富裕層だと必ず問題になるのが税金です。日本に住んでいると、高額所得者だと稼いだお金の半分を税金で取られてしまいます。半年はタダ働きをすることになるため、税金のために頑張って稼いでいるように感じてしまうのです。

そうしたとき税金の安い海外へ移住し、法人設立することで節税できないかと考える人は多いです。

日本人が海外移住する先の大多数はアジアになりますが、税率の低い代表的な国としてシンガポールが知られています。富裕層の移住先としてシンガポールは非常に有名です。

ただ、実際にシンガポール法人を設立して海外移住節税をするとなると「本当の意味での超富裕層しか対象にならない」という問題点もあります。そこで、どのように考えてシンガポールで節税を実現すればいいのか解説していきます。

所得税・法人税の税率が低いシンガポール

海外にはオフショアと呼ばれる、タックスヘイブン(税金がほとんどない国・地域)が存在します。その一つがシンガポールです。

シンガポールは日本と同じように、個人所得に対して累進課税制度を設けています。ただ、日本だと累進課税で最高税率55%となるのに対して、シンガポールでは最高で所得税率22%です。高額所得者であっても、税率22%のみで問題ないのです。

日本だと課税所得が年195万円を超えた時点で「所得税+住民税」が税率20%となります。また、課税所得330万円超だと税率30%です。一方でシンガポールでは、年収が約2,560万円以上の最高税率対象者であっても22%とわずかな所得税率となっています。

参考までに、年収1,300万円ほどの人だとシンガポールでは所得税100万円ほどを払うだけで問題ありません。しかも、ここにさらなる控除が入って税金はより少なくなります。また、日本だと消費税が非常に高いもののシンガポールでの消費税は7%しかありません。

・法人税率も17%と低い:実際は半分ほどになる

法人が儲けた利益についても、シンガポールは非常に低くなっています。法人税率は17%であり、日本の法人税率約30%に比べて、大幅に低いことが分かります。また実際には、優遇税制によって法人税は半分ほどに落ちます。

日本とは違い、シンガポールでは赤字企業でも税金支払いが発生することもありません。税金面でいうとシンガポールは非常に恵まれているといえます。

・シンガポールには相続税・贈与税もない

さらにいうと、シンガポールには日本のような相続税・贈与税は存在しません。つまり、親族へ移る財産については税金ゼロです。

日本では稼いでも税金を課せられ、死亡しても財産に税金が発生します。そのために相続税対策が必須となりますが、そうしたことを考える必要なく遺族へお金を残せるようになっているのです。

タックスヘイブンを活用した移住での節税スキーム

これだけ税金が優遇されているため、当然ながら多くの富裕層が無駄な税金支払いを抑えるために移住を考えます。シンガポールでの節税スキームは非常に単純であり、実際に住むだけになります。

海外に住めば、日本にとって「非居住者」となります。日本国籍であったとしても、日本の非居住者である以上、海外で発生した所得についてはシンガポールで納めれば問題ありません。

日本で発生した給料は日本に納税する必要があるものの、シンガポール国内で発生した給料についてはシンガポールに納税すればいいのです。日本の会社ではなく、わざわざシンガポールで法人設立する理由としては、シンガポールの会社から経営者に給料を出す形式を採用しなければいけないからです。

「ビザを取得してシンガポールへ住めば、大幅な節税が可能」なのは日本の税制が適用されないからです。現地に法人登記して、そこから給料を出せば個人と会社に残るお金は、日本在住時と比べてまったく違うものになります。

ペーパーカンパニーは否認される

なお、かつては海外のオフショア地域にペーパーカンパニーを作り、そこに海外送金することで積極的な節税が行われることがありました。タックスヘイブンの会社にお金を流すことにより、少ない税金を適用させようとしたのです。

しかし現在はタックスヘイブン対策税制というものが存在します。これは、たとえ海外オフショア地域に法人登記してお金を流したとしても、お金を移動させた先がペーパーカンパニーの場合、日本の税制を適用させるというものです。

つまりペーパーカンパニーは否認され、海外送金したとしても結局のところ日本で税金を納めることになるため、ペーパーカンパニー設立の意味がなくなってしまいます。そのため、日本に住みながらタックスヘイブンの会社にお金を送るのは効果がありません。

しかし実際に現地に住んでおり、法人登記しているのであれば何も問題ありません。日本に住みながらの節税はできませんが、シンガポールに移住しているのなら大幅な節税策が可能になるのです。

他のオフショア法人に比べ、維持費や税金が高額

ただシンガポール法人を設立し、就労ビザを発行して住むにしても、アジアでの海外移住節税ではシンガポール法人を利用するメリットはありません。むしろデメリットしかなく、シンガポール法人を利用する価値はゼロです。理由としては、オフショア法人の中で圧倒的に維持費や税金が高いからです。

