アメリカ不動産投資は海外不動産投資の中でも、王道のやり方として知られています。米ドル資産を構築でき、不動産価格の値上がりによるキャピタルゲイン(売却益)を得られ、さらには節税によって無駄な税金を削減できます。

そのため、多くの人が米国不動産へ投資することになりますが、このとき投資手法の一つに「アメリカ現地で合同会社(LLC)を設立し、米国にて投資をする」ことがあります。

ただ、日本に住んでいる人がアメリカでLLCを設立するのはメリットがまったくなく、むしろデメリットの側面しかありません。アメリカに住んでいる人ならいいですが、アメリカの非居住者は利用しないように注意する必要があります。

それでは、なぜLLCの利用による不動産投資が意味ないのでしょうか。ここではLLCの特徴を解説し、どのように米国不動産投資を実践すればいいのか確認していきます。

アメリカでLLC(合同会社)を作る海外不動産投資は意味ない

投資であるため、その効果を最大化させてこそ意味があるといえます。ただアメリカ現地にてLLC(合同会社)を立ち上げて不動産経営をすると、その効果が弱まってしまいます。

むしろ大幅に損をすることになりますが、これには以下のような理由があります。

  • 個人や法人での節税メリットを受けられない
  • アメリカでは元々が所得税ゼロになりやすい
  • 米国企業は日本の金融機関から借入できない
  • 会社組織なので維持費が必要になる

それぞれがどのようになっているのかについて、詳しく解説していきます。

個人や法人での節税メリットを受けられない

アメリカ不動産へ投資するとき、一番のメリットとして節税可能なことが挙げられます。個人でも法人でも、節税によって無駄な税金を大幅に減らせるのです。

米国不動産の場合、以下のような中古の木造住宅へ投資するのが基本になります。

このとき法人だと、築22年以上の物件へ投資することで、4年で減価償却できるようになります。個人だと同じ方法の採用は無理ですが、それでも約10年をかけて物件価値の大部分を減価償却できるようになっています。

日本だと土地の金額が高額であり、思ったほど節税できません。土地は減価償却できないからです。ただ米国不動産の場合、国土が広く土地代が非常に安いため、相対的に建物価値が高く高額な減価償却費を計上できるというわけです。

ただ、これは日本に住んでいる個人や法人がアメリカ不動産へ投資したときに限られます。アメリカ現地の法人にて投資した場合、当然ですが日本での減価償却は関係なくなります。そのため節税になりません。

日本で個人や法人にて高額な税金を納めている人が米国不動産へ投資するからこそ、高い減価償却費を計上でき、税金を減らせるわけです。アメリカ現地のLLCが不動産投資をしたとしても、アメリカにて減価償却はできますが、日本の税制とは関係がなくなり、結果として節税効果を得られなくなります。

アメリカでは現地での所得税がゼロになりやすい

ただ中には、「アメリカにてLLCを設立することで、米国にて支払う税金(個人の所得税)を少なくできるのでは?」と考える人がいます。しかし、日本に住んでいる人がアメリカ不動産へ投資する場合、所得税などの税金は元々がゼロ(またはほとんど発生しない)になります。

日本居住者なのであれば、アメリカで給与所得は発生していません。純粋に不動産収入のみとなります。そうしたとき、アメリカ不動産投資をするときは以下の2つの経費が発生します。

  • 米国での減価償却:耐用年数27.5年
  • 銀行への利子払い

確かに賃料収入は発生するものの、こうした減価償却や利子払いの経費を差し引き、さらにはその他の経費まで考慮するとアメリカでの所得税がゼロになるのが一般的です。もちろん日本の法人として投資するにしても、現地での納税は微々たるものです。

もちろん固定資産税は支払う必要はあります。ただアメリカでの所得税など「賃料収入に対する税金」をほとんど課せられない以上、LLCを設立する意味がないといえます。

LLCの設立有無に関わらず、税務上での利益は出ていません。

もちろん減価償却費は実際にお金が出て行っているわけではないため、賃料収入としては大きなプラスになります。ただ、会計上は減価償却費の分だけ利益が消え、所得税の支払いがなくなるのです。

