法人カードを作るとき、基本的には年会費が必要になります。個人クレジットカードとは異なり、年会費無料の法人カードは非常に少ないのです。

ただ、実際のところ個人事業主(自営業)や会社経営者であれば、法人カードを作るときにあまり年会費の高さを気にする必要はありません。法人カードの年会費は全額経費として落とすことができるからです。

特にステータス性の高いビジネスカードであるほど経費の額が大きくなって節税になります。個人クレジットカードでは年会費無料のカードを使っているものの、法人カードではハイステータスなカードをもっている個人事業主や会社経営者はたくさんいます。

そこで、どのように考えて法人カードを選び、年会費を経費として落とせばいいのかについて解説していきます。

なぜ、法人カードの年会費を経費計上できるのか

経費の考え方として、「ビジネスに関係しているものであれば、どのようなものであっても経費にできる」という原則があります。

例えば海外旅行であっても、ビジネス仲間と行く場合は全額経費です。書籍代の購入についても、マンガやエロ本以外はすべて経費です。

これと同じように、法人カードは「ビジネス用口座(法人口座)とひもづいており、ビジネスのために必須となるクレジットカード」だといえます。ビジネスカードがないと事務用品をネットショップで購入できなかったり、広告費や仕入れの費用を払えなかったりします。

そのため、法人カードの年会費は経費になるのです。

私的に使っているクレジットカードは経費にできない

このとき、「法人カードを作らなくても、私的に使っているクレジットカードで代用すればいいのでは」と考える人がいます。ただ、個人クレジットカードの年会費は経費にできません。

あくまでもビジネスとして必要な買い物が経費になるわけです。「個人クレジットカードで事業用の支払いをしている」という状況であったとしても、私的に使っている個人クレジットカードの年会費を経費にするのは無理があります。

プライベート利用では経費にできず、これは個人クレジットカードの年会費も同様なのです。

さらに会社組織の場合、「携帯電話代の支払い」「福利厚生費の支払い」など、ビジネスカードで支払わないと全額経費にできない項目が存在します。下手に個人クレジットカードを使っていると、税務調査のときに経費にできないものが出てきて課税される恐れがあります。

そのため、「個人クレジットカードで事業に必要なものを購入しているため、個人カードの年会費も経費にできるはず」と税務調査の職員に伝えると、「この人は本来、経費にできない個人支払い分を経費計上している可能性が高い」と疑われてしまいます。

こうしたことを避けるためにも、個人クレジットカードの年会費は経費に計上しないようにしましょう。

特に個人事業主はビジネスカードの使い方に注意すべき

なお、個人事業主(自営業)やフリーランスの人は法人カードの使い方に注意する必要があります。

会社であると、法人カードで個人的な買い物をすることはほぼありません。ビジネスカードで社長の個人的な買い物をすると、個人的な買い物を会社のお金で支払っていることになり、「会社が社長にお金を貸している」という状態になります。これであると、後で面倒な仕訳作業が発生します。

また、税務調査のときに指摘されると課税されてしまいます。グレーゾーンの経費は積極的に落とすべきですが、そうでないものを法人カードで決済することはないのです。

ただ、個人事業主・フリーランスではビジネス用口座を使っているとはいっても、法人口座ではないので「ビジネス用口座=個人口座」となります。つまり、法人カードで個人的な買い物をしても理屈上は問題ありません。

しかし、それでも法人カードで個人的な買い物をしてはいけません。私的利用があると、「この法人カードを事業用として使っている」という建前が成り立たなくなり、法人カードを経費で落とせなくなるからです。

もちろん、個人的な買い物を間違ってビジネスカードで決済してしまったことが数回あるくらいなら問題ないです。ただ、法人カードで個人の買い物を頻繁にしている場合、経費として落とせなくなります。

