売掛金買取をしてもらうことがファクタリングになりますが、実際にファクタリング会社に申し込みをしてやり取りをすると、掛目(掛け目)という言葉を頻繁に耳にするようになります。
そうしたとき、掛目とは一体何なのでしょうか。
売掛金をファクタリング会社に売るとはいっても、売掛金の額面全額を買い取ってもらえるわけではありません。実際には、売掛金の額面よりも低い金額を買い取ってもらうことになります。つまり、「売掛金の額面=与信限度額(買取をしてもらう上限金額)」ではないのです。
これを理解したうえでファクタリングを実施しなければいけません。そこで、「個人事業主や法人経営者がどのように考えて売掛金の売買を行い、スムーズに目的の金額を資金調達すればいいのか」について解説していきます。
もくじ
売掛金額面の全額が買取対象にならない掛目とは
それまでファクタリングを利用したことがない経営者だと、勘違いしやすいものに「売掛金の金額に対して、その全額が買取対象になる」と考えることがあります。例えば100万円の売掛金であれば、100万円が売買の対象になると考えてしまうのです。
ただ、実際は違います。売掛金のうち、一部だけが買取対象になるのです。この割合を示したものを掛目といいます。
掛目とは、「売掛債権のうちどれだけの部分を買取してもらえるのか」を示す割合だと考えましょう。例えば売掛金100万円がある場合、掛目に応じて以下のように売掛金の買取対象が変わってきます。
- 掛目90%:「100万円 × 90% = 90万円」が買取対象
- 掛目85%:「100万円 × 85% = 85万円」が買取対象
こうして、掛目が変わることで売掛債権の与信限度額(買取対象となる最大の金額)が違ってきます。
ファクタリングは売掛金以上のお金を現金化することはできません。ただ、このとき売掛債権によって現金化できる限度額というのは、掛目によって変動すると考えましょう。当然、このとき「限度額よりも低い金額を資金調達する」のは特に問題ありません。
思ったより振込金額が少ないことは多い
こうした掛目があり、与信限度額が低くなるため、思った金額を資金調達できないことはよくあります。例えば、以下のケースでシミュレーションをしてみましょう。
- 売掛金:100万円
- 掛目:80%
- 手数料:15%
今回の場合、限度額は「100万円(売掛金の額面) × 80%(掛目) = 80万円」です。また与信限度額に対して、すべて買取をしてもらう場合、手数料は以下のようになります。
- 80万円 × 15%(手数料率) = 12万円
そのため80万円から手数料12万円を差し引き、68万円が振込されるようになります。100万円の売掛金を利用して資金調達できる金額が68万円であるため、ファクタリング契約を進めるうちに「現金化できる金額が少ない!」と感じる個人事業主・法人経営者は多いです。
他の売掛金と組み合わせるのは可能
そのため、掛目によって限度額が大きく変動することを理解していないと、狙った金額の資金調達がうまく実現できなくなります。そのため、掛目による与信限度額から逆算したうえで「どれくらいの売掛金がファクタリングで必要になるのか」を考えるようにしましょう。
ただ、個人事業主や法人が保有する売掛金については、一つの金額がそこまで大きくないケースがあります。その場合、複数の売掛金を売買するのは問題ありません。
例えば、「売掛金100万円」と「売掛金200万円」がある場合、両方を合計して売掛金300万円としてファクタリングを依頼するのです。そうしたケースは非常に多く、審査のためにファクタリング会社へ提出する書類についても、「売掛先を記載できる欄がいくつもある」のは普通です。
例えば、以下は私が実際にファクタリング会社へ申し込みをしたとき、売掛先に関する情報シートになります。
このように、複数の売掛先に関して記載する項目があります。そのため、いろんな売掛金を合算することで資金調達をしても問題ありません。
業者によって掛目・限度額はバラバラ
それではどの程度の掛目が設定され、売掛金の与信限度額が決定されるのでしょうか。これについては、ファクタリングだと一般的に「売掛金満額の70~90%」といわれています。
ただ、実際のところこうした基準は当てになりません。まったく同一の売掛金を複数のファクタリング会社に提示すればわかりますが、それぞれの会社ごとに掛目がバラバラになるからです。
