中小企業の経営者は2つ財布を持っています。それは役員報酬(個人のお金)と法人口座(会社のお金)です。

例えば、3万円の飲食費は経営者が個人的に負担すべき費用です。しかし、交際接待費にすれば会社の経費で落とせます。そうすると、経営者は生活費を負担してもらえて、会社から報酬をもらったのと同じです。しかも、負担してもらった食費3万円に対して、所得税・住民税・社会保険料は非課税です。

年収500万円の経営者なら、税率は35%(所得税10%、住民税10%、社会保険料の自己負担分15%)です。報酬の支給と違い、先ほどの例でいえば「3万円×税率35%=1万500円」だけの節税につながり、実質的な経営者の手取り金額が増えます。

また、消費税は「預かった消費税-支払った消費税」の残額を納付するため、支払った食費の消費税分を節税できます。

しかし、昼食代や夜食代、飲み代などの食費を経費で落としながら消費税の節税をしつつ、経営者の所得税・住民税・社会保険料が非課税となるためには、定められたルールに従う必要があります。そのルールに従わないと、会社が経営者の食費を肩代わりして負担した3万円は役員賞与扱いになってしまいます。

そうすると、同額(3万円)の費用が個人の税金として課税されます。さらに役員賞与は会社の経費で落とせないため、食費に対して30%(法人税率分)と、消費税分が追加で課税されます。そこで、このようなリスクを回避するため、食費を用いた会社と経営者の節税について解説します。

食費を会社が肩代わりする5つの節税方法

会社が食費を肩代わりすれば、経営者の生活費は削減できます。食費には普通の昼食代や夕食代、夜食代があれば、飲み代なども存在します。こうした食事代を工夫すれば、どれも問題なく経費にできます。

例えば、1日あたり150円の昼食代を会社が補助したと仮定します。月の稼働日数が20日の場合、経営者の生活費は1ヶ月で「1日あたりの昼食代の補助代150円✕20日=3,000円」削減できます。

しかし、やり方を間違えると、経営者の食費は役員賞与になってしまいます。

そこで、食費を用いた正しい節税方法について解説します。

残業食を支給する:残業夜食代

経営者が業務遂行のために1〜2時間程度の残業をするのは普通です。会社が食費を経費で落とせる理由は、支給が業務遂行に必要だからであり、残業夜食代も例外ではありません。

例えば、会社の就業時間が9時〜18時と仮定します。ある経営者が20時まで残業した場合、支給するコンビニ弁当や出前食の代金は会社の経費で落とせます。

残業食の代金分、経営者は生活費の節約につながり、所得税・住民税・社会保険料は非課税です。しかし、経営者の所得税・住民税・社会保険料が課税されないためには、3つ条件があります。

1.就業時間内に残業食を支給しない

上記の例で、9時〜18時までの間に残業食を支給すると、その代金分だけ経営者の役員賞与扱いにされてしまいます。

2.残業食の代金を現金で支給しない

経営者の役員賞与にならないためには、残業食を現物支給する必要があります。

例えば、コンビニの幕の内弁当が600円であることをあらかじめ知っていても、経営者に600円を現金で渡すと、役員賞与扱いとなります。

そのため、経営者が幕の内弁当代を立て替え払いして、会社が精算する形式にしなければなりません。

3.全従業員を対象とし、一般的な食事のみ

残業夜食代は福利厚生費です。そのため、全従業員が対象である必要があり、特定の役員のみに夜食を支給する場合は役員賞与になってしまいます。

例えば、従業員には一切夜食を支給しないと仮定します。そのとき、社長だけが残業中にコンビニ弁当を会社のお金で負担している場合は福利厚生費とはいえません。

また、残業夜食代は空腹を満たして業務遂行に支障をきたさないようにするのが目的です。食事自体を楽しむ高級レストランは業務との関連性が薄いため、役員の場合は役員賞与扱いになります。もっといえば、仕事中にお酒を飲まないのが普通であるため、アルコール類は避けた方が無難です。

深夜勤務した経営者の食費分を現金で支給する

建設業など22時~翌日5時まで深夜勤務が常識の業種は存在します。こうした場合、夜食の現物支給が難しいです。そこで、現物支給に代えて、一日あたり300円(税抜)まで支給する方法があります。

当然、深夜勤務した経営者に現金支給した食費は会社の経費で落とせますが、そのためには実際に深夜勤務した証拠を残すことがポイントとなります。

例えば、経営者の役員報酬に上記の食費分を上乗せ支給して、役員報酬明細書の控えに「残業した日」を記録する仕組みにすれば、証拠を残せます。そのとき、業務日報などを活用して、その経営者が深夜勤務した記録する必要があります。

