非常に利益率の低い業界がスポーツジムです。ジム・スポーツクラブとして経営している場合、利益率が4~5%ほどとなるのが一般的です。少し頑張っている会社でも8%ほどの利益率です。

なぜ、このように多くの会社で利益がほとんど残らないようになっているのでしょうか。この理由は単純であり、スポーツ業界では他の業界のような効率化がまったく進んでおらず、無駄な費用を払い続けているケースが多いからです。

そこで少しでもコスト削減の概念を取り入れれば、大幅な経費削減が可能です。利益率を10%超にできるのは当然であり、少しの努力で実現できます。

どのようにして、スポーツジム経営で高利益体質にすればいいのでしょうか。ここでは、ジムやスポーツクラブを経営するにあたり、どう固定費・変動費削減をすればいいのか解説していきます。

スポーツジム経営で必須のコスト削減法

多くのジム経営者がコスト削減を正しく実践していません。そのため利益率は非常に低いですが、売上を増やすよりも経費削減をするほうが圧倒的に簡単に利益を増やせます。

事実、スポーツジム経営をしている上場会社の中には、営業利益率が27%超となっているケースがあります。つまり、こうした高利益体質が可能というわけです。

  • フィットネスジム
  • スポーツクラブ
  • スポーツジム
  • ヘルスクラブ

これらについて、やり方を変えればすべて高利益体質にできます。

もちろん無意味にトレーナーの数を減らしたり、戦略なしにコスト削減したりするわけではありません。お客さんの満足度を低下させず、売上に影響を及ぼさない部分について経費削減をする必要があります。むしろ、経費削減によってお客さんの満足度を上げなければいけません。

そのためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 顧客管理を自動化する
  • 器具・トレーニングマシンで新品をなくす
  • トレーナーの外注化を取り入れる
  • 無料集客の仕組みを作る

これらについて、すべて実践しましょう。それぞれの内容はどのようになっているのでしょうか。

完全自動化にて顧客管理・支払いの仕組みを作る

ビジネスでは可能な限り自動化しなければいけません。スタッフをたくさん配置するのではなく、人が張り付いていなくても勝手にビジネスが回る仕組みを経営者が作るのです。

そうしたとき、顧客の予約やキャンセル、支払いはすべてWeb上にて完結するようにしましょう。いまでは無料で予約管理システムを作ることが可能です。また月会員としてジムを利用したい放題にする場合であれば、そもそも入店時に毎回チェックする意味はありません。

また支払いをすべてカード決済(または自動の銀行引き落とし)にすれば、入金管理のチェックがありません。当然ながらレジを設置する必要はなく、すべてWeb上で管理できます。閉店後にお金の合計が合っているかどうか確認する必要もなく、会計コストも省略できます。

スポーツジムについて、トレーナーの人数を減らすのは微妙です。ただそれ以外の無駄な受付スタッフはゼロにできます。それだけで高額な人件費をカットできるので、可能な限りIT化による自動化を推し進めましょう。

器具や備品、トレーニングマシンは中古で十分

また既に開店して器具や備品、トレーニングマシンをすべてそろえている場合だと関係ないですが、新規出店するときはできるだけ開店コストを下げるようにしましょう。

このとき、日本人だと新品を購入する傾向にあります。ただ、経営において新品を購入する意味はありません。中古品で十分です。新品であっても利用した瞬間から中古になりますし、利用客はトレーニングジムやフィットネスジムにある備品について、「中古品だから微妙」と考える人などいません。

そこで、こうした器具や備品、トレーニングマシン類は積極的に中古品を利用しましょう。

参入障壁の低さから多くの人がスポーツジム業界に参入するものの、利益率が低いためすぐに撤退していきます。そのため以下のように、トレーニングマシンなどの中古品を取り扱っている業者はたくさんあります。

高価なトレーニングマシン類について、新品で購入する意味はゼロです。フィットネスジムやヘルスクラブ、スポーツジムを経営するのであれば、中古に目を向けて無駄なコストを減らしましょう。

インストラクター・トレーナーを積極的に外注化して節税する

節税することもジム経営で重要です。その中でも、非常に高額になりやすいコストとして社会保険料や消費税があります。

インストラクターやトレーナーを削減するのは無理です。ただ、雇用形態であれば調整可能です。例えばトレーナーについて、社員として雇う場合だと以下の税金が上乗せされます。

  • 社会保険料:会社負担は給料の約15%
  • 消費税:給料10%分の支払い(給料を出しても消費税分を減らせない)

要は給料を支払うほど、高額な税金が上乗せされると理解しましょう。

一方でこれを外注費にすれば、これらすべての税金支払いが発生しません。そこでインストラクター・トレーナーについて、一部でも外注化が可能なのであれば、積極的に採用したほうがいいです。給料に課せられる税金は非常に高額なので、削減効果は大きいです。

また給料よりも高めのお金を外注費として支払ったとしても、無駄な税金を減らす効果のほうが大きいため、トータルでは大きな経費削減となります。

集客を無料で行い、広告宣伝費をカットする

また広告宣伝費をゼロに近づけましょう。ジムやスポーツクラブだと地域密着でのビジネスになるため、無料集客が非常に簡単だからです。

商圏が限られているビジネスであるほどWebを用いた無料集客は楽です。どれだけ優れた店舗があったとしても、そうした優良店が自店の周囲に存在しなければ特に影響はないからです。またお客さんは自分の家または勤務先などから近いジムを探すため、そうした人に見つけてもらえばライバル店に簡単に勝てます。

