個人が不動産投資を実践する場合、重要なのが出口戦略になります。特に海外不動産投資だと、ほぼ100%の確率でいつかの時点で売らなければいけません。国内不動産であればかなりの期間を保有することを考える人もいますが、これが海外だと全員が数年で売却することになるのです。

これにはいくつか理由があり、「キャピタルゲインを狙える」「節税効果を考える」などさまざまな要因があります。ただいずれにしても、どこかで売却するというわけです。

そうしたとき、どのようなタイミングで物件を売ればキャピタルゲイン(譲渡所得)を得られるようになり、なおかつ確定申告での税金を少なくできるのでしょうか。

売るべき正しいタイミングや売却方法が存在するため、事前にこれらを理解しておかなければいけません。そこで、海外不動産投資で物件売却するときの方法や利益に対する考え方を解説していきます。

売りたいときを見定め、出口戦略を考える

投資活動の中で外国の不動産へ投資する場合、別荘保有や自分が住むことを目的としている以外だと、20年や30年も物件を保有する人は存在しません。ある程度の期間が経過したら、必ず保有物件を売却するようになります。

そのため海外不動産投資では出口(不動産の売却)まで見据えた投資を実践しなければいけません。そうしたとき、以下のポイントを考える必要があります。

  • 長期譲渡所得の関係上、5年超の保有は必須
  • 節税効果やキャピタルゲインを考え、7~10年で売却
  • 売れにくい物件の保有は微妙

それぞれが、具体的にどのようなポイントになっているのか確認していきます。

長期譲渡所得の関係もあり、通常は5年超の保有

海外不動産を保有する場合であっても、売却時は日本の税制にも従うことになります。売却時は現地にてキャピタルゲイン税を支払うのは当然ですが、日本でも税金を支払わなければいけません。このとき日本では、不動産の保有年数に応じて売却益(譲渡所得)に課せられる税率が変わってきます。

具体的な税率は以下のようになります。

  • 短期譲渡所得(5年以下で売却):税率39%
  • 長期譲渡所得(5年超で売却):税率20%

このようにキャピタルゲイン(不動産の売却益)に対する課税割合がまったく異なります。この理由から、海外不動産投資を活用する人の中で5年以下の保有で売却する人は特別な理由がない限りいません。

日本の場合、不動産価格はずっと下落していくのが当然です。事実、新築物件が中古価格を上回ることなどありません。一方で海外は逆であり、物件価格はずっと上昇していきます。東南アジアだと「不動産価格が値上がりしている」と分かりますが、これはアメリカでも同様です。以下はアメリカでの不動産価格の推移です。

日本で不動産投資をする場合、キャピタルゲインは特にないので気にしなくても問題ありません。ただ海外不動産投資では高額な売却益を得られるのが普通のため、出口(物件の売却時)に高額な課税をされてしまうと意味がありません。そこで、低い税率になるように5年超の物件保有になるのです。

海外不動産への投資で大きな売却益を得られるのはメリットですが、日本での税金のことを考えると、ある程度の長い保有期間になることは最初に理解しましょう。

・プレビルドの案件は注意

そうしたとき、特に注意するべき投資先にプレビルドがあります。以下のような、建築前の物件に投資するのがプレビルドになります。

東南アジアは100%コンドミニアムへ投資することになるため、プレビルドの案件が多いです。このときプレビルドだと、建築前で安めの金額にて売り出されます。そのため業者によっては、「安いいまのうちに購入し、完成後に売ってもいい」と宣伝するかもしれません。

ただ、この方法を推奨する業者は確実に詐欺です。プレビルドの物件が完成し、正式に登記して5年が経過しなければ短期譲渡所得となり、税率39%が適用されるからです。

プレビルドは元々のリスクが非常に高く、本当に物件価格が値上がりするか分からないにも関わらず、仮に成功しても短期譲渡では高額な税金となります。そのため物件完成後も5年超という、ある程度の保有が必須であり、こうした注意点を事前に理解しなければいけません。

