火災保険を途中で解約する人は多いです。賃貸マンションに限らず、持ち家であったとしても火災保険が不要だと感じると解約してしまうのです。

早期解約すれば、それに応じて解約返戻金が戻ってきます。火災保険料は前払いであるため、補償対象でない期間について返金されるのです。

ただ、正式に火災保険を解約して解約返戻金を受け取った後、建物に不具合が見つかることがあります。当時は発見できなかったものの、台風などの自然災害による損傷が後で見つかるのです。こうした場合、解約後であっても火災保険金の請求は可能なのでしょうか。また、修理後はどうなのでしょうか。

解約後・修理後の保険金申請については、可能なケースがあれば無理なケースもあります。そこで、どのような場合で可能なのか解説していきます。

解約後であっても保険金請求は可能

まず結論をいうと、火災保険金を請求するときは解約後であっても可能です。火災保険請求は加入しているときのみ有効というわけではなく、解約後であったとしても請求は問題ありません。

火災保険は火事に限らず、台風被害であっても利用できます。むしろ、火災保険は台風による強風や雪による被害によって保険金請求するパターンのほうが多いです。

ただ、この事実を知っている人は少ないです。そのため「台風や雪による被害について保険金請求が可能」であることを後で知り、「いまから請求できないのか」などと慌てるケースはよくあります。例えば以下のような破損については、台風による影響として保険金請求が可能です。

こうした破損は意外と多く見つかるため、後になって請求できないか考えるのです。もちろん、これには火災保険を解約後の人も含まれます。

賃貸の保険契約で既に賃貸物件から退去している場合はさすがに無理です。火災保険では現地調査が必須だからです。ただ持ち家であったり、マンション・アパートをもつ大家だったりする場合、解約後であっても保険金請求できることを理解しましょう。

3年以内の破損なら問題ない

ただ、過去にいくらでもさかのぼって請求できるわけではありません。火災保険には請求期限があります。それが3年です。

保険法の第95条には以下のように記されています。

【第95条(消滅時効)】

保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条または第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。

このように、「3年が経過すると時効」と明記されています。火災保険の解約後であったとしても、時効を迎えていなければ保険金の請求が可能なのです。

保険金請求に必要な条件

それでは、過去3年以内に自然災害によって建物が破損したとして、どのような条件であれば保険金請求が可能になるのでしょうか。どのような場合であっても保険金が下りるわけではないため、条件を理解しなければいけません。

これについては、以下のことを確認しましょう。

  • 3年以内に被災している
  • 写真や工事明細の見積書の提示が可能

当時、火災保険に加入中だったことに加えてこうした条件が必要になります。それぞれについて確認していきます。

被災が時効になる期間(3年)内に起きている

台風や雪による災害によって、いつ被災したのかは重要です。前述の通り火災保険の時効は3年なので、「5年前の台風によって建物が壊れたケース」については補償対象になりません。契約中や解約後に限らず、被災後3年が経過したらその時点で時効なのです。

ただ、夏になると毎年のように台風は日本に上陸します。そのため実際のところ、どの台風被害によって建物に損害が出たのか把握するのは不可能に近いです。

「屋根が飛んだ」などの被害であれば、非常に分かりやすい損害なのでいつ被災したのか分かります。ただ、以下のような壁に開いた穴などについては、どの台風による影響なのか分かりません。

火災保険の請求では、こうした「いつ起きたのか不明な損傷」についても請求するのが一般的です。そのため、この場合は仕方ないので「台風〇号(過去3年以内の台風)の影響によって損傷した」と説明して問題ありません。

瞬間最大風速20m以上が観測された場合、「風災による影響で損傷が起きた」と損害保険会社に請求することができます。台風は風速17m以上を指すため、あなたの地域周辺を台風が通過した場合、わりと高い確率で瞬間最大風速は20m以上となります。そのため、過去3年の間にそのような規模の台風が通過したことがある場合は請求できます。

・経年劣化は対象外になる

一方で過去3年に大型台風の通過がなかったり、雪災などの影響もなかったりする場合はどうなるのでしょうか。この場合については、残念ながら保険金を請求することはできません。経年劣化による破損、または3年を過ぎて既に時効になっている損傷と判断されるからです。

火災保険は自然災害による損害を補償してくれる保険です。そのため経年劣化は含みません。あくまでも、いま現時点から過去3年以内に風災や雪災などを経験していることが保険金請求で必要な条件です。

写真や工事明細の見積書を提示できる

さらに、火災保険の請求で必須となることがあります。それが、実際に災害を受けた箇所について証拠写真を撮ることです。例えば以下は、マンションのアンテナ破損について写真を撮り、作成した報告書の一部です。

このように、台風などの自然災害によってどの部分が破損したのか明確に記さなければいけません。

強風などによって建物に損害が起きて間もないころであれば、こうした写真を問題なく撮れます。ただ既に時間が経過している場合、「破損した箇所を既に片づけてしまっている」「損害場所が腐食し、経年劣化したような見た目になっている」ことはよくあります。

その場合は提出するレポートを工夫しなければならず、あくまでも自然災害による影響であると提示できなければいけません。

また証拠写真以外に、工事明細を示す見積書も必要になります。時間が経過するほど保険金請求は難しくなるため、解約後に請求することを考えている場合、いますぐ行動しなければいけません。

既に修理後の場合、可能性は低くなる

なお、中には既に工事を完了させて修理を済ませてしまっている人もいると思います。この場合はどうなのでしょうか。

これについては、残念ながら保険金請求が成功する確率は非常に低いです。理由は単純であり、ほとんどの人で火災保険請求に必要な証拠を提示できないからです。

既に述べた通り、火災保険の申請では「強風被害を受けた場所の写真(工事前の様子)」が必要です。これを用意できないのです。修理後の写真だと「最初からその状態であり、もともと破損していないのでは?」と疑われ、保険金が下りることはありません。

また、火災保険の請求では前述のように工事の見積書が必要です。すべての人について、以下のような詳細な工事内容が書かれた見積書を損害保険会社に提示しなければいけません。

ただ工事後だと、こうした見積書を捨てている人がほとんどです。そのため、損害保険会社に保険金の請求金額(工事金額)の根拠を示すことができません。

もちろん、工事前の破損個所の写真と修理工事の見積書が奇跡的に手元にある場合、工事の施工後であったとしても保険金を請求できます。しかしそうでない場合、修理後だと保険金の請求は非常に難しくなります。解約後であっても請求は可能ですが、工事前であると優れています。

解約後の場合、いますぐ保険請求するべき

火災保険は解約によって効力がその瞬間に消えるわけではありません。解約後であったとしても、契約期間中に発生した自然災害による破損については補償対象になります。既に解約したからといって、諦める必要はありません。

ただ解約後についても保険金請求できるのは本当であるものの、条件があります。それが、いまから過去3年以内に発生した自然災害であることです。

火災保険では、わりと高い確率で台風に関する請求になりますが、過去3年以内に台風が直撃している場合であれば保険金請求が可能だと理解しましょう。しかし、既に修復工事が完了してしまっている場合は厳しくなります。修繕前の写真を提示できないからです。

損害保険会社から保険金を下ろしてもらうには、正しい手順に従わなければいけません。お金を受け取るには条件があるため、これらを理解したうえで時効を迎える前にいますぐ保険金請求をするようにしましょう。