起業してすぐに会社を作ったり、個人事業主が法人成りをしたりするとき、会社組織にします。会社にするときは株式会社か合同会社(LLC)にするのが一般的です。

最も多い形式は株式会社です。ただ、合同会社で法人登記する人もいます。なぜ、株式会社ではなく合同会社という形にしているかというと、そのほうが無駄な経費を少なくできて節税できるからです。

法人としての機能は株式会社でも合同会社でも同じです。ただ、設立費用やランニングコスト(維持費)は違ったものになるのです。そのため、個人で活躍する人であるほど合同会社を選びやすいです。

そこで、どのようにして合同会社(LLC)を設立し、節税対策を実施すればいいのかを解説していきます。

合名会社・合資会社は意味がなく、合同会社が重要

法改正によって2006年から設立できるようになった会社として合同会社があります。ただ、合同会社の他にも合名会社や合資会社が存在します。このとき、合名会社や合資会社を設立する意味はありません。

合同会社の場合、株式会社と同様に有限責任となります。「責任が有限」となっているため、会社が破綻したときの債務(銀行からの借金など)については特に責任を負うことはありません。最初に資本金としてお金を出すことにはなりますが、その範囲でのみ責任を負えば問題ありません。

一方で合名会社や合資会社の場合、無限責任の役員を置く必要があります。無限責任だと、たとえ会社が破綻したとしても、そのときの借金については個人の財産を持ち出して補填しなければいけません。責任が無限に続くため、無限責任と呼ばれます。

会社の形態責任の有無
株式会社有限責任
合同会社有限責任
合名会社無限責任
合資会社無限責任

こうした違いから、有限責任のみで成り立つ株式会社または合同会社を作るのが基本になります。合名会社や合資会社を作るメリットはゼロのため、法人化するときは株式会社と合同会社のどちらが良いのかを考えればいいです。

会社設立時の経費が少ない合同会社のメリット

それでは、株式会社ではなく合同会社を選択するときのメリットとしては何があるのでしょうか。これについては一つしかなく、会社設立時の費用が少ないことがあげられます。

株式会社として登記するとき、以下のような費用が必要になります。

  • 登録免許税:15万円
  • 定款の認証手数料:5万円
  • 定款の謄本手数料:2,000円

そのため、株式会社を作る場合には最低で約20万円になると考えましょう。厳密には定款に貼る収入印紙代として4万円が必要になるものの、電子定款にすることで4万円の出費を省けるようになります。そのため、実質的に約20万円の法定費用が発生します。

一方で合同会社(LLC)だと、登録免許税の6万円だけで問題ありません。つまり、6万円の支払いで法人登記できるようになります。合同会社のほうが設立費用は安くなり、必要経費を少なくできる分だけ節税が可能になるのです。

株式会社合同会社
登録免許税15万円6万円
定款の認証手数料5万円0円
定款の謄本手数料2,000円0円
収入印紙代0円(電子定款)0円(電子定款)

このような違いがあり、法人登記のときに14万円を節約できます。個人事業主の法人成りやサラリーマンの法人化を含め、会社設立時の費用を安くできるのが合同会社を作る一番のメリットです。

官報掲載費のランニングコストを無視できる

なお、株式会社の場合だと官報掲載が義務付けられています。官報掲載費としては、約6万円が必要になります。つまり、毎年6万円ほどの費用が必要になります。一方で合同会社の場合、こうした官報掲載が必要ありません。

そうなると、ランニングコストとして合同会社だと毎年6万円ものお金を節約できるように思えてしまいます。

ただ、実際のところ中小企業の株式会社で律儀にお金を支払い、官報掲載をしている会社など存在しません。上場企業なら別かもしれませんが、中小企業で官報掲載は無縁です。当然、私の会社(株式会社)は6万円も払って官報掲載などしていませんし、顧問税理士に聞いても「顧問先で官報掲載をしている会社はない」と教えてくれました。

そのため、株式会社だと一応は毎年6万円ほどの官報掲載費が必要となっていますが、実質的に関係ない制度であるため、これについては株式会社も合同会社も同じだと考えましょう。

こうしたことがあるため、株式会社と合同会社を比較したとき、合同会社のメリットは「会社設立時の登記費用が安いことだけ」が基本です。

・株式会社だと10年ごとの役員選任費用がある

ちなみに、株式会社と合同会社を比べたときの唯一のランニングコストの違いとして役員選任費用があります。

株式会社では、役員の任期は最長10年です。代表者を更新するにしても、10年ごとに役員選任費用として3~5万円ほどの費用が発生するようになります。1年ごとで計算すると非常に金額は安いですが、合同会社では役員選任費用は発生しません。

資本金メリットや法人節税の効果は株式会社と同じ

なお、株式会社と合同会社を比べたとき、基本的には両者に大きな違いはありません。前述の通り、会社設立時の費用は異なります。ただ、その他のスペックについてはほぼ同じなのです。

まず、株式会社でも合同会社でも資本金1円から設立することができます。また、会社の維持費や法人税率は同じです。節税するときの方法や対象範囲についても同様です。

銀行融資についても、合同会社だからといって特に融資が下りにくいことはありません。合同会社で大企業の会社は存在しますし、合同会社で特にビジネスが不利になることはないのです。有名な会社だと、アマゾンジャパン合同会社が合同会社として知られています。

会社を運営することになる場合、株式会社も合同会社もそこまで大きな違いはないと考えましょう。

意思決定を役員だけで決められる合同会社

このとき、一般的に意思決定のスピードは株式会社よりも合同会社のほうが優れているといわれています。合同会社の場合、役員だけですべての事項を決定できるからです。

株式会社の場合、投資家から資金注入を受けるケースだと会社経営に関わっていない第三者の意見を伺わなければいけません。そのため、どうしても経営スピードは遅くなってしまうのです。

