ビジネスをするときに必須となるカードとして、法人カードがあります。ビジネスカードを活用することで経費精算が非常に楽になります。

一般的な会社組織としては、株式会社があります。資本金1円であっても株式会社を作れるため、誰でも株式会社を設立することができます。

これらの会社であれば、問題なく法人カードを作ることができます。それでは、合同会社はどうなのでしょうか。また、合名会社や合資会社などでも法人カードを作れるのでしょうか。そのほかには、一般社団法人やNPO法人などはどうなのでしょうか。

ここでは、株式会社以外で法人カードを発行できるのかについて確認していきます。

会社であれば、誰でもビジネスカードに申請できる

ビジネスをしている人であれば、誰でもビジネスカードに申し込むことができます。実際、個人事業主・フリーランスのように会社でなかったとしても、申請できる法人カードは多いです。

こうした事実を考えたとき、株式会社以外であっても当然ながら法人カードを作ることができます。

例えば、JCB法人カードへ申請するとき、選択項目として以下のようなものが出てきます。

このように、法人であれば合同会社を含めどのような組織であっても法人カードを申請することができます。上記以外にも宗教法人や社会福祉法人、NPO法人など、あらゆる法人でカードを作ることができます。

なぜ、あらゆる会社に専用の法人カードが必要なのか

・経費削減になり、負担を軽減できる

株式会社でなかったとしても、ビジネスをする以上は支払いが発生します。このとき、個人のクレジットカードで支払いを行い、お金の立て替えをする経営者は多いです。

ただ、そうしたときは「個人利用のカード決済」と「ビジネス利用のカード決済」がごちゃ混ぜになります。この状態であると、どれがビジネス利用だったのか分からなくなります。

飲食店などを利用して領収書が手元にあればいいですが、ネット決済では領収書がなかったり印刷を忘れたりすることがよくあります。そうした場合、ビジネスカードを利用すれば「この明細は確実にビジネス利用だ」ということが分かるため、過去のメールから詳細を調べることができます。

しかし、個人クレジットカードだけを利用している場合では、内容がごちゃ混ぜになることで、ビジネス利用の項目を見逃してしまうことがあります。その結果、無駄に利益額が多くなって税金をたくさん支払うようになります。

たとえ株式会社でなかったとしても、法人である以上は税金がかかります。たとえNPO法人であったとしても、法人税はかかるので無駄に利益額を大きくしてはいけません。

そうしたとき、法人カードを活用して確実に節税することは大きな意味があります。

・キャッシュフローの改善

どの法人であったとしても、ビジネスを行うときはキャッシュフローを重視しなければいけません。手元に現金がなければ、資金繰りが苦しくなって支払いができなくなってしまうからです。

銀行振込する場合に比べて、クレジットカードを活用すれば支払いを1~2ヵ月ほど先延ばしにすることができます。これが、結果としてキャッシュフローの改善につながります。

・ポイントや保険付帯などのサービスがある

また、銀行振込では無駄に振込手数料を取られます。一方でクレジットカードであれば、手数料がかかるどころか、ポイントが付与されます。

このときのポイントは多くの場合、経営者が個人的に利用しているケースがほとんどです。ポイント利用について、税務調査のときに指摘されることはないため、法人カードによるポイント付与は「自由に利用できる非課税のお金を手に入れているのと同じ」だといえます。

法人カードを利用しないだけで大きな損をしているため、手持ちのお金を増やすためにも法人カードを活用するべきです。

また、クレジットカードの種類にもよりますが、保険付帯などさまざまなサービスがあります。例えば海外出張する場合、ビジネスカードに海外旅行傷害保険がついていれば、現地で病気やケガをしたときであっても病院の受診によって高額な医療費を請求されないようになります。

法人カードを利用するだけでこれらのサービスを受けられるため、多くの法人が活用しています。

合同会社など、株式会社以外での審査はどうなのか

それでは、合同会社や社団・財団法人など株式会社以外での法人カード審査はどのようになるのでしょうか。

一般的には、株式会社に比べると審査は厳しくなるといわれています。合同会社などの認知度は上がっているとはいえ、やはり株式会社の方が一般的だからです。

ただ、実際のところそこまで恐れる必要はありません。申請してみると、意外と簡単に審査に通過することはよくあります。

法人カードはビジネスを開始したばかりの個人事業主・フリーランスであっても問題なく審査に通ります。個人事業主が審査に通るのであれば、法人が通らないわけがありません。

