「会社を設立する」「新規事業を生み出す」「出資者に事業を説明する」など、さまざまな場面で事業計画書の作成が必要になります。思いつきのアイデアが実現されるほどビジネスの世界は甘くないため、最初に事業計画書を作るのです。
現実には、ビジネスを開始するために「仕入れ」「商品開発」「事業収支計画」など考慮するべき項目が多数あります。それらの項目に対してあなたがどのように考えているかを具体的に説明することによって、ようやく出資者や協力者の賛同を得られます。
その後、ようやくあなたの事業がスタートすることになります。
そこで今回は、「事業計画書とは何か?」と「事業計画書を書く2つの目的」について解説します。
もくじ
事業計画書とは何か?
事業計画書とは、あなたが思いついた事業を具体的にどう進めていくか、書面であきらかにするものです。書面で事業の全貌を明確にすることによって、あなたは計画に沿った無理のない事業を行うことができます。
例えば、あなたが「インターネットを利用したオンライン文章スクール」の開校を計画したとします。この計画を実現するためには、考慮すべき項目が多数あります。
・顧客にどのようなサービスを提供するか? また、顧客は料金をいくら支払うのか?
・集客はウェブサイトで行うのか? ほかの手段があるのか?
・ウェブサイトで集客を行う場合、サイトの記事は自分で書くのか? あるいは、Webライターに外注するのか
・Webライターに外注するなら、1文字何円で外注するのか? また、どこからWebライターを見つけてくるのか?
・集客した見込み客のうち、何人がサービスを利用するのか?
これら複数の項目を、具体的に書面で明らかにすることが「事業計画書の作成」となります。
事業計画書と企画書の違い
事業計画書と混同してしまうモノに企画書があります。
両者は別のものとして扱うべきですが、組織や文化により企画書の解釈が異なります。そこで、ここでは一般的な企画書の使い方を解説します。
企画書とは、アイデアを書面化したものです。主に企業内や取引先にて、自分がやりたいことを説明して説得するための資料として作成します。
企画書を作成する段階では、具体的にどのようにして企画を実現するのかを示す「実行計画」は必須ではないことが多いです。なぜなら、具体的な実行計画を作成しても、企画そのものが必要のないものなら、実行計画も必要なくなるからです。
そこで、具体的な実行計画を作成するよりも前に、企画の「新規性」「なぜこの企画を行うべきか」などを伝える資料を作成します。その企画が通った後、「資金はいくら必要か」「何人の人材が必要か」などを具体的に検討する詳細な企画書を作成します。
また、企業によっては、事業計画書と同じ意味で企画書を使用していることもあります。一般的に、起業する際の計画は「事業計画書」を使用し、企業内では文化により「事業計画書」「企画書」といった言葉が使われていると理解してください。
事業計画書と経営計画書の違い
そのほかに経営計画書も、事業計画書と混同してしまいがちです。
経営計画書は、会社経営の視点から「業務提携」「資本政策」「組織の再編」などの計画を書面化したものです。経営者が漠然と経営を行うのではなく、自らの計画に沿った経営を行う際に必要になるものです。
しかし、一般的には事業計画書と経営計画書を明確に区別していない会社も多いです。事業計画書の中に経営計画の視点を盛り込むことがあれば、経営計画書に「本来は事業計画書で書面化するもの」が含まれていることもあります。
経営計画書は「今後どのように経営していくかを中長期的に計画したもの」であり、主に経営者が円滑な経営を行うためのものだと考えてください。それに対して事業計画書は「あなたが思いついた事業を具体的にどう進めていくか、書面であきらかにするもの」であり、主に出資者や協力者を説得するときに利用するものです。
事業計画書と創業計画書の違い
他にも創業計画書というものも存在します。創業計画書とは、日本政策金融公庫で創業融資を受ける際の所定書式のことです。日本政策金融公庫に提出する事業計画書が創業計画書であると理解してください。
創業計画書はA3用紙一枚のシンプルな様式であり、以下の8つの項目に対して記入していきます。
・創業の動機
・経営者の略歴等
・取扱商品・サービス
・取引先・取引関係等
・従業員
・借入れの状況
・必要な資金と調達方法
・事業の見通し(月平均)
創業計画書では、「ほかに参考となる資料がございましたら、計画書に添えてご提出ください」と注釈には書かれているのですが、基本的には一枚にまとめるのが基本だと考えてください。金融機関の融資担当者は、限られた時間内で数多くの融資申し込みの審査を行わなければならず、「数枚にわたって読まなければ理解できない事業計画書」を嫌がるからです。
そのため、一枚の創業計画書で明確に説明できる事業のほうが、読み手も事業のポイントを絞りやすくなります。
一方、ベンチャーキャピタル(ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社)や個人投資家から出資を受ける際は、事業計画の「将来性」「新規性」などをアピールしなければならないため、事業計画書の量が多くなることが多いです。目的に応じて、事業計画書を使い分ける工夫が必要になります。
事業計画書を作成する2つの目的
