ホテル経営をしている人はそれなりにいます。旅館やビジネスホテルなど違いはありますが、宿泊業によって経営をしているのです。

こうした宿泊業で利益率を上げる方法としては、「ベッド数を増やす」「稼働率を上げる」などはあるものの、最も手っ取り早い方法の一つに経費削減です。無駄な固定費を大幅に減らすことによって、それだけで利益上昇につながります。

ただ、旅館・ホテル経営で何も考えずに経費削減すると、むしろ経営に対して悪影響を及ぼすようになります。そこで、正しいコスト削減の方法を試さなければいけません。

それでは、宿泊業ではどのようにコスト削減を実施すればいいのでしょうか。正しく行えば特に労力なしに年間で何百万円もの固定費削減も可能なので、これらをどのようにすればいいのか解説していきます。

顧客満足度に影響する変動費削減は不可

コスト削減については、行おうと思えば削減対象は何でも可能です。そのために多くの業界では固定費・変動費を含めて削減しようと考えます。

ただ、顧客満足度に関する項目について削除するのは微妙です。例えば宿泊業の変動費であれば、以下のような部分については簡単に削減できます。

  • リネン費
  • 業務委託費
  • 消耗品費

ただ、これらの変動費を削減する労力は少ないですが顧客満足度に直結してしまいます。そうなると「リピート客を取れなくなる」「良い口コミが生まれなくなる」など、ホテル経営が微妙になってしまいます。

コスト削減では、可能な限りお客さんの満足度とは関係ない部分にて努力しなければいけません。よくあるのは、以下のような削減案です。

  • 客室アメニティをフロントで管理し、申し出があれば渡す
  • 連泊客のリネン交換を省略する

このように、旅館・ホテル経営ではいろんな削減アイディアがあります。ただ、お客さんにとってはどうしても不便になってしまうことには変わりがありません。そのため、可能な限りお客さんにとって満足度の低下につながる部分は後回しにしなければいけません。

高級旅館からビジネスホテルまで可能な固定費削減

それでは、こうした変動費削減を後回しにするとして、どのようにして経費削減をすればいいのでしょうか。これについて、固定費削減を考えるようにしましょう。特に宿泊業の場合、多くの人を雇い、不動産も大きくなりがちなので、簡単に固定費削減ができてしまいます。

もちろん、高級旅館から格安のビジネスホテルを含めて、すべてに共通して可能な方法になります。また、そこまで大きな労力が必要になるわけでもありません。具体的な固定費削減の方法としては以下があります。

  • 地代家賃などの賃料を下げる
  • 電気代を減らす
  • 損害保険料を見直す
  • 自動システムの導入
  • リース契約の廃止

これらをすべて行うと、すぐに年間にして何百万・何千万円ものコスト削減を実現できます。

地代家賃の交渉で賃料を下落させる

すべて自社保有にて不動産を有している場合なら別ですが、特に都市部を含めて賃貸にて土地や建物を利用し、ホテルとして稼働していることはよくあります。こうした旅館やビジネスホテルの場合、地代家賃を削減することを考えましょう。

もちろん、あなたが自ら管理会社や大家との交渉を頑張ったとしても地代家賃を下げてもらうことはほぼ無理です。そうではなく、この場合は家賃削減を専門で行う業者に依頼しなければいけません。

家賃を下げられる理由は、「日本の建物などの不動産価値は年々下落するのが基本」だからです。土地の金額については上昇することがあるものの、少なくとも建物については修繕工事をしない限り下落し続けます。そのため、こうした専門の交渉会社に依頼すれば約73%の成功確率で家賃を減らせます。

あなたが経営する旅館やホテルについて、家賃がいくらになるのかは不明です。ただ、こうした家賃適正化サービスを利用すれば、平均して約11%の賃料削減が可能です。どうしても不動産規模が大きくなりがちな宿泊業なので、こうした賃料下落サービスは必ず利用しましょう。

例えば以下は、実際に家賃削減サービスを活用してコスト削減したときの最終提案書です。

このケースについては、月6130万6922円の賃料を支払っている法人になります。経営している保有物件がいくつもあるのでこのように高額になっていますが、家賃交渉によって8.8%を下落させることができました。

相場よりも削減率は低いですが、それでも年間で6536万8212円の経費削減です。このように、非常に高額な家賃削減を実現することができました。

光熱費(電気代)の削減効果は大きい

同じように、専門の会社に依頼することで簡単に経費削減できる項目が電気代です。電気代では、特に空調代で金額が高くなりやすいです。ただ空調温度を弱めるとお客さんの満足度に影響するため、電気の使用量自体を減らすのは不可能に近いです。

