土地や建物などの不動産を所有していると、無条件で課せられる税金として固定資産税があります。固定資産税は毎年課税されるものであり、当然ながらこの数字を抑えるほど手元に残るお金は大きくなります。

ただ、固定資産税を減額するためには事前に知識がなければいけません。また、正しく必要経費化することで節税する必要があります。

そうはいっても、人によっては節税手法によって1,000万円以上のお金を取り戻すことも可能なのが固定資産税です。

土地や建物などの不動産を保有している人なら全員が注意すべきポイントが、所有している不動産に課せられる固定資産税なのです。そこで、固定資産税の節税方法について確認していきます。

戸建てや賃貸マンション・アパートの固定資産税

固定資産税とは、土地・建物などの不動産を所有する人に対して、一律で課せられる税金を指します。1月1日の時点に税対象となる不動産を所有している個人や法人に対して、固定資産税がかかってくるようになります。

このとき場所によって少し異なりますが、固定資産税率は1.7%だと考えるようにしましょう。正確には固定資産税率1.4%ですが、これに都市計画税率0.3%が上乗せされるため、結果的に税率1.7%となるのです。

計算方法は単純であり、所有している不動産の評価額に1.7%を掛けるだけです。

  • 不動産の評価額 × 1.7% = 固定資産税の金額

不動産の評価額に対して1.7%なので、毎年の固定資産税は非常に高額になりやすいです。不動産価格が高いことは誰でも想像でき、そのために固定資産税も高くなりやすいのです。

不動産の評価額については、土地だと「実際の取引価格の約70%」となり、建物では「実際の取引価格の約50~60%」になります。そのため、対象の不動産を売買するときの金額よりも低い金額で評価することになるのです。

ただ、マンション一棟だと数億円規模になりますし、アパートでも当然のように高額です。そうしたとき、例えば不動産の評価額が1億円だとすると、毎年170万円もの固定資産税がかかってきます。

  • 1億円(不動産の評価額) × 1.7%(固定資産税率) = 170万円

また不動産を持っていることに対する税金であるため、賃貸戸建てや賃貸マンション・パートでの不動産運営が赤字であっても納税しなければいけません。そのため、不動産所有者にとって重税となりやすいです。

経費化での損金計上が可能な固定資産税

このとき、不動産オーナーが最初に考えるべきこととして経費化があります。投資用の戸建てや賃貸マンション・アパート、オフィスビルを保有している場合、支払った固定資産税については経費にできます。

税金には、経費にできるものとできないものがあります。損金計上が不可の税金としては、例えば以下のようなものがあります。

  • 法人税
  • 個人の所得税・住民税
  • 延滞税などのペナルティ

ただ、経費にして問題ない税金もあります。これには、以下のような税目が該当します。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 印紙税(収入印紙代)
  • 登録免許税
  • 不動産取得税

例えば売買契約書などで収入印紙を貼る場合、印紙税(収入印紙の購入費用)については全員が損金計上していると思います。同じように、固定資産税も経費にできるのです。

そのため会社は法人税を少なくでき、個人事業主は確定申告で課税所得を低く抑えることができます。確実に固定資産税を経費化することで不動産所得を抑えるのは、実践すべき最初の節税対策になります。

土地の分筆で評価額を引き下げる

また、不動産の評価額を下げることができれば問題ないため、事前の対策をすれば固定資産税を少なくできます。

固定資産税の算出方法は事前に決められています。そのため、あなたの好きなように計算することはできません。ただ、基準となる計算方法を変えることで節税することは可能です。このとき建物は無理ですが、土地であれば場合によって評価額を引き下げることができます。

土地は「どの路線価(道)に隣接しているのか」によって価格が変わってきます。このとき、路線価の高い道が評価の基準になります。そのため広い区画の土地だと、高い路線価で一律計算されてしまいます。

例えば、以下のような駐車場付きの賃貸マンションを保有している場合、駐車場についても高い路線価(この場合は路線価15万円)が適用されてしまいます。

そこで分筆をします。土地を分けることを分筆といいますが、今回であれば建物の部分と駐車場を分けるようにします。そうすると、駐車場は価格の低い路線価(今回は路線価5万円)に属するようになります。

