼロで定時退社する傾向にあります。無駄に仕事を長くする意味はなく、少ない時間の中で集中して仕事をするべきだといえます。
もちろん、中には残業代を削るのが非常に難しい形態があります。例えば店舗運営をしているビジネスです。店舗にお客さんがいない場合なら残業なしが可能であるものの、店内がお客さんであふれかえっているケースもあります。
接客が発生する形態の場合、例外的に残業代の削減はほぼ不可能です。すべてはお客さんの都合に合わせなければいけないからです。閉店時間が過ぎたとしてもお客さんが店内にいて買い物をしている場合、それに合わせなければいけません。
こうした店舗を構えて一般顧客を相手にする業態では、確かに残業を削るのは難しいです。ただ、それ以外の業態であれば残業代ゼロが可能です。少なくとも店舗ではなく、オフィスで仕事をしている場合、工夫することで残業代が存在しなくなります。
名ばかりの残業代削減は社員満足度が低くなる
もちろん残業代をなくすとはいっても、名ばかりの残業代削減をすると社員満足度が非常に低くなります。サービス残業だけが多くなり、社員がどんどん辞めていくからです。
例えば残業代を削減するアイディアとして、タイムカードの活用があります。タイムカードとして、出社したときと退社したときの記録を取ることによって、残業時間を減らそうというものです。
「一方的に残業代なしを押し付ける」となると、退社時間になったときに社員はタイムカードを押して、一応は退社したことになります。ただ実際には会社に居続けて仕事をすることで、サービス残業が常態化するようになります。
こうして名ばかりの残業代削減によって、従業員にとってみれば不満が溜まります。
また仕事量は同じなのに残業代だけ削られるため、給料が低くなって会社への忠誠心は低くなります。これも、戦略なしに残業代カットを推し進めると社員が次々と辞めていく理由です。
無駄な事務仕事をすべて削除する働き方改革が先決
実際のところ「残業をゼロにしろ!」と号令をかけるだけでは意味がありません。法人経営としてのやり方自体を見直す必要があります。つまり、働き方改革を最初に行うのが必須です。
働き方改革とは具体的に何でしょうか。それは、無駄な事務作業や会議を減らすことです。これを一番最初に行いましょう。多くの会社では無駄な書類作成や会議が多いため、これをゼロにします。その後に残業代削減に着手しなければ、社員から不満が出るのは当然だといえます。
例えば、以下のような無駄はないでしょうか。
- 日報(または週報)の作成を義務付けている
- 本社への報告書類がある
- 定例会議がある
- 会議のために資料を作らなければいけない
- 書類の作成や郵送がある
これらの作業について、本当に必要でしょうか。実際のところ、社員の不満がなく残業ゼロを実現している会社であるほど、これら無駄な事務作業や会議が存在しません。必要ない書類作成を含め、本業以外の仕事が存在しないのです。
残業なしの実現に必要な働き方改革とは、無駄な書類作成や会議をゼロにすることが本質だといえます。そこで、思い切って「紙の書類をゼロにする」「会議をゼロにする」を徹底してみましょう。
例えば有給休暇の申請のとき、紙の書類を印刷させ、上司や人事にチェックさせるなどは最悪です。以下のような書類です。
そうではなく、ネット上にて有給休暇の申請を行い、支店の全員がチェックできるようにシステムを作りましょう。少しインターネットに詳しい人であれば、10分でこうした仕組みを作れます。
また、上記の有給休暇の申請書類では「申請理由」を記載しなければいけません。ただ、法律で定められている有給休暇を取得するときに理由をわざわざ記載しなければいけないのは意味が分かりません。いずれにしても、こうした書類の99%は無駄だといえます。
他には、例えば営業担当が書類の作成(新商品プロモーションの書類作成など)をして得意先に郵送しているケースは多いです。それでは、この書類作成について秘書代行会社などを利用して外注化できないでしょうか。無駄に社員に対して残業代を出すよりも、作業を外注化したほうが安上がりです。
本業とは関係ないすべての無駄を省けば、それだけで社員は働きやすくなり、残業は減ります。事務作業を可能な限り排除した後であっても時間内に仕事を終了できないのは、その社員の働き方が悪いといえます。こうした働き方改革を実施した後、残業代をゼロにするように推し進める必要があります。
上司を名実共に早期(定時)退社させるのが効果的
そうして働き方改革を実施し、無駄な書類作成や会議をすべて排除した後、次はその支店でのトップを早期(定時)退社させるようにしましょう。
経営者が早期退社するだけでは意味がありません。そうではなく、店長クラスの管理職に対して、可能な限り毎日の定時退社を促すのです。単にタイムカードを押させるのではなく、実際に素早く帰らせるように仕向けましょう。
前述の通り無駄な事務作業がない場合、定時退社できないのは仕事の効率が悪いからです。「接客業なので残業発生を避けることができない」「明らかに仕事量が多い」などの状況を除き、店長クラス以上の人が早期退社すれば、必然的にその部下の社員たちも早めに帰宅するようになります。
