これまでにファクタリングの経験がない場合、売掛金買取によって早期現金化するとはいっても、どのような流れで手続きが進んでいくのか理解できません。

資金繰りを改善し、手元に現金を置くために売掛金の売買を検討するのは重要です。ただ、そうしたときに「お金の入金日はいつか」「返済方法はどうなっているのか」「手数料をどのようにして支払うのか」など疑問が湧いてくるのです。

事前にこれらを理解していないと、スムーズにファクタリングを進めることができません。

そこで、「売掛金の売買を進めるにあたって、理解するべき全体の流れやタイミング」について解説していきます。

契約時が債権譲渡日になり、お金の入金日となる

まず、個人事業主や法人経営者にとって最も気になるのがお金の入金日だと思います。キャッシュフローを良くするためにファクタリングを活用するため、いつお金が振り込まれるのかは重要です。

これについては、売掛債権の譲渡承諾日が入金日になります。ファクタリング契約を結ぶと、その時点で売掛金の買取が行われ、売掛金はファクタリング会社のものになります。それと同時に、すぐお金が振り込まれるようになります。

どのファクタリングであっても、「契約をした債権譲渡日=お金の入金日」となるのです。

例えば私の場合、売掛金を買取してもらうときに以下のようにファクタリング会社の事務所へ出向いて契約をしました。

契約が完了したあと、事務所を出て30分ほどしたら担当者から電話がかかり、振込を完了したという連絡が入ったわけです。

このときはアクセルファクターという業者を利用し、売買手数料を差し引いて85万円の入金でした。以下のように振込されたわけです。

譲渡承諾日(契約日)が入金日になる以上、できるだけ素早く契約をすませることが資金調達のコツになります。

もちろん、お金を振込されたとしても銀行預金に反映されなければ振込資金を利用できません。預金に反映される時間については銀行ごとに違うため、これについては理解するようにしましょう。

・入金時は手数料が差し引かれる

このとき、ファクタリング会社と契約してお金が支払われるとき、売買手数料が差し引かれた状態で入金されるようになります。

例えば100万円の売掛金を買取してもらうとき、手数料率が10%(売買手数料は10万円)だとすると、90万円がビジネス口座へ振り込まれるようになります。手数料については、特に支払うタイミングは存在せず、入金時に既に手数料が差し引かれた状態となるのです。

ただ、手数料については他にもいくつもの種類が存在します。例えば、以下のような費用です。

  • 登記費用(司法書士への報酬)
  • 収入印紙代

これらの金額についても手数料に含める必要があり、総額手数料を差し引いた金額が振込されるようになると考えましょう。

意外と振込金額が少ない?掛目には注意するべき

ただ、実際に売掛金の買取をしてもらうとき、掛目(かけめ)には注意しましょう。これを考慮しないと、思ったほど事業資金を調達できないことがあるからです。

ファクタリングの場合、売掛金の額面全額を買取してくれることはありません。例えば100万円の請求書をファクタリングするにしても、「90万円分を買取する」などのケースは頻繁にあります。これが掛目であり、額面より少ない金額が買取対象になるのです。

これは、「請求書の金額よりも低い金額が売掛先から振り込まれる」ことがビジネスの世界では頻繁にあるからです。請求書よりも少ない金額が振り込まれたときのため、掛目によって少な目の金額が買取されることになります。

例えば私がファクタリングしたとき、120万円ほどの売掛金を提示したところ、103万円が買取対象になりました。以下は実際に私がファクタリング契約したときの書類です。

このように実際の額面よりも買取金額が少ないことは理解しましょう。例えば、以下の条件だと意外と入金額が少ないことに気が付きます。

  • 売掛金:100万円
  • 掛目:80%
  • 手数料:15%

この場合、買取対象の売掛金は「100万円 × 80%(掛目) = 80万円」です。このうち、手数料は「80万円 × 15%(手数料率) = 12万円」になるため、手数料を差し引いた68万円が入金されます。

100万円の売掛金であっても、掛目まで考慮すると意外と入金額は低くなるため、どれだけの事業資金が必要になるのか逆算したうえで、買取依頼する売掛金を考えなければいけません。

売掛金の支払日・決済日にファクタリング会社へお金を返す

なお、ファクタリングの場合は売掛債権の譲渡承諾日(契約日)にお金が入金されて終わりではありません。売掛金について、実際の支払期日になったときにファクタリング会社へお金を送金する必要があります。

