工場を利用し、製造業を営んでいる会社はたくさんあります。ただ工場である以上、大きな経費を支払わなければいけない場面は多いです。
製造業だと工場の大小はありますが、高額な電気代や家賃を支払う必要があったり、労務費が高額になったりします。こうした高額な経費支払いがあるため、製造業だと平均利益率が4%ほどと非常に低くなっています。
そのため、工場では経費削減が必須です。それではどのようにして、固定費・変動費削減をすることで製造業のコストダウンを図ればいいのでしょうか。
工場が行えるコストダウンのアイディアはいくつかあります。ここでは、製造業が行うべき経費削減の方法を解説していきます。
もくじ
手っ取り早い工場の固定費削減・変動費削減
経費削減というと、難しく考える経営者が多いです。例えば工場で経費削減するとなると「現場のオペレーションを徹底させる」「サプライチェーンや販売拠点を見直す」などを考えてしまうのです。
要は、工場内での作業手順や配置、生産順序、物流の流れなど、工場が稼働する全体の工程に着目し、何とかコストダウンできないか考えるのです。ただ、こうなると新たな設備投資が必要になりますし、業務改善の内容が非常に複雑になります。
そこで、これら工場内の業務改善に関してはいったん忘れましょう。もちろんこれらの改善は重要ですが、既に「これ以上の改善は無理」というほど徹底されているケースは多いですし、設備投資や業務手順の変更をする場合は大きな労力がかかります。
そうではなく、より手軽で簡単に経費削減できる項目から工場経営者は着手しなければいけません。特に製造業では固定費・変動費が大きくなっているため、まずは以下の項目に着目しましょう。
- 電気代の料金削減
- 損害保険料の減額
- 賃料の下落
- 固定資産税の減額
- 水道代の削減
これらについて会社によって状況が異なるため、可能なケースがあれば無理なケースもあります。ただ簡単に固定費・変動費削減が可能なので、該当する場合は積極的に試してみるといいです。
電気代削減で製造コストを下げる
すべての製造業で高額になりやすい費用が電気代です。小規模の工場であっても電気代は高くなりやすいため、まずはこの削減をしましょう。
工場の電気代については「照明を調節する」「太陽光を使う」など地道な努力による方法はいくつかあるものの、より手軽で簡単な方法として電力会社の切り替えがあります。この方法についてはデメリットがなく、特に何か新たな努力をすることなく大幅なコストカットが可能です。
方法としては、日本には何百もの電力会社が存在するため、その中からあなたの地域に対応している電力会社に対して競争入札させます。専門のコスト削減会社を通す必要はありますが、これによって最安値の電力会社と契約できるようになります。
電気なので発電所や送電は変わらず、純粋に電気代だけ減ります。例えば以下は、17人ほどの小規模な食品加工会社が電気代削減をしたときの最終見積書です。
以前の電気代は年間で459万3812円でした。そこで電力会社の見直しをした結果、年間で約64万円の値引きができました。削減率は約14%であり、いまの電気代からこれだけの減額が可能になります。
すべての製造業で電気代は高額になるため、特にデメリットのない電力削減はいますぐ行うようにしましょう。
損害保険料を減らし、固定費削減する
また工場で大きくなりがちな固定費に損害保険料があります。どの製造業でも火災保険や賠償責任保険をかけているはずです。
火災保険については、こうした保険を付けているからこそ自然災害が起こったときに高額なお金が下りるようになります。たとえ被災したとしてもすぐに再開できますし、大きな災害を受けなかったとしても高額な保険金を下ろすことによって事業資金に利用できます。
また賠償責任保険に加入していれば、「製造した製品に不具合があって出火した」「出荷した製品でケガの危険性が発覚し、リコールをした」などのときであっても問題なく補償してくれます。
他の業態に比べると、製造業では損害保険の利用頻度が高くなります。そのために費用は高額になりやすいですが、損害保険はそれぞれの会社が自由に値段を設定できるので「同じ補償内容ではあるが、保険料を大幅に抑える」ことが可能です。
そこで損害保険の見直しをすれば、簡単に固定費削減できます。例えば以下は、火災保険と賠償責任保険をセットで見直したときの内容です。
この会社の場合だと、年間で766万3,080円の損害保険料となっていました。そこで会社を切り替えたところ年365万1,480円になりました。
削減率は約53%となり、損害保険ではこのように大幅な保険料削減が可能です。補償内容が同じであれば金額は低いほうがいいため、あらゆる製造業で有効な固定費削減の方法です。
