法人化する前であると、実際の開業前に多くの支払いをするようになります。開業後よりも、開業前のほうがお金の支払いが多くなってしまうことはよくあります。

そうしたとき、法人設立直後に支払ったビジネスに関するお金については、うまく活用することで節税できるようになります。

これら開業前に支払った費用については、繰延資産という形で法人内に留めておくことができます。何も対処をしなければ開業前に支払ったお金は経費にできませんが、事前に顧問税理士へ伝えることで繰延資産を作れるようになるのです。

繰延資産はいつでも経費にして問題ありません。そのため、都合のいい節税アイテムになります。そこで、「どのようにして開業前(または開業直後)の会社が繰延資産を用いて節税すればいいのか」を解説していきます。

中小企業が開業前に支払ったお金は繰延資産になる

繰延資産とは、「会社が支払ったお金のうち、将来にわたって利益をもたらせてくれる費用」を指します。そのため、「繰延資産=開業前に支払った費用」ではありません。

しかし一般的な中小企業だと、繰延資産としては開業前に支払った費用の経費化くらいしか存在しません。そのため厳密には違いますが、中小企業にとって繰延資産とは、「開業前に使った費用を経費にできるもの」と考えても大丈夫です。

このとき繰延資産には以下の5つがあります。

  • 開業費
  • 開発費
  • 創立費
  • 株式交付費
  • 社債等発行費

このうち、設立したばかりの中小企業に関係あるのが開業費や開発費、創立費です。開業前に支払ったお金については、こうした開業費、開発費、創立費のうちどれかになると考えましょう。

繰延資産は任意償却でいつでも損金化できる

なぜ、繰延資産が節税ツールとして効果的なのかというと、それは「どのタイミングであっても好きなように損金化できる」からです。

このときは任意償却と呼ばれ、0円から繰延資産全額を含め、好きな金額だけ損金計上して問題ないようになっています。

開業した間もないころであると、赤字になるのが普通です。こうした状態に経費化するのではなく、繰延資産としておくのです。そうしてビジネスをして数年後、黒字になったら繰延資産を切り崩していきます。

無駄に利益額が大きくなると、その分だけ法人税が巨額になってしまいます。そこで、利益が出た金額に合わせて繰延資産の一部または全額を経費にしていくのです。

どのタイミングでも好きな金額だけ経費にできる項目だからこそ、使い勝手が非常にいいのです。

・5年の均等償却(償却期間)は無視で問題ない

なお、会計上では「繰延資産を5年で均等償却する」となっています。例えば600万の繰延資産がある場合、毎年120万円ずつ経費にしていくのです。

  • 600万円(繰延資産) ÷ 5年(均等償却) = 120万円

ただ、税法では任意償却して問題ないとなっています。そのため赤字のときは償却0円にしておいて、黒字のときに一部や全額を損金計上できるようになるのです。

開業前に払う開業費・開発費・創立費の違いや具体例

それでは、開業費や開発費、創立費にはどのような違いがあるのでしょうか。実際のところ、顧問税理士に勘定科目の内容や仕訳を丸投げすれば問題ないため、厳密に理解する必要はありません。

ただ、事前に概要や違いを学んでおくのは必須です。税理士が節税に自ら積極的に協力してくれることはないため、あなたから申し出ないといけないからです。このとき、それぞれ以下のようになっています。

・開業費

会社設立後、事業を開始するまでに支払った費用のことを指すのが開業費です。非常に広い費用が開業費に含まれ、具体例としては「広告費」「パソコンやその他消耗品」「事務所家賃」「通信費・交通費」などがこれに該当します。

いずれにしても、新店舗の立ち上げを含め開業前に支払ったお金が該当するようになります。

注意点として、10万円以上する製品については固定資産や備品となり、「〇年で減価償却しなければいけない」と法律で規定されています。そのため、高額な製品については開業費にすることはできません。

そのため車は開業費にできませんし、パソコンについても一つ10万円以上になるパソコンだと固定資産になるので開業費に含まれません。

ただ、たとえ10万円以上の支払いだったとしても、固定資産・備品のように物として残らないものであれば開業費になります。広告費や事務所家賃は物を残すわけではないため、金額が10万円以上になっても繰延資産に計上できます。

・開発費

新商品を作ったり、新規ビジネスを構築したりするための調査費用・開発費用が開発費になります。

新たに起業したり、新分野へ進出したりするときに必要なマーケティング費用全般が開発費にあります。特許権使用料やコンサルティング料、新販路開拓のための展示会出展費用、試作品・サンプル代なども開発費だといえます。

