「開業する前の会社」や「開業して間もない会社」は事業活動で実績がないため、売上金額や利益額を獲得できる保証はどこにもありません。

当然、銀行は「これらの融資先から借金を返済してもらえないのでは」と不安を抱きます。そのため、融資担当者は会社に次の2つを要求することが考えられます。

  • 代表者や会社の不動産などの担保資産:借入金の返済不能額を補うため、売却して換金するための資産
  • 連帯保証人:借入金の返済を肩代わりする人

実績のない会社が銀行から融資を受けるためには、担保に差し出す不動産などの有無や連帯保証人の確保が心配の種となります。

事業に失敗して銀行へ返済不能となった場合には、連帯保証人になった代表者は今まで築き上げた財産を失ったり、破産したりします。また、連帯保証人になってくれた別の人にも迷惑をかけてしまいます。

しかし、これでは実績のない会社が銀行から融資を受けるのに二の足を踏みます。このような事態を解消するために、無担保・無保証の創業融資制度が存在します。それが「日本政策金融公庫の新創業融資」と「信用保証協会の創業融資」です。

この2つの制度は「実績のない会社を支援する」という目的は同じですが、利用条件など融資条件に違いがあります。そこで、それぞれの創業融資について解説します。

日本政策金融公庫の新創業融資

「開業する前の会社」や「開業して間もない会社」は実績のないところからスタートします。だからこそ開業した後、売上金額や利益額を獲得できるようにする必要があります。

そのため、実績のない会社の事業を軌道に乗せるとき、融資してくれる金融機関が必要になります。その役割を果たすのが日本政策金融公庫の新創業融資です。

法人の場合、特長は代表者の連帯保証人が不要な点に尽きます。つまり、万が一返済不能に陥っても、不動産などの資産を差し出したり、法人の場合は代表者が破産したりすることを回避できます。

以下では、新創業融資の内容を紹介します。

利用条件

新創業融資は「開業する前の会社」や「開業して間もない会社」を支援する制度です。しかし、事業活動で実績を積み上げていなくても、借入金を返済する能力をもつことが会社へ融資する絶対条件です。そのため、利用条件は3つに大別でき、すべて満たす必要があります。

1.創業年数

事業活動で実績を積み上げていない会社へ融資する制度です。利用条件に該当する基準は次の通りです。

  • 開業する前の会社:新たに事業を始める個人事業主(法人は開業することが必須)
  • 開業して間もない会社:事業を開始して、税務署などへの確定申告を2回終えていない個人事業主や法人

例えば、個人事業主が2015年の12月に開業したと仮定します。

当然、開業した翌年の2016年3月15日までに税務署へ確定申告をしなければなりません。そしてこのとき、開業してから2年を経過していなくても、2017年3月15日までに確定申告をした時点で「事業を開始して確定申告を2回終えた」ことになります。

2.事業の形態や経験値

日本政策金融公庫が会社へ融資する目的は借入金を返済してくれる見込みだけでなく、政府などの掲げる政策の実現のサポートも含まれています。そのため、次の主な条件のうちいずれかを満たす必要があります。

  • 開業する事業で他人を雇用する
  • 開業する事業と同じ業種を1社あるいは複数の会社で通算6年以上経験する

例えば、「通算6年以上経験する」とは和食料理店を開業すると仮定します。そのとき、調理人としてA店に4年、B店で2年経験すれば、「A店4年+B店2年=6年」と通算6年以上経験したと日本政策金融公庫は判断します。

3.貯金している金額

この利用条件は「開業する前の会社」や「開業して1度も税務署へ確定申告(1期目)をしていない会社」に限定されます。基準となる代表者などの貯金額は、希望する融資額の10分の1以上です。

例えば、1,000万円の融資を申し込む場合には、「1,000万円×1/10=100万円」の貯金が必要となります。

しかし、「開業する事業と同じ業種を1社あるいは複数の会社で通算6年以上経験している場合」などについては、貯金している金額の有無に関係なく、この基準を満たしているとみなされます。

4.法人の場合は開業する

新創業融資を申し込みためには、後述する会社の登記簿謄本(≒履歴事項全部証明書)が必要です。実際に登記簿謄本を入手するためには開業していることが絶対条件です。なお、個人事業主は開業する前でも融資を申し込めます。

