歯科クリニックの経営者は非常に多く、知っている通り競合だらけの業界が歯科医院です。そのため売上を出すことは当然として、経費削減によって利益を出さなければいけません。
コスト削減をすれば簡単に利益が上昇します。ただ経費削減の方法を勘違いしている院長は多く、例えば「材料費を積極的に抑える」「人件費を下げる」などを考えるケースがほとんどです。ただ、こればかり考えると確実に経営がとん挫します。
そうではなく、歯科クリニックは医療の質とは関係ない部分にてコスト削減をしなければいけません。要は医療の質に関係する固定費削減によって、スタッフや患者さんに悪影響を与えてはいけないのです。
それではどのようにして、医療の質に影響を与えずにコスト削減すればいいのでしょうか。そのようなことが本当に可能なのでしょうか。ここでは、歯医者として医院運営している経営者がどのようにコスト削減をすればいいのか解説していきます。
もくじ
材料費削減など医療の質の低下は考えない方がいい
誰もが思いつく方法であり、さらには多くの経営者が既に実施している経費削減として材料費の価格低減があります。医療材料を購入するとき、いまよりも安い材料を探そうとするのです。また卸会社などそれぞれの会社によって値段が異なるため、同じ商品であっても値段を比較することで安い価格で仕入れることができます。
ただ、値段の比較については既に実施していると思います。これ以上の仕入れ価格下落が難しい状態になっているケースが多いです。
また質の低い材料にする場合、当然ながら医療の質が低下します。「ほぼ同じ材料であるものの、値段だけ安い」という場合であれば積極的に交換すればいいものの、実際のところそうしたケースは稀なので、安い材料にすると患者さんに最適な医療を提供しにくくなります。
他には医療材料の使用量をケチるという方法もありますが、医療スタッフから反発が出るようになります。材料費の削減は誰でも簡単に思いつき、すぐに実行できるコスト削減法ではあるものの、実際のところ限界があります。
・在庫低減やその他のコスト削減は限界がある
同じことは他の項目にもいえます。例えば、在庫低減によってキャッシュフローが大幅に改善されます。2ヵ月分の在庫を抱えており、その金額が160万円なのであれば、1ヵ月分に減らすことによって80万円となります。当然、その分だけ資金繰りが良くなります。
ただ在庫量を正確に予測するのは複雑な在庫管理システムを導入している大企業であっても不可能です。当然、中小の医療法人が行えるわけがありません。適正在庫量の予測はコスト削減で頻繁にいわれますが、言うのは簡単であっても、実際に行うのは不可能に近いといえます。
またいまの時代、紙の薬歴を利用している医療法人はほぼ存在せず、既に電子レセプトになっていると思います。こうしたコスト削減を実施していない場合は論外ですが、先ほどの材料費削減と同じように、医療に関わることであれば既に行える経費削減を実施しているケースがほとんどです。
給料などスタッフの人件費の削減は無理
同様に歯科クリニックが大きな間違いを犯しやすい固定費削減の項目として、スタッフの人件費があります。ほとんどの歯科医院で歯科医師だけでなく、その他の医療スタッフも勤務しているのが基本です。
歯科医院の経費では、人件費が最も高額になるのは普通です。ただ、歯科衛生士など彼女たちの給料を下げたり、手当の見直しをしたりする場合、すぐに医療経営が立ちいかなくなります。理由は単純であり、辞めていくからです。
女性スタッフの取り扱いが非常に難しいのは、歯科医院の院長であるなら全員が知っていると思います。
平常時でさえ取り扱いが大変なのに、ここに加えて人件費削減をしようとするとスタッフはすぐに辞めていきます。その結果、歯科クリニックの経営が破綻してしまいます。
もちろん、無駄な残業代が発生している場合は「何とかして作業の無駄を削り、残業なしにできないか」を考える必要があります。ただ特に理由なしに人件費に手を出すのは、コスト削減として最悪の方法といえます。
医療と関係ない部分での歯科クリニックの固定費削減
