海外不動産投資を考えるとき、「REIT(リート)としてETFへ投資するのはどうなのか?」と考える人は多いです。株式投資と同じように、リートへ投資すれば問題なく不動産に対してお金を投じ、資産運用できるようになるからです。
REITは「Real Estate Investment Trust」のことであり、Real Estateは日本語で不動産を意味します。そのため、現物不動産ではなくリートへ投資すればいいのではと思うのです。
これについては、リートと現物不動産を比較したときに大きな違いがあります。投資手法に良い悪いはないですが、それぞれの違いを見極めたうえで正しく資産運用しなければいけません。
そこで、どのように現物不動産やREITの扱いを考えて海外不動産投資を行えばいいのか解説していきます。
もくじ
海外不動産投資には現物不動産とREITがある
これから海外不動産投資を行うに当たり、最も一般的な手法として「現物の不動産を購入する」ことがあげられます。
海外不動産投資といえば、アメリカ不動産へ投資するのが王道です。アメリカでは木造の一戸建て住宅が主流ですが、以下のような米国不動産を実際に購入し、そこに人を住まわすことで賃料収入を得るのです。
ただ、こうした不動産を購入するにはある程度の資金力が必要です。そうしたとき、少ない金額から手軽に資産運用できる方法としてREIT(リート)があります。
株式投資でも、一つの企業の株を購入するのではなく、「いろんな企業の株式を寄せ集めたもの」を購入できるようになっています。これが株ではなく、不動産になったものがREITです。リートは投資信託・ETFとして1万円などでも投資できるようになっています。
現物の不動産ではインカムゲインとして賃料収入を得られますが、これはREITでも同様です。REITでも分配金を支払われるためインカムゲインを得ることができ、現物不動産への投資と似ているといえます。
投資法人へのJ-REIT投資はかなりレベルの高い資産運用
そうしたとき、不動産へのリート投資で日本人の多くが考えるものとしてJ-REITがあります。日本の不動産へ投資するのがJ-REITだと考えましょう。REIT(リート)はアメリカで発達した投資手法ですが、日本でのリートとは少し異なるため、JapanのJを取ってJ-REITといわれています。
ただ通常の株式投資とは異なり、J-REITは圧倒的に資産運用が難しいことで知られています。例えば、以下は「J-REIT(日本の不動産)へまんべんなく投資する投資信託」の様子です。
出典:大和J-REITオープン
赤線を見ると、当初の価格設定よりも値上がりしており、非常に優れているように思えます。ただ、赤線は「分配金を再投資に回したとき」の様子になります。つまりインカムゲインとして得たお金を生活費などプライベート資金に利用するのではなく、そのまま再投資に回したら赤線のようなグラフになるというわけです。
一方で分配金を再投資せず、生活費などとして利用した場合のグラフは青線のような経過をたどります。これを見てわかる通り、長期的に見て価格が下がり続けていることが分かります。
「J-REITへ投資するのは、圧倒的に難易度が高い」という理由はここにあります。投資して分配金を得られても、不動産価格の下落によって総合的にはあまり得をしていないというわけです。
米国REIT・ETFならインカムゲインとキャピタルゲインを得られる
それではJ-REITとして日本ではなく、米国REIT・ETFへ投資する場合はどうなのでしょうか。この場合については、日本とは違ってインカムゲイン(毎月の分配金)とキャピタルゲイン(不動産の値上がり)の両方を期待できます。
アメリカの不動産価格は長期的にずっと値上がりを続けています。世界トップの経済圏であり、人口が伸び続けているためです。以下が全米不動産の価格の推移です。
出典:FRED:All-Transactions House Price Index for the United States
それでは、実際にアメリカのREIT・ETFへ投資したときはどのような推移になるのでしょうか。
これについて、最も有名な米国不動産ETFの一つである「iシェアーズ 米国リート・不動産株ETF(IYR)」のチャート変動が以下になります。
再投資したときの価格変動ではなく、純粋に基準価格のチャート推移になります。過去と比べても値上がりを続けており、日本のリート(J-REIT)に投資するよりも圧倒的に優れていることが分かります。
「iシェアーズ 米国リート・不動産株ETF(IYR)については、分配利回りは年利で約4%になります。こうした投資が可能になるのが米国REIT・ETFです。
インカムゲインに加え、節税が可能なのが魅力
このように考えると、アメリカ不動産REIT・ETFに投資するのは非常に魅力のように感じます。それでも、なぜ多くの人が現物不動産へ投資するのかというと、そのほうが高額なお金を残すことができるからです。
まず利回りという意味では、米国リートよりも現物不動産のほうが高くなります。現物の分だけ多くのリスクを負っているため、これについては当然だといえます。