5.許認可を得る

飲食店など許認可を得ないと営業できない業種があります。この場合、事前に許認可を得ることが必要となります。例えば、リサイクルショップを開業する場合には、警察署で古物商の許認可を得なければなりません。

融資限度額と返済期間

新創業融資による融資を申し込む目的はさまざまです。例えば、これから飲食店を開業すると仮定します。その際、店をオープンするために投資する名目は2つに大別できます。

  • 運転資金:食材(在庫)・スタッフの給料・チラシなどの広告宣伝など事業活動を遂行するため、毎年定期的に支出する費用
  • 設備投資:調理室の設備や物件の改装など店をオープンする前、初期投資する費用

融資で調達した現金預金については上記の使い道によって、融資限度額や返済期間が異なります。

1.運転資金

商品(在庫)など、事業活動を遂行するための毎年定期的に支出する費用は物件の改装費用などよりも支出する金額が少ないです。

また、運転資金を投入した費用は比較的早く売上金額の獲得につながります。たとえば、飲食店でチラシによる広告宣伝の効果が得られると、店舗へ来店する顧客(=提供する料理数や売上)は増加します。

そのため設備投資と比較すると、融資限度額は少なく返済期間は短いです。具体的には次の通りになります。

  • 融資限度額:1,500万円以内
  • 返済期間:7年以内(うち据置期間2年以内)

据置期間とは、会社が融資を受けてから返済を据え置く期間のことを指します。たとえば、返済期間7年で据置期間が2年の場合、融資を受けた月から2年間は借入金を返済する必要はありません。そうすると、「返済期間7年-据置期間2年=5年間」で返済することになります。

2.設備投資

商品や広告宣伝費用に投入する運転資金と違って、物件の改装費用や機械設備などは支出額が多額になるケースが多いです。また、売上金額の獲得に直接結びつかず、販売拠点の確保や製品の生産台数を増やすなど、間接的に販売数量を伸ばすのに貢献する費用です。

つまり、設備投資に投入した費用を回収するのに時間がかかります。

たとえば、飲食店の調理室を設置するため、1,000万円の資金を投入したと仮定します。商品の購入と違って、調理室を売却して同額(1,000万円)以上の現金預金を獲得するわけにはいきません。料理を提供して、長期間にわたって少しずつお金を増やすのが普通です。

以上から、設備投資への投入を目的とする融資は、運転資金よりも融資限度額は多く返済期間は長いのが特徴です。具体的には次の通りです。

  • 融資限度額:3,000万円以内
  • 返済期間:20年以内(据置期間2年以内)

必要書類

日本政策金融公庫の新創業融資を申し込むとき、会社は借入金の返済ができることを客観的に示さなければなりません。例えば、代表者の貯金している金額を証明するためには通帳を融資担当者へ提示する必要があります。

そこで、主な必要書類について解説します。

1.事業計画書(≒創業計画書)

日本政策金融公庫の融資により調達した資金を物件の改装費用などに投入して、獲得した売上金額や利益額から借入金を返済してもらうことを融資担当者は期待しています。

そのため、融資を申し込む前に借入金の返済計画をシミュレーションして、事業計画書を相手に提示する必要があります。

その役割を果たすのが創業計画書です。作成するポイントは、売上金額などを予測するときに、きちんと根拠を示すことに尽きます。

2.設備投資の見積書

必要書類の中でも、「設備投資の見積書」は設備投資を目的に融資を受ける会社に限定されます。

融資担当者は会社が融資の目的と別の目的で使用することを恐れます。例えば、A社は印刷機を購入するため、B銀行に融資を申し込んで、銀行融資の引き出しに成功したと仮定します。

当然、B銀行は「印刷機の購入により、売上金額や利益額の獲得をして、A社から借入金を返済してもらうこと」を期待しています。

しかし、A社が調達した資金をC銀行への借入金の返済に充てれば、B銀行の思惑と異なってしまいます。

このようなことを防止するために、融資担当者は「本当に融資先が設備投資をするかどうか」の信憑性を確認します。そのため、設備投資を目的に融資を申し込む場合には、その見積書を用意する必要があります。

3.貯金した金額の分かる通帳

新創業融資を受けるためには、融資の申し込み額の10分1以上の貯金が必要です。そのため、客観的に示す資料として代表者などの通帳が必要となります。口座へ預け入れていない現金は貯金した金額にカウントされません。