要は、会社組織でも個人事業主でも「個人クレジットカードと法人カードは使い方を明確に分ける必要がある」といえます。

消費税(税金)を含めて経費にできる

なお、法人カードの年会費には消費税がかかります。例えば、年会費10,000円の法人カードであると、実際に支払うべきお金は「年会費10,000 円+ 消費税」となります。

日本ではあらゆるものに消費税がかけられます。物を購入するときだけでなく、飲食の提供やマッサージを受けるときなど、サービスを提供されるときも消費税が必要になるのです。当然、法人カードを利用するサービス(法人カードの年会費)にも消費税が必要になります。

そのため、ビジネスカードの年会費は課税仕入れで考えて経費にするようにしましょう。つまり、年会費10,000円の法人カードの場合、「年会費10,000 + 消費税」と消費税を加えた値段を経費にするのです。

私はさまざまなクレジットカードを活用していますが、例えば以下ではゴールドカード年会費として12,420円(うち消費税920円)の請求になっています。

このうち、消費税分の920円を含めた12,420円を経費にすると考えてください。

年会費の勘定科目を解説

法人カードの年会費を経費にできることはわかりました。それでは、実際の勘定科目はどのようになるのでしょうか。会社組織で会計処理をしている人や個人事業主で青色申告(65万円控除)を選択している人の場合、特に勘定科目について適切な仕訳をしなければいけません。

一般的には、法人カードの年会費は「支払い手数料」という勘定科目になります。仕訳としては、以下のようになります。

日付借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
引き落とし日支払い手数料12,420円普通預金12,420円

勘定科目としては、他にも「雑費」「諸経費」などを活用することがあります。ただ、勘定科目は無難に支払い手数料にするといいです。

特に注意が必要なのは、諸経費の勘定科目を使う場合です。諸経費は「非課税のものが多い」という性質があるため、法人カードの年会費を諸経費にしてしまうと処理が大変になることがあります。

会計ソフトでも諸経費の初期設定で消費税を非課税設定にしていることがあり、これであると「消費税分を算入できておらず、無駄に高い税金を支払う」などの事態が起こります。

本来は消費税を加えて経費にしなければいけないにも関わらず、諸経費に入れることで消費税分を考慮していない仕訳になってしまうことがあるのです。これを避けるためにも、やはり勘定科目は支払い手数料が無難です。

年会費の高さは気にしなくて問題ない

それでは、ビジネスカードの年会費を経費として落とすことでどれだけの節税になるのでしょうか。法人税は稼いだ利益に対してかかります。法人税を30%と仮定すると、法人税額は以下のようになります。

  • 利益額1,000円:法人税300円
  • 利益額10,000円:法人税3,000円
  • 利益額20,000円:法人税6,000円

仮に年会費20,000円の法人カードに申し込んだ場合、利益を20,000円だけ圧縮することができます。その結果、本来は払うべきだった法人税6,000円を払わなくて済みます。つまり、年会費20,000円であったとしても、実質的に14,000円の支払いで済むようになるのです。

また、もし個人で年会費の高い法人カードをもつとどのようになるのでしょうか。個人のお金をためるには、先に所得税や住民税、社会保険料などあらゆる税金を支払わなければいけません。

日本の税金は異常に高く、仮に税金(所得税や住民税、社会保険料などすべて合算したもの)を30%と仮定すると、年会費20,000円のクレジットカードをもつためには「年会費20,000円 × 1.3(30%分加算) = 26,000円」を稼いでおく必要があります。

年収600万円でも所得税や住民税などを考えると税率30%を軽く超えるため、この数値はかなり妥当だといえます。

・経費で落とせる威力は大きい

このように、経費で落とせる場合は威力が大きいです。仮に年会費20,000円のクレジットカードをもつにしても、ビジネスカードとして経費精算できる場合、前述の通り実質14,000円(法人税30%で計算)でもつことができます。

一方、個人クレジットカードで年会費20,000円のカードをもつ場合、実質的には26,000円(所得税や住民税、すべて合算して30%で計算)のお金が必要になります。

