売掛債権に対して、現金化する方法としてはいくつか種類があります。その代表的な方法がファクタリングであり、売掛金の売買をすることで早期資金化を図ることができます。
ただ、同じように売掛金を用いた現金化方法にサービサー(債権回収会社)を活用したものがあります。
2つとも売掛金を用いて資金調達する方法であるため、混同されがちです。ただ、この2つを利用する場面はまったく異なりますし、特徴を理解したうえで明確に使い分ける必要があります。当然、対象となる売掛金の種類も違ってきます。
それでは、ファクタリングとサービサーでは何が違うのでしょうか。ここでは、ファクタリングとサービサーの違いを確認していきます。
もくじ
ファクタリングとの違い!代金回収が債権回収会社の業務
ファクタリングは売掛金の売買をすることで、早期に現金化を図る手法になります。例えば手元に100万円の売掛金があっても、通常の商取引の場合、実際の入金は2~3ヶ月後になることはよくあります。そこで、売買手数料を支払って手元の売掛金を素早く現金化する手法がファクタリングです。
売掛金を用いた現金化の方法としてはファクタリングが最も有名です。
ただ、売掛金の中には「既に支払期日を過ぎており、支払い遅延が起こっているもの」があります。要は、売掛債権が焦げ付いている状態となります。
こうしたときに利用するのがサービサーです。債権回収会社とも呼ばれており、売掛債権に対する代金回収を行うのがメイン業務になります。つまり、サービサーは焦げ付いている売掛金の買取を行い、あなたの会社の代わりに取り立てを行うようになります。
そのため、ファクタリングとサービサーはまったくの別物です。両者を比べると以下のようになります。
- ファクタリング:将来、振り込まれる予定の売掛金を現金化する
- サービサー:期限が過ぎても振り込まれず、焦げ付いている売掛金を買取して代金回収をする
このように利用する場面が違うことは理解しましょう。
非弁行為にならず、サービサー法で取り立てが可能
なお、かつては売掛金などの金銭債権を回収する業務としては弁護士しか認められていませんでした。弁護士しか認められていないことをすると非弁行為とされ、法律違反になります。
ただ金銭債権の代金回収については、1998年にサービサー法が施行されました。サービサー法では、弁護士でない民間業者であっても問題なく金銭債権の取り立てが可能になります。
焦げ付いたお金の取り立てをするとなると、どうしても暴力団などのイメージがあります。ただ、サービサー法では当然ながら暴力団の排除に関する規定がされており、取り立てとはいっても無理な代金回収はしないようになっています。
また法務大臣から許可を得た会社が実施するため、かなりホワイトな手法によって取り立てを実施していくことになります。
・額面金額の2~3%で買取を行う
それでは、なぜ焦げ付いている売掛金という非常にリスクの高い金銭債権を買取するにも関わらず、無理な取り立てがないのでしょうか。これは、サービサーでは額面金額の2~3%という非常に安い金額で買取をするからです。
売掛金を有する会社としては、二束三文で売掛金を売却することになります。そのため、債権回収会社にとってみると少しでも債権回収に成功すれば利益が出るようになっています。
例えば1,000万円の焦げ付いた売掛金があった場合、2%でサービサーへ売掛金を売ったときの買取金額は20万円です。そのため、債権回収会社は頑張って20万円以上を回収すれば利益となります。
ファクタリングで支払い遅延の金銭債権(不良債権)は対象外
なお、売掛債権の売買をするときサービサーだと圧倒的に金額が低くなることから、ファクタリングによって対処できないか考えることがあります。
得意先の倒産リスクを考えたとき、ファクタリングは非常に優れたツールとなります。売掛金の買取をしてもらうとき、ファクタリングの場合は取引先の倒産リスクを転化させることができます。そのため、ファクタリングした先の売掛債権が焦げ付いたとしてもあなたの会社に支払い義務はないのです。
これをノンリコースといいます。ファクタリングがノンリコースになることについては、多くのファクタリング会社の公式サイトに明記されています。
しかし「既に支払い遅延が起こっている売掛金」については、ファクタリングによって売買取引することができません。つまり、ファクタリングしようとしても審査落ちになるのです。
ファクタリングというのは、まだ支払い遅延が発生していない売掛金が買取の対象となります。既に焦げ付いている不良債権の買取は不可であり、不良債権の買取はサービサーでなければいけません。
サービサーによる不良債権の取り立て手順
既に不良債権化した売掛金に対してはサービサーに頼ることになりますが、当然ながら債権回収会社を利用するケースは「取引先との信頼関係が完全に崩れており、これ以上の取引は発生しない」ときとなります。