米国企業は日本の金融機関から借入できない

さらに問題なのは、LLCだと米国の企業になるため、日本の金融機関から借入できなくなってしまいます。融資を受けるにしても、現地の金融機関に頼らなければいけません。

ただアメリカで投資用のローンを組む場合、金利は高く5%ほどになります。一方で日本だと、アメリカ不動産投資でローンを組むにしても金利3%以下です。

日本は世界的に超低金利で知られていますが、投資をする立場だと低金利は非常に有利だといえます。こうした低金利条件をうまく利用できないため、アメリカでLLC(合同会社)を作ると不利な条件で投資することになり、借入資金の年利が高い分だけ資産運用による利回りは大幅に下落してしまいます。

節税できないだけでなく、資金借り入れによる費用も多くなってしまうのがアメリカでのLLC投資です。

合同会社という会社組織なので維持費が必要になる

さらに費用という面でいえば、法人設立によって維持費がかかるようになります。日本では、赤字でも支払わなければいけない税金(法人住民税の均等割)があります。アメリカでもこうした税金としてFranchise Taxがあり、例えばカルフォルニア州だと年間800ドル(約8万円)です。

以下はカルフォルニア州の公式サイトの一部であり、ここには「すべてのLLCは一年ごとに800ドルの税金がある」と記されています。

ちなみに州によって維持費は異なりますが、アメリカ不動産投資の場合は「登記している州へ税金を支払う」のではなく、「営業をしている場所(不動産を保有している州)で税金を支払う」ことになります。そのため異なる州で不動産投資している場合、それぞれの州で二重、三重にも課税されます。

これに加え、登記場所として貸事務所を契約しなければいけません。日本でいうバーチャルオフィスに該当しますが、どれだけ格安でも年間250ドル(約2万5,000円)ほどの費用になります。

日本にて個人や法人で投資する場合、こうした維持費は不要です。ただアメリカでLLCを設立すると、これら無駄な費用が発生します。これも、アメリカでLLCを作るべきではない理由となります。

米国の法人に米ドルを貯めても利用できない

しかも、「そもそもアメリカに現地法人を作り、合同会社に米ドルを貯めたところで、その資金を利用できない」という最大の問題点があります。

法人のお金というのは、好きに利用できるわけではありません。ビジネスをするのが会社であり、ビジネス目的の支出でなければ自由にお金を使えません。

これが日本の会社であれば、「友人との飲み会を経費に落とす」「旅行時は出張したことにして損金計上する」などにより、プライベート費用を経費で利用できます。ただアメリカの会社だと、こうしたことができません。

アメリカに会社を作っても意味がないのは、自由にお金を利用できないことにあります。

・法人内のお金を役員報酬(給料)で出すと課税される

またアメリカの会社に貯まったお金を役員報酬として吐き出すとき、所得税を課せられるようになります。

個人のまま投資する場合、前述の通り減価償却費や利子払いの経費を計上できるため、一般的に所得税はゼロです。ただ米国LLCで投資する場合、減価償却費や利子払いを経費にできるのは実際に投資をしている米国LLCであり、あなた個人が減価償却費を計上することはできません。

そのため、LLCの賃料収入を役員報酬としてあなたに出すにしても、そこへ所得税を課せられるようになり、それなりに税金を支払わなければいけません。本来なら米国での所得税ゼロなのに、無駄にアメリカにも所得税を支払うことになるわけです。

