会社経営をする場合、必要になるのが法人口座です。法人口座開設をしなければ、正しくビジネスをすることができません。
そうしたとき、特に法人口座開設が難しくなるのが前科者です。何らかの罪を犯したり、有罪判決を受けたりすることによって、会社用の銀行口座をもつことが難しくなるのです。
しかし、法人口座開設できなければビジネスをすることができません。そのため非常に困ってしまいますが、方法によっては犯罪歴のある人であっても口座開設をしてビジネスをすることができます。普通の方法では無理ですが、工夫することで可能です。
そこでどのようにして、犯罪歴のある人が法人口座を作ればいいのかについて解説していきます。
もくじ
前科者は法人口座開設が難しくなる
個人口座であれば、すべての人で口座開設できます。自己破産歴がある人であっても、殺人歴がある人であっても、地方銀行やネット銀行であれば個人口座は開設可能です(メガバンクなど、銀行規模が大きくなると厳しくなります)。
そもそも個人の銀行口座がなければ社会復帰は不可能であり、銀行口座を個人でもつことは特に問題ありません。要は、個人向けの銀行口座作成は恐ろしく簡単と考えましょう。
一方で法人向けの銀行口座開設となると、圧倒的に難しくなります。そもそも、社長に犯罪歴がなく毎年黒字を続けており、多額の納税をしている会社であっても平気で審査落ちになります。事実、私の会社は会社5期目のときに新規で法人用のネット銀行に申し込んだのですが、以下のように拒否されたことがあります。
私の場合は特に逮捕歴などはなく、会社の状況もよく毎年黒字でしたがこの結果でした。このときは仕方なく他のネット銀行でビジネス用の口座を開設しましたが、個人に比べて圧倒的に審査が厳しくなるのが法人です。
個人で犯罪歴が全くなく会社の成績も問題ない会社であっても、このように審査落ちになることがよくあります。これが前科者の場合、そのままの状態では法人口座を作るのはほぼ無理と考えましょう。
犯罪資金・マネーロンダリングを銀行は恐れている
それでは、なぜこのように法人口座の開設は審査基準が厳しいのでしょうか。この理由を理解すれば、「なぜ前科者は圧倒的に法人口座開設が厳しいのか」を理解できるようになります。
個人とは異なり、法人口座には個人名が記されません。また、代表者変更をすることは容易ですし、会社を売ることで法人口座ごと他人に譲渡することも可能です。要は、犯罪資金を貯める口座やマネーロンダリング(資金洗浄)のための口座として利用されやすいのです。
当然ながら、銀行としては犯罪に加担したくありません。そのため、特に犯罪歴がない人であっても審査基準が厳しくなっているのです。
これが前科者であればどうでしょうか。以前に特殊犯罪に加担したことのある人であれば、再び詐欺に手を出してその資金を法人口座に入れるかもしれません。法人口座に詐欺のお金を振込させた後、マネーロンダリングをする可能性が高いです。
他にも薬物で逮捕歴のある人であれば、違法薬物の輸出入や栽培の資金で法人口座を使うかもしれません。著作権違反で有罪となった人であれば、再び同じ違法行為によってお金を稼ごうとするかもしれません。
もちろん実際には真っ当なビジネスによる起業であったとしても、前科者とそうでない人を比べたとき、どうしても犯罪歴のある人のほうが再び違法なビジネスをする可能性が高いです。
なお犯罪歴のある人のリストは警察が管理していますが、銀行も保有しています。そのため、簡単に調べることができます。これが、前科者だと法人口座開設がほぼ無理となる理由です。
社長(代表取締役)に犯罪歴があると開設できない
そのため、代表取締役として登記されている人について、犯罪歴があると法人口座開設はほぼ無理と考えなければいけません。法人登記した後について、銀行口座を開設しようとしても審査が滞り、開設拒否の連絡が届くのです。
経営者については、本人確認書類を銀行側に提出することになります。また同時に、以下のような登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の原本またはコピーを銀行側へ提示します。
こうして、誰が社長なのか明確に分かるようになります。その後、銀行が保有する犯罪者リストで検索をかけた結果、あなたの情報がヒットすると審査落ちになるというわけです。
そのため正攻法で前科者が法人口座開設をするのは諦めましょう。そうではなく、その他の方法によって会社用の銀行口座をもつようにしなければいけません。
株主だが社長を他人にする
そこで最も分かりやすい方法としては、代表取締役を他の人にすることがあります。例えば妻(または夫)であったり、親・兄弟であったり、これらの人物を社長に置きます。同時に、あなたは株主として会社経営をします。
会社というのは、株主のものになります。そのためあなたが100%株主であれば、社長が誰であっても関係ありません。そこで、犯罪歴のない人を代表取締役にするのです。実際の経営はあなたであったとしても、他の人を社長にすることで、あなたの名前が表に出てこないようにしましょう。
