タックスヘイブンとして知られており、非常に税金の低い場所がマレーシアのラブアン島です。ここにラブアン法人として会社設立することで、圧倒的な節税が可能になります。
そうしたとき、気になるのが費用面です。いくらの設立費用になり、資本金を用意し、維持費がかかるのか理解する必要があります。
これについて、ラブアン法人では移住費用などその他の要素まで考慮しなければいけません。それらを合わせると、確実に500万円以上の初期費用になります。ただそれ以上に節税効果が大きいため、稼いでいる経営者にとってはまったく問題ない金額ですが、こうしたお金が出ていくと考えましょう。
それでは具体的な設立の中身はどのようになっているのでしょうか。ここでは、ラブアン法人を設立するときに理解するべき費用について解説していきます。
もくじ
ラブアン法人の設立費用は100万円ほど
タックスヘイブンであるラブアン法人の設立では、そのための設立費用を支払わなければいけません。これについては、ラブアン法人の設立費用はだいたい100万円ほどになります(法人設立+ビザ費用)。
オフショア法人だと、どのエージェントに依頼したとしてもそれなりに高額な費用が発生します。またこの費用には、ビザ取得代も含まれています。
日本でも株式会社の設立では30万円以上の出費となりますが、それなりに高額な費用がかかります。ビザなしで30万円以上であり、これにマレーシアのビザ取得代金が加わると、ある程度の金額になってしまうというわけです。
内訳は会社設立費用とビザ取得代金に分かれる
そうしたとき、これらラブアン法人の設立費用の内訳としては大きく以下のようになります。
- 会社設立費用
- ビザ取得代金
会社設立費用としては、マレーシア政府に支払う税金であったり秘書会社へ支払う費用だったりするものも含まれます。ラブアン法人では必ず秘書会社(セクレタリーカンパニー)と契約しなければいけません。そのための費用となるのです。
さらにビザ取得代が追加され、ビザ代金はどれだけの人数で申請するのかによって費用が違ってきます。一人だけ移住すれば金額は低くなりますが、家族分まで申請すると高くなります。
参考までに、私がラブアン法人を設立するときは以下のような費用でした。
法人設立費用4,600ドルであり、ビザ取得代金4,075ドル(家族3人分)となっています。そのため、やはり約100万円の費用となります。
細かい費用の発生が存在する
もちろんこうした費用に限らず、その他の費用も発生するようになります。例えば、ビザを取るためにはパスポート認証をしなければいけません。あなたのパスポートが偽造でなく、本物であることを証明する必要があるのです。
当然ながら、私についても別に費用を支払って、パスポート認証をしてもらいました。
またラブアン法人の設立では、特別な理由がない限りは日本のエージェント会社に依頼することになります。このときは翻訳費用やアドバイス料などを支払うことになるため、これらの追加費用が発生するのは当然だといえます。
マレーシアの会社でなく、日本の会社へ依頼するのが基本
ちなみにラブアン法人の設立では、現地マレーシアのエージェント会社に依頼するという方法もあります。こうした現地の会社であれば、設立費用を半分くらいに抑えられるようになります。
ただ前述の通り、ほとんどの人が日本のエージェント会社に依頼します。理由は単純であり、その分だけ時間のロスがないからです。
マレーシア人は「良く言えばおおらかでフレンドリー、悪く言えば仕事ができない」となります。そのためマレーシア現地のエージェント会社に依頼したとしても、仕事の進み具合は遅く、メールが数日ほど放置されるのは普通だと考えましょう。
そのため、本来なら半年ほどで問題なくラブアン法人の準備が完結するのにも関わらず、1年以上かかってしまうこともあります。当然ながら節税面を考えると、ラブアン法人の設立が後ろ倒しになってしまうほど機会損失が大きくなります。
また日本の会社だとすべて日本語にて完結します。対応のスピードが速いだけでなく、その他のメリットを考慮すると、どうしても日本のエージェント会社になってしまうと考えましょう。