米国LLCの設立にメリットはなく、デメリットしかない

ここまでの内容から、現地LLCの設立によって節税になるどころか、むしろ支払うべき税金が増えてしまうことを理解しましょう。

  • 日本で節税できなくなる
  • 維持に必要な税金・コストが増える
  • 法人のお金を自由に使えない
  • 役員報酬の支払いで所得税が発生する

こうした状況に陥るため、アメリカにてLLCを設立することはデメリットばかりであり、メリットが一つも存在しません。

ちなみに中には、不動産業者や税理士などから「アメリカ不動産投資では現地でLLCを作るといい」と助言されることがあります。ただ、確実に詐欺なのでやめましょう。これは、ここまでの内容を理解すれば容易に想像できるはずです。

不動産投資では詐欺業者もたくさんいます。そうしたとき、実際のところはどうなのかを理解する必要があり、内情や税制がどうなっているのか確認しなければいけません。

アメリカ現地に住んでいて収益が多いなら意味ある

なお、このように「米国LLCの設立は、まったくメリットがない」と解説してきましたが、例外的にアメリカ現地に住んでおり、不動産収益が非常に多い場合は現地にてLLCを設立するメリットが出てきます。

日本でもアメリカでも、個人に課せられる所得税よりも法人税のほうが低いです。そのため個人ではなく、法人に利益を作らせることで支払う税金を少なくできます。

また法人であれば節税法が非常にたくさんあり、あらゆる節税法を活用できるようになります。日本に住んでいる人が米国LLCを作っても、アメリカで飲み食いしたり旅行したりすることはほぼなく、アメリカ法人の設立で節税することはできません。ただ現地に住んでいるのであれば、問題なくそうした節税法が活用できるというわけです。

日本に住んでいる人が米国LLCを作るメリットはいずれにしてもゼロです。ただ、アメリカに住んでいて不動産投資の収益が大きい場合、例外的にLLCを設立するメリットが出てくるようになります。

日本の居住者は日本にて個人・法人で投資するべき

日本人である以上、当然ですが日本国内に住んでいる人が多いです。そうした人がアメリカ不動産投資を開始する意義は大きく、節税しながら資産運用できるようになります。また米国不動産は価格が下がらず、むしろ値上がりすることが知られているのでキャピタルゲイン(売却益)を得られます。

このときは現地で支払う所得税などはゼロ(または非常に少ない)であり、支払う税金としては固定資産税くらいしかありません。

しかし日本に住んでいる人が米国LLCを設立して投資する場合、「日本で節税できない」「維持費が必要」「個人での所得税支払いが発生する」など悪いことしか起こりません。アメリカの非居住者というのは、米国LLCを設立せずに個人または法人でアメリカ不動産投資を実践するのが正しいやり方です。

海外不動産投資では正しい投資法があります。そうしたとき米国LLC設立は無視して、必ず「あなた個人」または「日本国内の法人」にて投資するようにしましょう。

米国不動産投資で個人・法人が節税し、利回り7%以上の物件で資産運用する

最もリスクが低く、条件が良い海外不動産投資の国がアメリカです。「海外不動産投資=アメリカ不動産」というほどであり、これには人口増加や空室率の低さ、物件価格の値上がりなどが理由として挙げられます。

東南アジアの不動産だとインカムゲイン(賃料収入)の利益を得られず、節税効果もありません。一方で米国不動産では「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」「節税効果」の3つを得られるため、圧倒的に優れた利回りを実現できるようになります。

ただアメリカ不動産の中でも富裕層向けでリスクが低く、さらには将来の値上がりを期待できる物件へ投資しなければいけません。

これを実現するため、アメリカ現地にオフィスをもつ優良の大手エージェント会社を紹介します。「すべて日本語で完結できる」「融資を引き出せる」「物件購入後の管理や売却までサポートしてくれる」という会社であり、米国不動産投資での問題点をすべて解決できるようになっています。

なおリスクの高い物件は取り扱っていない会社であり、インカムゲイン(賃料収入)での利回りは7~8%ほどになります。ただ、こうした利回りにて米国不動産へ投資し、数年後の物件価格の値上がりを期待しつつ、さらには個人・法人による節税まで可能になっています。

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