個人事業主としての開業を考えるとき、多くの人が心配になるものとして屋号があります。自営業として活躍する場合、全員が事業用口座(法人口座)を作るのは当然ですが、このとき銀行口座に屋号を付けるべきかどうか不安になるのです。
これについては、結論を先にいうとどちらでも問題ありません。屋号が気に入っているのであれば、屋号ありでいいです。一方、手続きが面倒なのであれば屋号なしにて、個人名義の銀行口座を事業用口座として代用すればいいです。
ただ屋号ありの口座開設を考えているのであれば、少し面倒な作業が必要になります。そのため、屋号ありと屋号なしでどのように考えなければいけないのか事前に理解しなければいけません。
ここでは個人事業主・フリーランスが事業用の銀行口座を開設するに当たり、事前に理解するべきポイントを解説していきます。
もくじ
屋号なしでも法人口座は問題ないことは多い
まず大前提として、ビジネスを開始するに当たり屋号があるかどうかはどっちでもいいです。要は、屋号なしでもまったく問題ないのです。
個人事業主・フリーランスで仕事を取れるかどうかを考えたとき、「屋号が優れているから仕事を受注できる」ことは100%の確率であり得ません。そうではなく、あなたのスキルが最重要となります。そのため、屋号なしでもまったく問題ないのです。
同じことは事業用口座(法人口座)にもいえます。あなたが仕事をしてお金を受け取るとき、銀行口座名が屋号だろうと個人名だろうと、誰も気にしません。
あなた自身は気にするかもしれませんが、顧客からしてみれば「優れた商品やサービスを提供してくれればそれでいい」というスタンスが大多数です。あなたが屋号でビジネスをしているかどうかは関係ないのです。
私の場合、個人事業主時代は個人の名前の事業用口座
参考までに私の場合であれば、個人事業主時代は個人の名前が記された銀行口座のみを利用していました。屋号については多くの人が活用すると思います。これは私も同様ですが、銀行口座は屋号なしの個人名のままで利用していたというわけです。
もちろん、プライベートで利用していた銀行口座とは異なり、別の銀行口座を開設し、専用の事業用口座として使用していました。
私の場合、個人事業主のときは以下のビジネスをメインでしていました。
- サイト運営・作成
- 集客コンサルティング
ただ、お金の振り込みについては個人名義の事業用口座です。屋号なしですが、特に怪しまれたことはありません。つまり、屋号ありか屋号なしかについてはどちらでも問題ないといえます。
顧客の不安が心配なら屋号あり
もちろん、顧客からの信頼性について不安なのであれば屋号ありでも問題ありません。例えばオンラインショップを運営しており、ネット上からの申し込みについて銀行振込を広く受け入れている場合、屋号ありの銀行口座を開設しても問題ありません。
知らない人がオンライン上で何か商品を注文するとき、「タナカ イチロウ」などの口座へ銀行振込してもらうよりも、「イチロウショップ」などのような屋号名で振込してもらうほうがやりやすいのは確かです。
・屋号でも個人名は入るが、屋号名だけで振込可能
ただ、このときメガバンクや地方銀行・信用金庫、ネット銀行を含め、屋号での銀行口座開設をするとはいっても、いずれにしても個人名が入るようになると考えましょう。純粋な屋号だけの銀行口座は開設できないのです。
これについては、どの銀行でも基本的に「屋号+代表者名」になります。例えば、以下はネット銀行の公式サイトに記されている文言です。
ここにある通り、「屋号 + 個人の名前」であれば問題なく屋号付きの銀行口座として開設可能となっています。一方で屋号のみの銀行口座は開設不可です。
かつては屋号のみで銀行口座開設できていた時期もあります。ただ、投資詐欺などで利用する人が多く、事業用口座を屋号だけで開設する行為は、いまはできないと考えましょう。
ただ振込のときについては、屋号だけの入力で振込できる銀行がほとんどです(中には屋号の入力だけでは振込できないケースもあります)。確かに銀行口座の名称は「屋号 + あなたの名前」であるものの、振り込みしてもらうために相手先に伝えるのは屋号だけで問題ないのです。
これについては、以下のように銀行の公式サイトでも記されています。
ただ相手がネットバンキングやATMで振込をするとき、最後の確認画面では口座の正式名称である「屋号 + 個人名」が表示されるようになります。そのため、あなたの本名を隠すのは不可能だと理解しましょう。
個人名義ならネット銀行を含め、すべてで口座開設可能
ここまでのポイントを理解したうえで、ビジネス口座について屋号ありにするのか、個人名のみの銀行口座にするのか選択するようにしましょう。
そうしたとき、個人のみでの銀行口座開設であれば特に注意することはありません。メガバンクや地方銀行・信用金庫、ネット銀行を含め、すべての銀行で個人口座開設を受け入れてくれます。銀行にて新たな個人名の銀行口座を作成し、それを事業用口座・法人口座として利用するのです。
もちろん一つの銀行で複数の個人口座を保有するのはできないケースがあります。