例えば私の場合、ビジネス初心者のころに株式会社を設立しましたが、このときは設立一ヶ月後に「資本金50万円、従業員ゼロ、ホームページなし、固定電話なし」という、どう考えても不利な条件で申請しました。ただ、まったく問題なく法人カードを入手できました。

ネット上の情報を確認すると、「固定電話が必要」「サイトは必須」などと書かれていることがあります。ただ、私の実体験からこれらはウソだと断言できます。

実際、いまでは私はゴールドカードやプラチナカードを含めいくつものビジネスカードを利用していますが、いまだに申請書に固定電話の番号を書いたり、自社サイトのURLを記載したりしたことはありません。

なお、当然ながら審査の厳しい法人カードではなく、最初は「個人事業主や設立一年未満の会社でも申請が通る法人カード」へ申し込む必要があります。そうすれば、ビジネスを開始して間もない合同会社などであっても法人カードを手にすることができるのです。

代表者の個人信用が重要になる

法人カードでは何を審査しているのかというと、会社の状況だけでなく「代表者の個人信用」も確認しています。

個人信用とは、「過去にクレジットカードやローンを利用し、きちんと滞りなく支払いをしているかどうか」という金融履歴のことを指します。

もし、個人クレジットカードを利用していて過去に何度も支払い遅延を起こしたり、任意整理・自己破産をしていたりするとブラックリストに入ります。こうした人では、クレジットカードの新規発行やローンの利用などができなくなります。

そして、ブラックリストに掲載されている人は法人カードも作れない可能性が高いです。前述の通り、法人カードでは代表者の個人信用が確認されるからです。

ただ、逆に言えば「これまで問題なく個人クレジットカードを使ってきて、きちんと支払いを済ませている人であれば、基本的には誰であってもビジネスカードの審査に通過する」ということでもあります。過去に大きな金融事故がない場合、自信をもって法人カードの新規発行に申し込むといいです。

どうしても発行できない場合は法人デビットカード

ただ、中にはブラックリストに掲載されていて法人クレジットカードを発行できない状況の人がいるかもしれません。そうしたとき、法人デビットカードを新規発行するという方法があります。

クレジットカードとは異なり、デビットカードは「決済したその場で銀行口座からお金が引き落とされる」という特徴があります。法人口座とデビットカードが紐づいており、カード会社はお金の立て替えをする必要がありません。

こうした特徴から、デビットカードは自己破産者や高校生であっても発行できます。この法人版が法人デビットカードです。

与信審査(個人信用の審査)や決算書の提出がなく、年会費無料のカードが法人デビットカードです。

合同会社や一般社団法人などを設立したものの、代表者がブラックであるために法人カードを作れない場合、法人デビットカードを考えましょう。

クレジットカードの実質的支配者について理解する

なお、法人カードを作るときは「実質的支配者」について申請時に確認する必要があります。実質的支配の存在とは、「あなた(代表者)以外に会社を操れる人は他にいるか?」ということです。

株式会社であれば、株式の出資割合に応じて議決権が異なります。そのため、「株式を25%以上保有している人」は大きな影響力をもちます。

株式会社で社長が株式を100%保有している場合、実質的支配者はいません。ただ、他に「25%以上の株式を保有している人」がいる場合、実質的支配者が他に存在することになります。

例えば、「25%以上の株式を保有している人」が2人いる場合、実質的支配者は2人になります。

ただ、株式会社ではない場合、実質的支配者はどのように記載すればいいのでしょうか。これを理解していないと、以下の申請画面で止まってしまうことになります。

合同会社、合名会社、合資会社、一般社団法人、財団法人、NPO法人、学校法人、宗教法人、 医療法人、社会福祉法人などであれば、出資割合に関係なく議決権(会社を動かす権利)があります。株式などはないため、株の保有割合で実質的支配者を算出することはできません。