節税効果を考え、7~10年で売却

一方でどれくらいの保有期間になって、不動産を手放すのがいいのでしょうか。これについては、7~10年ほどで売却するのが一般的です。

海外不動産投資を考える人だと、節税目的で行う人が非常に多いです。東南アジアの不動産では無理ですが、アメリカ不動産であれば高額な節税が可能になるのです。アメリカ不動産投資だと、以下のような木造住宅へ投資することになるからです。

このとき詳細は省きますが、米国不動産へ個人で投資する場合、5,000万円の不動産(そのうち4,000万円は建物)へ投資することで、ザックリと「毎年300万円を10年かけて減価償却できる」ようになります。

本来、木造住宅は減価償却22年です。ただ、「給水管:耐用年数15年」「外付けのエアコン:償却期間は7年」のように細かく構築物の明細を分けて減価償却していくことで、このように素早く減価償却できるというわけです。

仮に税率50%(所得税&住民税で50%)の人だと、減価償却費を年間300万円計上できれば、「300万円 × 50%(税率) = 150万円」もの高額な税金を削減できます。

ただ、こうした減価償却費を計上できるのは10年ほどです。11年目からについては、計上できる減価償却費が少なく、節税効果が薄まります。それなら保有するアメリカ不動産を売り、新たに米国不動産を保有したほうが効果的です。買い替えすれば、新たに減価償却費を計上できるようになるからです。

こうした節税効果の観点から、7~10年での売却が一般的です。また7~10年ほど経過すれば、それなりに不動産価格が値上がりしているのも理由となります。

売れにくい物件の保有は微妙

このとき、これから物件を購入するのであれば「売りやすい物件かどうか」を確認するようにしましょう(ただし既に購入している場合であれば手遅れです)。

例えば東南アジアの物件であれば、微妙な場所に立地しているコンドミニアムは売れにくいです。東南アジアは成功できる場所エリアが決まっており、例えばタイならバンコク・スクンビット地区が最適ですし、フィリピンならマニラ・マカティ地区がいいです。それ以外のエリアだと微妙です。

この点はアメリカ不動産でも同様です。米国不動産では「都市部の郊外にある一戸建て住宅へ投資する」のが大原則です。以下のような、ダウンタウンにあるマンションやコンドミニアムの一室へ投資すると失敗します。

アメリカではダウンタウンになるほど治安が悪くなるため、こうした市街中心部ではなく、周辺(郊外)に富裕層が家族で住むというわけです。またアパートやマンションの一室だとアメリカ人にとって狭すぎるため住む人すら見つけにくいです。

出口戦略を考えたとき、「どのような物件が現地の富裕層に求められているのか」を理解したうえで投資しなければ危険です。不動産を売りに出そうにも、売れないからです。

譲渡所得(キャピタルゲイン)は減価償却費を含める

これら出口までを考慮して正しく投資すれば、海外不動産投資では高額な譲渡所得(キャピタルゲイン)を得られるようになります。ただ譲渡所得を計算するとき、注意するべき点が一つあります。それは、過去に計上した減価償却費を含めることがあります。

例えば、以下のような状況だったとします。

  • 不動産の買値:5,000万円
  • 不動産の売値:7,000万円
  • 減価償却費の合計:3,000万円

このとき、「7,000万円(売値) - 5,000万円(買値) = 2,000万円」が譲渡所得ではありません。それまでの減価償却費を収益に含めて、売却益は以下のようになります。

  • 7,000万円(売値) - 5,000万円(買値) + 3,000万円(減価償却費の合計)= 5,000万円

過去に経費として計上した減価償却費を収益に含めるのであれば、節税にならないのではと考える人がいるかもしれません。ただ前述の通り、5年超の保有だと譲渡所得に対して税率は一律で20%です。