単なる株主であれば、登記簿謄本を含めてどこにもあなたの名前は出てきません。つまり、審査時の悪影響はまったくありません。
注意点として、法人口座開設の申請をするときは「あなたが役員にも入っていない状態にする」のが好ましいです。先ほど登記簿謄本を提示しましたが、ここには会社で登記されているすべての役員名が記されるようになります。
役員名を検索したとき、あなたの名前が犯罪者リストに出てくると銀行としては「怪しい」と考えます。そのため、特に最初は役員としてもあなたの名前が出てこないようにするといいです。
例えば建設会社では「なぜ工事会社なのに女性が社長なのだろうか?」と疑問に思い、調べると「役員(夫)に犯罪歴があった」ということはよくあります。当然、この場合は審査落ちになります。
役員というのは、後からいつでも追加できます。そのため地方銀行やネット銀行を含めて、法人口座開設に成功した後に役員としてあなたを登記するようにしましょう。この方法であれば、たとえ犯罪歴があったとしても会社用の法人口座を保有できるようになります。
個人口座を法人口座代わりにする
ただ中には「既に法人登記を済ませてしまっており、社長として就任している」「会社経営中に逮捕され、銀行口座の凍結・強制解約になってしまい、新たに法人口座が必要」というケースもあります。この場合、どのようにすればいいのでしょうか。
ひとまず、それまで申し込んだことのないネット銀行にすべて申し込んでみたり、付き合いのある地方銀行や信用金庫に掛け合って何とかお願いしたりする必要があります。
しかし、すべての銀行に口座開設を断られた場合は仕方ないため、最終手段を取りましょう。それは、あなた名義の個人口座を新たに作り、法人口座として利用することです。
当然ながら、個人口座を法人口座の代わりとして利用するのは本当はダメです。法律には何も違反しないものの、法人である以上、法人名義の銀行口座を保有してビジネスでのやり取りをするのが当然であり、取引先としても「法人間の取引なのになぜ個人名義なのか?」と疑問に思います。
ただ本当の意味でどうしようもない場合、仕方ないので最終手段としてあなた名義の個人口座を法人口座の代わりとして利用しましょう。
事実、世の中にはこの方法によって会社経営をしている人がいます。個人口座を法人口座の代わりに使うのは不便ではあるものの、前述の通り違法ではないため可能です。その場合は会社の税務申告や法人税・消費税の納付なども個人口座(ビジネス用の口座)から行うようになります。
・反社会的勢力でないのは必須
なお、当然ですが暴力団など反社会的勢力であれば個人であったとしても銀行口座を作ることはできません。
またヤクザであることが銀行側にバレると強制解約になります。銀行口座が犯罪に使われる可能性が非常に高いからです。そのため当然ですが、個人口座を法人用として代行するのは「あなたが反社会的勢力ではない」ことが絶対条件です。
過去の犯罪歴があってもビジネスは可能
どれだけ気持ちを改めて真っ当なビジネスをするにしても、前科者は過去の犯罪歴を消すことはできません。また中には、特に犯罪を犯すことを考えていなかったとしても、著作権や知的財産権、交通事故などで有罪判決を受けてしまうこともあります。
そうして前科者になってしまった場合、ビジネスをしている人では法人口座が凍結・強制解約となるケースがよくあります。また、新規に作ることはできません。これから起業しようとする人であっても、犯罪歴があると銀行の犯罪者リストとの照合によって審査落ちとなります。
そこで、正攻法ではなく他の方法によって銀行口座開設をしましょう。このときは親族を社長にしたり、個人口座を法人用として代用したりするといいです。
本来であれば、あなたが代表取締役社長として法人口座をもつのが正しいです。ただそれができない以上、こうした別の方法によってビジネスをするしかありません。前科者にとって法人口座を保有するのは大変ですが、ビジネスができないわけではないため、こうした方法を理解するようにしましょう。
すべての個人事業主・法人で必須になるのがネット銀行での法人口座開設です。メガバンクや地方銀行からネット銀行に変えるだけで、月40件ほどの振り込みであっても年間24万円以上の無駄な経費を削減できます。
またネット銀行だと24時間365日ログインできるのは当然として「1口座で20のサブ口座を保有できる」「外貨預金が可能」「自動での定期払いを設定できる」など非常に高機能です。
もちろん融資については微妙なため、融資が必要な場合は地方銀行などとも付き合う必要があります。それでも、振込をネット銀行へ変えるだけで大幅なお金の節約につながります。
ただ、ネット銀行とはいっても多くの数があります。また、ネット銀行によって特徴がそれぞれ異なります。そこで、ネット銀行の中でも優れた銀行についてランキング形式にて以下で記しているため、この中からあなたのビジネス活動に最適なネット銀行を選択するようにしましょう。