法人カードを作るとき、ステータス性の高いビジネスカードを求める人は多いです。法人カードの年会費は経費で落とせるため、個人カードは年会費無料であっても、法人カードはステータス性の良いカードを使っている個人事業主や会社経営者がたくさんいるのです。
こうした法人カードの中でも、ハイステータスな法人カードとしてアメックスとダイナースが知られています。
それでは、アメックスとダイナースの法人カードを比較したとき、どちらのビジネスカードへ申し込むのが適切なのでしょうか。人によって求めているものが異なるため、両者を比較しながら違いを確認していきます。
もくじ
ステータス性に優れたアメックスとダイナースの法人カード
まず、アメックスとダイナースの法人カードにはどのようなものがあるのでしょうか。アメックスとはいっても、いろいろ種類があります。ダイナースについても、個人クレジットカードとは異なります。
そこで、両カードの概要について簡単に確認していきます。
・アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
アメックスの法人カードといえば、一般的にアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードのことを指します。国際ブランドは当然ながらアメックスであり、ゴールド法人カードです。
経営者、医者、弁護士などハイステータスな人が保有しているクレジットカードであり、この法人版カードとなります。
一般法人カードとしてアメックス法人グリーンカードは存在するものの、アメックスのビジネスカードではゴールドカードをもつ人が大半です。
・ダイナースクラブビジネスカード
個人カードとしてダイナースクラブが知られていますが、この法人版としてダイナースクラブビジネスカードがあります。
アメックスの法人カードであれば、「グリーンカード」「ゴールドカード」「プラチナカード」の3つが用意されています。ただ、ダイナースクラブビジネスカードはこの一種類しかありません。
カードの見た目は金色ではないものの、スペックはゴールド法人カードとなっています。
アメックスとダイナースでのスペック比較
それでは、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードとダイナースクラブビジネスカードを比較したとき、スペックにはどのような違いがあるのでしょうか。
アメックスとダイナースを比較したとき、あまり変わらない点があれば、どちらかが優れている点もあります。これらを比較しながら、どちらに申し込めばいいのか考えなければいけません。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード | ダイナースクラブビジネスカード | |
対象 | 個人事業主・法人 | 個人事業主・法人(年齢27歳以上) |
券面 | ||
年会費 | 36,300円 | 29,700円 |
追加カード | 13,200円 | 無料・枚数無制限 |
還元率 | 0.5~1% | 1% |
ETCカード年会費 | 550円 | 無料 |
ETCカード枚数制限 | 複数枚発行可能 | 無制限 |
限度額 | 個別設定 | 個別設定 |
国際ブランド |
年会費や追加カード、ETCカード
クレジットカードをもつとき、最初に考えるべきものとして年会費があります。
ステータス性の高いビジネスカードであるため、アメックスもダイナースも年会費は高めです。アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合は年会費36,300円であり、ダイナースクラブビジネスカードは年会費29,700円です。その差は4,400円です。
どちらも法人カードの年会費は経費で落とせるため、個人事業主や会社経営者にとって年会費4,400円の違いは誤差であり、まったくもって気にする必要はありません。
ただ、追加カードやETCカードまで考慮すると大きな違いが出てきます。
・ダイナースクラブビジネスカードは追加カード、法人ETCカード無料
実のところ、トータルの年会費で考えたときはアメックスよりもダイナースの方が圧倒的に優れています。これは、ダイナースクラブビジネスカードは追加カードや法人ETCカードが発行無料だからです。
一般的に追加カードを発行するとき、一枚ごとに年会費がかかります。これ自体は普通のことであり、例えばアメックス・ゴールドカードは追加カードの年会費13,200円です。また、法人ETCカードを発行するとき、一枚につき5050円です。
一方でダイナースクラブビジネスカードはどうかというと、追加カードや法人ETCカードの年会費は無料です。つまり、役員や社員用にいくら追加カードを発行しても年会費が上がることはありません。
また、枚数制限はなく何枚発行しても年会費無料という大きなメリットがあります。
追加カードやETCカードまで考えると、ダイナースクラブビジネスカードの方が年会費は安くなります。一人社長であったり、法人カードを一枚しか使わなかったりする場合は関係ありませんが、社員用の追加カードを作るときはダイナースであると年会費が高くなりません。
利用限度額は両クレジットカードとも個別設定
カードを使うとき、利用枠について考えなければいけません。法人カードごとに利用限度額が設定されており、利用枠の上限を超えるとカード決済できなくなるからです。
アメックスやダイナースではどうなっているかというと、両カードとも利用限度額は個別設定されます。つまり、常識の範囲内であれば利用枠に一律の制限がありません。もし、利用枠の上限いっぱいになってしまった場合、コンシェルジュデスクへ電話すればすぐに上限額を上げてくれます。
限度額が個別設定され、使用枠の上限がないのは両社とも同じであるため、これについての違いはないと考えればいいです。
ステータス性はアメックスが優れている
