あらゆるビジネスの中でも、圧倒的に利益率が低く、儲かりにくい業態が小売店です。スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストア、百貨店を含めて利益率が1~2%なのは普通です。大手であっても利益率がほぼ0%になるのは普通であり、少し売上が悪いと簡単に赤字になります。

こうした利益が出ない中で小売店はビジネスをしていく必要があり、そのためにはコスト削減を積極的に行わなければいけません。

ただ、固定費・変動費削減をするにしても正しい経費削減の方法を理解している小売店は少ないです。どちらかというと、質を下げるコストカットをしているケースが多く、これは経費削減とはいえません。

そこでスーパーマーケットなどの小売店が行うべき経費削減について、どのように考えて実施すればいいのか解説していきます。

質を落とさない小売店経営が必須

利益を出すことを考えるとき、売上をアップさせるよりもコスト削減による対策をするほうが圧倒的に簡単です。例えば利益を10万円上乗せするにしても、スーパーのように利益率1%が普通の業態であれば、1,000万円の売上を作らなければ利益10万円を生み出すことができません。

一方で経費削減によって10万円を減らすことで、利益を作ることは簡単です。これが、すべての経営者で固定費・変動費削減を考えなければいけない理由です。

ただコストカットをするとなると、「品質低下を招く経費削減」を考える人が非常に多いです。しかし、それは経費削減ではありません。お客さんに対する満足度を低下させない経費削減でなければ意味がありません。例えば、以下のような対策をしましょう。

  • 家賃交渉で賃料を安くする
  • 自動化を推し進めて人件費を減らす
  • IT化によって広告宣伝費を下落させる

スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストア、百貨店などの小売店では基本的な内容ですが、まだ試していないのであればいますぐ行うようにしましょう。

家賃交渉で賃料を大幅下落させる

小売店を経営する場合、必ず店舗を構えなければいけません。このとき自前で土地や建物を保有するケースは少なく、賃貸にて毎月の家賃を支払うのが基本です。

そうしたとき、スーパーマーケットなどの小売店であれば同じ場所で何年もビジネスをすることになります。このときの家賃について、最初の契約時から下落していないのであれば、ほぼ確実に毎月の賃料を引き下げることができます。

リフォームをしない限り、日本では建物価値が毎年減少していきます。土地についても、価格が上昇することはあるものの、多くは下落していきます。そうした状況にも関わらず、家賃が契約更新のたびに安くなっていない場合、相場よりも高額な家賃になっているケースが多いです。

そのため家賃交渉で固定費を減らせますが、あなたが大家や管理会社と交渉したとしても値下げはほぼ無理です。そうではなく、家賃交渉を専門で行う会社に依頼しましょう。例えば以下は、法人について家賃最適化サービスを実施したときの最終見積書です。

この会社では月の家賃が6130万6922円でした。そこで家賃交渉をした結果、月544万7351円の減額に成功しました。削減率は8.8%であり、年間の経費削減額は6536万8212円です。

通常、家賃最適化で削減できる金額は平均11%です。そのため相場よりも低めの削減率でしたが、それでもこれだけインパクトの大きいコスト削減が可能になります。

自動化によって人件費をカットする

またスーパーマーケットなどの小売店で非常に大きい経費が人件費です。例えば営業時間が9:00~22:00として、レジ要員のアルバイトを1人雇うだけでも都市部なら以下の経費です。

  • 時給1000円 × 13時間 × 1人 × 365日 = 474万5,000円

一人のアルバイトを削るだけでも、年間でこれだけの経費削減が可能なことを意味しています。売上でいうと4億7400万円のインパクトがあるため、必ず行わなければいけないコストカットです。

ただ意味なく人件費を削減すると、むしろお客さんの満足度が下がって売上減になり、経営が成り立たなくなります。そこで、積極的な自動化をすることによって「そもそも社員がいなくても問題なく店舗運営できる仕組み」を作りましょう。

例えば、いまでもレジに多くのスタッフを配置し、顧客一人ずつ会計を済ませている店舗が多いです。これについて、自動化できないでしょうか。

  • 入金・お釣りの部分だけ機械でしてもらう:セミセルフレジ
  • 商品の会計を含め全てお客さんにしてもらう:セルフレジ

一般的なアイディアではあるものの、これを導入するだけでも何人ものアルバイトスタッフを削減できます。またお客さんは待ち時間が減り、満足度が向上します。

分かりやすいアイディアの一つではありますが、これと同じように「いままで人がしていた作業を自動化できないか」を考えましょう。こうした対策をした後であれば、正社員やアルバイトの人数を減らすことができ、結果として大幅なコストカットにつながります。

広告宣伝費をIT化で下落させる

コスト削減では広告宣伝費も工夫しましょう。変動費で非常に大きな割合を占める広告宣伝費ですが、広告についてIT化させれば大幅なコスト減になります。

小売店にとって古典的な広告は新聞折り込みやポスティングです。特売のチラシをばら撒けば、確かに集客効果は高いです。ただ、どうしても高い広告費になってしまいます。また新聞折り込みやポスティングでは、売上に関係しないお客さんに対してもアプローチすることになります。