なぜ、ほとんどの歯科医院で経費削減がうまくいかないのでしょうか。この理由は簡単であり、医療に直結する費用ばかりに着目しているからです。材料費を減らしたり、スタッフの給料・手当を削ったりするというのは、医療の質に直接関わります。
ただ本当の意味での固定費削減というのは、「特に社員の不満を増やさず、売上に関係ない部分のコストを減らす」のが正しい方法です。材料費をケチって医療スタッフや患者さんに迷惑をかけている場合ではないのです。
そこで、歯医者として活躍する院長はその他の項目によって高額な固定費削減をしなければいけません。方法はたくさんありますが、代表的な内容としては例えば以下があります。
- 電気代の削減
- 損害保険料の削減
- 家賃または固定資産税の見直し
- Webサイト管理費やコンサルティング代の削減
- 広告宣伝費の無料化
それぞれの項目について確認していきましょう。
価格比較により、電気代削減を行う
すべての歯医者について、簡単に行える固定費削減の一つが電気代削減です。一つの施設でも複数施設でも問題なく、あなたが経営している医療施設について、一気に電気代を下げることができます。
いくらの電気代削減になるのかは歯科クリニックごとに異なりますが、10~30%ほどの電気代削減となります。削減率の平均は15%であり、歯科クリニックの場合は一施設ごとにいまよりも月2~5万円ほど値段が安くなると考えましょう。
安くなる理由としては、電力会社が無数に存在するからです。そこで、あなたの地域に対応する電力会社50~100社に対して、一気に競争入札をかけます。その後、最安値の電力会社と契約しましょう。
参考までに、以下は3つの店舗を有する法人について、電気代削減をしたときの最終見積もりです。
この会社はそれまで、合計の電気代は月36万2077円でした。それが月32万3794円となり、月では約3万8000円のコスト削減となりました。これにより、年間の削減額は約46万円です。
削減率は11%であり、平均削減率よりは低いです。ただそれでも、電気代を見直すだけでこうした大きな違いが生まれます。
損害保険料のコスト削減はすぐに可能
また歯科医院経営をしているのであれば、必ず火災保険や賠償責任保険にも加入しているはずです。賃貸でも自前保有でも、火災保険に加入するのは当然です。また高額な医療賠償に備えるため、賠償責任保険に入っていないと明日にも倒産する危険性があります。
もちろん損害保険には、店舗休業保険など他にも種類があり、こうした損害保険を利用することでビジネスでのリスクを避けることができます。
ただ損害保険はビジネスで非常に有益であるものの、当然ながら保険料の支払いが発生します。ただ損害保険料については、いますぐ20~50%ほどの値引きが可能です。方法としては、コスト削減に優れる損害保険の代理店を通して、損害保険会社の見直しをするだけです。
あらゆる損害保険は補償内容を同じに設計できます。また、値段(保険料)は保険会社が自由に決定できます。補償が同じなのであれば、当然ながら料金が低いほど優れた損害保険契約といえます。そこで、保険会社の乗り換えをするのです。
例えば以下は、賠償責任保険について保険会社の見直しをしたときの結果です。
以前の保険料は年31万7,260円であったものの、それが年26万2,550円となりました。支払っている保険料は高額ではないので削減率は低いですが、それでも損害保険料は17%以上を削減できています。
損害保険料は簡単に固定費削減できる項目の一つなので、院長として医療法人を経営している場合は必ず行いましょう。
家賃の減額または固定資産税の見直しを行うべき
他にも大幅なコスト削減が可能な項目は存在します。それが家賃または固定資産税です。歯科クリニックを経営している場合、必ず歯科医療施設を保有しているはずなので、この固定費を見直しましょう。
賃貸として店舗を借りている場合、既にその場所で2年以上の運営をしているのであれば、家賃の減額が可能です。方法は単純であり、大家(または管理会社)と交渉するだけです。もちろんあなたが交渉しても100%断られるため、家賃削減の専門会社に依頼しなければいけません。