次に、「なぜ事業計画書を作成する必要があるのか?」を知る必要があります。目的を考えずに事業計画書を作成してしまうと、意図したものとは違うものが出来上がってしまうからです。
例えば飲食店経営を行うとき、店舗を開くための物件を決めなければならず、物件をもっている大家に対して新規店舗を開いても問題ないか交渉するために事業計画書を作成するとします。このとき、大家に対して事業の細かい数字まで説明しようと考えるのは間違いです。
大家は事業のプロではありませんので、細かい話はわかりません。また、大家の目線で考えると「犯罪を犯すような人たちではないか?」「毎月家賃を支払ってくれるのか?」が重要です。
そこで「事業が健全なものであること」「事業に継続性があること」などを説明できる事業計画書の作成が必須になります。
このように、目的によって事業計画書の中身は変わります。無駄にならない事業計画書を作成するためには、何のために作成しているのかを強く意識する必要があります。
次に、事業計画書を作成する2つの目的を解説します。
あなた自身が事業を理解するための事業計画書
事業計画書を作る一つ目の目的は、あなた自身が行う事業の詳細を理解するためです。人は、ビジネスモデルを頭の中だけでまとめることが難しいため、紙ベースで落とし込むのです。
また、人はアイデアや思いつきを完璧に記憶しておくことができません。せっかく思いついたアイデアを忘れてしまうのは、本来であれば大成功できたかもしれないチャンスを捨ててしまうのと同じです。
そこで、以下のことを検討して書面で明らかにするのです。
・なぜ、その事業を始めるのかというビジョン
・その事業が顧客にどのような価値を提供するのか
・どのような形でサービスを提供するのか
・どのように収益を生み出すのか
・本当に儲かるのか
こうした作業をすると、「アイデアの素晴らしい点」「検討が不足している箇所」などを客観的に判断することができるようになります。
例えば、あなたがウェブサイトで見込み顧客を集めることを考えたとします。これを実現するためには、当然ながらウェブサイトに記事(有益なコンテンツ)を掲載しなければなりません。
このとき、「記事を外注する」ことを決めることによって初めて、「一定の品質を保つために、Webライターにどれくらいの料金を支払えばいいのか」という検討すべき項目が見つかります。
このような検討を繰り返すことにより、あなたの事業が具体化されます。その後、事業の実現に向けて行動が始まるのです。
出資者や社長に説明するための事業計画書
事業計画書の二つ目の目的は、事業の詳細を他人に説明して理解を得るためです。事業を実現するためには多くの協力者が必要だからです。
自分ひとりの力では「資金」「人材」「場所」などを確保することができません。そこで、協力者から事業への理解を得ることによって、事業を推進させるのです。
例えば、あなたがある企業の新規事業担当者だったとします。そのとき「上司」「役員」「社長」など、多くの人を説得することによって、新規事業のための資金や人材を回してもらうことができます。
そこで重要になるのが、事業計画書です。具体化した資料を提示することによって、「どれくらいの資金が必要か」「何人の人材が必要か」が明確になり、協力者の理解を得やすくなります。
また、あなたが起業する場合も事業計画書が重要になります。
あなたが複数の起業に成功した人物であれば、事業計画書を作成しなくても、あなたの信用で出資を勝ち取ることができるかもしれません。しかし、あなたが初めて起業する場合、人間関係を一から構築する必要があります。
これについては、一度出資者の目線で考えると理解できます。例えば、あなたの目の前には初めて起業を行う人物が2人いるとします。
片方は、適当なアイデアを書いた紙をあなたに差し出し、500万円の出資を要求しました。もう片方は、詳細な事業計画書を作成し、どれだけの資金が必要になるのかという根拠を示したうえで、500万円の出資を要求しました。
まともな感覚をもっている出資者であれば、後者のほうが信頼できる人物だと判断します。したがって、あなたが起業を行うなら検討を重ねた事業計画書が必須となるといえます。
事業計画書作成の際、やってはいけないこと
以上のように、事業計画書は事業を説明するだけではなく、人間関係の構築にも一役買っています。間違っても事業計画書の作成を外注業者に丸投げしてはいけません。
事業計画書の作成は、必ず自分自身で行ってください。
あなたの事業を一番理解していなければならないのは、あなた自身です。そこで何も考えないまま業者に依頼してしまうと、これから自分が行うビジネスの中身を検討する機会を失ってしまいます。
また、協力者に事業を説明する際、あなたが自分の行う事業を説明できないと、協力者との信頼関係が崩壊します。「自分の行う事業のことを把握していない社長がビジネスを成功させることはできない」と判断されるためです。
もし自分一人で事業計画書を作成できないなら、専門家に相談したうえで、自分の言葉で書いていくことを検討してください。
アイデアを具体化してあなた自身が事業を成功させるためには、事業計画書が必須となります。そして、誰のために事業計画書を作成するのかという目的を明確にすることによって、信頼や出資を勝ち取るのです。
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