また、この方法についても福利厚生費で経費化する必要があるため、経営者だけでなく従業員全員を対象にしなければなりません。

会議費として経営者の食事代を負担する

会議は事業遂行に欠かせません。そのため、会議のための食事代は経費で落とせます。

例えば、ランチミーティングをレストラン(ファミレスを含む)で取引先や社員と打ち合わせを実施した場合、肩代わりした経営者の食事代は会社の経費として認められます。

※飲食代を割り勘した場合も割り勘分(負担分)が経費になります。

また、社長が取引先と電話で会議をしている最中に弁当を注文した場合も同様に会社の経費で落とせます。つまり、たとえ一人で外食していたとしても、電話会議を少しでもしたのであれば、そのときの朝食代や昼食代、夕食代を経費にして問題ないのです。

ただこの場合、会議の内容や朝食や昼食の時間に話をしたことなどの事実を記録しておきましょう。記録とはいっても、スケジュール表に誰と話をしたのかメモしておくだけで問題ありません。

食費の領収書については「○○さんとの打ち合わせ」などの裏側に記載し、会議をしたことが分かるように記すがポイントです。

経営者の昼食代の一部を補助する

会社が経営者に残業食など業務遂行と関係ない食費代を補助すれば、報酬または賞与扱いになります。

当然、経営者個人には食費の補助分に対する所得税・住民税・社会保険料が課税されます。しかも食費の補助分が毎月同額の金額でない場合、役員賞与として法人税の課税対象となります。

しかし福利厚生費用として、食費の補助分を経営者個人は非課税にしつつ、会社の経費で落とす方法があります。その方法が税法上のルールに基づき、経営者の昼食代を一部補助することです。

例えば、社員食堂での1食分の食費300円の一部を会社が負担して、1食150円を経営者の報酬から天引きします。

そうすると、「1食分の食費300円-経営者の報酬から天引きした食費150円=150円」は会社の経費で落とせます。

しかも、会社が補助した1食当たりの昼食代150円は非課税です。ただ、報酬として課税されないためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 経営者が食費の半額以上を負担している
  • 会社が負担する食費が月に一人3,500円(税別)以内
  • 社員を含め、全員を対象にしている

例えば、昼食に1食300円の仕出し弁当を一部負担していると仮定します。

経営者の勤務日数が月20日の場合、1ヶ月の昼食代は「1食300円×月の勤務日数20日=6,000円」です。このとき、会社が負担する食費の金額を月3,500円以内に収めます。

・経営者の負担する昼食代が1食150円の場合

経営者が1ヶ月に負担する昼食代:1食150円×1ヶ月の勤務日数20日=3,000円

次の条件を満たすため、会社が補助した昼食代が経営者の役員賞与扱いになりません。

  • 経営者が負担した昼食代3,000円は1ヶ月の昼食代6,000円の半額以上
  • 会社が負担した昼食代は「1ヶ月の昼食代6,000円-経営者が負担した昼食代3,000円=3,000円」は3,500円(税別)以内

・経営者の負担する昼食代が1食140円の場合

経営者が1ヶ月に負担する昼食代:1食140円×1ヶ月の勤務日数20日=2,800円

会社が負担する昼食代は「1ヶ月の昼食代6,000円-2,800円=3,200円」と3,500円(税別)以下です。

しかし、「経営者が負担した金額2,800円<3,000円(1ヶ月の昼食代6,000円の半額)」にため、経営者の役員賞与扱いになってしまいます。

・昼食代を経営者が半額以上を自己負担しても役員賞与扱いになるケース

例えば、経営者の昼食に宅配弁当を1食500円で提供していると仮定します。経営者の勤務日数が月20日の場合、1ヶ月の昼食代は「1食500円×月の勤務日数20日=1万円」となります。

この場合、経営者が1ヶ月の昼食代を半額の5,000円を自己負担しても、会社の負担額が「1ヶ月の昼食代1万円-経営者の自己負担額5,000円=5,000円」となります。