米国リートへの投資だと、配当が年間4%ほどとはいっても、アメリカで課税されて実際の分配金は3%未満に減少します。「米国での源泉徴収税(源泉徴収される所得税)が分配金に対して30%」であるため、こうした税金を取られると考えるようにしましょう。つまり、税金の分だけ実際の分配金は非常に少なくなります。
・米国不動産では節税効果があり、利回りが高くなる
一方で現物のアメリカ不動産へ投資する場合、利回りは圧倒的に高くなります。きちんと物件を見極めれば、米国不動産なら実質利回り4%ほどになります。
ここまでは米国REIT・ETFと条件はそこまで変わりません。ただ現物不動産の場合、現地にて確定申告できます。確定申告する場合、源泉徴収税30%ではなく、「ネットレント課税方式」を選択できます。これは、10~37%の累進税率となります。
米国不動産のみを保有する場合、アメリカで発生する所得は非常に少ないです。そのため、REITでの投資に比べて圧倒的に税率が低くなります。
それだけではありません。日本国内で納める税金も抑えられます。アメリカ不動産へ投資した場合だと、ザックリ考えると「5,000万円の米国不動産へ投資すれば、投資後の最初の約10年は毎年300万円の減価償却費を計上できる」と考えましょう。
※厳密には違いますが、簡素化するためにこのように考えます。
減価償却費の部分については、その分だけ日本で納める税金を少なくできます。例えば課税所得1,000万円の人なら、所得税と住民税で税率43%です。そのため年間300万円を減価償却できるとなると、「300万円 × 43%(税率) = 年間129万円」の税金を約10年間もの間、減少させることができます。
こうした日本で納める税効果を加味すると、実際の利回りはさらに向上するようになります。もちろん、不動産を売却したときのキャピタルゲインも得られるというわけです。
米国REITへ投資したとしても、こうした節税効果は生まれません。現物不動産だからこそ可能な手法になります。
デメリットは分散投資が難しいこと
そのため利回りは同じだとしても、実際に手元に残るお金を考えたとき、税制の違いによって現物不動産へ投資したほうが、圧倒的にお金が残るようになります。
そうしたとき、現物不動産へ投資するデメリットの一つは分散投資が難しい点になります。アメリカREIT・ETFへ投資する場合だと、一つのETFへお金を投じることで、自動的に無数の不動産へ投資することになります。そのため、米国REITへ投資するだけで分散投資が完了します。
一方で現物での不動産投資の場合は当然ではありますが、分散投資することができません。一つの不動産価格が高いため、少数の不動産を保有するしか方法がありません。これについては、日本で不動産投資を実践するときと考え方は同じです。
海外不動産に特徴的なことではありませんが、リートに比べると分散投資の面ではどうしても不利になるのです。
資産運用では優れるがお金の流動性は悪い
またお金の流動性という意味でも、現物不動産は不利になりやすいです。すぐに売ることができないからです。
不動産投資をしている方なら全員が知っていると思いますが、短期で不動産を売却するよりも、長期保有した後に売却したほうが税率を低くできます。長期譲渡所得の概念というのは、日本国内だけでなく海外不動産も同じです。
そのため、どれだけ短くても6年超を保有して売却しなければいけません。日本であれば、5年以下の所有(短期譲渡所得)だと売却益に対して約40%の課税です。一方で5年超の長期譲渡所得なら約20%の課税で済みます。そのため不動産へ投資すると、少なくとも5年超は資産がロックされることになります。
それに対して、米国REIT・ETFは証券会社を通して購入することになります。以下のようなネット証券を活用して売買するのが基本です。
証券会社での取引であるため、そこには「リートを買いたい」という人が全世界に存在します。そのため、活発に売買されることですぐに現金化できます。お金の流動性という意味では、どうしてもリートのほうが優れるようになります。
ある程度の富裕層でなければ投資は無理
また海外不動産投資をする場合、現物不動産は富裕層でなければ購入は無理です。投資用の余裕資金として1,000万円以上を保有する人でなければ、どうやっても投資できないと考えましょう。日本のように「投資資金のほぼすべてを銀行融資で補う」などはできないのです。
融資を利用するにしても、海外不動産投資ではある程度のお金を自己資金でまかなう必要があります。これが、手元に現金として1,000万円以上なければいけない理由です。
一方でリートだと、そうした縛りがありません。前述の通り、1万円などの少額なお金であっても問題なく投資できるようになります。
そこまで所得が多くない人であっても、非常に少ない金額から手軽に資産運用できる手法がリートになるのです。
判断基準は資産があるかどうか
そうしたとき、海外不動産投資では現物不動産とリートのどちらが最適なのでしょうか。これについては、「あなたに現金資産があるかどうか」「所得が多いか」で判断しましょう。