残業代カットのため、対策なしに上司たちを早めに帰宅させても意味ありません。ただ無駄な事務作業をすべて省いた後であれば、大きな意味があります。
数年は早期退社でインセンティブをもたせ、還元してもいい
なお、こうした取り組みを整備したうえで残業代の費用削減を試みたとしても、それでも反対する社員はそれなりにいます。理由は単純であり、残業代が減った分だけ月の給料が減額するからです。
それまで残業代の支払いが当たり前だった場合、従業員は残業代込みの月給で生活費を計算するようになります。そのため、「残業が減ることでの減給に反対する」という、よく考えると変な行動を取るようになるのです。
そこで残業カットを推奨する最初の1~2年については、むしろ早期退社することでのインセンティブをもたせ、浮いた残業代を社員に還元しても問題ありません。例えば「定時終業後の30分以内に帰宅し、残業ゼロを実現した人は〇万円のボーナスを加える」などです。
「毎日何時間も残業をするパターン」と「まったく残業をしないパターン」を比べたとき、ほぼ同じ給与額なのであれば、全員が定時退社を目指すのは当然だといえます。
ただ、こうしたインセンティブを設けて還元をずっと続けていると、当然ながら経費削減になりません。そこで様子を見ながら、社員に還元する金額を少なくしていき、最終的には還元しなくても残業ゼロの企業体質になるように変えていきましょう。
・副業OKにすれば残業代を出さなくても問題ない
また同時に副業OKにするのは当然だといえます。残業代を出さなくても問題ない経営に変えたのであれば、社員は定時退社が可能です。ただ、残業代が支給されない分だけ月の給料が減るのは事実です。
その代わりとして副業OKにするのです。いまは正社員でも副業するのが普通の時代なので、会社で得たスキルを活かして副業を推奨すれば、会社からもらえる給料以外の副収入を社員は得られるようになります。
最も確実な方法はテレワークの本格導入
なお、中にはそれでも残業代のカットが難しい会社もあるでしょう。その場合、確実に残業代の経費削減が可能になる方法があります。それがテレワークの導入です。
在宅勤務させれば、一応は家で仕事をしているものの、プライベートと仕事の時間があいまいになります。またずっと家で仕事をするため、当然ながら残業という概念は発生しません。
朝にいつ起きてもいいし、昼間にジムに行って汗を流して問題なく、社員はいつ仕事をしても問題ありません。ただそうした環境だからこそ残業代の発生はゼロです。
また在宅勤務させれば、残業代がゼロになるだけでなく以下のコスト削減も可能になります。
- 通勤手当の支給が不要
- 事務所の縮小(賃料の削減)
- 水道光熱費の削減
非常に高額な固定費削減になるため、リモートワーク化することでのコスト削減効果は非常に大きいです。特に事務関係の社員はすべての職種でテレワーク化が可能なので、経費削減のためにいますぐ検討してみましょう。
一般的な残業代削減のアイディアは意味ない
このように残業代を減らす方法について、実際に行うとなると、かなりの働き方改革を実践しなければいけないことが分かります。そのため、一般的にいわれている残業代削減のアイディアは無意味です。
例えば、以下の残業代削減が一般的に行われています。
- タイムカードを取り入れる
- 残業を承認制にする
- ノー残業デーを取り入れる
ただタイムカードを取り入れたり、残業を承認制にしたりしても、前述の通りサービス残業が常態化するだけです。またノー残業デーがあっても、他の日に残業が常態化しているのであれば意味がありません。
残業代の経費削減を実現するためには、より根本的な改革を実施しなければいけません。だからこそ無駄な書類作成や会議をゼロにしたり、ほぼすべてのオフィス社員をリモートワーク化したりするのです。その結果として、ようやく残業代をゼロにすることでの大幅な経費削減が可能です。
残業代のコスト削減効果は非常に大きい
それまで残業代をきちんと支出している会社であれば、非常に大きなコスト削減法の一つになるのが残業代のカットです。もちろん社員の給料に直結するため、慎重に行うべき経費削減の項目だといえます。
ただ一般的な残業代カットの方法は意味がないため、もっと根本的に社員の働き方を見直すようにしましょう。これらを実施することで、可能な限り仕事のパフォーマンスを落とさせずに、残業代をカットしていくことが可能です。もちろんできるだけ、社員に対して在宅勤務を取り入れるのは必須です。
店舗運営で接客が必要な社員を除けば、すべての業態で残業なしが可能です。その結果、何百万円・何千万円の経費削減を実現できます。
給与に関わるので難しい内容ではあるものの、非常に効果の大きいコスト削減の項目が残業代です。そこで社員の働き方を根本的に変えることで、残業代の支給をゼロにするよう努力しましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。