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一人社長の会社であれば何も問題ないですが、従業員を雇うとなると経費精算が非常に面倒です。社員が増えるに伴い、経理担当者の仕事が増えます。

そこで会社としてビジネスを動かすとなると、社員に法人カードを貸与することがあります。つまり、代表者以外にも従業員用に法人カードの追加カードを導入し、経費処理に伴うコストを大幅に削減するのです。

法人カードを使えばポイントもたまりますし、現金払いをするよりもクレジットカードを適切に活用した方が業務効率化を図れるなどビジネスでのメリットが大きいです。

ただ、従業員用に追加カードを発行するとなるとそれだけリスクが増えます。法人カードを紛失して第三者に使われるかもしれませんし、社員が私的利用(不正利用)して会社のお金を横領するかもしれません。経費処理コストを削減しようとしたにも関わらず、カードの濫用によって無駄にコストが大きくなってしまったのでは意味がありません。

そこで、どのように社員へ法人カードを貸与すればいいのかについて確認していきます。会社によって判断は異なりますが、追加カードをもたせる社員を限定したり、ビジネスカードの利用規定を定めたりして運用するといいです。

どの従業員にクレジットカードをもたせるのかを考える

経営者が最初に考えるべきものとして、「法人カードの追加カードを誰までもたせるか」があげられます。当然ながら、従業員全員に追加カードを発行するわけにはいかないからです。

「営業職までに発行する」「役員や経理担当者に限定する」「(家族経営の会社なので)家族にももたせたい」などさまざまなケースがあると思います。会社ごとに状況が異なるため正解はないですが、誰に追加カードをもたせるのか考えなければいけません。

末端社員に追加カードをもたせるべきケース

社員がいることで適切にビジネスがまわっている会社であると、営業担当者を含めて社長よりも社員の方が出張によって飛行機の航空券を取ったり、新幹線を予約したりするようになります。こうなると経費処理を行うときの労力が大きくなります。

こうしたとき、法人カードを複数の末端社員にもたせることはかなりのメリットがあります。一般社員に追加カードにもたせれば、自動でウェブ上に明細が記録されるようになりますし、お金を自動計算してくれるので無駄な手間を省くことができます。

もちろん全員にもたせるわけではなく、お客様のところへ出向く機会の多い部署の社員(出張などの機会がたくさんある人)だけに法人カードを貸与します。

役員や経理担当者など、一定職位の人に貸与を限定するケース

一方で一般社員ではなく、役員など一定の職位以上に就いている人だけに貸与すべき場合もあります。例えば、一般社員であれば法人カードを利用するケースはあまりありません。基本的な仕事が事務処理の社員に対して、ビジネスカードを与える意味はないのです。

ただ、そうした会社であっても事務用品の購入や福利厚生、交際接待費などを法人カードで支払う場面があるはずです。こうした経費をすべて現金払いにしてもいいですが、前述の通り経費処理の労力が大きく無駄なコストがかかります。

こうしたときのために役員など一定の職位以上の人や経理担当者だけに法人カードを貸与しておくのです。代表者以外に追加カードを発行するとき、法人カードを利用できる人や部署を制限しておくと安全です。

個人事業主・会社規模によって異なる法人カードの貸与リスク

ちなみに、社員や役員の数が多い会社においても、一定職位以上の人だけに法人カードの保有を限定するべきです。

また、末端の一般社員に法人カードをもたせても問題ないのは、社員数が30人以下の中小企業までです。少なくとも、社長が全員の顔と名前を完璧に把握できる状態でなければいけません。

社員が多いにも関わらずむやみに法人カードを与えると、不自然なカード使用(私的利用)をする社員がたくさん出てくるのは当然のことだといえます。そのため、社長の目が行き届くのが不可能なほどの従業員を抱えている場合、法人カードを与える人を制限する必要があります。