こうして分筆した結果、固定資産の評価額は減少します。その結果、固定資産税の現象につながります。正しく土地を分けるだけで年に何十万円もの無駄な税金を抑えることが可能になるのです。

もちろん、分筆をするためには測量や登記などを含め費用がかかります。そのため、どれだけの費用対効果を得られるのかを確認したうえで分筆による節税対策を実施しましょう。

役所ミスによる固定資産税・都市計画税の払い過ぎを防ぐ

ただ、分筆以外に可能な節税対策を考えるとはいっても、実際のところ固定資産税を減額させることは難しいです。非常に高額になりやすい固定資産税ですが、不動産の評価額を引き下げる方法が他に存在しないのです。

しかし、固定資産の計算をするときに「そもそも役所が正しく計算していない」場面が非常にたくさんあります。つまり、固定資産税を払いすぎているケースが多いのです。そうしたとき、正しい計算方法によって固定資産税を取り戻すことができます。

実際、総務省が2012年8月28日に発表した「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、固定資産税の課税について誤った方法を実施しており、税額修正した自治体は97%にのぼっていることが分かっています。

また、毎年93%以上の自治体で間違いが見つかっています。以下は実際の調査結果の一部です。

出典:総務省(固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果)

しかもこれは、納税者が自ら調べて間違いを指摘したケースに限ります。多くの人は固定資産税が正しく計算されているかどうか調べていないことが多いです。そのため、私たち納税者がきちんと内容が正しいか調べれば、より多くの間違いが発見されるようになります。

固定資産税の納税については、不動産を所有する法人や個人に対して以下のような通知書が送られてきます。

ただ、この納税通知書に記載されている税金金額は本当に正しい数値でしょうか。基本的に疑った目線で確認し、間違いを是正することが大幅な節税につながります。

こうした評価ミスが発生するのは、役所の人間は不動産のプロではないですし、実際に出向いて実地調査するわけではないからです。

「特例による減額措置が考慮されておらず、高い固定資産税を払い続けていた」「既に他の人へ土地を売っているのに、売ったはずの土地の固定資産税が記載されていた」など、普通に考えてあり得ないことでも役所仕事だと頻繁に発生します。

実際、過去には「裁判によって払いすぎていた1,000万円以上の固定資産税を取り戻した」という事例が数えきれないほどあります。そのため一般的な節税対策とは異なりますが、役所の職員が計算ミスをする確率が非常に高い以上、固定資産税が正しく計算されているのか調査することも重要な税金対策になります。

土地面積や建物の評価額を確認する

それでは、具体的に何を確認すればいいのでしょうか。これについては、最初の第一歩として土地の面積や建物の評価額を確認することがあげられます。

土地の面積が間違っており、大きめの面積で計算されていることは普通に起こります。特に代々受け継がれている土地であると、実際の面積とは大きく異なることがよくあります。

また、土地や建物の評価額は本当に正しいでしょうか。特に賃貸マンションやアパートを運営している大家の場合、構造の違いによる固定資産税の計算ミスが多発しやすいです。さらに分かりやすいケースだと、他人の土地・建物がなぜか含まれていることもよくあります。

こうした誤りを自ら発見しなければ、無駄に高い固定資産税を払い続けることになります。払いすぎた固定資産税については、5年をさかのぼって取り返すことができます。ただ、それ以上までさかのぼって取り返すことはできないため、早めに間違いを見つけなければいけません。

小規模住宅用地の特例が適用されているか

非常に多くの人が利用している制度であるものの、わりと高確率でミスが発生するものに「住宅用地の特例」があります。個人で家を購入する人に限らず、居住用の賃貸マンション・アパートを運営する大家についても当てはまる特例になります。

これは、「住宅用地として建物がある場合、その土地は特例で固定資産税の大幅減税が適用される」というものです。

どれだけ固定資産税が減るかというと、以下のようになります。

固定資産税都市計画税
小規模住宅用地1/61/3
一般住宅用地1/32/3

土地を宅地(住宅用)に利用している場合、小規模住宅用地の特例については「1戸につき200m2まで適用できる」となっています。それ以上になると、一般住宅用地の固定資産減税となります。