通常、タックスヘイブンで設立するオフショア法人というのは、設立費用や維持費が安く、それでいて法人税率は0%です。例えば一般的なオフショア法人の場合、年間の維持費(実質的な法人税)は30~40万円であり、法人税率は0%です。

タイやフィリピンなどでビザを取得し、オフショア法人を設立して無駄な費用の支払いを少なくするのです。一方でシンガポール法人の場合、維持費が非常に高額になります。例えば以下のようになります。

  • 暫定取締役の費用:年20万円
  • 秘書会社への支払い:年5~8万円
  • 会計費用:年10~20万円
  • 政府への会計報告費:年25~30万円
  • 政府への税務申告費:年15~20万円

現地に住んで会社を動かす場合、こうして最安でも年80~100万円ほどのお金が消えていきます。また、もしオフィスを借りる場合は最安の狭い部屋でも月20万円(年240万円)となるのがシンガポールです。

また法人設立では、法人設立代行やビザ取得代行、法人口座開設などで30~50万円が初年度に上乗せとなります。シンガポール法人の設立では、維持費を含めると初年度に100~150万円ほどの支払いが発生します。

・法人税や所得税の支払いが必要

これに加えて税金の支払いがあります。例えば実際の法人税率が8%と仮定すると、年間利益が2000万円の会社であれば、年160万円の法人税支払いです。

  • 2000万円 × 8% = 160万円

また個人へ給料(役員報酬)を出すことになるため、所得税を課せられます。1300万円ほどの役員報酬であれば、前述の通り100万円ほどの所得税です。これらをまとめると以下のようになります。

  • 法人維持費:最安で年80万円ほど
  • 法人設立費用・ビザ取得:30~50万円(初年度)
  • オフィス賃料:最安で年240万円(借りる場合)
  • 法人税・所得税:250万円以上(かなり儲かっている会社はより高額)

オフィス賃料がない場合であっても、維持費や税金支払いで年300万円以上のお金が軽く消えていきます。一般的なオフショア法人の場合、維持費は年30~40万円のみであり、法人税や所得税の支払いもなく、それに比べるとシンガポール法人は圧倒的に支払いが大きくなるのです。

日本の法人に比べると維持費や税制面では圧倒的にマシであるものの、一般的な海外移住節税の方法に比べると、支払いが圧倒的に多くメリットがないのです。

・決算書の作成など、面倒な作業が多い

それだけでなく、シンガポール法人は決算書の作成など面倒な作業も多いです。きちんとした決算書を作る必要があるため、すべての売上や経費の記録を残し、秘書会社や監査会社に会計作業を依頼しなければいけません。

一方で一般的なオフショア法人の場合、決算書の作成など面倒な作業は必要ありません。決算書の作成が必要なオフショア法人であったとしても、銀行ステートメントを利用して簡単な決算書を作成するだけのケースが多く、細かく売上や経費を申告する必要はありません。

面倒な税務作業が発生することについても、シンガポール法人を設立する大きなデメリットです。

生活費(居住費)が高く、年1000万円以上は必要

またシンガポール法人の維持費をかなり低く見積もって年300万円以上とはいっても、そこにさらに生活費が加わります。特に居住費は圧倒的に高額であり、シンガポールは香港並みに賃料が高額です。

例えば以下は、1LDKの狭い部屋をシンガポールで借りるときの実際の賃料です。

シンガポールで家を借りる場合、一人暮らしの狭い部屋であっても月25万円ほどになります。これが家族での移住だと、家賃だけで当然のように月50万円となります。もちろんシンガポールの一等地ではなく、郊外エリアでこうした金額です。

家族で移住する場合、家賃だけで年600万円が飛んでいきます。これに食費が加わったり、子供の学校費用を考慮したりすると、法人費用も含めて軽く1500万円超のお金が年間に消えていきます。また、独身であっても年1000万円は必要です。

シンガポールで一番のデメリットは物価の高さです。東京と比べても、異常なほどの物価の高さなのです。シンガポール法人の設立がまったくおすすめできないのは、ほかのオフショア法人に比べて利点がないことに加えて、シンガポールの物価があります。

「低税率の国に移住したものの、支払うお金も多い」では意味がありません。年間利益が1億円以上ないと、シンガポール法人を作るメリットがないといわれるのは、こうした超高額な費用支払いも関係しているのです。