社員数が多いとなると、部下をまとめるマネージャー職の人間が必ずいるはずです。この人に対してだけ、法人カードを与えるようにします。

実際の出張は部下が行くにしても、どこに出張へ行かせるかについてはマネージャーが指示を出します。そこでマネージャーに法人カードを貸し、決済などはマネージャーにさせてチケットを部下に渡すようにするといいです。

法人カードの利用ルール(社内ルール)を設けるべき

このようにして、会社の規模や実情にあわせて法人カードを誰に貸与するのかを臨機応変に変える必要があります。ただ、必ず行うべきこととして「ルールを設ける(社内ルールを定める)」ことがあります。例えば、「旅費交通費以外に使用してはいけない」などです。

経費に該当する飲食代にビジネスカードを使うのであれば何も問題ないですが、どのような場面の交際接待費であっても法人カードを活用できるようにすると、確実に私的利用をする社員が出てきます。友人との飲み会であるにも関わらず、法人カードで決済するなどの処理を行う人が現れるのです。

こうした状況を防ぐため、経費の濫用が起こらないための社内ルールの整備が必要です。

管理方法はさまざまですが、法人の追加カードを従業員用としてもたせる場合、基本的に利用規定の整備は必須だといえます。

それでは、実際に社内ルールを整備するとなると、他社ではどのような管理方法を実施しているのでしょうか。

追加カードの発行枚数を制限し、上司への申告を義務化する

従業員用に追加カードを発行し、その社員の財布に法人カードを入れるようにすると高確率で私的利用が起こります。友達と飲みにいったときなど、「この法人カードで決済して、得意先の顧客と会ったことにしよう」などと考えるようになるのです。こうして、社員による横領が起こります。

これを防ぐため、追加カードの発行枚数を制限するのは有効です。例えば、「代表者以外の法人カード(追加カード)は2枚だけ」などのように制限しておくのです。

接待や給油が必要になったときなど、「法人カードを利用したいときだけ社員は上司へ申し出る」ように利用規定を設けます。その後、上司や社長の承認のもとで追加カードを渡すようにするのです。

第三者による確認が入るため、社員としては不正しにくくなります。常にクレジットカードをもたせておくのではなく、基本は会社で預かるようにし、「上司への報告」を社内ルール化すれば私的利用(不正利用)による横領は少なくなります。

利用範囲を制限し、私的利用を防ぐ

社員にとって、利用制限のない従業員用の追加カードは「何でもありの現金引き出し機」と同じです。そのため、必ず利用制限しなければいけません。

例えば、「ガソリン(給油)での使用しか認めない」「特定の得意先との接待交際費にしか使ってはいけない」などです。

どのような得意先でも問題ないとなると、前述の通り、社員は高確率で友達と一緒に飲みに行って法人カードで決済し、会社のお金で個人的な飲みに使おうとします。

例えば、私がいまのように会社経営などはせず、まだサラリーマンだったころでは、実際にこうしたことがよく行われていました。私が在籍していた会社は大企業であり、従業員は非常に多いです。しかし、私が在籍していたのは田舎の小さな支店だったため、社長や部長の目が届くことはありません。

私がいた支店では、支店長のもとで社員同士(4~5人ほど)の飲み会が定期的に行われていました。このときの支払いは支店長が法人カードで決済していたため、私を含め他の社員は財布を開くことはありません。

会社の福利厚生ではなく、法人カードをもっている支店長が勝手に社員を集めて開催する飲み会であるため、いまから考えたら「会社のお金を活用した飲み会(=横領)」でした。支店長のポケットマネーではなく、会社のお金を使ってすきなときにみんなで飲み食いしていたのです。

ただ、当時の私はおいしいものを食べさせてもらって非常にいい思いをしました。

しかし、いまの私は会社経営の立場にあります。経営者の立場で考えると、「支店長など上司に当たる人が私的利用するケース」があるのは問題です。これは役員であっても同様であり、代表者以外の人が私的利用することは多いです。