資本金は300~400万円以上となる
ただ会社設立時に必要な費用としては、こうしたマレーシア政府や秘書会社、エージェント会社などに支払う費用だけでは収まりません。これに資本金が上乗せされるようになります。資本金がそれなりに高額であるため、ラブアン法人を作るときに500万円以上が必要になるのです。
ラブアン法人の資本金については、建前上は1円であっても問題ありません。最低資本金額の定めは特にないのです。
しかし実際のところ、低い資本金でラブアン法人を設立したとしてもビザ申請の審査で落とされてしまいます。つまり最低資本金額は存在しないものの、ビザ申請の審査の関係で「ある程度の資本金でなければいけない」となっているのです。
このときの資本金について、300~400万円以上になると考えましょう。参考までに私の会社だと、以下の通り資本金400万円にてラブアン法人を設立しました。
通貨は日本円でも米ドルでもいいですが、いずれにしても300~400万円以上の資本金に設定しなければいけません。
銀行口座を開設後、日本から海外送金する
なお、このように資本金を設定して実際にラブアン法人を設立し、現地にて法人口座を開設したら、実際にあなたの銀行口座からラブアン法人の口座へ海外送金することになります。
資本金で設定したお金については、できるだけ早めに送らなければいけません。ダメなエージェント会社だと、「資本金で定めた金額は送金しなくてもいい」とアドバイスすることがあります。ただ、実際にそれをやってしまうと後悔するようになります。
ラブアン法人の就労ビザは2年ごとの更新になりますが、更新時に「実際に資本金が法人口座に支払われているかどうか」はチェックされますし、ビザ更新の審査にも影響してきます。そのため、資本金は早い段階で支払っておく必要があるというわけです。
そこで、日本の銀行からラブアン法人の銀行へ海外送金するようにしましょう。ラブアン法人での取り扱い通貨が日本円なら、日本円のまま送金すればいいです。また通貨を米ドルにしたなら、日本円ではなく米ドルとして海外送金することになります。
ラブアン法人の維持費は秘書会社に年間30万円ほど
そうして次に考えるべきが維持費になります。オフショア法人では、すべての会社について維持費が必要になるため、そうした費用を支払わなければいけません。
前述の通り、ラブアン法人では必ず秘書会社を雇わなければいけません。ラブアン当局との連絡や納税など、すべての作業は秘書会社を通すことになります。
そうしたとき、秘書会社に支払う費用はザックリと年間30万円ほどになると理解すれば問題ありません。月に約3万円の支払いですが、秘書会社が連絡してくれるからこそ、ペナルティーなしにラブアン法人を維持できるのです。
例えば、以下は私が秘書会社から受け取ったメールです。
PCB(個人の所得税)に関する支払い催促のメールであり、秘書会社へ送金することで、納税について必要なすべての作業を代行してくれます。特にマレーシア現地で確定申告などの面倒な作業をする必要がないため、このような維持費用は必要経費だと考えましょう。
会計監査で日本の税理士へ依頼し、年間30万円となる
ただラブアン法人では、必ず会計監査を実施しなければいけません。以前は会計監査が必要ないときもありましたが、現在では会計監査をすることで帳簿付けをする必要があるのです。
このとき、現地の会計士などに依頼してもいいですが、英語でのやり取りになりますし慣れていない人ではかなり大変な作業になります。そのため基本的には、ラブアン法人の税務に対応している日本の税理士へ依頼することになります。
私についてもラブアン法人を設立後は日本の税理士に作業を代行してもらっています。毎月の帳簿付けをするわけではなく、年に一回だけ「1年分の売上や経費に関するデータをガサっと送り、会計帳簿を作成してもらう」という作業をしてもらっているわけです。