手元にお金を残すという意味では、圧倒的に現物不動産のほうが優れています。リートで利回り4%だったとしても、税金まで考慮すると、残るお金がまったく違ったものになるのです。ただ、全員が海外不動産投資を行えるわけではありません。
ここまで述べた通り、以下のようなそれなりの不動産を購入するためには、頭資金として1,000万円以上が必要です。
また、課税所得の多い人であるほど「累進課税によって日本で支払う所得税率が高い」ことになります。そのため節税効果を考えると、所得の多い人ほど海外不動産投資による節税効果が大きくなります。
そうしたとき、どれだけ少なくても年収700万円以上の人でなければ海外不動産投資をする意味がありません。こうした人だからこそ、累進課税の税率が高くなるため、海外不動産を購入する分だけ大きな節税が可能なのです。
つまりある程度の年収と資産がなければ海外不動産投資に向いていないといえます。ただ、富裕層ならREITではなく、現物の海外不動産へ投資するべきだといえます。
一方でこうした年収ではない場合、海外不動産投資での現物不動産は諦めるようにしましょう。税金は非常に高くなりますが、米国リートへ投資することで資産運用するといいです。
アジアなど新興国の海外不動産はリスクが高すぎる
ちなみに、海外不動産投資では「アメリカ以外でもいいのでは?」と考える人もいるでしょう。ただ、特別な理由がない限りはやめたほうがいいです。リスクが高すぎるからです。
新興国で不動産投資を活用する場合、あらゆるリスクが存在します。事実、アメリカや日本を含め世界的には好景気であっても、新興国の株はまったくダメなケースはよくあります。これは、不動産も同様です。
さらに、新興国通貨はリスクが非常に高いです。長期的にみたとき、通貨安になっていくケースは頻繁にあります。
例えば、不動産投資で人気の投資先にマレーシアがあります。毎年の経済成長率が高い国で知られていますが、投資時の表面利回り(実質利回りではない)は一般的に4%です。ここから不動産の管理手数料や銀行への利子支払いなどをすると、実質利回りはほぼゼロになります。
また、かつてマレーシアは不動産価格の値上がりが激しかったものの、いまでは以下のように毎年2%ほどの値上がりに落ち着いています。
出典:globalpropertyguide.com
さらに、ここから通貨安のリスクがあります。マレーシアリンギットで考えると、以下のように長期的に見ると通貨安が続いています。
もちろんこれは、現物不動産だけでなくREITにもいえます。新興国の不動産へ投資するのは圧倒的にリスクが高く、よほどのことがない限りは「海外不動産投資=アメリカ不動産」になります。
このルールを無視してアジアなど新興国の不動産へ投資してもいいですが、高確率で失敗します。そのため現物不動産にしてもリートにしても、アジアなど新興国への投資はやめておいたほうがいいです。
現物不動産とリート・ETFで投資手法を見極める
ここまで海外不動産へ投資するにしても、現物不動産とREIT(リート)・ETFのどちらへ投資するのが最適なのかについて解説してきました。
両方とも優れた投資手法であり、どちらのほうが優れているというのはありません。それぞれにメリットとデメリットがあります。J-REITへ投資するのはやめたほうがいいものの、米国の不動産なのであれば、現物不動産でもリートでも問題ありません。
どちらの投資手法が優れるのかについては、あなたの経済的な立ち位置によって変わります。現金資産が1,000万円以上あり、年収700万円以上なのであれば節税メリットから現物不動産がいいです。ただ、そうでない人なら現物不動産への投資が無理ですし、節税メリットを得られないためリートへ投資しましょう。
人によって投資対象は変わってきます。海外不動産投資の中でも現物不動産とリートの違いを理解したうえで、あなたに合った資産運用を行うようにしましょう。
最もリスクが低く、条件が良い海外不動産投資の国がアメリカです。「海外不動産投資=アメリカ不動産」というほどであり、これには人口増加や空室率の低さ、物件価格の値上がりなどが理由として挙げられます。
東南アジアの不動産だとインカムゲイン(賃料収入)の利益を得られず、節税効果もありません。一方で米国不動産では「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」「節税効果」の3つを得られるため、圧倒的に優れた利回りを実現できるようになります。
ただアメリカ不動産の中でも富裕層向けでリスクが低く、さらには将来の値上がりを期待できる物件へ投資しなければいけません。
これを実現するため、アメリカ現地にオフィスをもつ優良の大手エージェント会社を紹介します。「すべて日本語で完結できる」「融資を引き出せる」「物件購入後の管理や売却までサポートしてくれる」という会社であり、米国不動産投資での問題点をすべて解決できるようになっています。
なおリスクの高い物件は取り扱っていない会社であり、インカムゲイン(賃料収入)での利回りは7~8%ほどになります。ただ、こうした利回りにて米国不動産へ投資し、数年後の物件価格の値上がりを期待しつつ、さらには個人・法人による節税まで可能になっています。