ただ、電力会社の切り替えであれば可能です。大手電力会社は存在するものの、中小の電力会社はそれ以上に無数に存在します。電気代は小売価格を自由に設定できるため、こうした中小の電力会社で競争入札させ、最安値で契約するのが電気代削減の方法です。

電気代についても、専門の会社に依頼するだけなので特に労力は必要ありません。また旅館やホテルだと、例外なく電気代が非常に高額なので、一瞬にして大きな経費削減が可能になります。

例えば以下は、ビル一棟について電気代削減をしたときの最終見積書です。

この会社の場合、年間の電気代は1629万5172円でした。そこで電力会社の見直しをした結果、年間で約249万円の電気代を減らすことができました。発電所や送電線は同じなので品質に違いはありません。ただ、こうした大きな違いが生まれるのです。

もちろん、複数の旅館やビジネスホテルを運営する法人であれば、より電気代削減の効果は大きくなります。

損害保険の見直しを行うべき

同時に見直すべきが損害保険です。店舗運営をしている会社であれば、例外なく火災保険や賠償責任保険に加入しています。特に宿泊業では不動産の規模が大きいため、どうしても損害保険の保険料金額が高額になります。

ただ、火災保険や賠償責任保険は大幅な保険料の下落が可能です。もちろん補償内容はそのままにして、保険料の値段だけ下げられます。損害保険は各社が自由に値段を下げられるので、契約会社の切り替えであれば値段交渉が容易だからです。

一般的には見直しによって、以下の金額について固定費削減できます。

  • 火災保険:10~30%を削減
  • 賠償責任保険:30~60%を削減
  • 火災保険と賠償責任保険の両方:50~60%を削減

例えば、以下は賠償責任保険について単独で見直しをしたときの結果です。

元々は109万5840円でした。それを年間で72万5160円に減らすことができました。削減率は約33.8%であり、損害保険の保険料を一気に下げることができました。

施設が大きいため、宿泊施設での火災保険や賠償責任保険は高額です。そのため、一つの建物を見直すだけでも高額なコストカットが可能になります。

自動化システムを取り入れ、人件費を削る

また、宿泊業では積極的な自動化が可能です。いまの時代、多くの人を雇ってフロントに何人ものスタッフを常駐させるのは意味がありません。

安さを売りにしているビジネスホテルであれば、機械を設置することでチェックインやチェックアウトを完全自動化している施設があります。これと同じことをすべての旅館やホテルで行わなければいけません。

これは、超高級ホテルであっても同じです。以下のようなフロントに何人ものスタッフを配置するのは完全に無駄だといえます。

私に限らず、ほぼ全員が共通して経験したものとして「朝にチェックアウトしようとしても、並んでいる人が非常に多く何十分もフロントで待たなければいけない」ことがあると思います。高級ホテルであっても、待ち時間が長く「あと数分後に電車の時間なのに遅刻してしまう!」と焦ったことが私は何度もあります。

人を配置すれば丁寧な対応が可能と考えているのは、経営者側の怠惰だといえます。もちろん中には「すべて人による対応」を望んでいる人もいます。ただ中には、「完全自動化によって素早くチェックインまたはチェックアウトをしたい」と考えている私のような人もいるはずです。

特にチェックアウトについては、カードキーや鍵を返却するだけなのでスタッフの対応は不要です。追加料金が発生したとしても、退出時にフロントに設置してある機器にてカードで支払ってもらえばいいです。または、オンライン上で自動精算できる仕組みにしてもいいです。

あらゆる部分を自動化することで作業効率化を図れば、人件費を大幅に浮かせることができます。宿泊業では無駄な人的対応部分が多く残っているため、これをカットするだけでも固定費削減の効果は大きいです。

リース契約はなしにするべき

なお、前述の通り消耗品を含めた変動費については、品質を下げてはいけません。ただ、価格交渉自体は特に問題ありません。品質はほぼ同じであるものの、より安く仕入れることができるのであれば価格交渉するべきです。

そうしたとき、障害になりやすいのがリース契約です。ビジネスにおいて、基本的にリース契約は無駄でしかありません。車リースについては例外的にコスト削減が可能であるものの、それ以外のリースは弊害が大きいです。

例えばリネン材のリース契約をしている場合などです。リース契約は途中解約が不可なので、業者の切り替えができません。またタオルや浴衣などについて、ロゴ入りの製品をリース契約している場合はより切り替えが難しくなります。

それだけでなく、リースは一般的にファンナンスリースと呼ばれるものになります。ファンナンスリースでは、一般価格に比べて高額になります。

ただリネン材を含め、これらを自社で用意するにしても、交換・メンテナンスをその他の業者に外注すればリースしているのと同じ状態を作れます。また汎用品であれば他の製品に切り替えることができますし、価格交渉も可能です。リース契約のように、途中解約できないこともありません。