当然、稼いでいる社長であると役員報酬の額が大きくなり、さらに税率は膨れ上がっていきます。そうなると、年会費20,000円のカードを個人でもつためにさらには、さらに高額な費用が必要になります。

個人クレジットカードでは高額な税金が待ち構えているため、個人事業主や会社経営者が法人カードをもつ場合、実は年会費の高さをそこまで気にする必要はありません。年会費を経費にできるのは経営者として大きなメリットなのです。

ステータス性の高い法人カードをもつメリット

年会費を経費にできることから、「個人クレジットカードは年会費無料であるものの、法人カードでは非常にステータス性の高いクレジットカードを利用している」という会社経営者は多いです。これは、個人事業主やフリーランスであっても同様です。

ただ、無駄に高い年会費を支払って事業に必要なお金が減っていくのは馬鹿らしいです。しかし、年会費が高額でステータス性が高い法人カードであると、それだけ優れたサービスが提供されています。

実のところ、私はあまりクレジットカードのステータス性に興味がありません。それでも、法人カードではゴールドカードやプラチナカードなど、複数のクレジットカードを使いこなしています。これは、年会費以上のメリットがあるからです。

例えば、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なものとしては、以下のようなメリットが存在します。

・海外旅行傷害保険

ステータス性が高い法人カードであると、海外旅行傷害保険の補償が高額になります。海外出張したときなど、現地でケガや病気をしたときに高額な医療費を支払わなくて済むのです。

しかも、これが自動付帯になります。つまり、カードをもっているだけで補償対象になります。

クレジットカードでは「旅行ツアー代や航空券代などを対象のクレジットカードで支払わないと補償が適応されない」という制度が基本であり、これを利用付帯といいます。そうではなく、年会費が高いクレジットカードではどれも自動付帯になります。

さらに、このときはキャッシュレス受診(キャッシュレス診療)が適応されます。

いくら高額な医療費が必要ないとはいっても、それなりのお金を現地通貨で支払わなくてはいけません。ただ、年会費の高い法人カードであれば、お金の支払いなしに受診できます。

つまり、現地通貨をもっていなくても医療を受けることができるのです。年会費が安いビジネスカードではこのようなことはなく、少なくとも現地で多少の支払いが必要になります。

キャッシュレス診療で現地の病院を受診するとき、カード会社へ電話して日本語対応の病院を予約してもらい、タクシーなどで出向くだけで問題ありません。お金(キャッシュ)の支払いなく、医療を受けられるようになります。

・空港ラウンジの利用

それだけではありません。国内出張や海外出張で飛行機を利用するとき、ステータス性の高い法人カードであると空港ラウンジを利用できるようになります。

飛行機では待ち時間が長くなりがちですが、固いイスに座って待つのではなく、空港ラウンジを活用して「ジュースを飲み放題で柔らかいイスでくつろぎながら、フライトまでの時間を過ごす」ようにするのです。

また、法人カードによってはプライオリティ・パスというカードを付けることができます。

プライオリティ・パスを提示すれば、世界の主要国際空港に存在する「よりグレードの高い空港ラウンジ」を利用できるようになります。当然、成田空港や関西国際空港にもプライオリティ・パスで入れるラウンジが存在します。

アルコール飲み放題であり、食事も食べ放題なのがプライオリティ・パスで入れる空港ラウンジです。

・利用限度額が高い

また、クレジットカードにはそれぞれ利用枠が設けられており、ステータス性が高いと利用限度額が高額になるという特徴があります。

年会費がそれなりに高額であると、限度額(約2ヵ月間でカード決済できる利用枠)が500万円以上になるのは普通です。

年会費が安いとすぐにカード上限額まで達してしまい、カード決済できずトラブルに巻き込まれることがあります。そうしたことがなくなるのです。利用限度額が高いと、残りの残高を気にすることなくビジネスに集中できるようになります。

