すべての法人経営者や個人事業主で重要なのが経費削減です。固定費削減を行うことによって、すぐに利益が上昇するようになります。
ただ、多くの経営者でダメなコスト削減を実施しているのが実情です。人件費に手を出したり、商品の品質に関わる部分のコスト削減をしたりするのです。こうして社員のモチベーションが下がり、商品の質が悪くなります。
そうではなく、人件費以外の固定費削減によって人件費に手を付けず利益上昇できないかを考えなければいけません。やってはいけない経費削減に手を出すと、会社経営が傾くようになります。
それでは、正しい経費削減の方法としては何があるのでしょうか。ここでは、人件費以外の経費削減方法について解説していきます。
もくじ
モチベーションや質の低下なしにコスト削減を行う
何でもいいから固定費削減を行えばいいわけではありません。法人や個人事業主だと、特に経費が大きくなりやすいのが人件費です。そのため人件費カットを多くの経営者が考えます。ただ給与カットをしたり、意味なく残業代を削減したりすると社員のモチベーションが低下するのは必然だといえます。
下手に人件費を削減してモチベーションが低下すると、次々と社員がやめていくようになります。労働環境が悪い場合、他の会社に転職するのは必然だといえます。
もちろん、売上や品質の低下を招く経費削減も微妙です。法令違反するコスト削減をしてもいけません。これらはお客さんを泣かせるだけでなく、あなたの会社の信用を落とし、さらには社員のモチベーション低下にもつながります。つまり、良いことが一つもありません。
コスト削減というのは、何でもいいから実施すればいいわけではありません。やってはいけない経費削減が存在するため、正しい方法によって固定費削減を考えるようにしましょう。
質を落とさずに経費削減するのが正しい
本来、コスト削減というのは「無駄のカット」を意味します。つまり経費削減によって不満が出るのではなく、社員を含めて全員が幸せにならなければいけません。
- 経費削減をした結果、仕事の効率化が進んだ
- 特に質は変わっていないが、経費だけが下がった
これが本当の意味での固定費削減です。「特に仕事内容に変化がない」「むしろ仕事の効率が上がった」という状況であるものの、全体のコストが下がっており、利益が出ている形でなければいけません。それ以外はコスト削減しているとはいえません。
こうしたことが可能な、人件費以外の経費削減法としては以下があります。
電気会社の見直しでリスクなしに固定費削減する
経費削減の中には、労力なしに毎月の固定費だけ下落できる方法があります。人件費以外の経費削減として、こうした方法に最初から着目しなければいけません。その方法の一つが電気代削減です。
電気代削減の方法としては、電力会社の切り替えがあります。東京電力や関西電力など、その地域の大手電力会社以外はすべて新電力会社といいます。いまでは新電力会社は何百と存在し、あなたのビジネス地域に対応する50~100社の電力会社に対して競争入札をかけるのです。
利用する電線は同じであり、発電所も同一です。違うのは小売価格だけであり、品質が同じにも関わらず値段だけ下落できます。
こうした電気代削減は自宅兼事務所の法人や個人事業主であっても利用できます。ただ、当然ながら賃貸オフィスや自社物件の規模が大きくなるほど、電気代削減の効果が大きくなります。
例えば、以下は社員17人ほどの食品加工工場にて電気代削減をしたときの最終見積もりです。
この法人では年間で459万3812円の電気代でした。それを年間で約64万円を削減し、約14%の削減率になりました。このように電力会社の切り替えをするだけで、社員のモチベーションを下げずに固定費削減が可能になります。
損害保険の見直しは経費削減で必須
また損害保険の見直しもしましょう。すべての法人にて、損害保険を利用しているからです。たとえ一人社長であったとしても、賃貸オフィスでは火災保険に加入しています。
これが店舗をもつ会社であったり、工場をもっている会社だったりする場合、建物や敷地の面積が大きくなるので火災保険の金額は高額になります。火災や台風、土砂崩れなどの災害が起こったとき、カバーしてくれるのが火災保険であり、これを見直しましょう。
もちろん損害保険は他にも種類があります。例えば店舗をもつ場合、どの会社や個人事業主も賠償責任保険に加入するのが大原則です。賠償責任保険があるからこそ、「施設内でお客さんがケガをした」「提供した食事で食中毒が発生した」などのときに補償がおります。
これら損害保険については、補償内容はほぼ同じであるものの、見直しによって以下の保険料金額のコスト削減が可能です。
- 火災保険:10~30%を削減
- 賠償責任保険:30~60%を削減
- 火災保険と賠償責任保険の両方:50~60%を削減
