通常、ファクタリングというと日本国内の企業同士で発生する売掛金の早期買取サービスを考えます。売掛債権の売買をするにしても、国内に限るのです。

ただ、世界に存在する会社と取引するケースもあります。例えば貿易をしている輸出企業であれば、外国企業と取引することで外貨を得ています。それと同時に輸出債権が発生するようになり、外国企業との間で債権回収リスクが生じます。

このとき、国内に限らず海外の会社を相手にファクタリングすることも可能です。これを国際ファクタリングといいます。

ただ国内企業の売掛金に対するファクタリングとは違い、国際ファクタリングは仕組みが複雑です。また対応している会社も限られます。そこで、どのように輸出債権のファクタリングを実施すればいいのか解説していきます。

輸出代金を連携して回収する国際ファクタリングとは

国際ファクタリングとは、「輸出債権の代金回収リスクを回避しつつ、売掛金に対するお金を入手する代金回収サービス」だと考えるようにしましょう。

日本国内の会社であれば、登記情報を調べれば日本語にて相手先の会社の代表者や会社住所などを調べることができます。例えば、以下は国税庁が運営する法人番号公表サイトで企業検索したときの結果です。

このように、公的機関が提供するデータを利用すればある程度まで会社情報を取得できます。

または帝国データバンクなどの民間企業が提供している情報を利用しても問題ありません。さらにいうと、こうした情報を利用しなくてもインターネットで企業名を検索すれば、公式サイトを保有する会社であれば事業内容や会社規模をすぐに把握できるケースが多いです。

また、国内ファクタリングだとビジネス口座(法人口座)の預金通帳のコピーや登記簿謄本、納税証明書を審査のために提出します。同時に請求書や社長個人の本人確認書類のコピーも出さなければいけません。

これにより、厳密な審査が可能です。ファクタリング会社としてはペーパーカンパニーとの取引を避けることができ、売掛金が確かに存在することを把握できるようになります。

・外国企業だと情報の取得が困難

しかし、これが日本国外になると急に難易度が高くなります。ファクタリングでは売掛先の信用情報が非常に重要になりますが、相手先情報を知る手段が限られます。

また公的書類を取得しても現地の言葉で書かれているため、何が記載されているのか理解できません。また支払い催促をしても、言語や文化が違うので簡単には応じてくれません。そこで世界各国のファクタリング会社が連携することにより、海外取引での輸出債権に対するファクタリングを可能にしているのが国際ファクタリングです。

輸出代金回収のリスクを回避するL/C(信用状)

このとき国際ファクタリングとは異なりますが、海外輸出企業が輸出代金の回収リスクを回避するために用いられる一般的な手法としてL/C(信用状)があります。

L/Cでは日本と現地の銀行が関わるようになり、確実な代金回収が可能になります。L/Cは輸入者が発行依頼しますが、以下のような流れになります。

この場合、輸出者としては商品発送すぐに輸出代金を回収できるようになります。また外国にある会社にとってもメリットがあり、確実に貿易による商品を受け取ることができます。

実際のところ輸出取引だと、必ず出てくる問題が以下のようなリスクです。

  • 輸出企業:商品を送ったのに、代金が振り込まれない
  • 輸入企業:代金を払ったのに、商品が送られてこない

このように両者にとってリスクがあるものの、L/Cではこのリスクがゼロになります。輸出者としてはL/Cの通知が来たとしても、船便などで商品を発送した証明書(B/L)がなければ代金を受け取れないようになっています。そのため輸入者は、お金を支払った後であれば確実に商品を受け取れます。

・L/Cにはデメリットがある

そのため輸出会社や輸入会社で広く活用されているL/Cですが、代金回収や商品到着のリスクを回避できる一方、デメリットもあります。

まず、書類到着が遅かったり手続きに時間がかかったりなどするため、どうしてもやりとりが遅くなってしまいます。貿易ではリードタイムを短くすることで機会損失や在庫を抑えることが重要であるものの、そうしたスピーディーな取引はできません。

国際ファクタリングでの4社間取引

一方の国際ファクタリングではどのようになるのでしょうか。これについては、先ほどのL/Cと非常に似ています。大まかな違いとしては、「国内・海外の銀行ではなく、国内・海外のファクタリング会社が関与する」と考えましょう。

つまり国際ファクタリングでは、4つの会社が関わる4社間取引となります。このとき、以下のような流れとなります。

L/Cを活用した貿易取引だと、L/Cが届いたあとにようやく商品発送の手続きをする必要がありました。そのため、どうしても時間がかかるようになります。一方で国際ファクタリングだと、こうした書類手続きは発生しません。先に商品を送ってしまい、国内・海外のファクタリング会社を経由してお金を受け取ることになります。

