経費削減をすれば、簡単に会社の利益を押し上げることができます。売上を作るのはかなりの努力が必要であるものの、コスト削減であればあなたの会社が頑張るだけで済みます。
ただ、間違ったやり方によって経費削減をしているケースがあります。コスト削減のやりすぎによって、弊害が生まれているのです。必要な経費削減であれば積極的に行うべきですが、むしろダメな経費削減によって品質低下を招いていることがあるのです。
コスト削減には、やっても問題ない経費削減があれば、やってはいけない経費削減の方法もあります。これを区別するようにしましょう。
しかし、正しい経費削減の方法を学んでいない場合、どのような項目が「やってはいけない経費削減」なのか分かりません。そこで経費削減のやりすぎによる弊害を生まないようにするため、経費の中でもどのように固定費の削減を推進すればいいのかポイントを解説していきます。
もくじ
やってはいけない経費削減が存在する
経費削減をするとき、何でもいいからコストを減らせばいいわけではありません。ダメな経費削減によって、大きな弊害を生じることもあります。会社にとってマイナスとなるコスト削減をしてはいけません。
それでは、具体的にやってはいけないコスト削減には何があるのでしょうか。主なものとしては以下があります。
- 原材料費の削減
- 理由ない人件費の引き下げ
- 中長期の投資のストップ
- 偽装・違法行為
経費削減のやりすぎによって、会社の経営がむしろ傾くことがよくあります。なぜ、これらがダメな戦略になるのか確認していきましょう。
原材料費を削減すると商品価値が落ちる
やってはいけない経費削減として、材料費の削減があります。原価を抑えることで、提供する商品・サービスをできるだけ安く作ろうとするのです。ただ、これをすると商品の品質低下に直結します。
まったく同じ品質であるが、値段だけ安くして仕入れられる方法を運よく発見した場合、もちろん材料費を削減できます。ただ多くの場合、安い材料に変更して商品を作ったり、スペックの低い製品によってサービスを提供したりすると、大幅にコストは下がるものの品質に影響します。
その結果、当然ながらお客さんは離れていきます。
例えば私の会社の場合、純シルクを用いた国産小物のオリジナルブランド商品を販売しています。以下はブランド製品を作るときの打ち合わせの様子です。
ただ製品を作るとき、国産ではなく中国製のシルクを使うことも可能です。またシルクではなく、ポリエステルを利用するという選択肢もあります。そうすれば、大幅に原価は低くなります。
しかし私の会社は高級志向であり、ある程度のお金をもっている人がターゲットです。そういう人に対して、中国製やポリエステルの安い製品を提供するのはむしろ失礼です。また、「安い製品ばかり提供する会社」とお客さんに認識されては困ります。そのため、原価を落とす戦略は採用していません。
短期的には、非常に効果のあるコスト削減法が材料費のカットです。ただビジネスでは、絶対にやってはいけない経費削減だといえます。材料費に関わらず、製品やサービスの品質に関わる部分のカットは弊害が大きいです。
理由なく人件費を下げると弊害が大きい
同じく、経費削減のやりすぎによって品質低下を招くのが「理由のない人件費の削減」です。例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 残業代の急なカット(サービス残業の常態化)
- 給料・ボーナスの減少
- リストラの実行
これらをすると、社員としては当然ながらモチベーションが低下します。人件費は最も高額な経費になりやすいですが、人件費に手を付けると生じる弊害が大きいのです。
例えば仕事量が同じにも関わらず、急に残業代支給をやめるように一方的に伝えればどうでしょうか。社員としては、残業を認めてもらえないものの帰宅時間は同じなので、サービス残業の分だけ負担が増えるようになります。
またリストラを実行すれば、それだけ会社の雰囲気は悪くなります。また優秀な人から先に辞めていくのが一般的なので、ダメな人ばかり残って仕事効率がより悪くなります。
人件費削減はコストカットで重要な要素です。ただ、何の戦略もなく人件費をカットしようとすると確実に失敗します。
中長期の投資をやめる:研究開発費や人材育成
将来の投資をやめることについても、経費削減でやってはいけない内容です。ビジネスでは中長期の成長を見据えて投資しなければならず、これを推進しなければ短期的には利益額が上がるものの、年を追うごとに会社の利益は目減りするようになります。
こうした投資には、例えば研究開発費や人材育成、特許などがあります。要は、「いまはお金を生まないが、将来は大きな利益を生み出す種」に対しての投資だといえます。
例えば私の場合、オリジナルのブランド商品をアメリカや中国などに輸出するため、事前に商標登録を取得したことがあります。以下はアメリカに商標出願したときの書類の一部です。
日本だけでなく、海外へ商標登録するとなると、国の数が増える分だけ金額は高くなります。また一つの国で50万円以上の費用になります。ただそれでも、将来の投資のために必要なお金です。
これらの投資をやめれば、その分だけすぐに利益となります。ただ、ビジネスを継続するためには経費削減してはいけないコストになります。
・メンテナンスも中長期の戦略
なお製造業や病院など、高額な機器類やソフトウェアを利用する場合はメンテナンスも中長期の戦略で重要です。機器類が壊れてしまうと、それ以上に修理費用がかかってしまうからです。
以下のような大型機器だと、一つが何千万円にもなるのは普通です。
機器類やソフトウェアを含め、メンテナンスもビジネスでの重要な中長期戦略だといえます。
最悪なのは偽装・違法行為:会社の信用を落とす行為
また、経費削減の行き過ぎた行為によって招かれる最悪の結果が偽装・違法行為の発生です。商品の品質低下や社員のモチベーション低下だけでなく、お客さんを根本から裏切る行為をしてしまう会社が一定数いるのです。