これらを認識したうえで、従業員用の追加カードを役員・社員が好き勝手に運用できるのは危険だといえます。

法人カードを利用するときに「上司へ報告させればいい」とはいっても、その上司のモラルが崩れていることは多々あります。そこで、追加カードを利用できる場面を限るようにして不正利用を防ぐようにしましょう。

ガソリンでの利用は特に不正利用が起こりやすい

ちなみに、社員・役員による不正利用が最も多いのは「車に給油するときの使用」です。要は、プライベートでのガソリン使用に対して法人カードを用い、給油するのです。

それでは、どのようにして不正をするのでしょうか。

例えば、営業車にガソリンを給油するのに加えて、同時に灯油の給油まで頼むようにします。営業車へのガソリン代を会社負担にするのはまったく問題ないものの、個人利用のために灯油を頼み、その代金までビジネスカードで支払うようにするのです。

通常のガソリン代に加えて、灯油代が上乗せされるだけなので金額だけを見るとわかりにくいです。そのため、気軽に私的利用しようとします。これを防ぐためには、明細書(レシート)を添付するなどの工夫をしなければいけません。

また、こうした巧妙な手口ではなく、法人カードを使って自家用車の給油をするという横領も頻繁に起こります。

特に地方であれば、車を使って営業に出かけることが多いです。給油の場面で不正が起こりやすいことを経営者(または経理担当者)は把握する必要があります。そうしたうえで法人カードのメリットを考慮し、社内ルール(代表者以外が法人カードを使用するときの利用規定)を整備するといいです。

領収書はビジネスカード決済でも必要

ちなみに、たとえビジネスカードによって決済したとしても領収書は必ず必要になります。もし領収書がなかったとしても、それに代わるもの(レシートなど)の添付が必要です。

年に数回ほどであれば「領収書を忘れてしまった」であっても通用するかもしれません。ただ、この数が多いとなると税務署から否認されます。そのため、領収書は必須です。このとき、以下のようにクレジットカードの利用明細書と領収書の2つを添付するのが基本です。

領収書が必要なため、証拠自体は残るので法人カード利用による不正は起こりにくくなります。

しかし、領収書には利用した店や利用金額くらいしか書かれておらず、より詳細な情報はレシートに載っています。そこで、レシートの添付まで義務付けても問題ありません。

税務調査の観点では領収書があれば大丈夫です。それに加えて、私的利用(横領)を防止するためにレシートの提出まで義務付けるのです。

個人事業主・会社での業務効率化が法人カードの本質

何人かの社員や役員がいる場合、代表者以外にも従業員用の追加カードを複数枚作ることはビジネスをスムーズに運用するうえで必須です。

ただ、「法人カードの導入による経費コストの削減」と「社員による経費濫用の防止」のバランスを考えながら法人カードを運用するようにしてください。

ビジネスカードを社員用に作るのは、業務効率化が目的です。社員による横領をゼロにするため、厳しい利用規定で縛り、仕事を進めにくくなっていては意味がありません。

そこで、従業員用や役員用の追加カードを適切に運用するため、これまでいくつかヒントを述べてきました。「クレジットカードを利用できる部署を制限する」「上司への報告を義務化させる」「使用できる範囲を制限する」など、アイディアの数だけ方法があります。

これについては、実際に法人カードを導入しながら社内ルールを変えていけば問題ありません。

代表者以外に追加カードをもたせると、横領リスクが高くなるのは必須です。ただ、それ以上に法人カードを運用することによるメリットがあるため、管理方法を考えながら上手にクレジットカードを利用してみてください。

追加カードの制限がないビジネスカードを選ぶ

それでは、実際に従業員用の法人カードを複数枚発行するとき、何に気を付けなければいけないのでしょうか。それは、「追加カードを何枚発行できるか」という点です。

法人カードを申し込んだ後、代表者以外のために何枚でも追加カードを発行できるとは限りません。法人カードによっては、追加カードの枚数に制限を設けていることがあります。