しかし、「開業する事業と同じ業種を1社あるいは複数の会社で、通算6年以上経験している場合」などの場合、通帳は必要書類でありません。

4.賃貸物件の契約書(賃貸する予定物件の概要が分かる書類を含む)

「商品を並べて営業する小売店」や「料理を提供する飲食店」など店舗を構えて営業する業種に限定されますが、賃貸物件の契約書が必要になります。銀行は会社が店舗で売上金額や利益額を獲得することを期待して融資をするからです。

ところが、その店舗が実在しなければ商品などを販売することができず、会社の現金預金を増やせません。それでは、借入金を返済は不可能になってしまいます。そのため、融資担当者は賃貸物件の資料を要求します。

ただ、飲食店や美容業など許認可の必要な業種は、融資を申し込む前に賃貸物件の契約が必要です。後述する許認可書の原本も必要書類となるからです。

5.許認可書の原本

実際に営業して売上金額や利益額を獲得できることを証明するためには、許認可書の原本が必要です。日本政策金融公庫の場合、許認可書のコピーは必要書類として認められていません。具体的に業種別の許認可を手続きする場所は次の通りです。

保健所警察署都道府県およびその他官庁
  • 飲食店
  • 菓子製造業
  • 食肉販売業
  • 魚介類販売業
  • 旅館業
  • 理容業
  • 美容業
  • クリーニング業
  • 医薬品等の販売業 など
  • マージャン店
  • 古物商
  • 警備業
  • 指定自動車教習所 など
  • 酒類販売業
  • 各種学校
  • 旅行業
  • 宅地建物取引業
  • 建設業
  • 運送業
  • 人材派遣業
  • 自動車整備業
  • ガソリンスタンド

6.登記簿謄本(≒履歴事項全部証明書)

この必要書類は法人に限定されます。

法人が開業するとき、法務局で設立登記(=会社の情報を登録)の手続きをしなければなりません。その登録された会社の情報の書類を登記簿謄本(≒履歴事項全部証明書)といいます。

会社が実在しているかどうかを確認するために、融資担当者は会社の登記簿謄本を要求します。

7.確定申告書

前述の通り、銀行へ提出する事業計画書の売上金額や利益額はきちんとした根拠が必要です。

例えば、新規に2号店をオープンするタイ料理店の売上金額を予測すると仮定します。そのとき、「過去の経験則に基づく予測額」と「1号店の実績に基づく予測額」のどちらを融資担当者は信用するでしょうか?

もちろん後者のはずです。前者の予測額よりも客観的だからです。そのため、開業して間もない会社が税務署に確定申告書を提出した場合、銀行はその書類を要求してきます。確定申告書には売上金額や利益額の実績が記載されているためです。

また、決算日の翌日から6ヶ月を経過した日より後に銀行へ融資を申し込む場合、融資担当者は確定申告書とは別に今期(決算日の翌日以後)の情報を求めてきます。

具体的には、「売上金額や利益額などが記載されている損益計算書」と「現金預金残高や借入金残高などが分かる貸借対照表」の2種類です。これらを総称して試算表といいます。

このように、銀行はできるだけ客観的な根拠に基づく事業計画書を要求するのです。

手続方法

創業融資を円滑に引き出すためには、事前に手続方法を知っておく必要があります。具体的な手順は次の通りです。

  1. 日本政策金融公庫の「国民生活事業」という部署へ融資を申し込む
  2. 面談する前に必要書類を提出する
  3. 融資担当者と面談をする
  4. 融資担当者が会社の店舗や工場を訪問して実地調査する
  5. 融資審査をして、会社へ融資するかどうかを決定する
  6. 融資する場合には、日本政策金融公庫から借用書など契約に必要な書類を会社へ送付する
  7. 契約手続が完了した後、融資額が会社の銀行口座へ送金される

連帯保証人について

連帯保証人は不要です。

例えば法人の場合、代表者は会社の連帯保証人になる必要がありません。これは、万が一法人が事業で失敗した場合、代表者が借入金の返済を肩代わりする必要がないことを意味します。ただ、代表者が法人の連帯保証人になった場合、金利は0.1%低くなるメリットを享受できます。

信用保証協会の創業融資

日本政策金融公庫の新創業融資と同様に、一般の銀行が積極的に融資をしたがらない「実績のない会社」を支援する制度が信用保証協会の創業融資です。特長は無担保で融資してくれる点です。