ただ、これについてはほとんどの中小企業で関係ありません。一般的な株式会社だと、社長が100%株主となっていることがほとんどです。友人たちと一緒に起業した場合であっても、役員だけが主要株主になっていることが多いです。

そのため、実際のところ中小企業だと「意思決定に関する株式会社と合同会社の違い」を意識する必要はありません。

・合同会社は上場できない

なお、株式のやり取りをするために上場するので、株式の概念がない合同会社は上場することがありません。基本的に起業時に上場を目指す会社は少ないですが、将来は会社を大きくして上場まで視野に入れる場合、設立形態は株式会社の一択になります。

また、株式会社だと増資などによる資金調達が可能ですが、合同会社だとこうした資金調達の方法を採用できません。

合同会社は相続・事業承継での税金対策が面倒

また、将来の事業承継を考えるのであれば株式会社のほうが優れています。株式会社の場合、要は「誰が株を保有しているのか」によって会社の決定権が異なるようになります。多くの株を保有している人が会社を操ることができるため、事業承継のときは単純に後継者へ株を譲るだけで問題ありません。

このときは自社株評価の引き下げ対策を実施したうえで相続・生前贈与させます。

ただ、合同会社だと株式という概念が存在しません。そのため、社長が死亡すると相続されることはなく、会社は清算されます。これを防ぐため、定款に「社長の死亡時は〇〇へ引き継がせる」などのように記載がなければいけないのです。

また、実際に相続するにしても株式会社のように自社株対策が可能なわけでもないため、どうしても合同会社だと相続・事業承継の場面で不利になります。

将来目指す会社規模や事業承継で会社の形態を決めるといい

それでは結局のところ、個人事業主の法人成りやサラリーマンの法人化などの場面だと、株式会社と合同会社ではどちらがいいのでしょうか。

これについては、迷っているのであれば株式会社を選択するといいです。世間一般的には株式会社が主流ですし、社員を雇うことを考えるのであれば株式会社のほうが面倒でありません。また、親族(子供や孫など)へ設立した会社を将来、相続させる可能性がある場合は株式会社のほうが優れています。

ただ、人によっては個人プレーヤーとしてずっと続けていき、さらには会社を子供に事業承継させる意味のないケースがあります。

例えば、私の知り合い経営者で株のトレーダーがいます。短期売買を行うことでかなり稼いでいる友人がいるのですが、彼は合同会社を作りました。個人で売買するため、将来社員を雇う可能性はゼロです。また、株の取引なので個人の能力に大きく依存し、子供が会社を相続するにしても意味がありません。

これと同じような状況はフリーのITエンジニアにもいえます。ITエンジニアで法人化したとき、個人の能力に大きく依存するため、事業承継させるにしても子供にとっては迷惑なだけです。そのため、社員を雇って大きくすることを考えない場合、設立費用の安い合同会社が優れています。

しかし、それ以外の人は株式会社を選択するといいです。参考までに、私は社員がほぼ存在しない会社ですが、法人登記のときは株式会社を選択しました。社員をたくさん雇うことはないものの、将来の相続や社員をたくさん雇わなければいけなくなった状況を考えたとき、株式会社のほうが有利だったからです。

株式会社と合同会社では、どちらが優れているのかは人によって判断が分かれます。少しでも法人登記の費用を少なくしたい場合、合同会社を選ぶようにしましょう。ただ、社員を何人も雇う可能性があったり、親族に会社を譲る可能性があったりする場合は株式会社を選択するといいです。

合同会社の肩書は代表社員になる

ちなみに、株式会社の場合は代表取締役社長になりますが、合同会社だと代表社員という肩書になります。

前述の通り、実際にビジネスをする場面であると合同会社でも特に問題は起こりません。ただ、一般人にとってみると合同会社はほぼ知られていませんし、「代表社員って何?」となります。

このとき、代表取締役社長という響きにこだわらないのであれば合同会社でも特に問題はありません。

参考までに、私の知り合いの不動産経営者は合同会社で設立していました。少しでも無駄な会社設立費用を少なくさせたいのと、不動産大家なので社員を雇う予定がゼロであり、代表取締役という肩書に興味がなかったという理由があります。

将来の事業承継では少し面倒になりますが、肩書に対して興味がなく、設立費用が安いという金銭メリットを重視する場合は合同会社が優れています。

個人事業主やサラリーマンの起業・法人成りでLLCを使う

税金対策を実施するとき、会社組織は非常に効果的です。このとき、株式会社と合同会社(LLC)では税制面の違いや行える節税対策に違いはなく、銀行融資の面まで含めてビジネスを実践するうえで不都合なことはありません。

ただ、合同会社のほうが会社設立のときに必要になる経費が少なく、その分だけ節税できるようになります。

このとき、株式会社と合同会社のどちらが優れているのかについては個人の状況によって異なります。まず、会社規模を大きくしたいと考えていたり、将来の相続をスムーズにしたいと考えていたりする場合は株式会社を選択しましょう。

ただ、個人プレーヤーで活躍することだけを考えており、法人登記費用を最小限に留めたい場合は合同会社が優れています。

こうしたことを理解して、個人事業主の法人成りやサラリーマン起業で株式会社・合同会社のどちらを作るのか検討するようにしましょう。一般的には株式会社ですが、登録時の費用を考える場合は合同会社という選択肢もあります。


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