一般的には他のアジアの国へ移住する

そのため経営者や投資家が税金対策のために海外移住する場合、特別な理由がない限りはシンガポール以外を選びます。例えば、以下のような国になります。

  • タイ
  • フィリピン
  • マレーシア

こうした国ではビザを取得することができます。ビザを取れれば、合法的にその国に住めます。そこでオフショア法人を利用して法人税と所得税を無税にしつつ、物価の安い国に住むのです。「オフショア法人+ビザ取得」が一般的な海外移住節税のスキームです。

例えば私の場合、海外移住節税でアジアの安い国に住んでいますが、以下のコンドミニアムに月10万円で住んでいます。

3LDKの広い部屋に家族で住み、プールやテニスコート、バスケットボールコート、バドミントンコート、卓球場、サウナ、レストランなどがコンドミニアムの中にあります。シンガポールでこの金額は不可能ですが、物価が低いアジアの国であれば可能なのです。

こうした国に住めば、法人維持費(オフショア法人の維持費)や居住費、その他の生活費は圧倒的に安くなります。海外移住節税というのは、本来はこうした国を利用しなければいけません。

米国への上場または現地ビジネスをしたい人のみシンガポール法人

これらの事実を理解すれば、税金対策のためにシンガポールへ移住するメリットはまったくなく、むしろ無駄な支払いが非常に多くなることがわかります。シンガポールはタックスヘイブンで有名ですが、物価は異常に高く、さらには他のオフショア法人に比べて維持費や税金が非常に高額です。

そのため海外移住節税のためにシンガポール法人を選択するメリットはゼロであり、シンガポールへ移住するべき人は非常に限定的です。具体的には、以下の人であれば例外的にシンガポール法人の設立を検討しても問題ありません。

  • 利益が既に年間1億円を超え、米国への上場を考えている
  • シンガポール現地でビジネスをしたい

ビジネスをしている会社の経営者について、既に利益が年間1億円を超えており、会社の上場を考えている人がいるかもしれません。このときテクノロジー企業なのであれば、日本での上場を考える意味はなく、アメリカへ上場すればいいです。

この場合、シンガポール本社としてビジネスを行うのは優れています。シンガポールでは世界中から投資マネーが集まるため資金調達が容易であり、米国に上場しているシンガポール法人はたくさんあります。また日本に比べて圧倒的に低税率なので、テクノロジー企業の場合は大きなメリットがあります。

ほかにはシンガポール現地でビジネスをする場合、当然ながらシンガポール法人が必要になります。維持費は非常に高額ですが、それ以上の利益を現地で稼げる場合、シンガポール法人を設立しましょう。

シンガポールでの税金対策はハードルが高い

経営者や投資家が海外移住節税をする場合、実際のところシンガポールはハードルが高いです。シンガポールに移住する富裕層というのは、資産100億円超など本物の富裕層であるケースが多く、そういう人にとって住みやすい国です。そのため、一般的な経営者や投資家にとってシンガポールは微妙です。

税金対策が目的でシンガポール移住をする場合、法人維持費や税金(法人税・所得税)でかなり低く見積もっても年300万円が消えます。ここに家賃や食費、その他の生活費を考慮すると、独身だと年1000万円が飛んでいきます。家族移住だと、年1500万円超とさらに高額な費用となります。

節税のために移住することを考えるとき、シンガポールは世界最高レベルのハードルの高さになっています。そのため確かに税率は低いものの、ほかのアジアの国で移住節税するときに比べてデメリットしかありません。

こうした事実を理解したうえで、タックスヘイブンでの会社設立を踏まえた節税策を考えるようにしましょう。少なくとも、シンガポール法人を利用しての税金対策は多くの中小企業経営者や投資家にとってメリットがありません。


年間350万円以上を節税

ビジネスの継続を考えるとき、最も重要なのは節税です。節税策を一つ実施するだけで100万円以上の無駄な税金が減るのは普通ですが、何も対策をしなければ会社経営者や相続額が多い人は無駄に税金を支払い続けることになります。

ただ、私は優秀な節税の専門家(税理士やファイナンシャルプランナー)に依頼したことで「家賃の個人負担が家賃総額のわずか6%」「出張に行くたびに30万円以上の非課税の現金を手にできる」「社会保険料を年間130万円削除」など、何も対策をしなかったときに比べて一瞬で年間350万円以上も節税できています。

現在では、海外法人(タックスヘイブン)の活用や再保険(キャプティブ)の利用など、あらゆる節税策によって年間にして何千万円もの節税を実現しています。

高額な財産を相続する人や会社経営者は節税に精通した専門家が必須です。そこで、実際に節税に強い税理士やファイナンシャルプランナーを紹介します。節税コンサルを受けるだけで、あなたの会社の財務状況は一変するようになります。

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