ただ、あくまでもマーケティングや商品開発のお金であるため、事務所家賃などを開発費に含むことはできません。前述の通り、家賃などは開業費に含まれます。

・創立費

会社を設立するための費用が創立費です。そのため、すべての法人で創立費が発生するようになります。「定款の作成費用」「登録免許税」などの支払い費用が創立費に該当します。

創立費についても、法人化のときは確実に繰延資産として計上するようにしましょう。

繰延資産にならない項目を理解する

これら創立費を含め、開業費や開発費について顧問税理士に伝えなければほぼ確実に税理士は動いてくれません。私も起業して法人設立当初、これらのことを知らず定款の作成費用などを繰延資産として計上していませんでした。そのため、その分だけ無駄に法人税が多くなったわけです。

税理士で節税アドバイスがないのは普通なので、自らこうした知識を仕入れたうえで顧問税理士に伝える必要があるのです。

一方で繰延資産にならない項目も存在します。代表的なものとしては以下になります。

・賃貸マンションの敷金

繰延資産になるのは、あくまでも返ってこないお金についてです。そのため、後で返ってくるお金である敷金は繰延資産とはなりません。経費にできるものが繰延資産の対象になります。

同じように考えると、フランチャイズなどの加盟金のうち後で返金される性質の費用は繰延資産になりません。

・商品の仕入れ(在庫購入費用)の代金

個人事業主であれ法人であれ、在庫の仕入れ費用は経費にできないことで知られています。これらの在庫は金券と同じであり、売ることによってお金に変えることができます。そのため商品を仕入れても経費にできず、売れたときにようやく仕入れ費用を損金化できます。

こうした性質のため、開業前に仕入れた商品を繰延資産として計上することはできません。売るために必要な商品や材料は開業費に含まれないと考えましょう。

起業した、法人成り前の個人事業主は確定申告を行うべき

なお、これら繰延資産として認められるのは「法人化した後に支払ったお金」になります。決して、起業して法人化する前に払ったお金ではありません。

しかし、最初から法人化する人ばかりではありません。最初は個人事業主・フリーランスから入り、後になって法人成りする人も非常に多いです。ただ、自営業の人についても開業前に支払った費用の経費化は認められているため、このときは確定申告するときに「開業前に払った費用を利益から差し引く」という作業をするだけで問題ありません。

しかしながら、起業と共に法人化する人は「個人で支払ったお金(法人化前の費用)と、法人での支払い費用(法人登記後の個人での立て替え払いを含む)は完全に分けて考えなければいけない」ことを理解しておきましょう。

会社設立前に個人のお金で調査費用を支払ったとしても、それは繰延資産として認められません。個人事業主としてビジネスをするのであれば、確定申告のときに開業費分の利益を差し引けば問題ないです。ただ、最初から法人登記をする場合だと、法人登記前に個人で支払った費用分についてはすべて無駄になると考えましょう。

・個人事業主の開業前の費用は便利

参考までに、法人の場合は「法人登記をした日」が明確に決められており、この後に支払った法人での費用(または個人での立て替え費用)を繰延資産とすることができます。

一方で個人事業主・フリーランスなどの自営業であれば、いつからの費用を開業前の支払いと判定するのかというと、実は決まりがありません。前年に支払ったセミナー費用であっても、「開業前に必要な勉強代だった」として、事業スタート後の利益と相殺できるようになります。

もちろん、5年以上も前に払ったお金を開業費にすると不自然です。あくまでも、自然な範囲で開業費を計上するといいです。

繰延資産と認められるため、領収書の保管は必須

このとき、開業費や開発費、創立費として繰延資産を作れるとはいっても、好きなように繰延資産を構築できるわけではありません。当然ながら、実際にお金を支払ったという証拠が必要になります。

何でもいいので繰延資産を作れる場合、誰でも簡単に脱税できてしまいます。架空経費と同じことを行えるようになるため、領収書や請求書などの書類関係は必須だと考えましょう。

このときの支払いとしては、個人クレジットカードでの支払いでも問題ないですし、領収書の宛名が空欄であっても大丈夫です。特に会社設立直後では、社長個人が立て替え払いをするのは普通です。

ただ前述の通り、法人登記の前に個人で支払いしたとしても繰延資産にはならないため、クレジットカード払いや現金払いをするときを含め、やり方には注意するようにしましょう。