年会費の高いビジネスカードをもつため、ステータス性について考慮する人は多いです。ステータス性という意味では、アメックスの圧勝です。一般人でダイナースについて知らない人であっても、アメックスであれば当然知っています。
また、世間でいうブラックカードはアメックスのセンチュリオンカードのことを指しています。個人カードで最もステータス性に優れたクレジットカードがアメックスであり、これは法人カードでも同様です。
さらにいうと、ダイナースクラブビジネスカードは一種類しかなく、それ以上のカードをもつことができません。一方でアメックスであれば、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードを使っていると、プラチナ法人カード(アメックス・ビジネスプラチナ)へのインビテーションが届くようになります。
さらにいえば、アメックスのプラチナ法人カードを活用しながら、個人でもアメックスのカードを利用していると、ブラックカード(センチュリオンカード)への道が開けるようになります。
ダイナースクラブビジネスカードはより上のカードに行くための選択肢が限られるものの、アメックスではゴールドカードを足掛かりとして、さらに上級ステータスを目指すことが可能です。
アメックスの審査はゆるく、ダイナースの審査は厳しい
ただ、申請する法人カードを決めたとしても、審査に通過しなければ意味がありません。この点についてはどうなのでしょうか。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合、審査は非常にゆるいです。個人カードでは審査が非常に厳しいことで知られていますが、ビジネスカードでは逆になるのです。
ビジネスカードの中でもトップクラスで審査が甘いため、他の法人カードで審査に落とされてもアメックスの法人カードでは通過することがよくあります。ビジネスをしたことのない個人事業主や設立一年未満の会社であっても問題なく審査に通ります。
一方でダイナースクラブビジネスカードはどうかというと、法人カードの審査は厳しいです。誰でも申請できるビジネスカードではありません。
ダイナースクラブのカードをもつとき、一般的には「年収500万円以上の人」という基準があります。そのため、個人事業主や法人経営者で年収500万円以上である必要があります。さらに年齢制限があり、年齢27歳以上の人でなければ、どれだけ年収が高くても審査に通過しません。
年齢27歳以上というのは、代表者のことを指します。個人事業主や法人の代表の年齢が一定以上である必要があります。
ポイント還元率はダイナースが優れている
次に、ポイント還元率について確認していきます。クレジットカードを利用するとポイント付与されるため、どれだけ効率的にポイントがたまるのかは重要です。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合、還元率0.5%です。法人カードは一般的に還元率0.5%が基準であり、アメックスは還元率が悪いわけではありません。
ただ、年会費3,300円のメンバーシップ・リワード・プラスに加入すると、マイル還元率が1%に跳ね上がります。あくまでもマイル還元率であり、ポイント還元率ではありません。
アメックスでは100円ごとに1ポイントたまりますが、このときのポイントを使おうとすると「1ポイント=0.5円」の価値になります。ただ、メンバーシップ・リワード・プラスに入ると、「1ポイント=1マイル」で交換できるようになります。そのため、マイル還元率1%になるのです。
メンバーシップ・リワード・プラスについては、ポイントをマイルへ交換する年だけに入会し、後は外れれば問題ありません。
一方でダイナースクラブビジネスカードはどうかというと、常に還元率1%となります。ポイント還元率という点では、ダイナースクラブビジネスカードの方が優れています。
・マイルでためると効果的
なお、アメックスであってもダイナースであっても、たまったポイントはマイルとして利用するといいです。両カードともマイルをためるのに優れたカードであるため、多くの経営者はマイルでポイントをためます。
特にアメックスの場合、マイルでためた場合のみ還元率1%となるため、ほぼ全員がポイントをマイルにしています。
このとき、両カードともJALマイルへは変換できないため、ANAマイルでためます。マイルへ交換した後、たまったマイルは社長が個人的な用途に利用すれば問題ありません。
※ダイナースでポイントをマイルに交換する場合、年間6,000円の「ダイナースグローバルマイレージ」に加入する必要があります。
・公共料金や税金の支払いは還元率が半減する
なお、アメックスとダイナースで気を付けなければいけないものとして、公共料金や税金の支払いがあります。公共料金をカード払いすると、還元率が半分になります。
つまり、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードでは還元率0.25%(マイル還元率は0.5%)、ダイナースクラブビジネスカードは還元率0.5%です。
他に法人カードをもっている場合、ポイント還元率の観点からいえば他のビジネスカードを利用したほうがいいです。
特に税金(法人税、消費税など)をカード払いすると手数料が必要になり、還元率1%以上の法人カードでないとかなり損をします。そのため、税金をアメックスやダイナースでカード払いしてはいけません。
海外旅行傷害保険
海外出張するときの海外旅行傷害保険についてはどうなのでしょうか。クレジットカードの海外旅行傷害保険を活用すれば、別途旅行保険に加入しなくて済みます。
海外旅行傷害保険については、両カードとも自動付帯です。つまり、カードをもっているだけで補償対象になります。
このときはキャッシュレス受診(キャッシュレス診療)となり、現地でお金を支払わなくても問題なく病院を受診できます。医療費が高額になるのを防ぐどころか、支払いすらないのです。
また、ステータス性が高いため両カードともケガや病気による受診(入院)の補償費用限度額が300万円など高額に設定されています。