日本では毎年住宅価格が低下します。土地の価格は上がることがあるものの、下がることも非常に多いです。一方で建物の価格となると、リフォームしない限り100%の確率で価値が減っていきます。
それにも関わらず契約更新ごとに家賃が減っていない場合、相場よりも高い賃料になっている可能性が高いです。そのため、価格交渉による家賃低減が可能というわけです。もちろん必ず成功するわけではなく、成功確率は約73%です。
ただわりと高い確率で賃料削減が可能です。成功報酬でプロがこれらを代行してくれるため、リスクなく賃料下落が可能です。
・不動産所有の場合は固定資産税の節税&還付
一方で土地や建物を保有してビジネスをしている歯医者の院長もいます。この場合、賃料は関係ないものの、毎年の固定資産税の支払いがあります。この固定資産税について削減(節税)しましょう。
なぜ固定資産税の低減が可能かというと、高確率で固定資産税の計算が間違っているからです。土地や建物の正しい税金計算というのは、実は一般の税理士ですらできません。不動産に特化した専門家でなければ不可能なほど、非常に複雑な分野が不動産の税金です。
当然、役所にいる素人が正しく歯科クリニックの不動産の税額計算などできません。これが一般家庭の物件であれば間違いは少なくなるものの、ビジネス目的の建物であればマンションや工場、歯科医院を含めてほぼ税金の計算ミスが発生しているのが現状です。
要は、以下の固定資産税の納税通知書の数字が間違っているわけです。
そこで専門家に依頼して税金を正しく計算してもらうだけで、いまよりも固定資産税が減ります。
また、こうした節税だけでなく還付も可能です。役所の職員による計算ミスによって税金の払い過ぎが起きているため、過去の払いすぎた税金を還付金として取り戻せるようになります。これによって資金繰りも改善されるため、必ず固定資産税の見直しをしなければいけません。
Webサイト管理費やコンサルティング代を削る
他には、歯科医院の場合は競合が非常に多いため、頑張って集客しなければいけません。ただこのとき、無駄なコンサルティング費用を支払っている経営者が多いです。
代表的な経費としてはWebサイト管理費があります。特に大幅な更新をしていないにも関わらず、月3~5万円などの維持管理費用を公式サイト運営で取られていないでしょうか。もしそうなのであれば、完全に無駄なのでいますぐカットしましょう。
提携先のウェブ業者にログインパスワードなどを教えてもらい、自分で管理するといいです。いまはよほどの理由がない限り、ワードプレスという無料のサイト作成ツール(インターネットにつながっていれば、全世界どこでも更新できる仕組み)が使われており、誰でも利用できます。
以下は当サイトのワードプレスでの管理画面ですが、あなたが行う作業としては「記事の更新」によって文字を直すくらいです。
私は当サイトを運営していることから分かる通り、いくつかサイトを保有していますが、必要な費用は以下だけです。
- レンタルサーバー代:月1,000円(年12,000円)
- ドメイン代:年1,000円
つまり、月1,100円ほどしか維持費がかかっていません。それにも関わらず、月に何万円もの管理費用を支払うのは無駄といえます。
また契約上の問題で公式サイトを移行できない場合、ゼロから作るといいです。旧サイトへアクセスしたとき、新サイトへ自動的にURL変更するように設定するのは簡単です(リダイレクトといいます)。つまり、新サイトを作ったとしても何も影響はありません。
フリーランスに依頼して10万円も出せば、それなりに優れる公式サイトを作ってくれます。後は、旧サイトに書かれてあったコンテンツの内容をコピペするだけです。これだけでも、年間にして高額な固定費削減が可能です。
自らの集客で広告宣伝費をカットする
なお集客のために広告宣伝費を積極的に出している歯科クリニックは多いですが、この費用について何とかカットできないか考えましょう。