その代わり、こうした会社では「どれだけ配当(報酬)を受け取っているのか」で判断します。配当の多い人では、それだけ会社に対して影響力があると判断できるからです。

例えば、合同会社を運営していて100万円儲かったとします。このときの100万円を山分けするとき、代表者に60万円の配当を出し、会社経営にまったく関わっていない代表者の妻に40万円渡したとします。

この場合、代表者の妻は全配当のうち40%を受け取っているため、社外の人間ではあっても「会社に大きな影響をもたらす人物」とみなし、この場合は「代表者の妻」が実質的支配者として認識されます。

他の例で考えると、合同会社で100万円儲かり、「代表者:40万円、友人A:30万円、友人B:30万円」という割合で配当を出した場合、全員が配当25%以上です。そのため、代表者以外の実質的支配者は2人(友人Aと友人B)です。

ただ、実際のところどうかというと、ここまで難しく考える必要はありません。代表社員や代表理事、理事長など、代表者が支配者になります。そのため、配当などは考えず「代表者がどれだけいるのか」だけで実質的支配者の項目を判断するといいです。

なお、実質的支配者(あなた以外の決済権者)がいない場合「実質的支配者はゼロ」で申請します。

法人カードの審査に必要な書類を用意する

合同会社や一般社団法人など、これらの会社が法人カードの申請をするときに困るのは「実質的支配者」くらいです。聞きなれない言葉なので、事前に理解しておく必要があります。

あとは、適切なビジネスカードを選んで申請するだけです。このとき、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取得しておくようにしましょう。登記簿謄本の原本かコピーを提出する必要があります。

例えば、以下は私の会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)のコピーです。

他には、代表者の本人確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)のコピーを申請書類と共に送り、審査結果を待つだけです。

合同会社など、株式会社以外が申請するべき法人カード

それでは、合同会社を含め株式会社以外の法人はどのようなクレジットカードに申し込めばいいのでしょうか。

これには、以下のような法人カードが適切です。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

設立一年未満の会社でも申請できる初心者向けの法人カードとして、三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。年会費は永年無料であり、最も手軽な法人カードです。

還元率は0.5%と法人カードの中では一般的です。ただカード利用枠は~500万円(所定の審査あり)と高く、初めて法人カードを作る人にも向いています。

登記簿謄本や決算書の提出が不要であるため、初心者向けで作りやすいです。たとえビジネスでの実績がゼロであっても問題ありません。

合同会社などを設立したものの、まだ実績がなくビジネスを始めたばかりという場合、三井住友カード ビジネスオーナーズへ申請してみてください。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

プラチナカードであり、ハイステータスな法人カードとしてセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。

年会費は22,000円であるものの、プラチナカードなのでその他のサービスが優れています。

まず、JALマイルでポイントをためる場合は還元率1.125%です。利用限度額は個別設定され、~500万円となります。他にも空港ラウンジを使えるプライオリティ・パスが付き、保険付帯も手厚いです。

プラチナカードでは、通常は審査が厳しいです。ただ、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは唯一例外であり、設立一年未満の会社でも申請できます。

ステータス性を重視してプラチナカードを使いたい場合、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードへ申し込んでください。

GMOあおぞらネット銀行(ビジネスデビット)

ネット銀行の一つであるGMOあおぞらネット銀行が発行する法人デビットカードとして、ビジネスデビットがあります。

法人デビットカードであるため、代表者の個人信用に問題があってクレジットカードを発行できない場合であっても問題なく審査に通過します。

クレジットカードを発行できる人の場合、デビットカードを活用するメリットはゼロです。ただ、諸事情によってクレジットカードを使えない場合、法人デビットカードが大きな力を発揮します。

カード利用によってキャッシュフローを改善することはできませんが、経費精算の簡素化や節税対策など、法人デビットカードは非常に役立ちます。また、法人デビットカードにはいくつか種類があるものの、還元率1%と非常に高いので特に理由がない限りは法人デビットカードはGMOあおぞらネット銀行で作りましょう。

ブラックリストに入っているなど、個人信用に問題があってクレジットカードを作れない場合、ビジネスデビットに申請してください。

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