そこで、実際にあなたの小売店を利用している人に限定して広告を出すことを考えましょう。要は、メルマガなどのITツールを利用することによって、実際に店を利用してくれている人だけに直接広告を送るようにするのです。

こうしたメルマガなどのITツールを利用するといっても、月3,000~5,000円ほどで可能です。またお客さんには「登録後に届く電子チラシを提示すれば、毎回必ず0.3%引きにする」など、何かしらのインセンティブを与えれば非常に多くの人が登録してくれます。

スーパーマーケットなど、小売店だと大手でない限り一般的な広告宣伝費は売上の2~3%です。既に名前が知られている大手は1%ほどの広告宣伝費ですが、そうでないと広告費の割合が高くなるため、これを削るように努力しましょう。

仮に広告宣伝費が3%だとすると、そのうち電子広告を利用してくれた人に対して0.3~0.5%ほどの還元をするのは特に問題ないはずです。また既存顧客の多くがメルマガなどに登録してくれれば、チラシを利用した広告費を大幅に下げても特に問題ないといえます。

電気代の削減で店舗運営の費用を減らす

また、他の業界で広く行われている経費削減についても必ず行うようにしましょう。こうしたコストカットの方法に電気代削減があります。

もちろん電気代を減らすとはいっても、使用量そのものを少なくするのは無理です。照明を暗くしたり、空調を弱くしたりすると、お客さんは確実に離れていきます。そうではなく、他の方法によって大幅に電気代を減らすことができます。

これについては、電力会社を見直しましょう。日本には多くの電力会社が存在し、中小を合わせると何百社にもなります。そこであなたの店舗がある地域に対応した電力会社について、50社以上から競争入札を受けることで最安値にて契約するのです。

ただ複数店舗をもつ法人だと、いろんな場所に店舗があってそれぞれで契約しなければいけないので手続きが面倒です。しかし専門の電気代削減会社に依頼すれば、これらをすべて代行してくれるので、それぞれの店舗にて最安値の電力会社を選べるようになります。

参考までに、以下は法人について電気代削減をしたときの最終見積もりです。

この会社については、年間で1629万5172円の電気代となっていました。そこで電力会社について競争入札をかけた結果、年間で約249万円の電気代を減らすことができました。

スーパーマーケットやコンビニ、百貨店など小売だと必然的に電気代は高くなりますし、店舗数が多いとそれに伴って経費は高額になりやすいです。そこで、最も安い電力会社と契約しましょう。

固定費削減に損害保険料の見直しは効果的

同じく高額な固定費として、損害保険料があります。すべての店舗にて損害保険を掛ける必要があり、そうしなければ適切な店舗経営ができません。

小売店の場合であれば、得に重要なのが火災保険と賠償責任保険です。賃貸として入るにしても、火災保険の契約はどのような場合であっても必須となるのが基本です。

また賠償責任保険に対して、あらゆる小売店が加入しています。賠償責任保険があれば「小売店で提供した惣菜で食中毒が発生した」「店内の床が濡れていて、お客さんが転んだ」などの事故があったとしても補償されます。

そこで、損害保険会社の切り替えによって保険料を安くしましょう。例えば以下は火災保険について見直しをした事例になります。

この会社では年間で304万9,560円の火災保険料でした。そこで損害保険会社の切り替えをすることで年間の保険料は249万1,320円になり、固定費が年55万8,240円減りました。保険料の削減率は18.5%です。

損害保険はそれぞれの会社が自由に値段を付けられるようになっています。そのため保険会社の切り替えであれば、「補償内容は同じだが大幅に値段を下げる」ことが可能になっています。この方法については誰でもいますぐ可能なので、早めに実施するようにしましょう。

小売店で業務改善し、利益を出す

ビジネスで利益を出すためには、売上の拡大だけでなくコスト削減も意識しましょう。経費削減では業務改善が必要になることはあるものの、特に努力なしにコストカットできる項目も存在します。

このときコストカットによってサービスの質を落としてはいけません。そこで家賃交渉によって固定費削減したり、自動化による業務改善をしたりしましょう。小売店では不動産の規模が大きく、スタッフの数も多くなりがちなので、これについてはわりと簡単に行えるはずです。

これに加えて、電気代や損害保険など「他の業界についても広く実施しているコスト削減法」を活用するといいです。これについて労力を伴う業務改善は必要なく、いますぐ誰でも可能です。

スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストア、百貨店など小売店は多いです。こうした会社は利益が出にくいからこそ、これらの経費削減を積極的に推し進めるようにしましょう。


法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。

新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。

もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。

【自動車保険】

車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。

【火災保険】

店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。

【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】

賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。

【貨物保険】

貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。

【取引信用保険】

法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。