そのためL/Cの発行を含め面倒な手続きはありませんし、L/Cが届くまで待つ必要もありません。時間短縮や手間という意味では、国際ファクタリングのほうが優れています。

100%の輸出債権回収が可能になるメリット

このように素早い外貨取引が可能になりますが、国際ファクタリングについてもL/Cと同様に輸出債権の代金回収リスクがゼロになっています。

国際ファクタリングでは、一般的な国内ファクタリングのように「売掛金を先に買取してもらう」という方式ではありません。あくまでも、現地の企業が海外ファクタリング会社に支払いを行い、このときのお金が国内ファクタリング会社を通じてあなたの会社に振り込まれるようになります。

ただ国際ファクタリングを利用する場合、輸出債権は100%保証されます。もし海外企業からの支払いが滞った場合、ファクタリング会社からお金が支払われることになるのです。

つまり、売掛債権の回収リスクをあなたの会社が負わなくて済みます。代金回収リスクをゼロにできるのが国際ファクタリングの利点です。通常の国内ファクタリングのように、早期の売掛金の入金があるわけではないものの、世界の企業と取引するとき債権回収リスクをなしにできます。

そのため国際ファクタリングは「L/Cのような面倒な書類手続きを排除して素早い取引を可能にしつつ、代金回収リスクを回避できる仕組み」と考えましょう。具体的には、海外バイヤーの支払いが90日以上遅れた場合、国内のファクタリング会社が保証するようになっています。

例えば、以下は大手金融機関であるみずほファクターの公式サイトにある「国際ファクタリングでの輸出債権に対する取り扱い」です。

出典:みずほファクター

外貨取引での売掛金の回収リスクがゼロになるのは、このようにファクタリング会社が保証してくれるからといえます。

手数料・保証料の費用が割高になるデメリット

ただ、国際ファクタリングでは大きなメリットがあるとはいっても、当然ながらデメリットもあります。この中でも、一番のデメリットは高額な手数料(保証料)だといえます。

国際ファクタリングの場合、一般的には以下の手数料がかかります。

  • 0.7~2.0% / 月

インボイスの金額に対して、これだけのお金がかかります。もちろん、国内ファクタリングで実施されるような一般的なファクタリングに比べると金額は低いです。ただ、L/Cの保証料に比べると高めになってしまうのです。

L/Cの手数料だと、以下のようになります。

  • 0.5~1.0% / 年

年率であるため、月換算するとL/Cは「約0.04~0.08% / 月」の手数料となります。面倒な書類手続きが不要であり、スピード感のある取引が可能になるものの、国際ファクタリング利用では、このようにどうしても保証料が高くなってしまうのです。

そのため、国際ファクタリングを利用するときは「L/Cでの取引に比べて、経費コストやリードタイムによる損失を考慮しても、手数料分より利益を得られるか」を考えるようにしましょう。

・輸出企業が金額・費用を負担する

また、国際ファクタリングの実施に当たって発生する費用については、輸出企業が負担する必要があります。輸出債権をもつ会社がファクタリング会社の手数料を負担するため、その分だけ利益が減ります。

ちなみに、海外の取引先の信用調査費用は1万円ほどです。取引の初回だけ必要であり、その後は先に記した通りインボイスにある金額の0.7~2.0%ほどが毎月かかってきます。

世界にある取引企業と承諾をとる必要がある

またL/Cとも共通しますが、国際ファクタリングでは相手企業に承諾を取らなければいけません。ファクタリングを実施したいことを伝え、納得してもらう必要があるのです。

ファクタリングの実施を納得してもらうため、取引先の会社は現地のファクタリング会社と契約を結ばなければいけません。信用審査に必要な書類を取り寄せてもらうなど、そのために動いてもらう必要があるため、さらにはファクタリングしたいことを英語で伝える手間も必要です。

また国際ファクタリングはL/Cほど一般的な取引ではないため、場合によっては拒否されることもあります。

ただ費用負担は輸出会社側であり、さらには書類のやり取りを含めたその後の手間が必要ありません。そのため、輸入側としてはメリットが大きいので実際のところ納得してもらいやすい制度といえます。

国内ファクタリングと違い、FCI加盟の大手金融機関のみ可能

また、その他のデメリットとして「国内に存在する、一般的な民間ファクタリング会社では国際ファクタリングに対応していない」ことがあげられます。

通常の国内ファクタリングだと、ファクタリングを専門で実施している民間会社に依頼します。国内ファクタリングの場合、民間会社のほうが圧倒的に審査スピードが早く、素早く売掛金の売買をしてくれるからです。

しかし、世界にある会社の輸出債権に対して国際ファクタリングを利用する場合、世界各国の金融機関とつながりをもっていなければいけません。そうしたとき、世界各国の金融機関が加盟するFCI(国際ファクタリング連盟)のネットワークを活用し、国際ファクタリングを実施するようになります。