損害保険についても、デメリットがほぼ存在しない手法です。人件費以外の固定費削減としては、非常に効果的な手法です。
Web会議やペーパーレス化でIT化する
仕事の効率化を検討することについても、会社の経費削減で非常に重要です。例えば、無駄な移動費をなくすようにしましょう。
例えば会議をするとき、どのように実施しているでしょうか。一般的には、以下のように毎回人を集めて対面にて会議を開催します。
ただ、そのためにはいろんな場所から人を集めなければいけません。しかし、それでは移動費がかかります。支店が一つしかなかったとしても、会議が始まる時間は必ず店舗にいなければならず、社員は出先で別の仕事を行うことができません。そのため、こうした拘束によって仕事効率が悪くなります。
そこでWeb会議を導入すれば、交通費の支出がゼロになります。また社員を移動させるとなると、多くは1日がかりになるので従業員は他の仕事に時間を割くことができません。一方でWeb会議なら、会議終了後すぐに本業に取り掛かれるため、労働コストについても削減できます。
また一つしか支店がなかったとしても、社員は出先からWeb会議に出席できます。わざわざ、会議のためにオフィスに拘束される必要はありません。
こうしたIT化はコスト削減に効果的です。他にもペーパーレス化は非常に効果的な経緯削減です。実際のところ、多くの会社で無駄な紙の書類があります。例えば、有給休暇の申請で以下のような書類を社員に書かせていないでしょうか。
多くのハンコが必要であり、わざわざ紙の書類を印刷させて上司にチェックさせるのは無駄でしかありません。紙代やトナー代が無駄なのは当然として、社員は意味のない書類作成に時間を取られて本業に集中できません。
しかも先ほどの書類では、すべての社員が法律で認められている有給休暇を申請するにも関わらず、有給休暇を申請するための理由まで書かせるようになっています。
コスト削減に成功している会社では、こうした無駄をすべて省いています。必要のない作業については、積極的になくすようにしましょう。
自社サイトやSNSの利用で広告宣伝費をカット
他に重要な経費削減が広告費です。毎月の広告費が高額であったり、下請け体質だったりしていないでしょうか。この場合、広告費によって利益がほとんど残らないのは当然だといえます。
高利益体質の会社であるほど、自ら集客をします。しかも集客するとき経費をかけず、すべて無料で行います。いまの時代、インターネットを利用すれば無料で集客できる方法はいくらでも存在するからです。例えば、以下の媒体があります。
- 自社サイト
- SNS(YouTube、Twitterなど)
自社サイトを保有している会社は多いです。ただ実際のところ、アクセス数はほぼゼロです。そこでお客さんにとって有益な記事コンテンツを量産することでアクセスを集められるようになれば、その後は無料で集客し続けることができます。
またはYouTubeやTwitter、インスタグラムなどのSNSを利用することによっても質の高い顧客を無料で集客できます。例えば私もSNSを利用していますが、以下は私が実施している節税コンサルティングで問い合わせが来たときのメール内容です。
私のYouTubeを視聴している人からサイト経由で問い合わせがきました。私の会社ではWeb集客やSNS集客を広く実施しています。広告費はまったく支払っていませんが、このように無料にて大量の集客ができています。
なおこうした無料集客を行うためには、社長自らサイトやSNSの更新を頑張らなければいけません。社員にサイトやSNSの更新を任せて無料集客に成功している企業は、誰もが知っている東証一部上場の会社くらいしか存在しません。中小企業では、社長主導でWeb集客を頑張るからこそ無料にて成功できます。
経営者が努力することで広告費をカットできるのは、人件費以外で経費削減できる効果の高い手法といえます。
節税で会社にお金を残す
また人件費以外でコスト削減をするとなると、節税も視野に入れるようにしましょう。無駄な税金もコストと同じなので、これらを削減することで高額なお金を手元に残すのです。
注意点として、節税の多くはお金の支払いが発生します。そのため節税のやり過ぎによって資金繰りが悪くなっている場合、そうしたダメな節税はしないほうがいいといえます。
そうではなく、本当の意味で効果的な節税法を実施して無駄なコスト(税金)を削減しなければいけません。こうした節税法はたくさんありますが、代表的なものとしては例えば以下があります。
※個人事業主は利用できず、法人のみ活用できる節税法です。
役員賞与(ボーナス)で社会保険料を削る
社員ではなく、役員に対する無駄な社会保険料を削る手法が役員賞与(ボーナス)の活用です。役員報酬ではなく、ボーナスとして役員に給料を出すのです。