しかし、信用保証協会の創業融資は日本政策金融公庫とは仕組みが違います。

具体的には、一般の銀行が会社へ融資します。融資先が借入金の返済不能に陥った場合は、信用保証協会が会社に代わって返済する仕組みとなっています。そして、その後は会社が信用保証協会へ返済することになります。

また、借入金元本に上乗せして返済する利子とは別に、信用保証協会に信用保証料を負担します。

つまり、融資する側の銀行にリスクがないため、実績のない「開業して間もない会社」でも安心して融資ができるのです。

そこで、東京都を例に信用保証協会の創業融資について解説します。

利用条件

日本政策金融公庫と同様に実績がなくても、借入金の返済能力があることを示す必要があります。そのため、次の利用条件をすべて満たす必要があります。

1.信用保証協会の保証を受けることが可能な会社

すべての会社に対して、信用保証協会は保証してくれるとは限りません。具体的には、業種と会社の規模に大別できます。

・業種

農林・漁業、風俗業、宗教法人などは保証の対象外です。言い換えれば、ほとんどの業種に対して、信用保証協会は保証してくれます。

・会社の規模

規模の小さい会社が保証の対象となります。具体的には、業種別に次のいずれかを満たす個人事業主や法人です。

製造業等卸売業小売業サービス業
資本金3億円以下1億円以下5000万円以下5000万円以下
従業員数300人以下100人以下50人以下100人以下

2.創業年数

日本政策金融公庫と同様に事業活動で実績を積み上げていない会社へ融資する制度ですが、開業している会社に限定されます。具体的には次の通りです。

開業して間もない会社:開業した日から5年以内の個人事業主と法人(法人の場合は個人事業主のときの年数を通算します)

なお、形式上は1ヶ月以内に開業する予定の個人事業主と2か月以内に設立する法人も創業融資の対象ですが、提出書類に開業届が必要なため、実際は開業することが求められます。

3.事業の形態や経験値

「他人を雇用する」や「開業する事業の経験値」などの条件は問われません。

4.貯金している金額

代表者などが貯金しているかどうかは問われません。

しかし、貯金している金額が少ない場合は融資審査で不利になります。「開業する前に代表者は貯金をしているはず」だと融資担当者は考えるからです。言い換えれば、貯金している金額は開業する意気込みのバローメーターを意味します。

5.開業する

信用保証協会は税務署へ提出する開業届を必ずチェックするため、法人だけでなく、個人事業主も開業していることが利用条件のひとつとなっています。

6.許認可を得る

営業活動するのに許認可の必要な業種は事前に申請して許認可を得る必要があります。

7.税金や社会保険料の滞納がない

税金や社会保険料は法律で支払いが義務付けられています。それにもかかわらず、滞納していると「借入金を返済してくれないのでは」と融資担当者は不安に感じてしまいます。そのため、税金や社会保険料をきちんと支払っていることが条件に挙げられています。

しかし、滞納額を完納できる見通しが立つ場合は、この利用条件を満たしていると銀行から判断されます。例えば、消費税を滞納している会社があると仮定します。そのとき、税務署と交渉して分割での支払計画を明らかにすれば、滞納額を完納する見通しが立つといえます。

融資限度額と返済期間

「運転資金の融資=売上金額が早く獲得できる」「設備投資の融資=売上金額の獲得に時間がかかる」ことが前提なのは日本政策金融公庫の新創業融資と同じです。しかし、融資限度額と返済期間は異なります。それでは具体的に解説します。

・開業して間もない会社

開業前の会社と違い、貯金している金額の有無は関係ありません。具体的には次の通りです。

1.運転資金

  • 融資限度額:2,500万円以内
  • 返済期間:7年以内(据置期間1年以内)

2.設備投資

  • 融資限度額:2,500万円以内
  • 返済期間:10年以内(据置期間1年以内)

必要書類

必要書類は基本的に日本政策金融公庫の新創業融資と同じですが、一部異なる点があります。そこで、主な必要書類を共通点と異なる点に分けて紹介します。

・共通点

  1. 事業計画書(≒創業計画書)
  2. 設備投資の見積書(設備投資を目的に融資を受ける会社に限定されます)
  3. 貯金した金額の分かる通帳(開業前の会社に限定されます)
  4. 賃貸物件の契約書(賃貸する予定物件の概要が分かる書類を含む)
  5. 法人の場合は登記簿謄本(≒履歴事項全部証明書)
  6. 確定申告書(決算日の翌日から6ヶ月を経過した日に融資を申し込む場合は試算表も必要です)

