年末年始はお歳暮代や忘年会費用など、特別に負担する費用が多い時期です。例えば、忘年会ひとつとっても、社内や取引先など複数回にわたります。また、お歳暮代は取引先の数に比例するのが普通です。

このとき、取引先との新年会という名目で社長の遊興費を会社のお金から負担することは十分にあり得ます。

しかし、方法を間違えると経費として落とせないことがあります。そこで、法人が負担する年末年始の費用を確実に経費で落とす方法を解説します。

年末年始の費用を経費で落とす手順

法人が経費として落とすための大原則は「事業遂行に必要な費用であること」です。例えば、取引先とのゴルフ代の場合、遊興費を兼ねていても今後の受注につながる可能性があるため、経費として認められます。

要するに年末年始の費用について、「事業遂行に必要であること」を説明できることが経費で落とすためのポイントです。そこで、その具体的な手順を紹介します。

交際費以外の費用にする

年末年始の費用は「取引先との関係を円滑にする」ことが目的です。ただ、忘年会の二次会など「事業遂行に必要な費用」と「遊興費」の境界線が曖昧になりがちです。こうした飲み代などの費用を交際費(交際接待費)といい、経費で落とすためのハードルが設けられます。

しかし、交際接待費であるお歳暮などの贈答費用には、社名入りのカレンダーなど明らかに広告宣伝が目的である費用は存在します。この場合、交際費以外の費用(広告宣伝費)として無条件で全額経費として落とせます。

また、飲み代などの中には取引先との業務の打ち合わせの費用があり得ます。こうした費用は、会議費として無条件に全額経費で落とせます。

このように、「広告宣伝など費用など交際費と区別する」ことが年末年始の費用を経費として落とすのに最も有効な方法といえます。

交際接待費を年換算額800万円以内にする

それでは、なぜ交際接待費とそれ以外を分けるのでしょうか。これは、交際接待費には上限が設けられているからです。

基本的に中小企業の法人(大企業のグループ企業を除く)は、お歳暮代など交際費が年換算額800万円までは全額経費として落とせます。例えば、交際費を900万円負担した場合、「負担額900万円-800万円=100万円」は経費として認められません。

このことを理解するためには、交際費のルールを知る必要があります。具体的な内容は次の通りであり、中小企業のほうが大企業よりも節税に有利です。

・中小企業

中小企業の場合、厳密には交際費のうち次の金額の多いほうを選択して経費で落とせます。

  • 交際費が年換算額800万円(法人の年度が6ヶ月間の場合は「年換算額800万円×6ヶ月÷12ヶ月=400万円」と月数に換算する必要があります)
  • 取引先など社外関係者との飲食代の50%(社内の者に限定した飲食費を除く)

例えば交際費が700万円の場合、800万円以下のため、全額(700万円)経費で落とせます。また、社外関係者との飲食代が2,000万円の場合、経費で落とせる金額は800万円でなく、「社外関係者との飲食代2,000万円×50%=1,000万円」となります。

・大企業

取引先など社外関係者との飲食代の50%のみが経費で落とせます。中小企業と違い、お歳暮代などの交際費は全く経費として認められません。

・中小企業と認められるための条件

交際費のルール上、中小企業として認められるためには次の条件を全て満たす必要があります。

  • 決算日時点での資本金が1億円以内である
  • 大企業のグループ企業以外である

会社のお金をプライベートに流用する場合、人数や名前を記す

社長など経営者は会社のお金を自由に使える立場です。そのため、会社で購入したお歳暮をプライベート用に流用することが可能です。

例えば、会社のお金で購入したビール券を社長の友人に配ることは考えられます。しかし本来、社長のポケットマネーで負担すべきものです。そのため、ビール券の購入費用は社長への役員賞与(給与)となります。

