台風などの自然災害で被害を受けたとき、火災保険金を請求することによって高額なお金を手にすることができます。こうしたお金については、請求額をあなたが自由に設定できるわけではなく、定められた方法に従う必要があります。

ただ、中には「火災保険を申請するとき、水増し請求できないのか?」と考える人がいます。提出する書類について、本来よりも高額な数字を記載するのです。

これについて、結論を先にいうとできません。火災保険の仕組みで無理なようになっているのです。また書類偽装して過剰請求する場合、詐欺罪として罪に問われるようになります。

なぜ、水増し請求が難しいのでしょうか。この理由について、火災保険の請求をするときの仕組みを含めて解説していきます。

工事費用が火災保険金に直結する

火災保険の請求をするとき、どのようにして保険金の額が決定されるのでしょうか。これについては、工事の見積書によって変動します。

台風や落雷、雪などによる自然災害を受けたとき、損害箇所を元通りにするための補償が火災保険金です。そのため工事の見積書がなければ、具体的にいくらの費用を保険金として出せばいいのか分かりません。そこで、保険金請求では全員が以下のような書類を損害保険会社に提出します。

通常であれば、「工事の見積書の金額=保険金の額」となります。もちろん加入プランによっては、工事見積もりよりも保険金額が高くなったり、反対に低くなったりします。ただいずれにしても、支払われる保険金の基準額は見積書で決定されます。

損害保険会社はあなたの家やマンションへ実際に出向くわけではありません。そこで、こうした書類をもとに客観的に判断するのです。

工事業者が見積書を出すため過剰請求できない

こうした事情があるため、過剰請求そのものができなくなっています。保険金の過剰請求をするためには、見積書の金額を高くしなければいけません。ただ過剰請求するにしても、それを実現するためには、工事業者が意味なく見積書の金額を高くしなければいけません。

ただ工事業者にとってみると、無意味に工事金額を高くすることに応じてくれることはありません。詐欺に加担することになるため、工事業者としてはメリットがないからです。

もちろん、割引価格ではなく通常価格であれば見積もりを出してくれます。実際のところ、保険金請求では専門の代行会社に作業を依頼するケースが多く、そうした請求会社と提携している工事会社が調査し、見積書を提出してくれるのです。

このときの工事見積もりは前述の通り、通常価格で出されます。当然ながら、保険金が高く支給されるほど優れているため、頑張って値引きした金額ではないというわけです。

水増し請求はしないものの、あくまでも通常価格です。詐欺(水増し請求)に加担してくれる工事業者を見つけるのは実際のところ不可能に近いです。これが、火災保険で過剰請求が無理になっている理由です。

損害の補填が火災保険の本質:グレードアップ工事の請求は無理

それでは、より高額なお金の請求が火災保険でなぜできないのでしょうか。これは、火災保険で保険金が下りるのは台風や落雷、雪などによって損害を受けたことへの補償だからです。損害に対する補填が火災保険の本質です。追加費用まで出すのは火災保険ではありません。

工事費用が保険金の金額になるのであれば、原状回復以上の高額な工事をするように依頼して工事会社に見積書を作らせば、過剰請求できるように感じてしまいます。ただこれだと、損害保険会社に断られます。

原状回復の費用を補うのが火災保険であるため、損失を受けた部分について、例えば10万円の損害にも関わらず、「利用する材料を高価な部材にすることで25万円分の請求をする」などはできません。

もちろんお金を受け取った後については、その保険金をあなたが自由に利用して問題ありません。受け取った保険金を利用して他のグレードアップ工事をしてもいいし、極端な話をすると旅行代に使っても問題ありません。

ただ台風被害による補償である以上、保険金として出されるのは原状回復費用のみとなります。グレードアップとしての工事費用は請求できないため、過剰請求できなくなっています。

損害を大きく見せるのは意味がない

そうしたとき、中には「損害を大きく見せれば問題なく保険金を引き出せるのでは?」と考える人がいるかもしれません。建物についてわざと壊し、工事の見積もりを取るようにするのです。