ラブアン法人の場合、法人税率3%なので経費計上する項目は非常に少ないです。1万円を経費にしても、法人税率3%のため300円ほどの法人税減少にしか寄与しません。しかも個人の所得税は約12万円と一定のため、1万円以下の少額出費を経費計上する意味はありません。
その結果、経費計上する項目は非常に少なくなります。また売上については、請求書やその他のデータを渡せばいいだけなので、1年分の帳簿付けや決算書作成をすべて含めて30万円ほどという少額の費用で代行可能になっているわけです。
参考までにマレーシアの会計士に依頼しても年間30万円ほどの費用になるため、それなら日本の税理士に依頼したほうがいいというわけです。
・ラブアン法人対応の税理士を見つけるのが最も大変
ただ一番大変なのは、ラブアン法人に対応している日本の税理士を見つけることです。ほとんどの税理士は日本の税務だけに特化しており、国際税務は知りません。
また国際税務に関与している税理士法人であっても、ラブアン法人のようなタックスヘイブンに精通しているとなると限られるようになります。そのためラブアン法人の設立では、同時に日本国内にて税理士を頑張って探すことをおすすめします。
実態要件の費用は年間150万円ほど
なお、ラブアン法人の維持費で最も高額なのが実態要件です。単に海外に移住するだけではダメであり、その場所でオフィスがあり、実際に社員を雇用してビジネスを動かしているのかどうか(ビジネスとしての実態があるかどうか)が重要になります。
具体的には、以下の要件を満たしている必要があります。
- ラブアン島で最低5万リンギット以上の支払いをしている
- ラブアン島にオフィスがある
- ラブアン島で最低2人の社員を雇用し、勤務している
ラブアン法人では、実態要件を満たしていないと法人税率3%ではなく、マレーシアの一般法人の法人税率24%が適用されてしまいます。
この中で「ラブアン島での最低5万リンギットの支払い」と「ラブアン島にオフィスがある」については、簡単に要件を満たすことができます。一方で難しいのは、ラブアン島で最低2人の社員を雇用していることです。
ただ当然ながら、ラブアン島という非常に狭い島&圧倒的な田舎で社員を雇うのは現実的ではありません。また、実際にラブアン島で求人を出したとしてもまったく応募がないのが現状です。事実、私の知り合いでラブアン島にて求人を6ヵ月ほど出した人がいます。しかし、その会社は応募ゼロでした。
そこで、ラブアン法人で実態要件を満たすためには秘書会社に依頼しなければいけません。秘書会社に「実態要件を満たしたい」とメールを送ることで、すべての段取りをしてくれます。例えば、以下は実際に私が秘書会社へ依頼したとき、「実態要件を満たす費用」のメールの一部です。
ラブアン島で既にリタイアした人などをかき集めて、社員として働いていることにします。ただ実際に給料などは支払うことになるため、このメールにある通り月1,250ドル(月に約12万5,000円:年間で約150万円)の支払いが必要になります。
実態要件を満たすのがラブアン法人での支出で最も高額です。ただ、こうした実態要件を満たしている以上、確実に法人税率3%にて申告できるようになっています。
忘れてはいけない現地への引越し代
なおラブアン法人の設立では、忘れてはいけないのが引越し費用です。オフショア法人を立ち上げるだけでは意味がなく、マレーシアへ実際に住まなければいけません。または「ラブアン法人を作り、タイなど別の国に住む」などでも問題ないですが、いずれにしても日本の非居住者になる必要があります。
日本の非居住者でなければ節税は不可能なため、必ず海外引越が必要になることは理解しましょう。そのため、費用が発生します。
私の場合であれば、ベッドやテレビ、冷蔵庫など家にある大きなものはすべて捨てました。そしてダンボールに詰め込めるものだけの荷物を、頼んでおいた引越し業者の船便でマレーシアまで運びました。このときの費用については、17万6,000円でした。
3社ほど相見積もりを依頼し、最も値段の安い引越し業者でこの値段でした。