また、社長が家族の食事代を負担した場合もビール券と同様にポケットマネーで負担すべきものあり、役員賞与です。

役員賞与は経費で落とせない(=法人税などの課税対象)だけなく、社長に所得税などが課税されます。つまり、法人と個人の両方に二重課税されてしまいます。

ただ、実際のところはどうかというと、多くの社長はうまい具合に公私混同することで経費として落としています。例えば、海外出張して家族にお土産を購入する場合、「得意先への贈答品(=今後の仕事受注につながる事業遂行に必要な費用)」として、領収書を経費で落とすことは普通です。

また、友人と食事したとき、「仕事の打ち合わせ」や「顧客のニーズなど業務に関係する情報収集」などを兼ねることが多いため、経費にするのは普通です。家族との食事と違って、家計費で負担するのが大前提でないからです。

注意点として、領収書の裏にメモ書きでいいので「何人で」「誰と」「どのような打ち合わせをしたのか」について軽くでもいいのでメモ書きすることがあります。当然、このとき記す名前は「事業と関連する人」であることがポイントです。

これをしないと、税務調査などで指摘されることがあります。領収書さえ取っていればいいわけではなく、領収書の裏のメモが重要となるのです。

そして、税務職員が領収書について「事業と全く関係ないこと」を証明できない限り、経費として認められます。

ケース別に年末年始の費用を経費で落とすポイント

年末年始は特別な費用を負担する時期です。例えば、下請企業の製造業が元請企業の営業担当者へあいさつ回りをする際にお歳暮を配ります。

そこで、年末年始の費用を経費で落とす際のポイントについて解説します。ここでは、企業全体のうち圧倒的に数の多い中小企業を前提にします。

社外関係者との飲食代

得意先など取引先との忘年会・新年会は基本的に交際接待費となります。

交際費が年間800万円に届かない場合、何も気にする必要はありません。ただ、年間800万円を超すときは節税するためのポイントがあります。

社外関係者との飲食費の中には、完全に事業遂行に必要な費用(交際接待費でない費用)であるケースが存在します。その場合、次の条件を全て満たせば、交際接待費以外の費用として無条件で経費として落とせます。

・社外関係者との飲食代を1人当たり5,000円以内にする

忘年会費用などの飲食代が1人当たり5,000円以内の場合、交際費から除かれ、会議費などの名目により、負担した金額は無条件で全額経費として落とせます。つまり、交際接待費として換算されなくなるのです。

それでは、社外関係者との飲食費が5,000円以内かどうかを判断するポイントを解説します。

1.社外関係者の範囲

取引先との飲食代はもちろん、「同業者団体との懇親会」や「グループ企業の役員などを接待する目的の接待費」も社外関係者との飲食代に含まれます。例えば、兄弟会社(親会社と子会社)の役員が「社外である立場」として忘年会に参加した場合には、社外関係者といえます。

反対にグループ企業の役員などが「社内の人間の立場」で参加した場合は、社外関係者の飲食代とは認められません。この場合は「社内での飲食代」となり、1人当たりの飲食費が5,000円以内でも交際費などの扱いになります。

なお、兄弟会社(親会社と子会社)の役員が「社外である立場」または「社内の人間の立場」なのかどうかは、参加する社員への周知の方法によって違ってきます。

例えば、E社の飲食会に「E社だけでなく、他の会社(F社)の役員を兼任しているG氏」が参加していると仮定します。

そのとき、E社の社員がG氏のことを「E社の役員」と認識していれば、「社内の人間の立場」となります。

一方、E社の社員が「G氏の主要な業務はF社の役員であり、E社には月1回開催される会議に出席しているだけの社外取締役」と認識していれば、「社外の人間の立場」といえます。

また、社内での飲食会の参加者となる対象には、社内の人間だけなく、その家族も含まれます。そのため、社員の家族連れで実施する飲食代は社外関係者との飲食代にはなりません。

以上から、飲食代を経費として落とすポイントは社外の人間を1~2人以上は忘年会などに参加させることに尽きます。

2.社外関係者との飲食代が5,000円以内かどうかの計算方法

忘年会や新年会には2次会があり、複数店の飲食店に費用を支払うケースがあり得ます。そのとき、社外関係者との飲食代が5,000円以内かどうかの計算は、基本的に飲食店ごとで計算します。