ちなみに、クレジット会社やローン会社など大手を含め、どの会社も不良債権が生じたときはサービサーを活用します。対象は個人になることも多く、サービサーは個人から法人まで非常に多くのケースを対象に代金回収を実施します。
このときサービサーから、かつての取引先に対して支払い催促の電話がかかることになります。このときは返済期日を確認されますが、日本の法律では自宅や職場へ出向いての取り立てを禁止しているため、債権回収会社が支払遅延の相手先まで押し寄せることはありません。
ただ、返済されない場合だとサービサーは内容証明郵便によって支払いを促す法的文書を出したり、裁判所に申し立てをしたりします。こうして、財産の差し押さえを実行に移していくことになります。
当然、相手が債務整理をしてしまうとそれ以上の代金回収が難しくなります。ただ、法律の範囲内で不良債権の取り立てを実行するのがサービサーとなります。
不良債権は弁護士を活用した代金回収が一般的
ただ、実際のところ焦げ付いた不良債権についてサービサーを利用する人が多いかというと、通常のビジネスをしている個人事業主や法人経営者が利用する機会は少ないです。売掛金が不良債権化した場合、弁護士を利用するのが一般的だからです。
私の会社についても、過去に売掛金を支払わずに逃げようとした会社があり、弁護士を活用して債権回収の手続きをしたことがあります。
以下は、弁護士に債権回収を依頼したときの実際の文章です。
このときは着手金に加えて、「債権回収に成功した金額のうち、成果報酬16%を弁護士事務所へ支払う」というものであり、やはりそれなりに弁護士へ支払う金額は大きいものでした。参考までに、焦げ付いた売掛金は約170万円です。
ただ、分割払いをされて少し時間はかかりましたが、全額の売掛金回収に成功しました。以下は実際に担当弁護士から送られてきた、「残っていた最後の債権回収」に成功したときのメールの文章になります。
このように、私は焦げ付いた売掛金について弁護士を利用して回収したわけです。もちろん、すべて今回のようにうまくいくわけではありません。ただ、これが一般的な債権回収の方法だといえます。
実際のところ、私の会社を含め中小企業がサービサーを利用する場面はほぼありません。そのため、ここまでサービサーについて説明はしてきたものの、実際のところ活用する機会はないです。
そのため実際のビジネスだと、以下のように考える必要があります。
- 保有する売掛金を早めに現金化したい:ファクタリングを実施する
- 焦げ付いた売掛金を回収したい:企業法務に詳しい弁護士事務所へ依頼する
サービサーの出番はなく、売掛金が焦げ付いて不良債権化したとき、すぐに弁護士へ依頼しなければいけません。そうすれば、弁護士費用はかかりますが売掛金を取り戻せることがあります。
ファクタリングとサービサーはまったく異なる
ここまで、「ファクタリングとサービサーでは、どのような違いがあるのか」について確認してきました。
両者とも売掛金を活用して資金調達する方法になります。ただ、入金見込みのある売掛金の買取をしてもらうファクタリングに対して、既に不良債権化した売掛金を買取してもらうのがサービサーです。
サービサーの場合、二束三文の非常に安い金額で売掛債権を譲渡することになります。そのため、ファクタリングとは別物だといえます。
ただ、実際のところ売掛金が焦げ付いたときは弁護士を使って債権回収するのが一般的です。私の会社についても、弁護士を利用して不良債権化した売掛金の代金回収を選択しました。通常のビジネス取引において、サービサーではなく弁護士を利用するのが基本です。
こうしたことを理解したうえで、どのように売掛金を用いて資金調達すればいいのかを確認するようにしましょう。
資金調達のためにファクタリングを利用する場合、ファクタリング会社はたくさんあります。このとき、会社によって審査基準はバラバラですし、申し込みをしないと手数料は分かりません。そのため、複数社にあいみつ(相見積もり)を取るのが失敗しないコツです。
また、「素早い資金調達は可能か」「手数料相場は低いか」「土日対応できるか」「少額買取に対応しているか」など、ファクタリング会社によって方針がバラバラです。そうした中で優れた業者を選ぶ必要があります。
当然、偽装ファクタリングをしている闇金業者ではなく、真っ当なファクタリング会社を選ばなければいけません。利用業者に失敗すると、後で大変なことになります。
以下のページでは、私が実際に何社ものファクタリング会社を利用した中から、特に優れた業者だけ厳選しています。それぞれの特徴を理解したうえで複数社に申し込みをすれば、売掛金売買での失敗をなくすことができます。