・異なる点

  1. 税務署へ提出する開業届
  2. 許認可書の写し(原本である必要はありません)
  3. 開業後に確定申告をしている場合は納税証明書

手続方法

信用保証協会に融資を申し込みますが、そのルートは「金融機関を経由する方法」と「信用保証協会に直接融資を申し込む方法」に大別できます。それでは、融資を受けるまでの手順を紹介します。

  1. 「信用金庫など金融機関」または「信用保証協会」に融資を申し込む
  2. 金融機関と信用保証協会との2ヶ所で融資審査をする
  3. 融資の許可が下りた場合には、信用保証協会は融資を実行する金融機関へ「信用保証書」を発行する
  4. 金融機関は信用保証書に基づき、融資額から信用保証料を差し引いて会社の口座へ振り込む

連帯保証人について

個人事業主の場合、連帯保証人は必要ありません。しかし法人の場合、日本政策金融公庫の新創業融資と違い、信用保証協会は代表者が連帯保証人になることを求めます。

「日本政策金融公庫の新創業融資」と「信用保証協会の創業融資」のメリット・デメリット

前述の通り、新創業融資と創業融資には若干の違いがあります。その違いを踏まえて、両者のメリット・デメリットを次のようにまとめました。

日本政策金融公庫の新創業融資
メリットデメリット
  • 個人事業主は開業前でも融資を申し込める
  • 法人の場合は代表者の連帯保証が不要である
  • 融資審査のハードルが低く、日本政策金融公庫の1ヶ所のみで実施される
  • 利用条件が2期目の確定申告が終えていない会社に限定されている
  • 代表者などの貯金が必要なケースがある
  • 開業する事業についての経験値が求められる
信用保証協会の創業融資
メリットデメリット
  • 利用条件が創業後5年まで幅広く認められている
  • 代表者などの貯金は不要である
  • 開業する事業についての経験値がなくても融資の条件を満たす
  • 個人事業主でも開業していることが求められる
  • 融資審査のハードルが高く、金融機関と信用保証協会の2ヶ所で実施される
  • 利子のほかに信用保証料を負担する
  • 法人の場合は代表者の連帯保証が必要である

創業融資を引き出すために必要な事前準備

事業活動で実績のない「開業前の会社」や「開業して間もない会社」が創業融資を引き出すためには、借入金の返済ができることについて、銀行を説得しなければなりません。

具体的には、創業計画書を用いて「売上金額や利益額を獲得できること」を融資担当者にアピールする必要があります。

そのためには、銀行に融資を申し込む前の事前準備が大切です。そこで、創業融資を確実に引き出すための創業計画書の作成するために、必要な準備について解説します。

創業する動機を明確にする

一度開業した以上は、事業を継続させるのが鉄則です。

当然、銀行もそのことを期待して会社へ融資します。反対に融資先が廃業すると、事業活動で売上金額や利益額が獲得できなくなり、借入金を返済が不能になってしまいます。それでは、融資した金額は会社へ寄付したのと同じであり、銀行は損してしまいます。

そこで事業を継続させることについて、融資担当者へアピールするために創業する動機を明確にする必要があります。具体的には、次の要素を盛り込むことがポイントです。

1.やる気をアピールする

会社の事業活動が順調とは限りません。思わぬ困難に遭う可能性があります。

例えば、開業して間もない旅行代理店が社員旅行を受注するために、法人営業を実施したと仮定します。

営業先(社員旅行実施先)の担当者は旅行に関して素人かもしれません。その場合、融資先(開業して間もない旅行代理店)のサービスの質を見抜く力がありません。そうすると、旅行代理店を選ぶ基準は実績などの分かりやすい要素にならざるを得ません。

要するに、事業活動での実績のなさが営業力のマイナスとなり得ます。

このような実績のないが会社の事業活動にマイナスとなることを銀行は熟知しています。そのため、創業動機を明確にしてやる気をアピールすることが大切なのです。

2.顧客のニーズに合っていることをアピールする

やる気だけで会社の事業を継続させることはできません。商品やサービスを顧客に提供して、はじめて収入を得られます。それによって現金預金が増加して、銀行へ借入金の返済ができます。

