個人事業主や法人としてビジネスをする場合、必ず法人口座をもたなければいけません。このときすべての経営者で普通口座を保有します。
ただ法人口座で作れるのは普通預金だけではありません。当座口座を作ることもできます。そうしたとき、普通預金と当座預金の違いとしては何があるのでしょうか。そもそも、当座口座は会社経営するうえで必要なのでしょうか。
ネットバンキングの発達によって、いまではほとんど意味のなくなった当座口座ではあるものの、一応は普通預金とは別に当座預金を利用することができます。
それでは、どのように考えて当座口座を使えばいいのでしょうか。普通口座との違いは何なのでしょうか。ここでは、法人口座で開設可能な当座預金の考え方について解説していきます。
もくじ
法人口座には普通口座と当座口座がある
すべての法人口座で普通口座を開設します。そのため個人事業主や法人にとって、普通預金は特に説明をしなくても既に理解しているはずです。お金の振り込みや預け入れ・引き出しを含めて、自由に利用可能なのが普通口座です。
一方で当座預金はどのような場面で利用されるのでしょうか。普通口座の場合、手形や小切手の利用はできません。ただ当座口座であれば、手形や小切手の利用が可能です。当座預金というのは、手形や小切手を利用するための口座と理解しましょう。
手形や小切手はビジネス目的で利用するため、一般個人向けの銀行口座で当座口座を開設することはできません。当座預金というのは、個人事業主や法人ならではの預金口座といえます。
- 普通口座:通常の振り込みや預け入れ・引き出しをする口座
- 当座口座:手形や小切手のための口座
このように理解すればいいです。そのため手形や小切手を利用してお金を支払うことがない場合、当座口座は不要といえます。
当座預金で利息はなく、ATMは基本的に利用できない
それでは普通口座と当座口座のスペックを比べたとき、どのような違いがあるのでしょうか。まず、普通預金と違って当座預金では利息が付きません。金利ゼロなので、いくらお金を預けたとしても利子が加わることはありません。
これについてはデメリットですが、知っている通り日本では金利が異常なほど低いです。以下の通り、定期預金であっても0.002%です。100万円を預けても利息は1年間で20円です。
また利率が良いといわれるネット銀行であっても、定期預金の金利は0.01~0.03%です。これが普通預金だと、ネット銀行であっても0.001%となります。こうした現実のため、当座口座で金利ゼロとはいっても大きな影響はありません。
・ATMは基本的に利用できない
他には、普通口座とは違って手形や小切手による支払いを目的としているため、ATMを利用できないのが基本です。ATMを利用してお金の振り込みや預け入れ・引き出しをしたい場合、普通口座を利用しましょう。
場合によっては当座預金用のキャッシュカードを発行し、ATMを利用できることもあります。ただ、基本的には利用できないと考えるといいです。
振込限度額はなく、引き出しや振り込みの手数料はない
他に普通預金との違いとして出金限度額や手数料が該当します。個人口座とは異なり、法人口座では振込限度額が非常に高額です。ネットバンキングにて1日に5,000万円などの振り込みであっても可能です。ただ普通預金の場合、それでも振込限度額は存在します。
これが当座預金では限度額が存在しません。そのため、何十億円であったとしてもその場で手形や小切手を発行することで支払いをすることができます。
また引き出しや振り込みをするときの手数料がありません。通常、普通預金ではわりと高い手数料を取られます。例えば以下は、メガバンクでの法人口座の振込手数料です。
このように他行宛てに3万円以上の振り込みをすると、ネットバンキングにも関わらず660円という高い手数料を取られます。またATMを利用するときについても、時間帯によっては振り込みや引き出しで手数料を取られます。
これが当座預金であれば、振込手数料がゼロというわけです(その代わり、お金の受取側が受取手数料を支払います)。ATMを基本的に利用できないデメリットはあるものの、手数料がないのは優れています。
全額に対して預金保護となる:ペイオフの対象
またペイオフについても理解しましょう。日本円の銀行口座について、1,000万円までなら預金保護される制度として預金保険制度が有名です。
ただ法人口座では動かすお金が非常に高額になりやすく、1,000万円以上のお金が貯まっているのは普通です。そのためペイオフ制度があるとはいっても、1,000万円までしか預金保護されないので大きな意味はありません。
一方で当座預金のお金については、上限なしに預金保護されるようになっています。例えば当座口座に1億円の日本円がある場合、仮に銀行が破産したとしても1億円について預金保護されるようになります。
ペイオフの観点からいうと、普通預金よりも当座預金のほうが保護制度は手厚くなっています。そのため当座口座については、ペイオフ対策が不要です。
当座預金の保有では審査がある
そうしたとき、当座預金を保有するときは審査があります。法人口座をもつとき、普通口座であっても厳格な審査があります。
ただ当座預金の場合、それよりも厳格な審査が存在します。普通口座として法人口座をもっていたとしても、必ず当座預金の口座開設が可能になるとは限らないのです。
この理由としては、当座預金を利用して資金ショートすると銀行との取引が停止され、事実上の倒産となるからです。銀行預金を利用できない場合、それは会社の倒産を意味します。
そのため法人口座は普通預金でさえも審査基準が高くなっているものの、より厳しい審査を通過しなければいけないのが当座口座の開設というわけです。
ネット銀行では普通口座のみ存在する
参考までに、当座預金が可能なのはメガバンクや地方銀行など、支店を有する銀行のみになります。ネット銀行については、普通口座のみ作ることができます。当座口座はありません。