例えば以下の損害は台風被害によるものであるものの、これと似た損傷を人為的に作るのです。

ただ、これについては意味がありません。建物に傷をつけたとしても、出される保険金は修繕工事に必要な費用のみだからです。建物に傷をつけることで10万円の保険金を上乗せすることができたとしても、この10万円はそのまま修理費用として消えていくことになるのです。

また自然災害による損傷ではなく、人為的な傷であると不自然になってしまうことがあります。要は、却下される可能性が高くなります。このような行為をやってはいけないのです。

より詳しくいうと、火災保険の請求をするとき、必ず報告書を作らなければいけません。以下は実際の報告書の一部です。

このとき人為的な傷だと、どうしても報告書の内容が怪しくなってしまいます。損傷を大きく見せるのが意味ないだけでなく、否認リスクが高くなってしまい、対象部分について保険金を受け取れない可能性もあるのです。

水増し請求するのは詐欺業者くらい

このように、いろんな面を総合的に判断すると意味がないどころか、むしろ損をするのが水増し請求です。

もちろん、特殊なケースであれば広く水増し請求が行われていることがあります。それが詐欺業者の存在です。火災保険の請求で最も気を付けなければいけないのが詐欺業者であり、特殊詐欺をしている闇組織が保険金請求の代行業者を装っていることはよくあります。

実際、過去には逮捕例がいくつも存在します。以下のような感じです。

こうした詐欺業者の場合だと過剰請求は当然ですし、あなたの家やマンションについて故意に破壊して保険金請求することもあります。もちろんあなたにとってメリットはまったくなく、損をするだけとなります。

書類偽装は犯罪と同じであり、罪に問われる

ただ中には、「工事業者に依頼するから水増し請求ができないのであり、書類を自分で作れば過剰請求できるのでは」と考える人がいるかもしれません。

これについては、まさにその通りです。実際には存在しない会社名を記載し、あなた自ら工事見積もりの資料を作って損害保険会社に請求することは可能です。ただ、これは書類偽装であり保険金詐欺と同じなので、犯罪をしているのと意味は同じです。つまり、詐欺罪として罪に問われます。

善良な市民なのであれば、さすがに詐欺で逮捕されたいとは思わないはずです。罪に問われたくないのであれば、書類偽装はしないようにしましょう。

見積書の偽装では不備も多くなる

またこうした犯罪に手を染める場合、どうしても不自然な点が多くなります。まず、工事会社は実在しないので損害保険会社が確認のために電話したとしても、誰も電話にでません。また法人が存在するわけではないため、すぐにウソがばれます。

また工事見積書であれば何でもいいというわけではなく、詳細な内容が記載された見積もりでなければいけません。以下のように、「工事内容」「使用する材料の規格や形状」「各項目の金額」など、それぞれ細かく内容が記載されている必要があります。

これらを素人であるあなたが独自に作るとなると、確実に不自然な見積書になってしまいます。不備が多くなり、損害保険会社から怪しまれてしまうため、やはり火災保険の過剰請求は難しいのです。

火災保険で保険金請求するとき、多くのステップがあります。これらについて損害保険会社にバレないように書類を最初から完ぺきに偽装し、保険金をだまし取ろうとするのは詐欺業者以外は難しいです。また犯罪であり、罪に問われるのでそもそも過剰請求は考えないようにしましょう。

保険金の支払い請求は適正額を申請する

火災保険を利用するとき、正しい方法があります。このとき変な不正は考えず、水増し請求などなしに報告するようにしましょう。

実際の保険金請求では損害箇所について写真を撮り、報告書を作成し、工事見積書を提示します。こうした書類に不審な点があると、損害保険会社から怪しまれます。特に書類偽装をしている場合、詐欺罪として罪に問われます。

また書類偽装でなくても、自分の家やマンションをわざと壊すのは意味がありません。グレードアップのための工事費用は出ず、原状回復費用のみ支払われるからです。

下手に過剰請求を考えると、犯罪に手を染めることになってしまいます。そこで水増し請求は考えず、正しい金額について保険金請求をするようにしましょう。