商品やサービスを提供するためには、顧客のニーズに合っていることが絶対条件です。

例えば、Web製作会社を開業すると仮定します。ホームページの製作を依頼する顧客が集客力を求めている場合は、会社はデザイン性よりもSEO対策などWebマーケティングの知識のほうが重要です。

つまり、「やる気」と「顧客のニーズに合っていること」との両方をアピールすることが創業動機を明確するときのポイントといえます。

創業する事業についての経験・知識をアピールできるようにする

会社の事業を継続させるためには、開業前に経験・知識を身につけたほうが有利です。例えば、学習塾を開業すると仮定します。

そのとき、代表者がサラリーマン時代に学習塾で勤務の経験があるかどうかについて銀行は重視します。経験があれば、開業する前に生徒への教え方など運営方法を知っていると言えるからです。

学習塾を開業すれば代表者は経営者です。生徒への教え方を知っていれば、授業の品質向上に活用できます。それは、生徒数(=収入)の確保につながります。

しかし、学習塾の開業を希望する代表者は、同じ業界を経験しているとは限りません。しかし、未経験の分野では最初からノウハウを築くまで時間がかかってしまいます。それでは生徒数(=収入)の確保は困難です。

そのため、学習塾の経験・知識が足りないことを補うことについて、融資担当者にアピールする必要があります。

例えば、フランチャイズに加入すれば、ロイヤルティーの負担は必要になるもののノウハウを買い取ることができます。フランチャイズ本部は学習塾の運営方法を熟知しているからです。

このように、開業する業界について「過去の経験をアピールする」または「足りない知識を補う」ことが大切です。

家族を説得する

実績のない会社が協力者を確保するは難しいです。

例えば、ステーキ店を開業すると仮定します。当然、食材の牛肉を購入しなければなりませんが、卸売業者が供給してくれるとは限りません。実績のないステーキ店に顧客が来店する保証はなく、収入が得られるかどうかは不明です。

万が一、収入が得られないと牛肉の購入代金を卸売業者へ支払うことができません。そのため、実績のないステーキ店に牛肉の供給を躊躇することは十分に考えられます。

実績のない会社に対して、取引先などの外部関係者は積極的に協力してくれないのが普通です。そのため、開業したばかりの会社は実績を積み重ねるまでが大変です。だからこそ、協力者をできるだけ確保する必要があります。

そこで、頼りになるのが身近な家族であり、特に配偶者は心強い味方です。

例えば、ステーキ店の顧客数が伸び悩んでいる場合、収入が確保できないため、事態は深刻です。通常、このような悩みを牛肉の卸売業者など取引先に相談できません。

しかし、配偶者と悩みを共有することは可能です。共有することで、ステーキ店の経理を手伝ってくれたり、販売スタッフに加わってくれたり協力者になってくれるかもしれません。

そのためには、開業することに対して家族からの同意は欠かせません。実際に説得するときは、「事業に失敗して借金だけが残ってしまう」など配偶者の不安を事前に取り除くのがポイントです。

開業する場所を決める

業種によっては、事務所や店舗の設置場所が事業展開の明暗を左右します。例えば、ベーカリーカフェを開業するとき、立地条件の良い駅前に出店すると仮定します。

顧客に認知されやすいため、来店者数を増やすのに有利です。そのことを融資担当者は熟知しているため、開業する場所を重視します。

そこで、銀行が開業する場所でチェックするポイントを解説します。

1.家賃の金額を負担できるか

いくら売上金額を獲得できても、商品の購入金額や諸経費を賄えなければ、事業は継続できません。その諸経費の中でウェイトの大きい家賃の金額に融資担当者が注目するのは当然だといえます。

特に、無駄に立地条件の良い場所に開業することに対して銀行は警戒します。家賃の相場が高いからです。そのため、「融資先は高い家賃を負担し続けることができないのでは」と融資担当者は不安になります。