なぜ、ネット銀行では普通預金にしか対応していないのでしょうか。これは、手形や小切手の性質にその理由があります。手形や小切手を発行する場合、以下のような紙を発行するようになります。
出典:アクロウジングBlog
これについては約束手形ですが、受取側はこうした紙切れをもって支店に行き、現金化することになります。
ただネット銀行の場合、すべての銀行に共通しますが支店は存在しません。そのため、仮に手形や小切手を発行できたとしても、現金に換えるための支店が存在しないため現金の受取側としては困ってしまいます。ネットバンキングなどのオンライン上で完結するわけではないのです。
こうした事情があるため、ネット銀行で当座預金を取り扱っていることはないと考えましょう。支店をもつメガバンクや地方銀行、信用金庫などでなければ当座口座を作れません。
最大のデメリットは不渡りのリスク
なお、個人事業主や法人がこうした当座口座をもつときは最も重要なデメリットを理解しなければいけません。それは不渡りのリスクです。
当座預金口座にお金がないにも関わらず手形や小切手を発行し、決済時点で額面の金額が預金口座になかった場合、お金の引き落としができないために不渡りとなります。不渡りを起こすことによって、その情報が全銀行に共有されるようになります。
当然、こうした情報が知れ渡るとその後の融資を含めて非常に条件が厳しくなります。
また二回目の不渡りを起こすと、銀行との取引が停止になります。銀行から融資を受けていた場合、普通預金についても凍結されます。こうしてお金の引き出しを含めてすべての銀行取引が停止され、それ以降のビジネスが不可能になってしまいます。
「不渡り=倒産」といわれるのはこうした理由があります。いくら借金があって債務超過であろうが、不渡りを起こしていなければ倒産ではありません。ただ、当座口座で資金ショートを起こすと問答無用で銀行取引できなくなり、会社は倒産します。
中小企業で当座口座は不要
そのため会社によっては「絶対に手形や小切手を発行しない」ようにしていることがよくあります。つまり、そもそも当座口座をもたないようにすれば、自ら法人清算しない限り会社の強制的な倒産はないというわけです。
またそもそも、いまの時代に中小企業で当座預金は不要です。例えば手形を利用するとはいっても、ネットバンキングを利用すれば1日で何千万円ものお金を送れますし、数日に分ければ何億円もの送金も可能です。
なお手形であれば「支払いを半年後にする」など、支払いを後伸ばしにできるものの、これだと支払いが後ろすぎるので得意先に嫌がられます。大企業ならまだしも中小企業では、大幅に支払いを後にするために敢えて手形を使おうとすると、取引先との関係が微妙になるというわけです。
また取引先からすると、約束手形や小切手を受け取ると以下のデメリットを生じます。
- 実際に銀行に行かなければいけない
- 支払日を含めた3営業日以内が換金日:受取日を指定される
- お金の受け取り側が手数料を支払う
- 手形だと支払いを大幅に遅らされるリスクがある
このように、受取側にとってメリットがまったくありません。同じようにお金を受け取るのであれば、ネットバンキング経由で直接送金してくれたほうが受取側は圧倒的に楽です。手形や小切手を発行するとなると、高確率で取引先から嫌がられると考えましょう。
また以前であれば、手形や小切手は「高額な現金を運ぶ必要がなく、紙にサイン(押印)するだけでいい」というメリットがありました。しかしいまはネットバンキングが普通であり、前述の通り法人口座であれば普通口座であっても高額なやり取りが可能です。
そのため、中小企業にとって当座口座は不要といえます。特別な理由があって、どうしても作らなければいけない場合のみ、支店をもつ銀行にて当座預金口座を開設するようにしましょう。
必要な場合のみ当座口座で手形や小切手を利用する
これまで当座口座を開設したことがなく、手形や小切手を利用したことのない経営者は多いです。実際のところ、手形や小切手にてお金を受け取るケースは少ないです。自分が手形や小切手を発行する側となると、より機会は少ないといえます。
ただいまの時代、手形や小切手を発行する意味はありません。大昔とは違っていまはネットバンキングがあり、現金に触れることなく高額なお金を送金できるようになっているからです。
また手形や小切手を発行すると不渡りのリスクが発生します。そのため当座預金の金額が少なくなっていれば、油断していると銀行取引を停止されます。そのため経営者では、敢えて当座口座を保有しない人は多いです。
それだけでなく、約束手形や小切手を受け取る側からするとメリットがなく、デメリットしかありません。そのため嫌がられるため、よほどの理由がない限りは普通口座のみの開設にしましょう。こうした違いや特徴を理解して、本当に必要な場合のみ当座口座を作るといいです。
すべての個人事業主・法人で必須になるのがネット銀行での法人口座開設です。メガバンクや地方銀行からネット銀行に変えるだけで、月40件ほどの振り込みであっても年間24万円以上の無駄な経費を削減できます。
またネット銀行だと24時間365日ログインできるのは当然として「1口座で20のサブ口座を保有できる」「外貨預金が可能」「自動での定期払いを設定できる」など非常に高機能です。
もちろん融資については微妙なため、融資が必要な場合は地方銀行などとも付き合う必要があります。それでも、振込をネット銀行へ変えるだけで大幅なお金の節約につながります。
ただ、ネット銀行とはいっても多くの数があります。また、ネット銀行によって特徴がそれぞれ異なります。そこで、ネット銀行の中でも優れた銀行についてランキング形式にて以下で記しているため、この中からあなたのビジネス活動に最適なネット銀行を選択するようにしましょう。