銀行は会社へ融資をするとき、「貸したお金が融資先から返済してもらえない」という最悪の事態を想定しています。

例えば、A社への融資額5,000万円のうち、2,000万円が返済不能となった場合、銀行は同額(2,000万円)を融資先へ寄付したのと同じに結果となり、損してしまいます。

そのため、銀行は「会社から不動産などの担保が欲しい」と考えます。万が一、融資先から返済されないときの損失を最小限に抑えるためです。

例えば、A社が代表者個人の自宅を担保に差し出したと仮定します。そのとき返済不能の場合、銀行は担保である不動産(代表者個人の自宅)を処分(売却)できる権利を行使します。

実際に担保の自宅を処分して売却代金1,500万円が得られた場合、銀行はA社(融資先)に対する損失額を「返済不能額2,000万円-売却代金1,500万円=500万円」に減少させることができます。

しかし、銀行が融資先に担保を要求することに対して、金融庁から歯止めをかける内容の通達が出されています。具体的には、次の通りです。

会社の返済不能によるリスク回避するため、融資の基準は担保や保証人を要求する前に「会社の実力=借入金元本の返済能力」を吟味する

銀行への借入金元本の返済は現金預金で行います。そのため、融資審査では現金預金を増やす能力が重視されます。

つまり、たくさん稼いで手元に現金がたくさんあり、借入金元本(借りたお金)を十分に返済ができる場合、担保を差し出さなくても銀行融資を引き出せる可能性は十分にあり得ます。

そこで、「銀行融資を引き出すのに担保は不要なのか」「仮に担保が必要な場合はどのような資産を差し出すのか」について解説します。

返済能力の基準となる現金収支の儲けとは?

銀行融資を引き出す場合には、現金収支ベースの儲けについて理解しておく必要があります。現金収支ベースの儲けとは、つまりは販売活動での現金預金の増加額を指します。

融資審査をするとき、「融資先が儲けた現金預金で本当に借入金元本を返済くれるのか」を重視するからです。

そのため、会社は銀行に融資を申し込む場合には、「儲けた現金預金から返済できること」を融資担当者に説明しなければなりません。

反対に融資を受けることで現金預金を増やせることが説明できないと、「融資先が返済不能に陥り、損失を被るのでは」と銀行は不安になります。その結果、損失のリスクに備えて「会社から担保を差し出してもらわないと困る」と考えます。

そこで、返済能力の基準となる現金収支ベースの儲けについて解説します。

現金収支ベースの儲けの計算方法

現金収支ベースの儲けを理解するためには、銀行の考え方を知らなければなりません。具体的には、現金預金の出入りを「営業活動」「投資活動(設備投資など)」「財務活動(主に銀行からの借入れとその返済)」の3つに大別して、融資担当者は分析しています。

それでは、それぞれの現金収支について詳しく見ていきましょう。

・営業活動による現金収支

会社は営業(=販売)活動で現金預金を獲得することにより、はじめて事業を継続・発展させることができます。

実際に商品などの販売により入金されたお金から、商品の支払い代金(在庫)や社員の給料・賃貸物件の家賃など諸経費を賄っています。さらに販売活動で獲得した利益額から法人税など会社の税金を支払わなければなりません。

例えば、中古のパソコンショップが次の金額でビジネスをしていると仮定します。この場合は「販売金額」「商品の購入」「諸経費」など現金預金の収支は一致するものとします。

  1. 販売金額:9,000万円
  2. 商品の購入金額:5,400万円
  3. 諸経費:1,600万円
  4. 獲得した利益額:2,000万円(販売金額9,000万円-商品の購入金額5,400万円-諸経費1,600万円)
  5. 法人税など会社の税金:800万円(獲得した利益額2,000万円×法人税率40%)
  6. 現金収支:1,200万円(販売金額9,000万円-商品の購入金額5,400万円-諸経費1,600万円-法人税など会社の税金800万円)

このように、「商品などを売って毎年入金される金額」と「毎年支払う費用・税金との差額」が営業活動による現金収支であり、上記の場合は1,200万円の儲けとなります。

・投資活動による現金収支

営業(=販売)活動をするためには、商品の購入や諸経費など毎年発生する支払いだけでは不十分です。何年かに一度は設備投資など多額の支出が必要となります。

例えば、製造業の機械設備が老朽化して生産台数(=販売数量)に悪影響を及ぼす場合、修理をしたり、新しい設備に買い換えたりしなければなりません。このような老朽化を放置したままでは、販売数量が減少するため、営業活動による現金収支に悪影響を及ぼしてしまいます。

また、パソコン部品の卸売業が得意先の訪問件数を増やすため、新たに営業拠点を設置しなければならないと仮定します。その場合、物件を賃貸するために、オフィスの改装費用などの負担や保証金の差し出しにより、最低でも100万円単位の投資が必要不可欠になります。

このように、設備投資などの多額の支出は営業活動を継続・拡大させるために欠かせません。

それに対して、お金が増えるほうはどうなのでしょうか。投資活動による現金収支には土地の売却などの臨時収入が挙げられます。しかし、このような臨時収入は滅多に発生せず、販売活動には貢献しません。したがって、借入金の返済能力の基準とは無関係です。