そうすると、会社負担額が3,500円(税別)を超えているため、経営者の役員賞与扱いになります。

また、役員だけが対象になっている場合も税務調査で否認されます。福利厚生費で経費にする必要があるため、昼のご飯代は社員全員が対象である必要があります。

接待を有効活用して経営者の食費を会社が肩代わりする

中小企業の場合は通常、取引先との交際接待費は社長など経営者が使用します。食費を会社の経費で落とす方法は2つあります。

・外部との食費代を一人あたり5,000円に抑える

特定の役員・社員(社内の人間)や取引先などの食費は交際接待費と扱いとなり、年間800万円を超える部分の金額は会社の経費で落とせません。

例えば、交際接待費が1,000万円と仮定します。その場合、「交際接待費1,000万円-800万円=200万円」が法人税の課税対象となります。

しかし、次の条件を満たす食費を一人あたり5,000円以内の場合、交際接待費とはならず、無条件で会社の経費として落とせます。

  • 接待の相手が取引先など社外の人間である
  • 領収書などに接待した相手・参加者の人数など一定の記録を記す

・社内の人間や高額な食費を年間800万円以内に抑える

社内の人間や一人あたり5,000円を超える食費は交際接待費となりますが、前述の通り年間800万円までは無条件で経費として認められます。

例えば、高級すし店などで社内の人間や取引先と食事をすれば、一人あたりの食費が5,000円を超えても会社の経費で落とせます。

プライベートで高級すしを食べるケースほとんどなく、食費を会社が負担してくれるため、経営者にとっては一石二鳥です。

しかし現実は、経営者が接待交際費として会社の経費で落とせる枠である年間800万円を使い切るのは難しいです。そこで、特定の経営幹部などに対して、年間20万円などと定めて、交際接待費の予算を割り当てる方法があります。

例えば、営業担当の役員が得意先を接待するため、焼き肉屋を選択したと仮定します。食費を会社に負担してもらえる上、接待された得意先の歓心を買うため、今後の営業活動でプラスになる可能性があります。

バーベキューや花見の費用も経費にできる

他にも、福利厚生費はバーベキューや花見などでも利用できます。バーベキューや花見の費用はポケットマネーで負担するのが普通です。そのため本来、その費用を会社が負担すれば、社員の給料扱いになります。

しかし、正しい手続きを踏めば福利厚生費として会社の経費になり、社員は非課税です。さらに、バーベキューや花見に家族が来ても問題ないですし、会社のお金で購入したバーベキューセットを個人で好きに使っても大丈夫です。

会社で購入したバーベキューセットを個人利用しても問題ない

それでは、どのような手続きを踏むことで、会社の福利厚生費としてバーベキューセットを購入できるのでしょうか。

福利厚生として社員全員を集めてバーベキューをするのは何も問題ありません。ただ、バーベキューをするとなるとバーベキューセットが必須になります。そこでバーベキューセットを購入した後、社長個人が好きなように使えば問題ありません。

ただ、会社の福利厚生費として経費にしているため、バーベキューセットを全社員が平等に借りられるようにする必要があります。そのため、経営者だけしか利用できないのではバーベキューセットの費用は役員賞与扱いにされてしまいます。

全社員がバーベキューセットを使用できるという証拠を残すためには、「器具を誰にいつ貸した」といった貸出記録をつけるのがポイントです。

また、会社主催のバーベキューや花見の費用も全社員が参加できるようにすれば、社員の家族分も含めて会社の福利厚生費として認められます。

これらバーベキューや花見の費用が税務署に否認されないためには、社員への案内を口頭ではなく、書面で通知する必要があります。

賢い社長になると、全社員へバーベキューや花見の案内をするものの、実際の中身としては経営者の家族メインのバーベキュー大会や宴会を開きます。もちろん、参加する社員が1~2名でも問題ありません。

ただ、月に1~2回など宴会の頻度が多すぎるのは問題です。そのため、数ヶ月に1回程度にとどめた方が無難です。

まとめ

ここでは、経営者や従業員の食費をテーマに述べてきました。食費は必ず必要となる費用であるため、これらの生活費をどのようにして経費化すべきかを考えると、かなり節税できるようになります。

食費代を個人のお金から出すのではなく、会社のお金から出してもらうことを考えましょう。そうすれば会社の節税になり、経営者の手取り金額を増やせるメリットが得られます。

朝食代から昼食代、夕食代、さらには夜食代まで経費にできます。また、このときはレストランの外食だけでなく、弁当代まで経費になります。

ただ、無条件ですべてが経費になるわけではありません。福利厚生費や会議費として経費にする場合、適切なルールがあるのでそれに従う必要があります。

しかし、それらを実施すれば経費で落とせるようになります。こうしたことを理解したうえで食費を用いた節税法を積極的に活用しましょう。


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