宿泊業で利益率を上げたいのであれば、リース契約を見直しましょう。いま契約しているリースは途中解約できないので、契約が切れるまで待つ必要があります。ただ契約満了後はリースなしでビジネスが回る仕組みを考え、コスト削減しましょう。

宿泊業の広告宣伝費の見直しはわりと重要

なお、旅館やホテルで高額な支出になっているのが広告宣伝費です。「ターゲット客が国内なのかインバウンドなのか」「利用する宿泊予約サイトはどこか」などによって手数料は変わってきますが、一般的には宿泊予約サイト経由だと宿泊代金に対して8~10%ほどの手数料となります。

宿泊客が予約してくれるたびに8~10%もの手数料を支払い続けなければいけないわけです。この費用について、何とか削減できないでしょうか。

つまり、旅行サイト・宿泊サイトに頼らなくても集客できる仕組みを作るのです。仮に自社サイトだけから集客できれば、利益率は一気に8~10%も上昇します。

いまは自社サイトやSNSで無料集客できる

世の中にはマーケティングが下手な業界がいくつも存在します。例えばクリニックや士業(弁護士、税理士など)がこれに該当しますが、同じく集客が下手な業界が宿泊業です。事実、大手の宿泊サイトに依存しているホテルが大半です。

そこで、自社サイトやSNSを利用しましょう。もちろん、これらを用意するだけでの集客は無理です。そこで、あなたの旅館やホテルはお客さんに対して「どのような価値を提供できるのか」を考え、積極的に情報発信しましょう。

例えばビジネスホテルであれば、「繁華街〇〇から近く、24時間自動チェックインが可能であり、それでいて大浴場が完備!」と記しておけば、多くの男性ビジネス客が予約してくれるかもしれません。

また高級旅館なのであれば、「冬になると当旅館ではライトアップされた幻想的な景色を堪能できます。家族やカップルにどうぞ」と記すのがいいかもしれません。

もちろんこれらの事実を記すのではなく、できるだけリアルな情報を提供する必要があります。その日、起こった出来事をSNSにアップしてもいいし、実際に利用してくれたお客さんの体験談に対して許可をもらったうえでWeb上に載せてもいいです。

例えば、以下は私が宿泊したことのある温泉街にある高級旅館の一コマです。

冬に出向きましたが、歴史のある旅館で非常に優れた時間を過ごすことができました。

ただ、もったいないと感じたのは、こうした実際の風景が公式サイトにほぼ載っていないことでした。つまり、お客さんは実際にその場を訪れるまで「どのような素晴らしい体験ができ、景色を楽しめるのか分からない」といえます。

またSNSもやっておらず、これではお客さんが宿を見つけるのは難しく、どうしてもホテル予約サイトに頼らざるをえません。

そこで独自の情報を積極的に発信していきましょう。日々のトラブルや宿泊業の裏側、どういうお客さんが使用したのかなど、あなたがホテル経営している裏側まで発信すれば、それが有益なコンテンツになります。

また公式サイトを訪れたお客さんについては、「公式サイト経由の予約で特産品〇〇を夕食にサービスします」など、何でもいいので特典を付ければ問題ありません。高級そうな特典であっても、原価がそこまで高くなければ問題ないです。そうした努力を積み重ねていけば、無料集客が可能になります。

広告宣伝費のカットについては、即効性はありません。そこで、無料にて自動集客できる仕組みを作りましょう。経営者は仕組みづくりが仕事なので、最終的には広告宣伝費の経費削減まで着手すると完ぺきです。

宿泊業で可能な経費削減は多い

他の業態に比べると、宿泊業の経費削減は簡単です。不動産の規模が大きいため、少しの努力で一瞬にして年間で何百万円ものコスト削減が可能です。しかも、特に努力することなく経費削減サービスの代行業者に依頼するだけで問題ありません。

また、経営努力が必要なコスト削減もあります。例えば、自動化による人件費削減です。業務効率化を進めれば、人がいなくても回る仕組みを作ることができます。

さらには、広告宣伝費の削減も検討しましょう。ライバルのホテルはほとんどが宿泊予約サイトに依存しています。そこで、こうした予約サイトの活用なしでも国内やインバウンドの顧客が集まる仕組みを考えるようにしましょう。

いくつか案を記しましたが、もちろん他にもコスト削減アイディアは存在します。ただ宿泊業の場合、ここに記した基本的な方法を試すだけでも、年間で1,000万円以上の経費削減を達成するのは難しくありません。固定費削減による威力は非常に大きいため、早めに経費削減による経営改善を行いましょう。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。