このとき、どのタイミングがファクタリング会社への支払日になるかというと、売掛先からお金が振込される決済日になります。

通常の支払いサイクルだと、支払期日(決済日)になって売掛先からあなたの会社にお金が振り込まれます。ただ、ファクタリング利用している場合だと売掛金はファクタリング会社のものになっています。そのため、売掛金の支払日・決済日に得意先からお金が支払われるとき、「買取してもらった売掛金をファクタリング会社へ返す」ようにします。

売掛金を早期現金化したあと、支払期日になって対象の売掛金をファクタリング会社へ送金してすべての契約が終了することになります。

お金の支払方法(返済方法)は種類によって異なる

ただ、より厳密にいうとファクタリングにはいくつか方法があります。その中でも、メインになる手法として以下の2つがあります。

  • 2社間ファクタリング
  • 3社間ファクタリング

売掛金の譲渡日がファクタリング会社からのお金の入金日であることに変わりはありません。ただお金をファクタリング会社へ返すときについては、2社間と3社間ではお金の流れが変わってきます。そのため2社間、3社間のうち、どちらのファクタリング契約を選択するのかによって、「お金をどのように取り扱うのか」が違ってくると考えましょう。

それぞれの違いを確認していきます。

売掛金の決済日に返済する2社間契約

まず、ファクタリング取引の中で大多数を占める取引が2社間契約になります。「あなたの会社」「ファクタリング会社」の2つだけで契約する方法になります。

このとき、お金の流れは以下のようになります。

  1. 手数料が差し引かれ、早期にファクタリング会社からあなたの会社へ入金される
  2. 数ヶ月後、取引先から売掛金があなたの会社に振り込まれる
  3. あなたの会社が振り込まれたお金をファクタリング会社へ送金する

取引先からあなたの会社へ決済期日に入金があるのは変わりません。ただ、このときのお金はファクタリング会社のものであるため、売掛金の支払日にファクタリング会社へ送金する義務があります。

・早期入金や支払い遅延の対処法

このとき、売掛金の入金日が月ごとに常に同じであれば問題ないですが、場合によっては入金日がズレることもあります。

通常、ファクタリング契約時には契約書に「いつファクタリング会社へ売掛金を送金するのか」が明記されるようになります。しかし、そうした日よりも早い日程(または遅い日程)で支払いされることが稀にあります。

これについては、売掛金がファクタリング会社のものである以上、いつもの決済日より早くお金が支払われた場合、早めにファクタリング会社へ送金する必要があります。

一方で支払いが遅れた場合、ファクタリング会社へその事実を早めに連絡しましょう。そうして、後日になって実際に入金があったときは、その時点でようやくお金を返せば問題ありません。

3社間契約なら決済日に自動で支払いされる

一方で3社間ファクタリングという手法も存在します。取引先にファクタリングの事実が知られるので主流の方法ではないですが、手数料が非常に低いので得意先に納得してもらえる場合については3社間契約を実施することもあります。

3社間ファクタリングの場合、「あなたの会社」「ファクタリング会社」「取引先」の3社で契約することになります。このとき、以下のような流れになります。

  1. 取引先へ売掛金を請求する
  2. 手数料を差し引き、早期にファクタリング会社からあなたの会社に入金される
  3. 数ヶ月後、取引先からファクタリング会社へお金が支払われる

2社間と違うのは、「支払日に取引先があなたの会社にお金を払うのではなく、ファクタリング会社へ直接支払う」ことです。

この方法の場合、売掛債権の譲渡日(契約日)にファクタリング会社から早期にお金が支払われたあと、個人事業主・法人経営者(ファクタリング利用先)は特に何もすることがありません。ファクタリング会社への支払いは売掛先が直接してくれるため、具体的な返済方法について特に考える必要はないのです。

期間が来たときの口座振替など、決済代行は可能か

なお、多くの経営者が選択する2社間ファクタリングですが、このときの決済方法(振込方法)は銀行振込になります。あなたの会社に売掛先から入金があったあと、そのままファクタリング会社へ銀行振込で送金するのです。

そのため、支払期間が来たときに手動で振込作業をしなければいけません。

しかし、そうなると事務作業が発生するので面倒です。そのため、口座振替など自動引き落としなどによる決済代行が可能かどうか考えてしまいます。

ただ2社間ファクタリングの支払いをするとき、決済方法として口座振替などの決済代行を選択することはできません。

前述の通り、実際の支払期日よりも入金が後になることはビジネスの世界では普通に起こります。そうしたとき、売掛先からまだお金が入金されていないにも関わらず、自動引き落としが実行されてしまうと、結果として資金ショートを起こしてしまいます。