そこで、投資活動による現金収支の分析では、融資担当者は設備投資などの支出額だけに注目します。

・財務活動による現金収支

銀行は「販売活動により獲得した利益額から借入金元本に利子を上乗せして返済してもらうこと」を期待して、会社へ融資します。つまり、利子をつけて貸したお金を返してもらおうと考えます。

そのため、融資担当者は会社の現金収支について、「借入金の返済と融資による入金額」を独立させて考えます。それによって、現金預金から借入金の返済ができるかどうかを分析することが可能となります。

具体的には、「営業活動による現金収支(≒税引後の利益)-投資活動による設備投資など支出額=現金収支ベースの儲け」と借入金元本の返済額を比較することにより融資担当者は会社に担保を要求するかどうかを判断します。

例えば、C社の販売活動による現金収支(≒税引後の利益)が2,000万円、設備投資の金額(投資活動による現金収支)が1,500万円と仮定します。

そうすると、融資担当者は現金収支ベースの儲けは「販売活動による現金収支2,000万円-設備投資の金額1,500万円=500万円」と考えます。

この場合、銀行が会社に担保を要求するかどうかは、返済する借入金元本(既存の融資分+新規融資の分;要は借りているお金のこと)に応じて、例えば次の通りになります。

  • 返済する借入金元本450万円の場合:現金収支ベースの儲けである500万円以内であるため、担保を要求する必要なし
  • 返済する借入金元本600万円の場合:現金収支ベースの儲けである500万円を超えるため、担保を要求する必要がある

要するに、会社が無担保で銀行融資を引き出すためには、借入金元本の返済額(銀行へ返済すべきお金)を現金収支ベースの儲けの範囲内するのがポイントとなります。

具体的には、「販売活動による現金収支を増やす」「設備投資の金額を抑える」「返済すべき借入金元本を増やさない」ことの組み合わせがポイントです。

無担保で銀行融資の引き出しは可能かどうかを検証する

前述の通り、「現金収支ベースの儲け(借入金の返済能力)>借入金元本の返済額」にするのが無担保で銀行融資を引き出すためのポイントです。

しかし、銀行は融資先の事業内容や業種について詳しくありません。そのため、融資を申し込むときに決算書を提出するだけは「貸したお金は本当に返してくれるのか」と融資担当者は不安になってしまいます。

そこで、融資を受けることにより、現金収支ベースの儲けから借入金元本を返済できることについて、会社は事業計画書を用いて銀行へ説明する必要があります。

・事業計画書で説明するポイント

銀行は融資審査で、融資先の現金収支を重視します。その現金収支の中でも、支出は事業計画書の作成前に予測できます。家賃など諸経費などは毎月の金額が一定しています。また、商品の購入金額(仕入れ)は販売数量によって自動的に決まります。

一方、設備投資などに支出する金額は今後の事業展開から推測することが可能です。例えば、アパレル業の小売店なら数年に一度、定期的に店舗のリニューアルが必要なことを経営者は熟知しています。店舗の改装費用などは過去の実績や業者から見積もりを取ることで分かります。

このように、支出金額の予定については融資を受ける前に融資担当者へ説明できます。

しかし、収入金額(=販売金額)を予測するのは簡単ではありません。顧客や得意先の意向に左右されるためです。そのため、収入金額の根拠を銀行に説明する必要があります。

例えば、日本語学校を運営している会社が別の拠点に学校を新設するために、銀行から5,000万円を借り入れて、返済期間は5年間と仮定します。

借入金元本の年間返済額は「5,000万円/5年間=1,000万円」となり、無担保で融資を受けるためには年間の現金収支ベースの儲け(≒税引後の利益)は同額(1,000万円)以上が必要となります。

そのとき、事業計画書で返済期間(5年間)の収入金額(=販売金額)について、「今後はアジアからの留学生が増える見込みのある」など収入金額が増える客観的な理由を銀行へ伝える必要があります。

しかし、上記の説明だけでは不十分です。日本語学校のニーズが高まることを説明できても、同業他社や異業種からの参入により生徒を奪われる可能性があるためです。また、アジア諸国との関係が悪化するなど、政治的要因などで留学生が激減する可能性も否定できません。

そうなれば、生徒数(=収入金額)は増えません。そのため、他社との競争力や経営環境の変化によるリスクなどを踏まえて、現金収支ベースで儲けられることを客観的に融資担当者へ伝えることが必須です。

以上のように、「融資先の事業内容や業種」に詳しくない銀行に対して「借入金の返済能力(現金収支ベースの儲け)>借入金元本の返済額」を説明するのは決して簡単ではありません。

借入金の返済能力があるかどうか不透明であるため、融資担当者は会社に対して担保を要求する可能性は高いです。

したがって、銀行融資を引き出すためには、融資担当者が要求してくる担保資産の知識を知っておく必要があります。

銀行が要求してくる担保資産

万が一、融資先が借入金の返済不能に陥った場合には、銀行は差し出した不動産などの担保を売却して換金します。そうすることで、銀行は「貸し付けたお金の未回収による損失」を「会社から獲得した現金預金(担保を売ったお金)」でカバーできます。