例えば、親となるビジネスカードとは別に、追加カードを発行できる枚数としては以下のような感じになります。

  • 三井住友カード ビジネスオーナーズ:19枚
  • アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード:無制限
  • セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード:4枚

従業員用の追加カードを作って運用するということは、将来は必要となる追加カードが増える可能性が高いです。そのため、追加カードの発行上限がない法人カードを活用するのがおすすめです。

また、追加カードを発行するとなると、枚数の数だけ年会費が加算されます。それに加えて、従業員が追加カードを活用してどれだけ利用するのか(クレジットカードの限度額)まで計算にいれる必要があります。

これらを比較したうえで、必要な法人カードを選ぶといいです。以下に、追加カード無制限(または多い)の法人カードを紹介します。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

法人カードの中でも年会費が永年無料であり、追加カードを19枚まで発行できるものとして三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。設立直後の会社や個人事業主であっても手軽に発行できます。

メインとなる法人カード以外に従業員用の追加カードを発行する場合であっても、年会費は永年無料です。追加カードだけでなく、ETC法人カードも複数発行できるというメリットがあります(追加カード1枚について、ETC法人カード1枚)。

また、三井住友カード ビジネスオーナーズではカード利用枠(クレジットカードの使用上限)が~500万円(所定の審査あり)であり、三井住友カード ビジネスオーナーズ ゴールドでもカード利用枠が~500万円になります(所定の審査あり)。

代表者以外がクレジットカードを使用する場合、「従業員が月にどれだけの額、回数を追加カードで使うのか」を考慮したうえで三井住友カード ビジネスオーナーズに申し込むといいです。

アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード

発行枚数に上限なく追加カードを発行できるクレジットカードとしてアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードがあります。

アメックスとして知られるブランドであり、ゴールドカードなので社会的なステータスが高いです。

個人でアメックスをもつ場合、審査が厳しいです。ただ、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードは会社設立一年未満や個人事業主であっても問題なく審査に通過するほど、審査が甘いカードとして知られています。

アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの年会費は36,300円であり、追加カード1枚ごとに年会費13,200円が必要です。もちろん、これらの年会費は経費で落とせます。

アメックスのゴールドカードであるため、限度額の上限はありません(個別に審査)。社員がいくら追加カードで決済したとしても、少なくとも「限度額いっぱいになったので法人カードを使えない」という状況に陥ることはありません。

年会費は少し高いものの、社員によるカード支払い額が多いときに適しています。

追加カードの発行枚数を制限するケース

ただ、会社によっては2枚や3枚など複数の法人カードは必要だが、「発行枚数に関係なく複数発行できる追加カードは必要ない」というケースがあると思います。そうした場合、他のビジネスカードへ申し込めば問題ありません。

前述の通り、以下の法人カードは追加カードの発行枚数が決まっています。

  • セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード:4枚

それぞれの法人カードについて、特徴が大きく異なります。そこで、役員だけに発行するなど、「追加カードを何枚も増やさない」という考えをもっている個人事業主や会社の社長が選ぶべき法人カードを以下で確認していきます。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

先ほどのアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードとは少し異なるものの、アメックスと同じように活用できる法人カードとしてセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードはプラチナカードです。プラチナカードであるにも関わらず、年会費を安くしながらアメックスのプラチナカードと同じサービスを受けることができます。

プラチナカードであるため、限度額の上限はありません(個別に審査)。社員による法人カードの使用額が多かったとしても、「限度額がいっぱいになった」という理由で使用停止になることはありません。

年会費は22,000円ですが、追加カードは年会費3,300円とそこまで高くありません。また、追加カードは4枚まで発行できます。

「追加カードを何枚も発行する予定はない」「限度額のない追加カードを安く入手したい」「プラチナカードの手厚いサービスを受けたい」などの条件に当てはまる場合、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードが適しています。

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