ただ個人で利用している銀行口座とはまったく別の銀行にて「個人の名前の事業用の口座」を作成する場合、特に何も問題なく新規で銀行口座開設が可能というわけです。
開業届や事業の説明書が屋号ありビジネス口座開設で必要
一方で屋号付きのビジネス口座を保有したい場合、個人名義の銀行口座を保有するのと違い、少し面倒な手続きが発生することになります。屋号というのは、当然ですがビジネスをしている人が利用することになります。そのため、ビジネスをしている証明書を提示するのが一般的です。
具体的には、開業届のコピーを提出するようにしましょう。個人事業主・フリーランスを含め自分でビジネスをしている人だと、開業届を税務署に出すのが一般的です。そこで、以下のような書類のコピーを提示するのです。
こうした開業届を出せば、確かにビジネスをしている自営業であると明確に分かります。また開業届には屋号も記されることになるため、屋号での銀行口座を作成できるというわけです。
なおビジネス口座であるため、場合によっては「事業内容を確認する書類」の提出が求められます。単に個人口座を開設するときに比べて、事業用の口座はそれだけ銀行側の審査が慎重になるというわけです。
屋号ありだと申し込めるネット銀行に制限がある
ちなみに屋号ありの銀行口座については、メガバンクや地方銀行・信用金庫であればどこも開設できます。ただネット銀行については、稀に屋号ありの銀行口座を利用できないケースがあります。
こうしたネット銀行として住信SBIネット銀行が知られています。一般的に審査のゆるいネット銀行ですが、住信SBIネット銀行はネット銀行の中でも審査基準が高めであることが知られており、個人事業主は個人名の銀行口座を活用するしか方法がないのです。
これについては、以下の通り公式サイトにも記されています。
このように不可になっています。ただもちろん、その他のネット銀行であれば屋号での利用が可能です。例えば、以下のネット銀行がこれに該当します。
- GMOあおぞらネット銀行
- 楽天銀行
- PayPay銀行
稀に屋号利用できない銀行はあるものの、基本的には屋号付きでも問題ありません。個人名義の銀行口座で問題ないなら考える必要はありませんが、屋号を考えている人は「申し込みできない銀行がある」ことは理解しましょう。
事前に屋号とは別に、事業用ではない個人口座作成が必須
ちなみに屋号ありの銀行口座を保有することを考える場合、多くのケースで「先に個人用の銀行口座を保有した後、屋号ありのビジネス口座を作成する」ことになると考えましょう。つまり、同じ銀行にて個人口座と事業用口座の2つを保有することになるのです。
例えば、以下は銀行の公式サイトにある文言です。
これについては、ある意味当然だといえます。銀行からしてみれば、個人口座とビジネス口座の2つを開設してもらえば、それだけ自分の銀行にお金を入金してもらえる可能性が高くなります。
屋号ありの事業用口座で儲かったのであれば、多くのケースで同じ銀行の個人口座にお金を移すことになります。同じ銀行同士の送金であれば、送金手数料が非常に安いからです。つまり銀行としては、個人口座を同時に保有してもらうことで、お金を同じ銀行内に留めさせることができます。
こうした銀行側の戦略もあり、屋号ありの銀行口座を保有したい場合、通常は個人口座についても保有することになると理解しましょう。
事業用口座(法人口座)で屋号ありか屋号なしかを選択する
個人事業主・フリーランスでビジネスを開始するとき、悩むものとして屋号があります。もちろんビジネスをする場合はほとんどの人が屋号を利用するため、名刺などに屋号として店名を記すのは何も問題ありません。
ただ銀行口座開設の場面では、屋号付きのビジネス口座にするべきかどうか考えてしまうケースが多いです。
これについては、ここまで述べた通りどちらでも問題ありません。オンライン上で不特定多数の人へ商品・サービスを販売し、銀行振込を広く受け付けるなどのケースでなければ、屋号なしでも特に問題は起こらないのです。
ただ個人の名前で口座開設するときとは異なり、屋号ありでは開業届の提出が必要など、少し面倒になることは理解しましょう。こうして、自営業としてビジネス口座を作成するといいです。
すべての個人事業主・法人で必須になるのがネット銀行での法人口座開設です。メガバンクや地方銀行からネット銀行に変えるだけで、月40件ほどの振り込みであっても年間24万円以上の無駄な経費を削減できます。
またネット銀行だと24時間365日ログインできるのは当然として「1口座で20のサブ口座を保有できる」「外貨預金が可能」「自動での定期払いを設定できる」など非常に高機能です。
もちろん融資については微妙なため、融資が必要な場合は地方銀行などとも付き合う必要があります。それでも、振込をネット銀行へ変えるだけで大幅なお金の節約につながります。
ただ、ネット銀行とはいっても多くの数があります。また、ネット銀行によって特徴がそれぞれ異なります。そこで、ネット銀行の中でも優れた銀行についてランキング形式にて以下で記しているため、この中からあなたのビジネス活動に最適なネット銀行を選択するようにしましょう。