例えば、私が初めてファクタリングを利用したときに120万円ほどの売掛金の買取を依頼したことがあります。このとき、3つの会社で買取対象額を算出してもらいましたが、結果は以下のようになりました。
会社 | 買取対象 | 掛目の割合 |
ウィット | 80万円 | 約66.7% |
アクセルファクター | 103万円 | 約85.3% |
ビートレーディング | 92万円 | 約76.7% |
このように120万円の売掛金のうち、掛目の違いによって買取対象となる売掛債権の金額はバラバラでした。
正直なところ、なぜこのように掛目が大きく異なるのかは不明です。ただ、いずれにしてもファクタリング会社によって「まったく同じ売掛債権の買取を依頼したとしても、買取対象となる売掛金の金額は大きく異なる」と考えるようにしましょう。
参考までに、以下は私がアクセルファクターで契約したときに提示された実際の書類の一部です。
このように、約120万円(正確には120万9,390円)の売掛債権に対して、掛目が考慮されて103万円が買取の対象に設定されました。
リスクや利用回数に応じて掛目は変わる
ただ限度額が決定されるとき、決定基準となるものは存在します。それはリスクです。リスクの高い売掛債権の場合、どうしても掛目は低く設定されるようになります。
当然ながら、リスクの高い売掛債権であるほど掛目は低くなります。これについては、以下のように考えましょう。
- 大企業より、中小企業のほうがリスクが大きい
- 3社間ファクタリングより、2社間ファクタリングのほうがリスクは大きい
- あなたの会社規模が小さいほどリスクは大きい
このように、いろんな要素によって掛目が変わってくるようになります。リスクが大きい売掛金ほど初回取引の信用度が低く、ファクタリングをしたときの与信限度額が低くなるのです。
しかし、前述の通りまったく同じ売掛金であっても業者ごとに掛目はまったく異なるようになります。そのため、「どれだけリスクのある売掛債権であり、限度額をどのような基準で設定するのか」については、依頼する業者によってバラバラだといえます。
・2回目は掛目が大きくなる
なお、基本的に初回取引だとどのファクタリング会社でも掛目は低めに設定されます。これは、単純にそれだけあなたの信用度が低いからです。
ファクタリング会社が恐れているのは売掛債権の回収が滞ることです。このとき、個人事業主・法人経営者によっては「一つの売掛金を他の会社へ二重譲渡する」などの不正をすることがあります。
ただ、何度か取引のある会社であると、そうした不正を犯さない確率が高くなります。そのため初回より、2回目以降の取引のほうが掛目は大きくなると考えましょう。
掛目による限度額を考慮し、売掛金を売買する
ここまで述べた通り、ファクタリングでは掛目が存在します。掛目により、一つの売掛金を売買するときの上限限度額が決定されるようになるのです。
初めてファクタリングを活用する場合、売掛債権の全額が買取対象になるように思ってしまいます。ただ、実際には売掛金のうち少な目の金額が買取対象になります。実際の売掛金額よりも、少な目に入金されることがよくあるからです。
そのため、掛目が低く設定されて与信限度額が低くなり、さらにはファクタリング手数料が差し引かれることを考えると、資金調達できる金額が思ったほど多くならないこともあります。そうした場合、複数の売掛金を組み合わせるなど工夫するようにしましょう。
必要な金額の資金調達をするためには、事前に掛目の存在について理解しておかなければいけません。そうして依頼する売掛金の金額を逆算し、ファクタリングを進めるといいです。
資金調達のためにファクタリングを利用する場合、ファクタリング会社はたくさんあります。このとき、会社によって審査基準はバラバラですし、申し込みをしないと手数料は分かりません。そのため、複数社にあいみつ(相見積もり)を取るのが失敗しないコツです。
また、「素早い資金調達は可能か」「手数料相場は低いか」「土日対応できるか」「少額買取に対応しているか」など、ファクタリング会社によって方針がバラバラです。そうした中で優れた業者を選ぶ必要があります。
当然、偽装ファクタリングをしている闇金業者ではなく、真っ当なファクタリング会社を選ばなければいけません。利用業者に失敗すると、後で大変なことになります。
以下のページでは、私が実際に何社ものファクタリング会社を利用した中から、特に優れた業者だけ厳選しています。それぞれの特徴を理解したうえで複数社に申し込みをすれば、売掛金売買での失敗をなくすことができます。