法人や個人事業主を含め、すべての人にとって非常に高額なコストが人件費です。毎月同じ額の給料を支払わなければいけないため、固定費として大きくのしかかってくるのです。
こうした人件費による固定費削減は可能なのでしょうか。積極的に人員削減や人件費削減を実施するとなると、やばい会社のように社員は捉えてしまいます。ただリストラなどの最終手段ではなく、特に社員の士気を大きく下げずに経費削減することは可能です。
人件費のコスト削減では、やり方を間違えれば会社は倒産の道に進むようになります。そこで、事前に正しいやり方を考えるようにしましょう。
ここではリストラや無理な給与カットをしなくても、数千万円レベルで人件費などの経費削減を可能にする方法を解説していきます。
もくじ
社員の給料は非常に高額
従業員のコストは非常に高いです。日本人の平均年収は約450万円と統計でいわれており、一人の社員を雇うだけでこれだけの固定費が発生します。
また社員が会社の経費を利用したり、会社が福利厚生を整えたりすると、「従業員は給料の倍のコストがかかる」と一般的にいわれています。そのため単純計算すると、一人あたり年間900万円もの高額な固定費となります。
ここから、なぜ一人の社員を雇用することで非常にコストが大きくなってしまうのか理解できます。
細かなコスト削減策によって、年間で数万円ほどの経費をカットする努力を重ねるのは素晴らしいです。ただ人件費の見直しに比べると効果が弱いです。そこで固定費削減をするとき、人件費削減という、より根本的な手段を考えるのです。
社会保険料や消費税までカットし、節税できる
また人件費削減は他にも大きな効果があります。それが節税です。人件費を減らせば、高額な税金が減るのです。
給料を支払えば、会社は社会保険料の支払い義務を生じるようになります。会社の社会保険料の負担は約15%です。給料の約15%であるため、非常に高額な税金だといえます。
それだけでなく、消費税の負担も大きいです。通常だと、経費を支払えば消費税の支払いも減ります。ただ、給料には消費税が含まれていません。消費税の増税があったとしても、それに伴って給料が増えることはありません。ここからも、給料に消費税が含まれていないと分かります。
給料に消費税が含まれていないため、いくら社員に給料やボーナスを出したとしても、納税するべき消費税額を減らすことはできません。法人税は減るものの、消費税は変わらないのです。そのため、給料を支払った分だけ消費税の負担が増えます。
社会保険料を約15%、消費税を10%とすると、年収450万円の社員だと以下の税金負担になります。
- 450万円 × 25% = 112万5,000円
こうした税金まで考慮すると、一人の社員を雇うとコストは1,000万円を超えます。ただ人件費削減を実施すると、節税効果まで見込めるので非常に高額なコスト削減になります。
給料カットやリストラは士気低下・人手不足となる
なお、人件費削減をするとなると多くの法人経営者や個人事業主は以下の対策を思い浮かべます。
- リストラを行う
- 給料カットをする
ただこれらの対策を実行すると、当然ながら従業員の士気は低下します。残った社員の生産性が低くなったり、退職したりすることで人手不足に陥り、さらに会社全体の士気が下がっていきます。こうして、あなたのビジネスが回らなくなります。
リストラや給料カットだけが人件費削減ではありません。これらの対策は本当の意味で最終手段だといえます。そのため、こうした方法とは異なる方法によって経費削減を考えるのが人件費削減で重要な経営判断だといえます。
待遇を大きく変えずに人件費のコスト削減をする
そこで社員の待遇を大きく変えず、士気低下によって人手不足に陥ったりすることなくコスト削減を実現しましょう。最終手段である給与カットやリストラをしなくても、他の方法によって高額な人件費削減が可能になります。
具体的には、以下の方法を実施しましょう。
- アウトソーシングを推し進める
- ビジネスの自動化を行う
- 残業代を減らす
- リモートワーク化する
こうしたビジネスでの効率化を推進することによって、大幅な固定費削減を実現できます。それぞれの内容を確認していきます。
コア事業以外のアウトソーシングを行う
人件費削減を行うとき、最も簡単で効果の高い手法として仕事の外注化があります。実際のところ、あなたの会社がしているビジネスについて、すべて自社で行う意味がないケースは多いです。
本業とは関係ない業務については、ほとんどの人が外注化します。ただ、事務部門や本業と少し関わっている部分については、外注化できていない経営者が多いです。
例えば、経理や総務の仕事は本当に必要でしょうか。紙の書類をすべて全廃し、従業員に対して電子媒体にて経費申請させれば、経理部門をあなたの会社が用意する意味はなく、すべて外部機関に依頼できます。また秘書会社はたくさんあるため、コールセンターや総務業務を含めて代行してくれます。
本業に関わる仕事についても同じことがいえます。例えば、大手建築会社は建物を建てていません。彼らは集客に徹し、全国からお客さんを集める仕事ばかりしています。実際の建築工事は地元の下請け業者がすべて行います。
大手会社の多くは、本業に関わる仕事であったとしても積極的に外注化しています。これは、「そのほうが圧倒的なコスト削減になる」と分かっているからです。