またこのときは私を含めた家族3人分について、スーツケース3つのみでマレーシアへ移住しました。服など必要最低限のものだけ持っていき、マレーシアへ渡航して1ヶ月後くらいに引越し業者から荷物が届いたというわけです。
マレーシア渡航後は「ラブアン島でのビザ申請」「住むための住居探し」などもあるため、一週間ほどはホテルに滞在することになります。こうした引越し代や渡航費用、ホテル代などまで含めると、どう頑張っても30万円以上の出費になります。
不動産賃貸は賃料の5ヵ月分を支払う
さらにマレーシアで住む場所を見つけなければいけないため、現地の不動産業者へ頼んで物件探しをすることになります。
マレーシアにはいくつもの日系の不動産業者がいるため、そうした会社に依頼することで住居探しをするのが普通です。私の場合についても、日系の不動産会社に依頼して1日かけて何件もの物件を見て回り、その日のうちに住む場所を探してもらうことになりました。
以下は実際に物件探しをしたときの様子です。
なおマレーシアの場合、住む物件を決めて手付金(家賃の1ヵ月分)を支払ってようやく契約完了となります。日本のように「実際に住むまで1ヵ月の猶予がある」などはなく、契約した瞬間から家賃が発生します。
またすぐに住めるわけではなく、契約後にようやくクリーニングが入ることが多いため、手付金を支払って1週間ほどは入居まで待たなければいけません。
そうしたとき、物件を決めたときに支払うお金は以下のようになります。
- 最初の手付金:家賃1ヵ月分(その場で現金手渡し)
- 不動産会社への仲介手数料:家賃1ヵ月分(その場で現金手渡し)
- 敷金など、その他の費用:家賃3ヵ月分
そのため、家賃の5ヵ月分が最初に消えていくと考えましょう。私の場合は月4,000リンギット(月に約10万円)の部屋を借りたため、最初に50万円ほどの支払いになったというわけです。
現地の家賃まで考えると維持費は安い
ただ現地に住む家賃支払いを考えると、マレーシアは圧倒的にコストが安いです。私のコンドミニアムはプールやテニスコート、バドミントンコート、ジムなどが備わっており、施設内にはレストランもあります。また部屋は130m2以上の3ベッドルームなのでかなり広いです。これでわずか月10万円というわけです。
同じアジアのタックスヘイブンでも、これが香港やシンガポールだと異常なほど家賃が高くなります。コンドミニアムを契約するのはどの日本人でも共通ですが、60~70m2ほどの部屋でも月40万円です。
会社の設立費用や維持費用というより、香港やシンガポールだと家賃が高額すぎるというわけです。家賃だけで年間500万円ほどが必要になるため、そういう意味でもラブアン法人を設立してクアラルンプールやジョホールバルへ移住するのは維持費が安いといえます。
海外法人節税では、設立費用や会社の維持費に限らず、現地での支出まで考慮する必要があります。そうしたとき、クアラルンプールやジョホールバルの物価は低く、マレーシアは優れているといえます。
事前に必要な費用を把握しておく
新たなことを開始するためには、それなりに高額な出費が発生するようになります。これについては、ラブアン法人でも同様だといえます。
タックスヘイブンの法人だと、どの場合であっても100万円以上の初期費用が発生します。そうしたときラブアン法人だと、「法人設立費用&ビザ取得費用」「資本金」「現地への引越し代」などを含めると500万円以上の現金がなければ不可能だといえます。またこれに加えて、法人の維持費用が発生します。
ただ節税効果は大きく、それなりに儲けている経営者なら問題なく出せる金額ですし、他のオフショア法人に比べると負担は非常に少ないため、かなり手軽なのがラブアン法人です。
ただいずれにしても、こうした費用が発生することは事前に理解しましょう。事前に設立費用や資本金、維持費、移住費用について学んでおけば、どれくらいの出費になるのか把握できるようになります。
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