やりすぎたコスト削減によって違法行為に手を染めるのは中小企業だけではありません。超一流と呼ばれる会社であったとしても、偽装するケースがあるほどです。例えば、以下は過去に起こったニュースです。
リッツカールトンや帝国ホテル、日本橋高島屋など、一流と呼ばれる会社が食品偽装をしていたという問題です。
もちろん、安い食材を高級食材として提供すれば、高額な利益を得られるようになります。ただ、それは消費者をだましている行為だといえます。当然、発覚した時点でお客さんからの信用をすべて失います。
やりすぎたコスト削減をしてしまうと、こうした違法行為にまで手を出してしまうことになります。強硬な経費削減が微妙なのは、最終的に偽装・違法行為に走ってしまう可能性が高いからなのです。中小企業だけでなく、一流企業も偽装していた事実がいくつもあるため、いままで築き上げた会社の信用が一気に失墜します。これが、やりすぎたコストカットが微妙な理由です。
品質に関わらない部分のコスト削減が最適
そこで、正しいコスト削減の方法を理解しましょう。本来、経費削減をすることで「会社の利益が大きく増えるだけでなく、業務内容が大幅に改善される」という状況でなければいけません。利益が出ることで設備投資でき、商品の品質が上がり、さらには社員にとって働きやすい環境にするのが真の経費削減です。
つまり品質低下に直結するコスト削減をしているようでは、経営者として二流だといえます。そうではなく、商品・サービスの品質に関わらない部分をカットしなければいけません。
最初に行うべきは、「特に労力なく経費削減でき、さらには商品の品質に関係ないコストカット」だといえます。こうした方法としては、例えば以下があります。
- 電気代の削減
- 損害保険の削減(火災保険、賠償責任保険、車両保険など)
- 固定資産税の軽減
- 社会保険料の低減
他にもたくさんありますが、これらの方法を実施したとしても商品・サービスの質には影響しません。単に金額だけが下がり、さらには1~2ヵ月ほどで完了します。デメリットがほぼない手法であるため、いますぐ行うべき経費削減の対策です。
例えば、以下は年間で1億円ほどの売上のある製造業にて、賠償責任保険の保険料削減をしたときの最終見積もりです。
この会社の場合、年間で109万5,840円の賠償責任保険の保険料です。そこで見直しをした結果、保険内容はほぼ変わらないものの、年間72万5,160円に減額することができました。削減率は約34%であり、労力をかけることなくこの結果なので、かなり効果は大きいです。
製品・サービスの品質に関与しないこうした部分のコスト削減については、どれだけ推し進めたとしてもやりすぎによる弊害は起こりません。そこで、最初はこうした固定費削減を考えましょう。
業務効率化で社内の無駄をすべて排除するべき
また同時に、業務効率化を実施するべきです。社内業務の改革は必要になりますが、できるだけ無駄な作業を減らすのです。業務効率化の方法はたくさんありますが、分かりやすいのはIT化による効率化です。
例えば、社内で無駄な紙の書類を多用していないでしょうか。「経費精算で書類提出が必要」「会議室の予約で書類を印刷させている」「有給休暇の申請で紙の提出が必須」などが該当します。
これらは完全に無駄です。すべてWeb上で完結させることができるため、紙の書類をすべてなくしましょう。紙の印刷がなくなり、上司はチェック時間が10秒以内になり、管理部門は新たにデータを入力する手間がなくなります。
他には、Web会議を導入することでIT化すれば以下の無駄がなくなります。
- 交通費
- 往復の移動時間
- 書類の印刷
これだけでも圧倒的に高額な節約になります。特に移動時間がなくなる意義は大きいです。通常、移動が発生すると、それだけで1日を潰してしまうからです。社員の労働コストを最大限に削減できるのがWeb会議の導入です。
あくまでも一例ですが、こうして業務効率化を図りつつ、無駄な経費もついでに減らすのが正しいコスト削減の方法です。
最後に人件費に手を付ける
これら必要な業務効率化を実施した後、最後に人件費に手を付けるのが正しい手順です。多くの経営者は必要なステップを踏まず、最初に人件費の削減を考えます。その結果、社員は反発してモチベーションが低下し、それが商品・サービスの品質にも影響します。
だからこそ、最初に行うべきは業務効率化です。業務効率化によって無駄を省き、社員が本業に集中できる状態になったにも関わらず残業が続いている場合、それは社員の仕事効率が悪いといえます。接客業など残業を避けられない場合は仕方ないですが、そうでない場合は残業なしにしたとしても問題ありません。
また仕事の無駄を排除していけば、必要ない部門が明らかになります。そうした部署については、積極的に外注化することで給料という固定費を変動費に変えましょう。社員を雇うよりも、外注化するほうがコスト削減になるのは常識です。
人件費の削減は最後に行うべきことですが、成功すれば非常に経費削減効果は大きいです。事業に必要な優秀な社員だけを残すことで、より高利益体質に会社を変えることができるのです。
経費削減のポイントを学んで利益を上げるべき
何でもいいので経費削減を進めようとする経営者は二流です。コスト削減のやりすぎによる弊害が生まれ、品質低下を招くことで利益が増えるどころか、より利益が将来にわたり減っていくようになるためです。
そこで、経費削減のポイントを理解しましょう。固定費削減をすることで、「無駄な経費を減らしながらも、社員が働きやすくなってお客さんに優れたサービスを提供できるようになるか」を基準に考えるといいです。
コスト削減には、品質に影響なく値段だけを下げられる方法があれば、業務効率化によって経費削減しながらも社員の労働環境を改善させる方法もあります。
これらの方法によって、むしろコスト削減を推し進めるほど優れた労働環境になります。積極的に行うべきコスト削減とやってはいけないコスト削減を区別して、正しく固定費を削減するようにしましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。