・アメックスでは家族特約がある
それに加えて、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合は家族特約があります。つまり、家族の分まで含めて自動付帯になります。
生計を共にしている家族(親や子供など)という条件はありますが、例えば家族旅行のときは全員分が補償対象になります。家族分の旅行保険に別途入る必要がないため、その分だけ費用を浮かせることができます。
そういう意味では、海外旅行傷害保険はアメックスの方が優れています。
その他のサービス
ここで紹介した以外にも、カードごとに独自のサービスがあります。具体的なサービスについて、それぞれ紹介していきます。
・両カードに共通した空港ラウンジ
ゴールドカードであるため、両カードとも空港ラウンジを利用することができます。このときは「ゴールドカードと航空券を提示すれば入れるラウンジ」になります。空港ラウンジを利用すれば、飛行機の待ち時間が快適になります。
ゴールドカードの空港ラウンジは日本全国の空港に存在します。国内線を利用する場合、空港ラウンジを探せば入ることができます。
ただ、プライオリティ・パス(より高級な空港ラウンジを使えるカード)は手にすることができません。国際線ではプライオリティ・パスの利用によってアルコール飲み放題のラウンジを利用できますが、アメックス・ゴールドカードやダイナースクラブビジネスカードではプライオリティ・パスが付かないのです。
・アメックスの独自サービス
それでは、アメックスではどのようなサービスがあるのかというと、空港でのサービスが特に優れています。
まず、海外出張するときは荷物が重くなるものの、空港までスーツケースを一個無料で託送できます。もちろん、空港から家へも無料で送れます。
国内線を利用するときであっても、アメックスのトラベルデスクを経由して航空券を購入すれば「羽田空港や伊丹空港の中にある対象レストランで使える1,000円のクーポン券」をもらえます。これを、エアポート・レストラン・クーポンといいます。
普通の昼食や夕食は経費で落とせませんが、国内出張であればアメックスのカードを利用するだけで1,000円分の食事代を浮かせることができます。
また、アメックスではApple Payに登録することができます。そのため、電子マネーでSUICAを利用するときなど、電車代を経費で落としたいときに便利です。
・ダイナースの独自サービス
それに対して、ダイナースクラブビジネスカードはどうかというと、レストランサービスが優れています。
ダイナースではエグゼクティブ・ダイニングというサービスがあります。これは、提携している高級レストランを2名以上で予約したとき、1名分が無料になるというサービスです。2人で利用する場合、半額になります。6名以上で利用したとき、2人分が無料になるコースもあります。
例えば、高級レストランで一人1万円のコースを2人で予約した場合、ダイナースのサービスを利用することで一人5,000円になります。
接待する機会があったり、少し高めのレストランを利用したりする人であれば、ダイナースのサービスは優れています。
アメックスとダイナースで最適なビジネスカードを選択する
ここまで述べてきたことを理解したうえで、法人カードの中でアメックスとダイナースでどちらを選択すればいいのか確認するようにしましょう。
基準を設けるとすると、以下のようになります。
- 空港利用が多く、ステータス性重視の人はアメックス
- レストラン利用が多かったり、追加カードを多用したりする人はダイナース
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・プラチナ・カードは空港でのサービスが非常に優れており、クーポンを利用すれば昼食代(夕食代)まで浮かせることができます。また、ステータス性という意味では非常に優れており、プラチナカードまで目指すことができます。
一方でダイナースクラブビジネスカードはレストラン利用に優れており、高級レストランが一名無料になるなどのサービスがあります。また、追加カードを何枚でも無料発行できるため、役員や社員に追加カードを発行する法人であれば、年会費が高くなるのを抑えられるようになります。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
非常にステータス性が高く、サービス内容も優れている法人カードがアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードです。
年会費36,300円(当サイトからの申し込みで初年度無料)ですが、海外旅行傷害保険が自動付帯であり、さらには家族特約があるので家族を含めて適応されます。また、スーツケースを無料で送れるなど、飛行機利用のときに優れています。
カードを使い続けているとアメックス・ビジネスプラチナへのインビテーションが届き、個人カードではブラックカードを保有できる機会にも恵まれるようになります。
しかも個人カードとは異なり、審査は非常にゆるいです。ビジネス初心者の個人事業主や創業間もない会社であってもアメックスのゴールド法人カードを手にすることができます。
ダイナースクラブビジネスカード
ダイナースが発行する法人カードがダイナースクラブビジネスカードであり、年会費29,700円です。
追加カードや法人ETCカードを何枚でも無料で発行できるという大きな特徴があります。何人もの社員がいて、役員や従業員用に追加カードを発行する場合、メリットが大きいです。
さらに、高級レストランを利用する場合は複数名の利用で一名分が無料になるため、接待利用するときに最適です。
審査基準が厳しく、27歳以上でないと申請できないという条件はあるものの、これは誰でもカードをもてないということでもあります。
ポイント還元率の点でも優れているビジネスカードであるため、追加カードを何枚も発行したり、レストラン利用が多かったりするときに向いている法人カードです。