そうしたとき、お客さんは必ず地名を入れて検索します。以下のような感じです。

  • 名古屋市港区 フィットネスジム
  • 立川駅 スポーツクラブ

地名が必ず入る理由としては、前述の通り「見込み客は自分が通える範囲のスポーツジムを探している」からです。そこで見込み客が検索したとき、あなたの店舗が引っかかるように工夫しましょう。特定のターゲット地域に特化してWebサイトを作れば、検索結果の上位に表示されてお客さんに選んでもらえます。

同様にSNSで積極的に日々の様子や地域情報を発信すれば、ターゲットとする地域に住んでいる人に対してアプローチできます。こうして無料集客の仕組みを作れば、スポーツジム運営での費用は大幅に下落できます。

固定費(維持費)を減らすジム経営の方法

これらのポイントに加えて、あらゆる業界で広く実施されている固定費削減についても積極的に行いましょう。

ここまで解説したことについては、あなた自身による経営努力が必要です。ただ維持費を減らす方法の中には、コスト削減の専門会社に依頼するだけで簡単に実現できる項目も存在するのです。例えば、以下のような内容になります。

  • 電気代を減らす
  • 損害保険料を削減する
  • 賃料を下落させる

なぜ努力なしに維持費を減らせるのかを含めて、どのように考えればいいのか確認していきます。

電気代(光熱費)の大幅下落が可能

多くの店舗にとって、高額になりやすい毎月の固定費が光熱費です。光熱費の中でも、特に高額なのが電気代です。

電気代の大半は空調が原因です。ただクーラーや暖房を弱くするのは微妙です。お客さんにとって、空調の弱いスポーツジムは最悪だといえます。つまり、電気使用量を減らすことによる電気代の節約は不可能です。

一方で電力会社の切り替えなら可能です。日本には何百という中小の電力会社が存在します。こうした電力会社と契約することによって、電気代が大幅に減るのです。このときは電気代削減サービスの専門会社を利用することで50社以上の電力会社から一気に競争入札させ、最安値で契約するのが一般的な方法です。

例えば、以下は一つの建物について電気代削減をしたときの最終見積もりです。

この会社の場合だと、年間で78万7644円の電気代を利用していました。これが年65万627円となり、合計で17.4%の電気代削減となりました。

電力会社の見直しでは、一般的に平均15%ほど安くなります。そこで光熱費を見直したいスポーツクラブでは、固定費削減のために電力会社の見直しをいますぐ行いましょう。

損害保険の見直しで維持費が下落する

またジム経営をする場合、損害保険にも加入するのが基本です。メインは火災保険と賠償責任保険になりますが、これらの保険料の削減を考えましょう。

賃貸物件にてスポーツジムやフィットネスクラブを開業する場合、火災保険への加入は必須です。そうしなければ賃貸契約できません。

また賠償責任保険に加入していれば、ジム内で事故が起こったとしても補償されます。「トレーニングマシンが急に故障し、利用者がケガを負った」「トレーナーの指導中に誤って生徒を骨折させてしまった」などの事態が起こったとしても、賠償責任保険に加入していれば安心です。

ただ、必ず保険会社の切り替えによって値下げをしましょう。保険料は各社が自由に設定できるのが基本であり、切り替えであれば「補償内容は同じだが保険料を大幅に下げる」ことが可能だからです。

例えば以下は、一つの施設について火災保険を見直したときの最終結果です。

施設が大きめだったため保険料は高めですが、一年で304万9,560円の火災保険料です。それを見直したことによって、年249万1,320円にコスト削減できました。年55万8,240円の固定費削減であり、約18.5%の保険料下落です。

仮に運営しているスポーツジムの利益率が5%の場合、この経費削減だけでも年間売上で約1,116万円に相当します。そのため、見直しをやらないほうが損をしているといえます。

交渉によっていますぐ家賃を下げられる

さらに家賃についても下げることを考えましょう。やり方は単純であり、大家または管理会社と交渉することによって賃料を下落させます。リフォームしない限り、日本は建物など不動産価格が年々下落するのが当然です。そのため契約更新のたびに賃料が下がっていない場合、高確率で高い家賃になっているといえます。

ただ当然ながら、あなたが自ら大家や管理会社に直訴しても断られます。そこで、家賃適正化サービスを広く実施している専門会社に依頼しましょう。

なお、利用条件としては以下のようになっています。

  • 月30万円以上の賃料を支払っている(複数店舗を合計可)
  • 2年以上、同じ物件で契約している

これについては、小さいジムを一店舗だけ経営している人でない限り、ほとんどのジム経営者が条件を満たしていると思います。そのため、多くの人が利用できます。

参考までに、家賃交渉による平均削減率は11%です。わりと高額な賃料削減が可能であり、やることは専門会社に依頼するだけなので、店舗維持費を削るために必ず実施しましょう。

スポーツジム経営で経費削減をするのは必須

経営で重要なのは利益を残すことだといえます。そのために経営者は集客や売上拡大を目指しますが、それだけでなくコスト削減を考えましょう。

ジムやスポーツクラブだと、あなたが思っている以上に無駄な固定費・変動費が多いです。そこで、さまざまな維持費を減らすようにしましょう。

IT化を進めれば人件費をカットできます。またトレーニングマシンは中古で十分ですし、無料集客の仕組みを作れば広告宣伝費はほぼゼロになります。さらには、外注化のシステムを作れば、大幅な節税が可能です。こうした経営努力をしましょう。

それだけでなく電気代や損害保険料、家賃などの固定費も含めて経費削減するといいです。これらを実施していけば利益率が10%以上になるのは当然であり、高い収益性を実現できるようになります。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【貨物保険】

貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。