そのため、支払方法として手動での銀行振込を選択しなければ、あなたの会社が大変な事態に遭遇するケースがあります。こうしたこともあり、期間が来たときのファクタリング支払いを決済代行(口座振替など)で引き落としすることはないのです。

分割返済は不可であり、一括返済のみの決済条件

それではファクタリング会社へのお金の支払い方法はどうなっているのでしょうか。このときの決済条件としては、一括返済のみと考えるようにしましょう。

2社間契約でファクタリング会社へお金を返すとき、当然ながら返済を遅くしたほうが資金繰りはよくなります。そのため、経営者によっては「分割払いによる返済ができないか」と考えることがあります。しかし、ファクタリングでは分割返済が不可になっています。

分割返済をすると、借金をしているのと同じと判断されます。ファクタリングはあくまでも売買取引であり、融資として借入金を得ているわけではありません。

そのため分割返済はできず、得意先から支払われたお金について「買取対象の売掛金は全額を一括返済しなければいけない」と考えるようにしましょう。

期日に払わず、使い込みをすると横領になる

ただ、ここまで述べたお金の流れを守らず、2社間ファクタリングを利用するときにお金の横領をする経営者もいます。売掛先から支払われたお金について、ファクタリング会社へ送金せずに使い込みをしてしまうのです。

しかし、こうした行為は犯罪と同じです。そのため、絶対に行わないようにしましょう。

また、横領をすると売掛先に対して債権譲渡通知を内容証明で送られてしまいます。「今後の振込先をファクタリング会社に変えてほしい」という法的文書が債権譲渡通知書であり、ファクタリング契約時は必ずサインしているはずです。

参考までに、以下は私が実際に提出した債権譲渡通知書の一部です。

日付だけ書けば発送できる状態となりますが、こうした書類を取引先・得意先に送られるので確実にトラブルへと発展します。横領をして良いことはないため、絶対に行わないようにしましょう。

・意図せず債権譲渡通知が発送されるのを防ぐ

ただ、特に横領する気はなかったとしても、支払が遅れると債権譲渡通知が発送されます。そのため、何らかの原因があって振込できない状態の場合、必ずファクタリング会社へ連絡するようにしましょう。

お金の支払日について、ファクタリング会社は非常に厳密に管理しています。そのため、1日でも支払いが遅れることが分かった場合、すぐ連絡しなければいけません。そうすることで、債権譲渡通知書が送付されるのを防げるようになります。

お金の流れを把握し、確実にファクタリングを完了させる

ファクタリングによって売掛債権を早期現金化することを考えるとき、個人事業主や法人経営者ではどうしても「素早く資金調達できる」ことに目が行きがちです。

ただ、実際に売掛金の買取をしてもらうときはお金の流れを事前に把握しておきましょう。ファクタリング会社からの入金日を理解するのは当然として、2社間契約をしたとき、どのタイミングでファクタリング会社へお金を返すのか学んでおく必要があるのです。

入金については、「債権譲渡日=入金日」になります。また、ファクタリング会社へお金を返すタイミングは「売掛先から振り込まれた日」となります。

返済方法は一括での銀行振込なので、事前に日程を確認するようにしましょう。支払いが遅れると債権譲渡通知書が取引先へ送られるリスクが高くなるので、内容証明郵便で送られることのないように日程を管理するといいです。

こうしたことに注意したうえでファクタリングを利用する必要があります。お金の流れを把握したうえで、何をすればいいのか理解することで、トラブルなく資金調達できるようになります。

ファクタリング会社の選び方とは

資金調達のためにファクタリングを利用する場合、ファクタリング会社はたくさんあります。このとき、会社によって審査基準はバラバラですし、申し込みをしないと手数料は分かりません。そのため、複数社にあいみつ(相見積もり)を取るのが失敗しないコツです。

また、「素早い資金調達は可能か」「手数料相場は低いか」「土日対応できるか」「少額買取に対応しているか」など、ファクタリング会社によって方針がバラバラです。そうした中で優れた業者を選ぶ必要があります。

当然、偽装ファクタリングをしている闇金業者ではなく、真っ当なファクタリング会社を選ばなければいけません。利用業者に失敗すると、後で大変なことになります。

以下のページでは、私が実際に何社ものファクタリング会社を利用した中から、特に優れた業者だけ厳選しています。それぞれの特徴を理解したうえで複数社に申し込みをすれば、売掛金売買での失敗をなくすことができます。

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