一方で個人所得税が高い人だと、40~50%以上が税金で消えることになります。そこで減価償却費を計上することで高額な節税が可能になることを既に説明しました。このとき、「所得税&住民税での税率分」と「長期譲渡所得の20%」の差額分だけ無駄な税金を削減できるというわけです。

そのため高額な節税になるわけですが、いずれにしてもキャピタルゲイン税を計算するときは売却時の金額だけでなく、過去に計上した減価償却費についても考慮することを忘れないようにしましょう。

現地で納税し、外国税額控除を考慮して日本で確定申告・納税

ここまで日本での税制について解説してきましたが、キャピタルゲインを得たときに最初に税金を納めるのは当然ながら投資先の国になります。

売却益に対してどれだけの税金が必要になるのかについては、投資先の国の税制によってバラバラです。

例えばアメリカでは、譲渡益に対して約20%の税金となります。つまり、税率は日本とほぼ同じです。一方でフィリピンだと「物件価格 or 市場価格の6%」となります。利益ではなく、物件価格の全体に対して6%のため、圧倒的に高額になることは理解しましょう。

購入前から「現地でいくらの税金になるのか」を理解しておかなければ、物件を売ったとしても税金額が大きく、思ったほど売却益を得られないことがあります。そのため、投資先の税制を事前に理解しておくことは非常に重要だといえます。

・外国税額控除を考え、確定申告する

そうして現地でキャピタルゲイン税を支払った後、今度は日本で確定申告することになります。このとき、海外と日本で課税される場合、二重課税になると心配になる人がいます。ただ、これについては外国税額控除があるので特に心配しなくて問題ありません。

現地で税金を支払った場合、支払済みのお金を考慮したうえで、日本で納税する制度が外国税額控除です。例えばアメリカ不動産を売却したとき、税額を計算すると以下のようになったとします。

  • アメリカでのキャピタルゲイン税:400万円
  • 日本でのキャピタルゲイン税:500万円

この場合、日本で支払う譲渡所得に対する税金は差額の100万円です。外国税額控除によって二重課税が解消されるようになり、確定申告することでこうした税金を納税すると理解しましょう。

売却時のステップは国内不動産エージェント会社の活用

それでは、実際に不動産を売りたいと思ったときはどのように行動すればいいのでしょうか。これについては、現地オフィスをもつ日本の不動産会社に依頼するのが一般的です。

不動産を購入するときについても、海外不動産に対応している日本の不動産会社を利用するのが普通です。現地の言葉でやり取りしなければいけないのは当然として、契約書は不動産に関する難しい法律用語で書かれているからです。以下のような感じです。

しかも相手が提示してくる契約書だと、間違いがあるのは普通です。日本だと不動産会社が提示してくる書類にミスがあるなど考えられませんが、アメリカなどの先進国を含めて不備があるのは普通です。そのため、内容が問題ないかチェックしなければいけませんが、これを素人が行うのは現実的ではありません。

これらの意味もあり、国内で「現地オフィスをもつ日本の不動産会社」を頼るのが一般的になるわけですが、そうした仲介会社を通して物件の売却先を見つけてもらうわけです。

海外不動産を売りたいと思っても、自ら売り先を見つけ、そのたびに現地の言葉で交渉したり、現地へフライトしたりするのは現実的ではありません。そこで、現地につながりをもつ日本の不動産会社へ丸投げするのです。

ドル資産を見据えた出口戦略も重要

なお海外不動産投資では、よほどの理由がない限りほぼアメリカ不動産への投資になります。稀に東南アジアの不動産へ投資する人もいますが、インカムゲイン(賃料収入)での利益は望めず、キャピタルゲイン(物件価格の上昇)による利益だけを狙う投資であり、圧倒的にリスクが高いからです。

それに対してアメリカ不動産では、インカムゲイン(賃料収入)による利益をきちんと得られます。これに節税効果が加わり、さらにはキャピタルゲインも狙えます。そのため投資先は米国不動産が基本になるというわけです。