もちろん、いますぐ広告宣伝費を少なくしてはいけません。これをすると、そのまま売上減に直結してしまいます。そうではなく、無料にて集客できる仕組みを考えましょう。
いまではSNSにて情報発信することで、無料にて集客できます。またWebサイトについても、単にクリニックの情報を羅列するのではなく、地名キーワードを用いて有益な記事を書くことで集客することを考えるといいです。例えば、キーワードは以下のようになります。
- 名古屋市南区 虫歯
- 三軒茶屋 歯科矯正
あなたがどのエリアで主にビジネス展開しているのかは分かりませんが、いずれにしてもこうした地名や駅名などを交えて情報発信すれば、非常に簡単に集客できます。確かに歯科医は飽和しているものの、こうした集客をしているライバルは皆無に等しいです。
確かに、歯科医で優れた情報発信をしている人はいるものの、あなたがターゲットとする商圏で情報発信をしている人はゼロのはずです。そのため、こうした地域密着で特定の地域のみビジネスをしている歯科医だと、方法によっては無料にて広告宣伝費なしでの集客が可能です。
ただこの仕組みを作るためには、短くても半年から一年ほどの時間が必要になります。そこで経営者自らこうした仕組みを作ることによって、一年以内に広告宣伝費ゼロにすることを目指すのは経費削減の観点で優れています。
歯科医で重要な固定費削減を実行する
コスト削減が歯科医院の経営で重要とはいっても、ほとんどの経営者がやり方を間違えます。材料費や人件費に着目してしまうからです。こうして医療の質が落ちたり、スタッフの反感を買ったりするようになります。
そこで、経費削減の考え方を変えましょう。医療の質とは無関係の項目について、積極的に固定費削減するのです。これであればスタッフから文句は出ず、患者さんへ提供する医療の質を下げることもありません。
これに気づいていない経営者が多いため、経費削減したにも関わらず、売上も減少することで結果的に利益を減らしてしまいます。
個人事業主であれ医療法人であれ、経営者である以上は正しい経費削減の方法を理解しましょう。固定費削減をするとき、方法によって威力が大きく異なるため、スタッフや患者さんの満足度を下げることなくコスト削減を行うといいです。
法人コスト削減法の中でも、損害保険(自動車保険、賠責・工事保険、取引信用保険、火災保険)の削減を考えるのは重要です。そこで、専門業者を利用することで損害保険の一括見積をしましょう。
新規加入は当然として、既に法人用の損害保険に加入している場合であっても、こうした見積もりによって大幅に損害保険の金額を下落できます。
もちろん、法人によって加入している保険や必要な保険は異なります。そこで必要な損害保険の値下げを考えましょう。損害保険は内容を同じにしつつ、さらなる値下げが可能であるため、いますぐ大幅なコスト削減が可能です。
【自動車保険】
車を法人所有している場合、法人自動車保険の契約・乗り換えをしましょう。自動車保険は高額であるため、コスト削減の威力は大きいです。
【火災保険】
店舗経営者やオフィスを利用している法人であれば、ほとんどの人で火災保険に加入しています。そこで一括見積をすれば、一瞬で保険料の減額が可能です。
【賠償責任保険・工事保険・労災上乗せ保険】
賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険など、損害賠償に備えるための保険は多くの会社で必須です。ただ賠償額が大きいと保険金額も高くなります。そこで、これら賠償責任保険や工事保険、労災上乗せ保険の見直しをして無駄な経費を抑えましょう。
【貨物保険】
貨物自動車の運送事業者について、お客さんから預かった荷物が輸送中に破損してしまうリスクがあります。そこで、物流に関わる事業をしている会社にとって貨物保険は必須です。
【取引信用保険】
法人経営でよくあるリスクが取引先の倒産や一定期間の支払遅延などの債務不履行です。これによって連鎖倒産してしまいますが、取引信用保険を利用すれば貸倒損失リスクを軽減できます。特に売掛金が多い場合、取引信用保険を活用しましょう。