したがって、家賃の負担に無理のない場所を選ぶことが創業融資を引き出すためのポイントとなります。

2.本当に賃貸物件を借りる必要はあるか

実績のない会社が事業で軌道に乗るまでの間、売上金額(=収入金額)を獲得するのは簡単ではありません。しかし、家賃を負担しないと販売活動に支障をきたしてしまいます。

例えば、得意先からの注文後に電気部品を東南アジアから輸入して販売するビジネスモデルの貿易業を開業すると仮定します。

この場合、電気部品(在庫)を保管する必要がないため、狭いスペースで事業を遂行できるため、自宅をオフィスとして利用できないか検討する余地があります。

自宅と別の場所にオフィスを借りると家賃の負担が大変だからです。当然、銀行は自宅をオフィスと兼用できるかどうかをチェックします。

そのため開業をする場合は、物件を借りる前に自宅を活用できるかどうかを事前に検討することが大切です。

3.立地条件とマッチした商品やサービスを提供できるか

いくら商品やサービスの品質が良くても、立地条件とマッチしていなければ販売できません。

例えば、水道工事業を開業すると仮定します。顧客は水漏れなど緊急の事態に陥ったときに修理を依頼するため、スピード対応が要求されます。当然、顧客は自宅からすぐに訪問してもらえる業者を選びます。

そうすると、水道工事の品質だけはなく、住宅街など顧客の自宅に近い場所に開業しないと仕事を受注できません。

このように、立地条件は販売活動を左右するため、銀行は開業する場所と商品やサービスがマッチしているかどうかをチェックします。

4.不利な立地条件を補う工夫ができるかどうか

自宅以外で開業するためには賃貸物件の確保が必要です。しかし、「借りられる物件がない」など希望地で開業できないケースがあります。その場合、販売活動に不利な場所での開業を余儀なくされます。

例えば、テイクアウト専用の弁当屋を開業すると仮定します。しかし、駅前など人通りの多い場所を確保できず、目立たない所に出店せざるを得ない場合、顧客から認知してもらうのに時間がかかります。それでは、弁当の販売に悪影響を及ぼしてしまいます。

そのため、融資担当者は立地条件が不利かどうかを気にします。このような銀行の不安を解消するため、弁当屋のことを早く認知してもらうために「積極的にチラシ広告を実施する」など不利な立地条件を補う工夫していることをアピールする必要があります。

必要なスタッフを確保するかどうか検討する

開業するとき、業種によってはスタッフが必要です。例えば、ラーメン屋をオープンさせる場合、「麺をゆでる調理人」や「接客係」など複数人いないと店舗の運営はできません。そのため、銀行は開業する前にスタッフを確保できるかどうかについて注視します。

それと同時に銀行は、スタッフへ支払う給料のために会社の現金預金が足りなくなることを警戒します。開業前の会社は、「販売ができる」という過去の実績による裏づけがないからです。

そこで、「代表者のほかにスタッフは本当に必要かどうか」「スタッフは何人ぐらい必要なのか」などを開業前に検討する必要があります。実績のない会社はスタッフへ支払う給料など人件費の負担が重くのしかかるからです。

そのため、「家族の協力を得る」「スタッフの採用をパート・アルバイトにする」「電話応対などは人材派遣会社を活用する」など人件費の負担を最小限にする施策がポイントです。

セールスポイントを明確にする

「開業する前の会社」や「開業して間もない会社」は同業他社より実績で劣っているのが普通です。当然、商品やサービスの品質が同業他社と同じぐらいなら、実績のない会社は集客に不利です。そのため、実績のなさをカバーしないと販売活動の足を引っ張ってしまいます。

もちろん、そのことを銀行は熟知しているため、融資審査のマイナス要素になりかねません。

そこで、融資担当者の不安を解消するために、会社のセールスポイントを明確にして同業他社と差別化できるようにしなければなりません。

例えば、パソコンの卸売業で開業すると仮定します。そのとき、「安い購入ルートを確保できているため、パソコン(商品)を同業他社より安価で提供できる」などのセールスポイントを銀行にアピールする必要があります。

それによって、融資担当者に実績がなくてもパソコンの販売が可能であることを説得できます。

売上金額と利益額を予測する

「売上金額-商品などの購入(仕入)金額-給料や家賃など諸経費=利益額」から会社は借入金を返済してくれることを見込んで銀行は融資します。そのため、売上金額や利益額を予測して創業計画書へ記載する必要があります。

利益額を予測するとき、売上金額から差し引く「商品などの購入金額」や「給料や家賃など諸経費」の金額を見積もるのは簡単です。前者は販売数量、後者はスタッフの人数や物件の賃貸借契約書を元に計算できます。しかし、売上金額は売場面積などに左右されます。