例えば、参加者10人である社外関係者との忘年会費用を一次会のA店5万円、二次会のB店10万円と仮定します。この場合、5,000円以内かどうかは次のように計算します。

  • A店:一次会の費用5万円÷10人=5,000円
  • B店:二次会の費用10万円÷10人=1万円

以上のように、一次会のA店は一人当たりの費用が5,000円以内なので無条件で全額経費として落とせます。一方、二次会のB店は一人当たりの費用が「1万円>5,000円」のため、交際接待費となります。

3.書類の保存方法

社外関係者との飲食代が一人あたり5,000円以内であることを証明するため、領収書など書類に記録して保存する必要があります。記録する項目は主に次の通りです。

イ.飲食した年月日と支払った金額

飲食店で発行する領収書などに記載されています。

ロ.参加した外部の人間の氏名と社名

基本的には参加者全員の氏名と社名を記載しますが、大人数の場合は次のように省略できます。

C株式会社、営業部、山田太郎他10名

また条件に含まれていませんが、参加者人数を証明するためには、自社から参加した氏名を記載したほうが税務署から信用されます。

ハ.参加者の人数

ニ.飲食店の名称と住所

店舗の有無によって記載方法が異なります。具体的には次の通りです。

  • 店舗がある場合:飲食店の名称と住所
  • 無店舗の場合:飲食店の名称と本社の住所

ホ.その他、参考となる項目

例えば得意先を接待した場合は、単なる遊興費と誤解されないために「今後の受注に結びつける」など目的を記載する方法があります。

4.飲食代の範囲

「飲食店内での費用」と「お好み焼きや弁当など、すぐに食べる(消費する)ことを前提としたお土産代」に限定されます。言い換えれば、飲食店で販売している冷凍の餃子など、持ち帰ることが前提のお土産代は含まれません。

またゴルフ場での飲食代はゴルフ代と一体のため、範囲から除かれます。

5.書類を改ざんしない

領収書などの書類を改ざんすると、悪質な違法行為となります。例えば、参加者人数を実際は9人なのに、11人と書き換えるケースが考えられます。万が一、税務調査で発覚した場合は、最も重いペナルティー(重加算税)が課せられるために注意が必要です。

ただ、実際のところ改ざんは多くの企業が行っていることです。領収書には参加人数が書かれていないからです。ただ、税務調査で領収書の元の資料となるレシートを調べれば参加人数は把握できます。

そのため、税務調査が入ったときは税務職員による社員への取材(聞き取り)はすべて拒否させ、社長または税理士だけが対応するようにしましょう。

・会議費と区分する

居酒屋など飲食店で会議を実施するケースが考えられます。明らかに会議と分かる場合は交際費でなく、会議費として無条件で全額経費として落とせます。

確実に会議費として経費で落とすポイントは会議議事録を残すことに尽きます。例えば、会議の目的や参加者の氏名や社名などを記載しましょう。

お歳暮・お中元などの贈答費用

得意先など取引先への贈答費用は基本的に交際費となります。しかし、明らかに社名入りのカレンダーなど広告宣伝と分かる贈答品は広告宣伝費用として、交際費から除かれます。具体的には次の物が挙げられます。

  • カレンダー
  • 手帳
  • 扇子
  • タオル など

経理処理する段階で交際費と区分するのが経費で落とすポイントといえます。

社内の飲食代

社内の忘年会など福利厚生費用は基本的に全額経費で落とせます。しかし、条件を満たさないと交際接待費扱いになるケースがあります。

そこで、飲食代が福利厚生費用と認められる条件について解説します。

・全社員の対して平等に福利厚生を施す

福利厚生は「飲食代など社員が負担すべきもの」を経済面から支援する制度です。そのため、忘年会を特定の社員に限定するなど福利厚生の目的から外れた場合は、交際費となります。

それでは、ここでいう「平等」とは何でしょうか?

