アメリカにて海外不動産投資をしたい場合、現地の税制について理解しなければいけません。不動産投資を開始する以上は必ず税金の支払いが必要になり、こうした税金が米国不動産投資での利回りに直結するようになります。

また米国での海外不動産投資だと、アメリカと日本の両方の国で課税されるようになります。もちろん課税されるとはいっても、節税のためにアメリカ不動産を購入する人が大多数であり、日本側の税金は減額・還付されるようになります。ただ、同時にアメリカでの税金支払を考えておかなければいけません。

このとき日本だと、税金については調べればすぐに情報が出てきますが、米国税務だと情報が少ないので内容を理解できていない人が多くなります。税金について知りたくても、英語で調べなければ出てこないことが多いのが現状です。

そこで米国不動産投資をするとき、どのような税制になっているのかを、ここでは解説していくようにします。

4つで課せられるアメリカ不動産投資の税金

米国不動産投資をする場合、課税される段階としては4つだけになります。以下の4つのポイントについて理解するようにしましょう。

  • 物件保有時(米国で納税):基本は固定資産税のみ
  • 物件保有時(日本で納税):むしろ税金が還付される
  • 物件売却時(米国で納税):キャピタルゲイン税・約20%
  • 物件売却時(日本で納税):キャピタルゲイン税・約20%

「物件保有時に不動産取得税の支払いが必要になるのでは?」と考える人もいますが、アメリカでは不動産取得税が存在しません。つまり、物件購入時は特に税金を支払う必要がありません。日本とは異なり、アメリカでは不動産購入では税金が非常に優遇されているといえます。

こうした理由のため、税制を考える場合は「物件の保有時」「物件の売却時」の2つだけを考えれば問題ありません。

物件保有時の固定資産税は州で異なる

不動産を保有する場合、すべての人で必要になるのが固定資産税です。日本だと固定資産税は年間で不動産価値の1.7%となります。そのため高額な税金になりますが、同じように米国不動産を保有すると、アメリカ国内で固定資産税が発生すると考えましょう。

それでは、どれくらいの固定資産税になるのでしょうか。これについては毎年違いますし、州によっても大幅に固定資産税の税率が変わるようになります。アメリカは州によって税制が異なりますが、どのエリアで海外不動産投資するのかによって固定資産税がまったく違ってくるのです。

具体的には、以下のようになります。

出典:TAX Foundation

このように固定資産税の税率が0.4%ほどのケースがあれば、年間で税率2%ほどの固定資産税になることもあります。

また注意しなければいけないのは、固定資産税がいろいろ分かれているケースです。例えばハワイだと、上図では「固定資産税率が0.28%」と非常に安いように思えてしまいます。ただこれは居住用(実際に住むとき)の税率であり、不動産投資の場合はハワイだと固定資産税率が1%以上になります。

州によって税制が異なり、日本のように一律で固定資産税率が決まっているわけではありません。そのため、これについては投資エリアの固定資産税率がどのようになっているのか詳しく調べるといいです。

耐用年数27.5年や利子の経費を考え、米国では所得税が基本ゼロ

物件保有時では、こうした固定資産税がアメリカでの納税では最も重要になります。基本的に支払いが固定資産税だけになるケースが多いからです。

アメリカで不動産投資を実践する場合、もちろん不動産収入以外は米国内で発生していないと思います。日本に住んでいる人にだと、アメリカ国内で働いていないからです。このとき、不動産投資での減価償却や利子支払いでの経費を考えると、米国での所得税はゼロになります。

例えば、5,000万円の米国不動産へ投資することを考えます。このとき、アメリカは国土が広く土地代が非常に安いため、一般的には「土地:建物= 2:8」という価格割合になります。そのため、以下のように分けられます。

  • 土地:1,000万円
  • 建物:4,000万円

土地は減価償却できませんが、建物は減価償却の対象になります。アメリカだと新築や中古に関わらず、木造住宅の居住用不動産は耐用年数が27.5年です。そのため、以下の金額について毎年減価償却できるようになっています。

  • 4,000万円(建物価値) ÷ 27.5年(耐用年数) = 年間約145万円

また米国不動産の場合、銀行融資によって7割ほどローンを組めます。日本の金融機関を利用する場合、金利3%ほどのため、毎年のローン支払いは以下のようになります。

  • 5,000万円(不動産の値段) × 70%(ローン割合) × 3%(金利) = 105万円

つまり毎年の経費としては、「145万円(減価償却費) + 105万円(利子) = 245万円」になります。ここに固定資産税や管理費などの諸経費(年間80万円)も加わります。

正しくアメリカ不動産投資をすれば、表面利回り7%は問題なく可能なので、表面利回り7%だと賃料収入は合計で年間350万円ほどになります。ただ、ここから先ほどの減価償却費や固定資産税、その他の経費などを計上していくと、利益はなくなり所得税はゼロになります。