例えば、20戸のアパートを建てるとします。このとき、「20戸 × 200m2 = 2,000m2」までなら、固定資産税が1/6(都市計画税は1/3)となります。オフィスビルなどのテナント利用だと居住用ではないので減税はないですが、居住用だと土地の固定資産税が大幅に低くなるのです。

・一般住宅用地を適用する事例を確認する

なお、小規模住宅用地よりも大きな土地であればどうなるのでしょうか。例えば、「20戸のアパートを2,500m2の土地に建てた」などのケースです。

この場合、2,000m2の部分については小規模住宅用地の特例が適用され、「固定資産税は1/6、都市計画税は1/3」となります。ただ、残りの500m2については一般住宅用地の特例となり、「固定資産税は1/3、都市計画税は2/3」となります。

しかし、いずれにしても土地の固定資産税は安くなります。これを認識したうえで、居住用の不動産にも関わらず高すぎる固定資産税になっていないかどうかを確認しましょう。

新築の家屋への減額措置

また、不動産投資をすることで戸建てやマンション・アパートを購入する場合、新築として建てることもあります。このとき中古ではなく、新築だと固定資産税の減額があります。

減税の条件としては、「家屋(建物)の床面積が50~280m2」の範囲を満たしていれば適用されます。また、不動産投資として賃貸用のマンション・アパートを購入する場合、「一戸の床面積が40~280m2」であれば適用されます。

建物部分に対する減額措置となりますが、このときは以下の分だけ税金が減ります。

固定資産税都市計画税
戸建て住宅3年間、1/2に減額減税なし
マンションなど5年間、1/2に減額減税なし

要は、新築物件だと建物部分の固定資産税が半分になると考えましょう。

なお、バリアフリーや耐震性、省エネ住宅など要件を満たせば長期優良住宅と認定され、さらに長い期間の減税メリットを受けることも可能です。

非課税となる固定資産を把握する

また、固定資産税を支払うときは必ずしも「保有している土地・建物のすべてに税金を課せられる」というわけではありません。

特に公共性の高い不動産だと非課税になります。分かりやすいものであれば、私道があります。

「公共の用に供する道路」については非課税ですが、たとえ個人の所有物であったとしても、道路は公共性が高く非常に多くの人が利用します。そのため私道は非課税となり、固定資産税を課せられることはありません。

特に賃貸用のマンション・アパートを開発している法人だと私道を有しているケースが多く、その場合は「本来は非課税の対象になるべき私道部分が固定資産税に含まれていないか」を確認するようにしましょう。

「道路の幅が1.8m以上」「他の公道に通じている」などの要件はありますが、これらを満たしている場合は非課税です。

また、同じく公共性の高いものとして公園があります。個人で公園をもつことはないものの、マンションやアパート開発の一環として会社が公園を作ることがあります。そうした法人の場合、敷地内の公園を一般開放すれば公共性が高くなり、結果として固定資産税をゼロにできます。

ちなみに、学校法人や宗教法人は「公益法人等」という分類になりますが、こうした法人が所有する不動産については固定資産税がかからないことも理解しておきましょう。

不動産投資での固定資産税を減らす

自分の不動産を保有しており、賃貸として貸し出している法人や個人だと不動産収入を得られるようになります。ただ、毎年必ず固定資産税として税金を取られるため、税金の分だけ不動産から発生する所得を圧迫するようになります。そこで、こうした固定資産税を減らす努力をしましょう。

一般的な方法としては分筆があります。ただ、それ以外の手法だと固定資産税は一律で決められるため、固定資産税を減らすのは非常に難しいです。

しかし、実際のところ役所の計算ミスがかなりの頻度で発生しているため、税金を納めすぎていないかどうかチェックするといいです。本来、支払う必要のない税金を正しく是正するのも重要な税金対策だといえます。

固定資産税が正しく評価されているのかを確認し、減税メリットを受けるための特例を理解したうえで、納税通知書の内容が本当に正しいかどうかを確認するといいです。そうして節税すれば、不動産投資での成績を大きく向上できるようになります。


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