そのため、融資担当者は「換金しやすい」「担保価値=現金預金を獲得できる能力」の2点に合致した資産を担保として差し出すことを要求してきます。

そこで、銀行が要求してくる担保資産について解説します。

不動産

会社や代表者が保有する不動産は主に土地と建物です。当然、売却しやすい不動産を銀行は要求してきます。言い換えれば、換金能力(=現金預金を獲得できる能力)を重視します。それでは、会社が土地と建物の担保を差し出す場合について検証しましょう。

・土地

銀行融資における「土地を担保にするメリット」は価格が変動しにくい点です。

例えば、銀行がC社に3,000万円を融資するとき、借入金元本の返済不能額(リスク)を見積もり、価値2,000万円の担保を確保したと仮定します。

ところが、担保の価値が500万円減少すれば、融資担当者は「融資先が貸したお金の返済不能に陥ったとき、同額(500万円)だけ損するリスクを抱えることになる」と判断します。

そのため、価格が変動しにくく、売却しやすい土地を担保に差し出すことを銀行は会社に要求してきます。反対に売却しにくい土地は敬遠されて、担保価値は低く見積もられます。売却しにくい土地は主に次の通りです。

  • 道路の敷地、公園、営利目的でない学校、公民館に利用されている土地
  • 山岳地帯、農村地帯の土地 など

ただ、学校であっても営利目的の専門学校や学習塾などの場合は売却しやすいため、担保価値があると銀行は判断します。

・建物

同じ不動産でも、建物は土地より担保価値は低いです。建物は使用年数に比例して劣化するためです。

例えば、会社が所有する建物のオフィス内でタバコを吸う社員がいれば、壁などにヤニが付きます。また、トイレを使用し続ければ、新築のときよりも便器に汚れが付着する可能性があります。

このように、建物は劣化するのが前提にあるため、土地よりも担保価値は低くなってしまいます。

定期預金

銀行は融資先が借入金元本の返済不能による損失額を防ぐために、できれば会社が保有する定期預金を担保にしたがります。

定期預金とは、預け入れてから満期日まで一定期間引き出すことが原則できない預金のことを指します。定期預金を担保にする理由は2つあります。

・簡単に換金できる

定期預金であれば、担保に差し出した不動産のように売却先を探す必要がありません。自分の銀行に預けている会社の定期預金を没収するだけで済みます。反対に他の銀行へ預けている定期預金は没収によるトラブルが発生するため、担保に差し出すことを要求しません。

例えば、D社が5,000万円を借り入れるために、会社が保有する3,000万円の自行定期預金を担保に差し出したと仮定します。

担保に差し出した定期預金は会社が自由に使えないため、銀行側が実質的に貸し付けている金額は「融資額5,000万円-担保の定期預金3,000万円=2,000万円」となります。

・銀行の利益になる

前述の通り、銀行はD社に対して実質的に貸し付けている金額は2,000万円です。そこで、次の2つを比較すると、定期預金を担保にすると銀行の利益になる理由が分かります。この場合、融資の金利3%、定期預金の金利0.1%とします。

1.D社への融資額5,000万円、担保の定期預金3,000万円の場合

  • 銀行の収益:融資額5,000万円×金利3%=150万円
  • 銀行の費用:定期預金3,000万円×金利0.1%=3万円
  • 銀行の利益=融資額に対する利子150万円-定期預金に対する利子3万円=147万円

2.D社への融資額2,000万円

銀行の利益は「融資額2,000万円×金利3%=60万円」となります。

このように、D社へ実質的に貸し付けている金額は2,000万円でも、定期預金3,000万円を担保に入れたほうが銀行の利益は「147万円-60万円=87万円」多くなります。

以上のように、定期預金は没収により換金しやすく、銀行の利益を生むため、融資担当者にとっては都合の良い担保資産といえます。

まとめ

無担保で融資を引き出すためには、銀行へ会社の現金収支ベースの儲けが借入金元本の返済額を上回ることを融資担当者にアピールする必要があります。そのためには、ただ融資を申し込むとき決算書を提出するだけでなく、事業計画書を用いて説明するのがポイントです。

しかし、融資することにより、「融資先が現金収支ベースで本当に儲けられるかどうか」について、融資担当者の不安を取り除くのは簡単ではありません。返済期間中の収入金額について、客観的な根拠を示すことは難しいためです。

例えば、前述の日本語学校のように、同業他社や異業種の参入、政治情勢によって外国人の生徒数が激減するリスクなどを予測することはできません。

そのため、融資担当者の心証を良くするためには、会社および代表者が担保となる資産を保有したほうが有利といえます。

要するに「現金収支ベースで儲けること」と「担保価値のある資産を保有すること」をバランスよく考えることが大切となります。そうすることで、銀行融資の引き出しに成功する確率が上がります。


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