もちろんすべて自己資金で投資する場合、利子支払いの経費がないため、所得税が発生するようになります。ただ、それでも所得税率は非常に低いといえます。

なお減価償却費については、経費にはなるものの固定資産税や支払利子のように実際に賃料収入から消えているわけではありません。そのためある程度のお金は手元に残るが、所得税はほぼゼロというわけです。

非居住者でもアメリカ現地で確定申告すると税金が安い

なお、アメリカ国内で所得税を非常に低く抑えられるのは、現地で確定申告をしているからになります。つまり現地の税理士へ依頼し、毎年の確定申告をするのです。

確定申告をしない場合、アメリカ非居住者だと源泉徴収税として賃料の30%が税金になります。つまり、非常に高額な税金支払いが発生します。

投資の中でも、「株式市場に存在する不動産へ投資する手法:REIT(リート)」だと、非居住者は収益のうち30%を自動的に税金で取られる仕組みになっています。これは、アメリカで源泉徴収されるからなのです。

ただ株式としての不動産投資ではなく、現物不動産への投資であるため、確定申告によって「実際に出た利益に対してのみ所得税を支払えばいい」となります。そのためアメリカ非居住者であっても、きちんと確定申告さえすれば米国内での所得税はほぼゼロになると考えましょう。

日本ではマイナスとなり、税金が還付される

そうしたとき、次に考えるのは日本での税務です。アメリカ不動産投資は節税で活用する人が大多数であり、納税というよりも日本ではむしろ税金還付となります。つまり、払いすぎた税金が戻ってくるようになります。

このとき、考え方は先ほどの米国不動産と同じです。儲けた金額から、減価償却費や経費を差し引くようになります。

日本の税制だと、海外の木造住宅は22年の減価償却期間です。ただ木造住宅について「外付けのエアコン:耐用年数7年」「給水管:耐用年数15年」などのように細かく分けていくと、より素早い減価償却になります。

そうしたとき、先ほどと同じように5,000万円のアメリカ不動産へ投資すると、日本の場合はザックリと「10年に渡って毎年300万円ほどを減価償却費として計上できる」ようになります。

このケースだと、先ほどと同じ条件だと以下のようになります。

  • 賃料収入:年350万円
  • 減価償却費:年300万円
  • その他経費(利子、固定資産税、管理費):年185万円

この場合、賃料収入から減価償却費やその他の経費を差し引くと「-135万円」となります。このときはマイナス分だけ課税所得を減らすことができ、仮に「所得税・住民税で税率50%の人」であれば、67.5万円もの無駄な税金を減らせます。

前述の通り、減価償却費は実際にお金が出ていくわけではないので「賃料収入から固定資産税や利子、管理料などを引いた残り」は手元に残ります。ただ、高額な減価償却費を計上する分だけ税金が還付され、節税できるというわけです。

売却時はキャピタルゲイン税を米国で支払う

物件保有時にどれくらいの税金を支払うのかについて、アメリカ不動産ではこのように固定資産税くらいであり、それ以外は税金がほぼない(むしろ日本では税金還付の分だけ節税になる)ようになります。それでは、売却時についてはどうなのでしょうか。もちろん売却益が出ている場合、米国にて納税しなければいけません。

アメリカ不動産投資の特徴でもありますが、「オフィス不動産へ投資する」「アパートを購入する」などダメな投資は別にして、不動産価格は常に上昇しているので誰でもキャピタルゲイン(不動産売却による利益)を得られます。

以下は実際のアメリカ不動産価格の推移です。

日本だと不動産価格は下落するしかないですが、アメリカではキャピタルゲインを得られるのです。そのとき、売却益が出たら税金を支払わなければいけません。このとき先ほどと同じ5,000万円の家を売却し、以下のような状況だったとします。

  • 購入時の価格:5,000万円
  • 売却時の価格:7,000万円
  • 減価償却費の合計:約1,450万円

このとき売却益は「7,000万円(売却時の価格) - 5,000万円(購入時の価格) = 2,000万円」ではありません。それまで減価償却による所得税ゼロの恩恵を受けているため、減価償却費を加える必要があります。

つまり、売却益は以下のようになります。

  • 7,000万円(売却時の価格) - 5,000万円(購入時の価格) + 1,450万円(減価償却費の合計) = 3,450万円

アメリカではキャピタルゲイン税の税率が最大20%(連邦税)となります。また州によっても税率が変わってくるようになりますが、ザックリと「売却益の20%がキャピタルゲイン税になる」と考えればいいです。

・確定申告後にFIRPTA(連邦源泉税)を取り戻す

ちなみにアメリカでの不動産売却では、非居住者は源泉徴収税として「不動産売却金額の15%を税金として取られる」ようになります。譲渡益ではなく、売却額の15%であることに注意が必要です。これをFIRPTA(連邦源泉税)といいますが、通常はさらに州税が加わります。