また、このようにアウトソーシングすることで社員の教育費用をカットできます。もちろん外注先はその分野の専門家なので、あなたの会社で行うよりも品質が良いことはよくあります。
このようにさまざまな観点から考えると、業務の外注化によって経費削減するのは非常に簡単で効果的な手法の一つだと分かります。
キャッシュレスなど、自動化のビジネスに変える
それと同時に、ビジネスの自動化を推し進めるようにしましょう。特に社員が作業しなかったとしても、自動的に売り上げが生まれるようになり、お金の回収が可能な仕組みにするのです。
例えば、銀行振込に対応している会社は多いです。ただ、銀行振込を確認するとなると手間がかかります。ネットバンキングにログインして、一つずつ入金を確認しなければいけません。そこで、これをすべてキャッシュレス決済にできないでしょうか。
私の知り合いの経営者では、リアル店舗をもっているにも関わらず、銀行振込に対応しておらず、店内には電話すら置いていません。これら人の手がかかる作業はすべて排除し、可能な限り自動化にてお金が流れるようにしています。
他にも例えば飲食店運営では、レジでの決済に多くの時間を取られます。このレジ業務をゼロにできないでしょうか。飲食店であればタブレットから注文させ、精算時に客がもっている携帯電話でQRコードを読み取らせ、その場でカード決済できる仕組みを導入しても問題ありません。
リアル店舗運営のように、自動化が無理なように思える業態であったとしても、アイディア次第で問題なくキャッシュレス化による自動ビジネスが可能です。これを実施すれば、無駄な人件費の支払いがなくなります。
社内の無駄をカット後、残業代を減らす
こうして、これまで存在していたあらゆる無駄な作業による経費をカットしましょう。すべての書類を全廃し、キャッシュレス化による自動化を進め、会議をゼロにしましょう。さらにアウトソーシングによって必要ない業務を外注化すれば、社員は本当に必要な業務にのみ集中できます。
もちろん作業の効率化によって人材不足は解消され、最終的には残業代がゼロになります。本業以外の作業がないにも関わらず、時間内に仕事が終わらないのは、その社員の効率が悪いからだといえます。
「接客作業が必要」などによって、残業なしが不可能な業態であれば仕方ありません。ただ、そうした状況であったとしても残業代を少なくすることができます。残業代カットについても、高額な人件費を削減する方法だといえます。
例えば、月給32万円の人は時給換算で2,000円です。この人が毎日3時間の残業をする場合、以下のコストになります。
- 時給2,000円 × 20日 × 3時間 × 1.25 = 15万円
時間外労働は25%増しになると法律で決められているため、これで計算すると月15万円のコスト増です。年間では180万円であり、ここからさらに社会保険料と消費税の負担が増えます。
そこで残業が発生しない環境にすれば、一人につきこれだけの人件費カットが可能になります。そのため、コスト削減効果は非常に大きいです。
テレワーク化によって手当てを含めて経費削減
なお、人件費削減を含めたさらなるコストカットを実施したい場合、テレワーク化(リモートワーク化)を積極的に推し進めるようにしましょう。テレワークであれば、残業代はもともとゼロになります。それだけでなく、以下の経費削減も可能です。
- 通勤手当がなくなる
- 事務所を縮小できる
- 水道光熱費が安くなる
例えば、通勤手当は月10,000~15,000円ほどが相場です。例えば首都圏で定期代を支払うとなると、月1万円以上になるのは普通です。
そのため、通勤手当だけでも一人あたり年間10万円以上の削減であり、10人の社員であれば年100万円以上の違いです。
またテレワークを推奨すれば、最終的に社員を雇用契約するのではなく、業務委託契約に変えることも可能です。つまり社員を外注化するのです。これについては社員の同意が必要になるものの、社員に支払う給料が外注費に変わるため、業務委託化すれば社会保険料と消費税の部分を節税できます。
さらにテレワーク化に成功した部門については、外部企業も活用することで積極的に外注化しましょう。そうして給料という固定費削減を行い、外注費という変動費に変えていけば経費削減の効果が大きくなります。
すべての会社で人件費削減が可能
社員の給料や人員に手を付けるとなると、経費削減の最終手段のように思えてしまいます。もちろん、実際にリストラや給与カットを実施すると社員の士気が低くなり、より人手不足が加速してしまうことはよくあります。
ただ、それ以外の方法によって人件費削減する方法はたくさんあります。アウトソーシングを積極的に推し進めたり、ビジネスの自動化によって作業の効率化を図ったりしましょう。そうして残業代をなくし、仕事をテレワーク化することで、多くの人件費を削れるようになります。
人件費削減によって業績悪化を招くのは経営者として二流です。むしろ人件費削減による経費削減効果によって利益が向上するだけでなく、作業効率化によって業績をアップさせなければいけません。
非常に多くの会社で無駄があります。こうした無駄を省くことが結果として人件費削減につながります。こうした考え方によって、固定費削減を実現するようにしましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。