そうなると、国際ファクタリングを行えるのは大手金融機関のみとなります。具体的には、以下の金融機関で国際ファクタリングが可能です。

  • 三菱UFJファクター
  • みずほファクター

このように、ファクタリング会社とはいっても三菱UFJ銀行やみずほ銀行などのメガバンクが関わるファクタリング会社(子会社)で国際ファクタリングを実施することになります。

例えば中国やタイ、ベトナムなど東南アジアで国際ファクタリングをするとき、民間のファクタリング会社では対応できません。そのため、結果的にこうしたメガバンクでなければ国際ファクタリングを活用できないのです

一般的な国内ファクタリングだと、何社もあいみつを取って比較し、最も条件の良いファクタリング会社へ依頼すれば問題ありません。ただ、国際ファクタリングでは大手銀行系列になるため、ファクタリングのときは審査がそれなりに厳しくなりますし、利用できる会社も限られるようになります。

利用国できる国は数に制限がある

また、外貨取引での国際ファクタリングを利用できるとはいっても、大手メガバンクでもすべての国の金融機関と取引があるわけではありません。そのため、どうしても利用できる国は限られるようになります。

もちろんアメリカやカナダ、イギリスなどの先進国であれば確実に問題ないですが、東南アジアではすべての国で取引可能なわけではありません。例えば、以下はみずほファクターが公開している国際ファクタリング可能な国の一覧です。

このように、例えばアジアだと「韓国、台湾、中国、香港、シンガポール、タイ、インド、ベトナム」のみとなります。マレーシアやインドネシアなどの金融機関とは連携できておらず、こうした国だと国際ファクタリングの対象外なので注意しなければいけません。

そのため国際ファクタリングに対応していない国で輸出債権が発生する場合、L/Cを利用するなど、その他の方法を採用しなければいけません。

国際ファクタリングを利用するべき会社とは

こうした特徴のある国際ファクタリングですが、どのような会社が利用するべきなのでしょうか。海外にある企業と取引をしているのは絶対条件になりますが、輸出債権を保有する会社の中でも、「売掛金の与信審査を外注化してリスクヘッジしつつも、素早い取引をしたいケース」だといえます。

最も一般的な手法がL/Cであり、さらにはL/Cのほうが手数料・保証料の費用が低いことを考えると、「売掛金の回収リスクを避けたい」「与信審査をアウトソーシングしたい」というときに国際ファクタリングを利用する意味はありません。L/Cを利用すればいいからです。

しかし、L/Cのように煩雑な手続きがあり、さらには時間がかかっているとスムーズな貿易取引ができません。

そのため、無駄にリードタイムがかかることでの機会損失が大きい場合、ある程度の手数料が発生しても国際ファクタリングのほうが優れるケースがあります。そうした貿易業務を展開している会社であれば、国際ファクタリングを採用する意味が大きいといえます。

輸出代金回収を国際ファクタリングで行う

日本国内で完結する一般的なファクタリングとは大きく性質の異なるものが国際ファクタリングです。海外との企業と外貨取引することで、輸出債権に対してファクタリングする手法となります。

そのため、売掛金の売買を行う国内ファクタリングとは性質が異なります。売掛金の買取をしてもらい、即日や2~3日後に入金してもらう制度ではありません。そうではなく、輸出債権の回収リスクをゼロにする手法となります。しかも、素早い取引を実現しながら売掛金を確実に回収できるようになります。

ただ、メリットがある一方でデメリットもあります。まず、L/Cに比べると手数料相場が割高です。また、世界の金融機関と連携している大手メガバンク系列の会社でしか利用できません。対応可能な国も制限があります。

こうした特徴を理解したうえで国際ファクタリングを実施しましょう。利用できる会社は海外と取引のある会社に限られますが、輸出企業にとってビジネスでのリスクを抑えられる重要な仕組みとなります。

ファクタリング会社の選び方とは

資金調達のためにファクタリングを利用する場合、ファクタリング会社はたくさんあります。このとき、会社によって審査基準はバラバラですし、申し込みをしないと手数料は分かりません。そのため、複数社にあいみつ(相見積もり)を取るのが失敗しないコツです。

また、「素早い資金調達は可能か」「手数料相場は低いか」「土日対応できるか」「少額買取に対応しているか」など、ファクタリング会社によって方針がバラバラです。そうした中で優れた業者を選ぶ必要があります。

当然、偽装ファクタリングをしている闇金業者ではなく、真っ当なファクタリング会社を選ばなければいけません。利用業者に失敗すると、後で大変なことになります。

以下のページでは、私が実際に何社ものファクタリング会社を利用した中から、特に優れた業者だけ厳選しています。それぞれの特徴を理解したうえで複数社に申し込みをすれば、売掛金売買での失敗をなくすことができます。

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