・開業後でも繰延資産を作れる

なお、これは「領収書類を残して支払いの証拠があれば、確実に繰延資産になる」ことを意味しています。しかもこのとき、開業費とはいっても開業前でなければいけないルールはありません。開業後に支払いをしたとしても繰延資産にできます。

開業日後であっても、数ヵ月ほどは「実際にビジネスをしてみて、追加で支払わなければいけない経費がたくさん出てきた」などのケースは頻繁にあります。

開業費というのは、あくまでも開業準備のために必要な支出になります。支払いが開業前か開業後かは関係ないことを理解しましょう。

開業後は通常の経費計上を行えば問題ない

ただ、実際に開業して1年ほど経過したのであれば、繰延資産を作る意味はほぼなくなります。繰延資産というのは、「最初は赤字になることが確実であり、いつ黒字になるのか見通せない起業家」が活用するべきものになるからです。

創立費については全員が発生するので、初年度から大きな黒字が見込まれている会社であっても繰延資産を活用する必要があります。一方で開業費や開発費については、初年度から黒字会社の場合は活用する意味がないのです。赤字のため、どの時点で黒字になるか不明なので「将来に経費化できる枠を作っておく」という意味で繰延資産を作るのが基本です。

このとき1年以上のビジネスを継続している会社であれば、ビジネスについてある程度の見通しを立てることができます。法人だと赤字は10年以上を繰越できるため、10年以内に黒字化できない新規事業を行う意味はありません。

確かに、既に何年もビジネスを続けている会社であっても、新規事業をスタートさせるため開発費として繰延資産を作ることは可能です。

ただ、いつ黒字化できるか心配な会社が繰延資産を作るべきであり、2~3年以内に黒字転換できる見込みの事業について、わざわざ開発費などを計上する意義はありません。それなら、開発費については早めに経費計上することで法人税を減らしたほうが節税になります。

繰延資産というのは、あくまでも起業を含め新たに会社を作るときに有効だと考えましょう。既に何年もビジネスを続けている会社が繰延資産を利用しても価値はないのです。

開業前の支払い費用を全額経費にするべき

これからビジネスを開始するのであれば、個人事業主や法人を含めあらゆる人で開業前に費用を支払うことになります。これについてはセミナー代かもしれませんし、広告費を払うかもしれません。いずれにしても、お金を支払うことでビジネスが軌道に乗るのです。

このときの開業準備金については、あらゆるものを経費にしましょう。何も経費に計上しないのは圧倒的に損であり、節税対策のためにも開業前(または開業直後)の費用を経費処理するメリットは大きいです。特に赤字の可能性がある場合、事前に繰延資産にしておくと効果的です。

ただ、開業費や開発費は赤字が見込まれる起業したばかりの会社に有効であり、「初年度から黒字の会社」「既に数年以上のビジネスをしている会社」は活用する意味がなくなります。

また仕訳するときの勘定科目や日付などの経費処理は税理士に丸投げすればいいものの、事前に顧問税理士へ「繰延資産を計上したい」ことを伝えないと、ほとんどの税理士は節税対策を講じてくれません。そのため、起業時は必ずこうした費用を経費化できるように事前対策を練っておくといいです。


年間350万円以上を節税

ビジネスの継続を考えるとき、最も重要なのは節税です。節税策を一つ実施するだけで100万円以上の無駄な税金が減るのは普通ですが、何も対策をしなければ会社経営者や相続額が多い人は無駄に税金を支払い続けることになります。

ただ、私は優秀な節税の専門家(税理士やファイナンシャルプランナー)に依頼したことで「家賃の個人負担が家賃総額のわずか6%」「出張に行くたびに30万円以上の非課税の現金を手にできる」「社会保険料を年間130万円削除」など、何も対策をしなかったときに比べて一瞬で年間350万円以上も節税できています。

現在では、海外法人(タックスヘイブン)の活用や再保険(キャプティブ)の利用など、あらゆる節税策によって年間にして何千万円もの節税を実現しています。

高額な財産を相続する人や会社経営者は節税に精通した専門家が必須です。そこで、実際に節税に強い税理士やファイナンシャルプランナーを紹介します。節税コンサルを受けるだけで、あなたの会社の財務状況は一変するようになります。

節税コンサルの応募ページへ


YouTubeでの節税情報

Twitterでフォローする