それは、全社員に福利厚生を施す意思表示をすることです。例えば社内の忘年会なら、基本的には全社員に案内するのがポイントです。また、会社の拠点や総務部などのセクション単位で案内しても問題ありません。

あくまでも忘年会に参加する機会を全社員に与えることがポイントのため、欠席者がいても福利厚生費用となります。

しかし、不参加者に忘年会費用の代わりにお金や物品を渡すと平等とならないため、「不参加の人に何か与えた費用」および「忘年会費用に相当するお金」は福利厚生費となりません。

このように、節税のポイントは全社員の平等に福利厚生を施すことに尽きます。そのためには、忘年会の案内書類を保存するなど証拠をきちんと残しましょう。

ゴルフクラブの関連費用

年末年始は取引先とゴルフに行くケースが考えられます。しかし、ゴルフクラブへ負担する費用が全額経費で落とせるわけではありません。

そこで、ゴルフクラブの関連費用の内容と注意点について解説します。

・ゴルフクラブの関連費用

取引先とのゴルフは接待になるため、基本的に交際費となります。しかし、項目の中には1円も経費で落とせないものがあります。交際接待費とそれ以外の費用については、具体的には次の通りです。

  • ゴルフプレー代:交際費
  • ゴルフ場内での飲食代:交際費
  • 年決めロッカー代:交際費
  • 法人会員の年会費:交際費
  • 入会金:1円も経費として落とせない=資産計上
  • 他社から購入したゴルフ会員権:1円も経費として落とせない=資産計上

・注意点

事業と関係ない人とのゴルフプレー代などプライベート用の費用を会社のお金として流用した場合には給与となり、社長など役員の場合は役員賞与となってしまいます。

ただ、多くの社長はゴルフプレーをしたとき、得意先の人間をメンバーに加えたり、普段は事業と関係ない人でも事業についての意見交換をしたり、事業遂行と関連づけて経費で落とすのが普通です。

そのため、どのような場合であってもゴルフプレー代を経費として落として問題ありません。もちろん、このときは誰とゴルフしたのかをメモを残しておくようにしましょう。

まとめ

交際接待費は「事業遂行に必要な費用」または「プライベート用」なのかが曖昧です。そのため、年末年始の費用を経費として落とすポイントは、「事業遂行に必要な費用」であることを「税務署に説明できるようにする」ことです。

800万円の交際接待費を超えない場合であっても、誰と飲み食いしたのかを記すようにしましょう。これは、贈答品を購入したときも同様です。

注意点としては、家族の名前を記さないことです。たとえ家族が役員に入っていたとしても、家族の名前であると税務調査のときに否認される危険性があります。

そこで、たとえ家族などプライベートの支出であったとしても、誰か得意先の名前を借りて記すなどの工夫が必要です。

年末年始の費用が「プライベート用」と税務調査で証明されないためには

  • 取引先との関係を円滑にするという目的を意識すること
  • 書類を改ざんしない
  • 得意先の誰かの名前を借りてでも、プライベート費用でないようにメモする

以上のことが大切となります。こうした対策をすることで、年末年始の費用を確実に経費計上できるようになります。


年間350万円以上を節税

ビジネスの継続を考えるとき、最も重要なのは節税です。節税策を一つ実施するだけで100万円以上の無駄な税金が減るのは普通ですが、何も対策をしなければ会社経営者や相続額が多い人は無駄に税金を支払い続けることになります。

ただ、私は優秀な節税の専門家(税理士やファイナンシャルプランナー)に依頼したことで「家賃の個人負担が家賃総額のわずか6%」「出張に行くたびに30万円以上の非課税の現金を手にできる」「社会保険料を年間130万円削除」など、何も対策をしなかったときに比べて一瞬で年間350万円以上も節税できています。

現在では、海外法人(タックスヘイブン)の活用や再保険(キャプティブ)の利用など、あらゆる節税策によって年間にして何千万円もの節税を実現しています。

高額な財産を相続する人や会社経営者は節税に精通した専門家が必須です。そこで、実際に節税に強い税理士やファイナンシャルプランナーを紹介します。節税コンサルを受けるだけで、あなたの会社の財務状況は一変するようになります。

節税コンサルの応募ページへ


YouTubeでの節税情報

Twitterでフォローする