ビジネスカードでステータス性の高いカード比較

年会費を経費精算できることから、法人カードでステータス性の高いカードを活用することを考える人は非常に多いです。

それでは、どのような法人カードを選べばいいのでしょうか。このときは当然ながら、カード審査に通過しやすい法人カードを選びつつ、サービス内容も優れているカードが適切です。

こうしたビジネスカードには、以下のようなものがあります。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

クレディセゾンが発行するプラチナカードとして、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。

年会費22,000円ですが、個人事業主や会社経営者を含め誰でも申請でき、全額経費にできます。

プラチナカードでは珍しく、実績のない個人事業主や創業間もない法人であっても審査に通過します。普通、プラチナカードは審査が非常に厳しいものの、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは例外的に審査がゆるいのです。

プラチナカードであるため、コンシェルジュサービスがあったり、海外旅行傷害保険の補償が高額だったりします。当然、海外旅行傷害保険は自動付帯です。

また、プライオリティ・パスを無料発行できるので空港での待ち時間はより快適になります。プライオリティ・パスは年間429ドル(約43,000円)が必要なので、これが無料になるのは大きいです。

さらに、法人カード利用によるポイント還元率が1.125%です。JALマイルでためると還元率1.125%を実現できるのです。マイル価値は高く、私もポイントをマイルでためている人間の一人です。ビジネスカードの中でも最高クラスの還元率を誇るという大きな特徴があります。

年会費が安い法人カードは何があるのか

ステータス性の高い法人カードは誰でも受け付けているわけではありません。そのため、ビジネスをほとんどしていない人であっても問題なく審査に通過するなど、ハイステータスではあっても審査基準の甘い法人カードを選んで申請する必要があります。

そうすれば、自分でビジネスを動かしている人であれば誰でもステータス性の高い法人カードを手にすることができます。

ただ、中には年会費が何万円もするビジネスカードにそこまで興味のない人もいます。そうしたとき、以下のような年会費の安い法人カードを検討するといいです。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

ビジネス初心者が多く活用する標準的な法人カードとして、三井住友カード ビジネスオーナーズが知られています。

年会費は永年無料です。無料で保有できるため、初めてもつビジネスカードとして適切です。

ポイント還元率は0.5%と普通であり、カード利用枠は~500万円です(所定の審査あり)。スペックはよく、創業直後の会社であっても申請でき、個人事業主であっても審査に通過する法人カードとして知られています。登記簿謄本や決算書の提出が不要だからです。

海外旅行傷害保険は利用付帯であり、空港ラウンジが使えるわけではなく、ステータス性の高い法人カードに比べると当然ながらスペックは大幅に劣ります。ただ、年会費の点では優れており、ビジネス初心者向けの法人カードです。

自分に適した法人カードを利用する

ここまで、法人カードの年会費を経費で落とすときの注意点や消費税の考え方、勘定科目について述べてきました。また、どのように考えて法人カードを選べばいいのか比較しながら解説してきました。

ビジネスカードはそれぞれスペックが異なり、年会費が高くなるほどサービス内容が良くなります。

経費で落とせることを考えると、法人カードについてステータス性の優れたクレジットカードに挑戦するのは問題ありません。節税をしながらステータス性の高いカードを活用し、カード利用によるさまざまな特典を得るのです。

このページで紹介した法人カードを再び紹介しますが、以下のようになります。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

家族特約はないものの、高額な海外旅行傷害保険が自動付帯になり、高い限度額を実現できます。ポイント還元率は1.125%(JALマイル)であり、あらゆるビジネスカードの中でも最高クラスの還元率を誇ります。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

年会費が永年無料であり、登記簿謄本や決算書の提出がないので誰でも審査に通過するビジネスカードとなっています。スペックは普通であり、ビジネス初心者向けの法人カードです。

どのようなビジネスカードを求めているのかについては人によって異なります。そこで、法人カードのスペックを比較・検討したうえで申し込むようにしてください。

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