つまり、売上金額が分かれば、利益額は自動的に予測できます。そこで、業種別の売上金額を予測する方法について解説します。

1.商品などの店舗販売業

スーパーやコンビニエンスストアなどの小売業で、商品などを店舗で販売する業種が挙げられます。売場面積(=商品の量)によって、売上金額は左右されます。そのため、次の公式により予測できます。

1平方メートル(または1坪)当たりの売上金額×売場面積=売上金額

例えば、次のコンビニエンスストアがあると仮定します。

  • 売場面積100平方メートル
  • 1平方メートル当たりの売上金額が月16万円

この場合、1ヶ月の売上金額は「売場面積100平方メートル×1メートル当たりの売上金額月16万円=1600万円」と予測できます。

2.店舗でのサービス業

飲食店や美容業など、店舗でサービスを提供する業種が挙げられます。これら業種の来店者数(=売上金額)は「座席数」と「1つの座席あたりの滞在時間」に左右されます。

例えば美容業の場合、来店者数はサービスを提供できる量によって制約を受けます。具体的には、座席数と1人あたりにかけるサービスの時間によって自動的に決まります。そのため、次の公式により予測できます。

平均客単価×座席数×回転数(営業時間÷1席あたり顧客の平均滞在時間)=1日あたりの売上金額

例えば、次の条件で美容業を開業すると仮定します。

  • 平均客単価:4000円
  • 座席数:10席
  • 営業時間:8時間
  • 1席あたり顧客の平均滞在時間:1時間
  • 1ヶ月あたりの営業日数:30日

以上の条件から回転数は「営業時間8時間÷1席あたり顧客の平均滞在時間1時間=8回転」です。そうすると、1ヶ月あたりの売上金額の最高額は「平均客単価4,000円×座席数10席×回転数8回転×1ヶ月あたりの営業日数30日=960万円」となります。

3.労働力を提供するサービス業

Web製作会社、ビル清掃業、化粧品や自動車など、人手の必要な業種が挙げられます。「製作スタッフ」や「営業マン」の人数によって、売上金額は左右されるのが特徴です。

例えば、ホームページの製作の場合、デザイナーなどのスタッフの人数によって、受注できる量(=売上金額)に限界があります。

また、キャンピングカーのような高額な商品を販売するとき、購入する側は慎重に検討するのが普通です。当然、販売するときは営業マンによる顧客へのクロージングが欠かせません。

そうすると、営業マンの数が多いほどキャンピングカーの販売数量(=売上金額)は多くなる可能性は高くなります。クロージングを実施できる顧客数が多いからです。

そのため、次の公式により売上金額を予測できます。

従業員1人あたりの売上金額×人数=売上金額

例えば、キャンピングカーの会社が次の条件と仮定します。

  • 平均販売単価500万円
  • 1人あたりの販売台数月3台
  • 営業マン2人

この場合、1ヶ月の売上金額は「平均販売単価500万円×3台×営業マン2人=3,000万円」と予測できます。

4.製造業や運送業

設備の必要な業種は「製品の生産能力」や「車の台数」と販売数量(=売上金額)が比例すると銀行は考えています。

例えば、引越し業者が受注できる量は引越しの荷物を運ぶトラックの台数に左右されます。また、印刷業が印刷物を得意先へ提供できる量は印刷機の台数が限度です。

そのため、次の公式により売上金額を予測できます。

設備の生産能力や運送できる荷物の量など×機械設備数(=車の台数など)=売上金額

例えば、次の条件の引っ越し業者があると仮定します。

  • 1件あたりの平均引っ越し料金:3万円
  • トラック1台の1日あたりに受注できる引越し件数:2件
  • トラックの台数:10台
  • 1ヶ月の営業日数30日

この場合、1ヶ月の売上金額の最高額は「1件あたりの平均引越し料金3万円×受注できる引越し件数2件×10台×1ヶ月の営業日数30日=1,800万円」となります。

まとめ

「日本政策金融公庫の新融資制度」と「信用保証協会の融資制度」には若干の違いがありますが、融資担当者が「貸したお金を返す」ことを会社に求める点では共通しています。

そのため、「創業する動機を明確にする」や「根拠のある金額を予測する」など借入金を返済できることを説明する事前準備が創業融資を引き出すためのポイントになります。

それぞれの創業融資のメリット・デメリットを吟味しながら、きちんとした事前準備をしましょう。


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