・ドル資産を考えた出口

このとき、アメリカ不動産なので米ドルにてお金が入ってくるようになります。賃料収入も物件売却時も米ドルを手にするわけですが、こうしたお金の出口戦略も重要です。

海外不動産でリスクとなるものの一つに為替があります。米ドルと円で考えても、過去10年では以下のように変動があります。

このとき海外不動産投資は余裕資金1,000万円以上ある富裕層しか無理なわけですが、多くの人は手にした米ドルを日本円に交換するのではなく、米ドルのまま保有するケースが多いです。要はお金の出口戦略として、米ドル資産をもつというわけです。

このとき手にした米ドルは他の投資商品へ回してもいいですし、そのまま現金で保有し続けても問題ありません。そうして米ドルのまま持っておけば、実質的に為替リスクは存在しないことになります。

東南アジアの不動産では、現地通貨をそのまま保有する人などいません。必ず日本円に交換することになります。ただアメリカ不動産投資の場合、通貨の出口戦略として「米ドル資産をもつ」ことも視野に入れると非常に優れるといえます。

参考までに私についても、以下のように米ドルにて資産を保有しています。

アメリカ不動産へ投資することで、米ドル資産を残すようにしているわけです。私の米国不動産投資での「通貨に関する出口戦略」は、米ドルのまま保有し、資産において通貨を分散させることに決めています。

海外不動産の売却は出口戦略が非常に重要

不動産投資というと、どうしても利回りに目が行きがちです。ただ海外不動産投資の場合、どこかの時点でほぼ確実に物件を売却することになります。そのため利回りだけでなく、同時に売却のタイミング(出口戦略)についても考えなければいけません。

日本とは異なり、不動産価格が大きく値上がりするのが海外不動産です。そこで、売却益や節税の観点から、どのように売却するのか事前に考えておくのです。このとき、以下のポイントを理解しましょう。

  • 5年超の保有で売るのが適切
  • 節税を考えるなら7~10年の保有で売却
  • 売りやすい物件へ投資する
  • 米ドルで資金を得たなら、日本円に換えるかどうかを考える

これらを考慮したうえで、実際に不動産を売却するときは「現地オフィスを有する日本の不動産会社」を利用するようにしましょう。

なお売却手続については、利用する不動産会社に依頼すればいいですが、売るタイミングや出口戦略自体はあなたが考えなければいけません。そこで、ここまで述べたことを理解したうえで出口を考え、物件を売却することでキャピタルゲインを得るようにしましょう。

米国不動産投資で個人・法人が節税し、利回り7%以上の物件で資産運用する

最もリスクが低く、条件が良い海外不動産投資の国がアメリカです。「海外不動産投資=アメリカ不動産」というほどであり、これには人口増加や空室率の低さ、物件価格の値上がりなどが理由として挙げられます。

東南アジアの不動産だとインカムゲイン(賃料収入)の利益を得られず、節税効果もありません。一方で米国不動産では「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」「節税効果」の3つを得られるため、圧倒的に優れた利回りを実現できるようになります。

ただアメリカ不動産の中でも富裕層向けでリスクが低く、さらには将来の値上がりを期待できる物件へ投資しなければいけません。

これを実現するため、アメリカ現地にオフィスをもつ優良の大手エージェント会社を紹介します。「すべて日本語で完結できる」「融資を引き出せる」「物件購入後の管理や売却までサポートしてくれる」という会社であり、米国不動産投資での問題点をすべて解決できるようになっています。

なおリスクの高い物件は取り扱っていない会社であり、インカムゲイン(賃料収入)での利回りは7~8%ほどになります。ただ、こうした利回りにて米国不動産へ投資し、数年後の物件価格の値上がりを期待しつつ、さらには個人・法人による節税まで可能になっています。

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