賃料は交渉次第で経費削減できる
他には家賃を下げることを考えましょう。田舎にある工場で土地・建物を含めて自社保有なのであれば関係ないですが、賃貸で製造業を経営している人もたくさんいます。その場合は毎月高額な家賃を支払っているはずです。
こうした賃料は交渉によって下げることができます。もちろんあなたが交渉しても成功することはほぼないため、賃料最適化サービスを広く実施している専門会社へ依頼しましょう。
日本では建物価値が毎年下落します。また都心以外であれば、土地の値段も下がるのが普通です。そのため2年以上、一つの土地で製造業を営んでいるにも関わらず賃料が減っていない場合、家賃の払い過ぎとなっている可能性が非常に高いです。
そこで家賃の下落を考えましょう。例えば以下は実際に家賃交渉をしたときの最終見積もりです。
この会社は規模が大きく、月6130万6922円の家賃支払いでした。そこで交渉をした結果、年間では6536万8212円の下落となりました。削減率は8.8%なので、それなりにインパクトは大きいです。
賃料交渉について、平均的な削減率は11%です。そのため今回は相場より削減割合が低かったものの、それでもこれだけ高額な減額となりました。
固定資産税の払い過ぎが工場では頻発している
一方で賃貸ではなく、自社保有によって工場経営しているケースもあります。この場合についても、大幅に毎月の支払いを減らすことができます。具体的には固定資産税に着目しましょう。
毎年大きな税金支払いとなるのが固定資産税です。ただ固定資産税については、非常に高い確率で計算ミスが起きています。
税理士であっても詳細な固定資産税の計算は難しく、不動産に特化している専門家でなければ計算できないのが固定資産税です。それにも関わらず、役所の素人が固定資産税について計算し、税金納付の通知を出さなければいけません。これが、ほとんどの人で固定資産税の払い過ぎが起きている理由です。
また一般住宅ではなく、工場だとより固定資産の計算が複雑になるため、役所の職員が正しく税額を計算するのは不可能といえます。
そこでいま支払っている固定資産税が正しいかどうか専門家に調査してもらいましょう。そうして正しい税額に直せば、無駄な税金の払い過ぎがなくなります。
それだけでなく、税金還付も可能です。役所の計算ミスによって税金の払い過ぎが起きていたため、過去20年に渡って税金が戻ってくるようになります。この場合、以下のような通知書と共にお金が戻ってきます。
これらの還付については時効があるため、できるだけ早めに動かなければいけません。無駄な税金を抑えることについても経費削減で重要であり、さらにはお金が返ってくる方法なので資金繰りを改善できます。
地下水を利用し、製造業での水道代を節約する
自社保有で土地を有している場合に限られますが、製造業では水道代を節約することができます。工場だと大量の水を使いますが、この料金を抑えるのです。
方法としては、地下水を利用します。特に田舎だと、日本は地下水が豊富です。そこで、こうした地下水源を利用して水道代を節約します。
地下水を利用するのは特に問題なく、例えば日本では多くの酒造メーカーが日本酒を作っており、このときの水には広く地下水が利用されています。日本酒造りでは大量の水が必要になるものの、地下水でまかなうことができるのです。
またこれら食品製造の工場で利用されていることからも分かる通り、地下水は水質がいいです。そこで、自社にて土地を有している場合は地下に穴を掘り、地下水を利用して水道代を節約できるというわけです。
このときは「地下水を利用する設備を自社で保有する」「設備投資ゼロにして、地下水を利用した分だけ料金を支払う」の2パターンを選ぶことができます。ただ両方とも、大幅な水道代の節約が可能です。
材料費の質を落とすのは微妙
工場でのコストダウンをするとき、複雑に考えるのではなく、まずはこうした誰でも簡単に行える部分から着手しましょう。その後、ようやく工場内の改善や労務費の見直しに着手しなければいけません。
ただコストダウンを図るとはいっても、品質に影響する部分については経費削減してはいけません。コスト削減というのは、品質や社員のモチベーションに影響を与えずに行うのが大原則です。そのため、材料費の品質低下は無理です。
もちろん品質が同じなのであれば、相見積もりによって値段の安い材料を仕入れればいいです。ただそうでない場合は微妙です。
同じように、むやみに人件費削減や給料の下落などによって労務費を落とそうとすると、品質やモチベーションの低下に陥ります。そのため、こうした部分ではなくその他の項目によってコストダウンを図るべきです。
そうしたとき、工場内について簡単に行えるコストダウンのアイディアとしては以下があります。