ただ、確定申告することで「正しく計算したキャピタルゲイン税を申告し、あとで払いすぎた税金(源泉徴収税)が還付される」ようになります。そのため心配する必要はありませんが、アメリカ非居住者は最初に高額な源泉徴収税を取られることを理解しましょう。

これは非居住者から確実に税金を取るためのものなので、アメリカ非居住者は全員が従わなければいけません。

日本で売却益のキャピタルゲイン税20%を支払う

なお、こうしたアメリカにて源泉徴収税を支払った後、日本でもキャピタルゲイン税を支払うことになります。

米国では前述の通り、居住用不動産は耐用年数27.5年です。ただ日本だとアメリカよりも耐用年数が短いですし、「製品ごとに耐用年数を細かく分ける」ことによって早めに減価償却できるように調節するのが基本です。そのほうが節税できるからです。

節税のために減価償却費を高額計上しているため、その分だけ売却益は大きくなります。先ほどと同じ条件であれば、日本で「300万円 × 10年 = 3,000万円」を過去に減価償却している場合、以下のようになります。

  • 購入時の価格:5,000万円
  • 売却時の価格:7,000万円
  • 減価償却費の合計:3,000万円

この場合、売却益は5,000万円です。

  • 7,000万円(売却時の価格) - 5,000万円(購入時の価格) + 3,000万円(減価償却費の合計) = 5,000万円

アメリカの税制に比べて、減価償却費の計上額が大きい分だけ売却益も大きくなります。また日本の場合、5年超を保有して不動産を売却した場合は税率20%のため、こうしたキャピタルゲイン税を支払うことになります。

なお「減価償却費を計上した分だけキャピタルゲイン税を支払う」とはいっても、日本の「所得税+住民税」は非常に高額であり、高額納税者では半分が税金です。一方で日本のキャピタルゲイン税は一律で20%のため、差額の税率分だけ節税できるというわけです。

外国税額控除し、税金は差額のみを支払う

なおキャピタルゲイン税については、アメリカと日本の両方で納税することになるため、そのままの状態だと二重課税となります。そこで二重課税をなくすため、外国税額控除を利用します。要は、「アメリカで既に支払った税金については、控除しても問題ない」という制度になります。

例えばキャピタルゲイン税を計算したとき、以下のような状況だったとします。

  • アメリカの納税額:690万円
  • 日本の納税額:1,000万円

この場合、外国税額控除によって差額の310万円を日本で納税すれば問題ありません。海外不動産投資で二重課税を心配する人は多いですが、外国税額控除によってそこまで心配する必要はないと考えましょう。

米国不動産での投資で税制への理解は重要

どれだけの税金支払いが発生するのかを理解するのは、利回りに直結してくるので非常に重要です。特に海外不動産投資では2ヵ国での税制を考えなければいけないため、より内容は複雑になります。

そうした中でも、アメリカ不動産投資は節税で広く活用されるため、物件保有時だと確定申告することで、米国内での所得税はほぼ発生しません。また日本については、税金還付によってむしろお金が戻ってくるようになります。

また売却時は不動産価格の値上がりによってキャピタルゲイン税を支払わなければならず、このときはアメリカと日本の両方で納税が発生します。ただ外国税額控除があり、二重課税になることはありません。

どうしても複雑になりがちなアメリカ不動産投資での税務ですが、このように税制を考えなければいけません。投資前からそれぞれの税務を理解し、税金をどう取り扱えばいいのか学んでおくようにしましょう。

米国不動産投資で個人・法人が節税し、利回り7%以上の物件で資産運用する

最もリスクが低く、条件が良い海外不動産投資の国がアメリカです。「海外不動産投資=アメリカ不動産」というほどであり、これには人口増加や空室率の低さ、物件価格の値上がりなどが理由として挙げられます。

東南アジアの不動産だとインカムゲイン(賃料収入)の利益を得られず、節税効果もありません。一方で米国不動産では「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」「節税効果」の3つを得られるため、圧倒的に優れた利回りを実現できるようになります。

ただアメリカ不動産の中でも富裕層向けでリスクが低く、さらには将来の値上がりを期待できる物件へ投資しなければいけません。

これを実現するため、アメリカ現地にオフィスをもつ優良の大手エージェント会社を紹介します。「すべて日本語で完結できる」「融資を引き出せる」「物件購入後の管理や売却までサポートしてくれる」という会社であり、米国不動産投資での問題点をすべて解決できるようになっています。

なおリスクの高い物件は取り扱っていない会社であり、インカムゲイン(賃料収入)での利回りは7~8%ほどになります。ただ、こうした利回りにて米国不動産へ投資し、数年後の物件価格の値上がりを期待しつつ、さらには個人・法人による節税まで可能になっています。

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