給料に対して、約30%という異常なほど高額な税金を課せられるのが社会保険料です。ただ社会保険料を支払うとき、税金を課せられる上限があります。ボーナスであれば、以下の金額が上限です。
社会保険の種類 | 賞与の上限額 |
健康保険 | 573万円 |
厚生年金 | 150万円 |
例えば厚生年金であれば、150万円を超えたボーナス部分については社会保険料を課せられません。つまり高額なボーナスを出せば出すほど、社会保険料を課せられない無税部分が増え、税金を削減できるようになります。
例えば「役員報酬月60万円」と「役員報酬月5万円+賞与660万円」では、年収ベースで両方とも720万円です。このとき、後者だと社会保険料を一人あたり年130万円カットできます。社長に対する年間の給料の額は同じですが、これだけの高額な経費削減が可能になります。
倒産防止共済や法人保険で帳簿外の貯金を作る
同時に利益の繰り延べも行いましょう。こうした利益の繰り延べとしては、倒産防止共済や法人保険があります。
利益の繰り延べでは、実際にお金を支払うことになります。そのため会社からお金が消えます。ただ、お金が消えた分だけ法人税を減らすことができ、帳簿に載らない貯金として取っておくことができます。
利益の繰り延べは貯金と同じなので、お金が必要になったときは倒産防止共済や法人保険を解約して会社内にお金を戻せば問題ありません。これによって、節税した分だけ大幅な税金コストをカットできます。
例えば倒産防止共済の場合、最高で年間240万円の支払いが可能です。以下は私の会社が240万円を倒産防止共済に支払ったときの領収書です。
支払ったお金は全額経費にすることができ、将来は解約時に100%が返ってきます。国の制度でもあり、デメリットが存在しないのが倒産防止共済です。
こうした制度を利用して節税し、税金(コスト)を減らしながら将来必要な貯金を作ることも重要な経費削減の方法です。黒字企業でなければ無理ですが、赤字企業以外は積極的に実施しましょう。
固定資産税の削減&還付を行う
他には、不動産を保有する法人や個人事業主の全員が意識するべきポイントが固定資産税です。不動産を保有していると、毎年高額な固定資産税を課せられてしまうのです。
一般住宅の場合は稀ですが、ビジネス目的で利用している不動産の場合、非常に高い確率で固定資産税の計算ミスが起こっています。これは、役所の人間が税金計算の素人であり、どのように固定資産税を計算するのか理解していないにも関わらず、不動産の評価をしなければいけないからです。
例えば、以下は総務省が公式に発表している調査内容であり、毎年93%以上の自治体で固定資産税の計算ミスが発生しています。
出典:総務省(固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果)
ここから、日本中に無数に存在する大小の自治体のうち、ほぼすべてで計算ミスが多発していると理解できます。例えば、以下のケースでは税金の過払いが頻発しています。
- マンションやビル、工場、ホテルなどの不動産を保有している
- 一階が店舗だが、二階以降は住宅
- 敷地内に私道がある
- 介護施設を経営している
これらは一例ですが、事業用の土地・建物は不動産評価額の計算が非常に複雑です。そのため正しく役所が評価額を計算できていないケースがほとんどなので、これを指摘することで毎年の固定資産税を減額できます。
こうした節税効果だけでなく、固定資産税の場合は過去20年にさかのぼって還付申請することができます。過払いの税金まで取り戻せるため、人件費以外のコスト削減として不動産の保有者は必ず実施しましょう。
やる気の低下に直結しないコスト削減が重要
利益を出すために重要な経費削減ですが、多くの経営者がダメなコスト削減を実行している事実があります。実際、人件費への着手を最初に考えてはいないでしょうか。ただ、そうしたコスト削減は最悪です。
そうではなく、最初は人件費以外の固定費削減を真っ先に考えなければいけません。そうした手法は無数に存在しますが、ここでは非常に効果的な人件費以外のコスト削減法を紹介しました。努力がまったく必要のない手法があれば、広告費削減のように経営者の努力が必要な経費削減の方法もあります。
いずれにしても、これら人件費以外のコスト削減を試しましょう。人件費に手を出すのは、一番最後でなければいけません。社員のモチベーションが低下することで士気が下がるからです。
従業員のやる気や商品・サービスの質を下げずに固定費削減するのは可能です。どのような方法を実施できるのか理解したうえで、正しくコスト削減するようにしましょう。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。