中古品による設備機器の利用は有効
工場には必ず機器類が存在します。こうした機械について設備投資するとき、どうしても日本人だと新品を購入する傾向にあります。
ただ、本当に新品は必要でしょうか。工場で利用する機器類は10年以上、利用するのが普通です。つまり長く利用することを前提としているわけですが、こうした設備は中古品であっても問題ないはずです。
事実、あなたの工場内には以下のような機器類が存在し、何年も使っているものの、特に問題なく稼働しているはずです。
当然、これらの機器類を中古で買えば圧倒的に値段が低くなります。日本では機器類のリサイクル・中古販売をしている仲介業者はたくさんあるため、こうした会社を通せば設備投資の費用は圧倒的に安くなります。
しかも、こうした中古品では減価償却期間が短いです。そのため無駄な法人税や消費税が減り、節税面でも効果が高いです。非常にメリットの大きい手法なので、設備投資でコストダウンを図るとき経営者は新品ではなく中古品に目を向けなければいけません。
節税投資による特別償却や税額控除で節税する
なお製造業で設備投資は必須になりますが、このときは国が広く認めている節税制度を利用することも考えましょう。設備投資に関わる節税では、以下の2つのうちどちらかを選択できます。
- 特別償却
- 税額控除
特別償却とは、「素早く減価償却できる制度」です。例えば「支払ったお金のうち30%について、追加で多めの減価償却をしてもいい」などとなっています。制度の内容は毎年違いますし、対象によっても変わりますが、いずれにしても素早く減価償却できる節税法だと理解しましょう。
ただ減価償却期間が短くなることについて、素早い経費計上によって確かに資金繰りは改善されるものの、支払う税額のトータルが減っているわけではありません。そうしたとき、素早い減価償却とはならないものの、総額での税金支払いを低くできる制度として税額控除があります。
例えば1,000万円の設備投資を行い、税額控除が7%であれば、法人税を70万円を低くできます。
節税の制度はあなた自ら利用しなければ適用されません。そこで、こうした節税対策によってコストダウンさせるようにしましょう。
特別償却をするのか、それとも税額控除を選ぶのかはあなたの自由です。経営状況やキャッシュフローを考えて、最適なほうを選ぶようにしましょう。
外国人労働者を受け入れ、労務費を下げる
労務費を下げるとき、前述の通り給料を下げて人件費カットを試みたり、人の数を減らしたりするのはおすすめできません。ただ人によっては、最低賃金にて頑張って働いてくれる人が存在します。それが外国人労働者です。
日本ではまだ外国人労働者は一般的ではありません。ただ海外では普通であり、例えばドバイやシンガポールなどでは、建設現場で働く人のほぼ100%が外国人労働者です。
そこで、同じように外国人労働者を活用しましょう。日本人を雇う場合、すぐに辞めてしまう可能性が高いですし、給料や福利厚生についても文句をいってきます。ただ技能実習生などの制度を利用して外国人労働者を受け入れれば、日本人より給料が低いにも関わらず彼らは頑張って働いてくれます。
また工場内の作業では、日本語でのコミュニケーションが不要な作業がいくつもあるはずです。これらの作業について、高い給料を支払って日本人に行わせる意味はありません。
人件費のカットは最も難しい部分の一つです。ただ工場での労務費については、外国人労働者を使う方法があるため、工場経営者は雇う人を日本人以外にすることを考えましょう。
ものづくりで工場のコストダウンを図るアイディア
日本ではものづくりに関わる工場がたくさんあります。また、こうした製造業としては自動車工場や食品工場など種類はさまざまです。これら製造業で簡単に行えるコストダウンの方法としては、どの会社も基本的に共通しています。
経費削減ではコストカットの専門会社を利用したり、中古品購入や設備投資での節税など経営者が注意したりしなければいけない項目が存在します。ただ、こうした方法については特に労力が必要なく、誰でも簡単に行えます。
なお、これらの固定費・変動費削減をしたあと、ようやく工場内の業務改善に取り組みましょう。難しい経費削減から着手するのではなく、ものづくりではいますぐ行えて効果の高いコスト削減アイディアから実行しなければいけません。
このとき製造業では不動産や設備の規模が大きく元々の経費が巨額になりやすいため、コストダウンの効果は非常に大きいです。中小企業であっても製造業では年1,000万円以上のコストダウンは非常に簡単なので、ものづくりに関わる場合は積極的に経費削減を考えるようにしましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。