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それまで個人事業主をしていた人であっても、ビジネスで稼げるようになると法人化を検討することがほとんどです。会社にすることによって、節税を含めてさまざまなメリットを受け取ることができるからです。

ただ、法人化した最初は銀行口座の開設や印鑑(法人印)の用意など準備することが多いです。その中の一つとして、法人用のクレジットカードがあります。

法人カードはビジネスを行う上で非常に便利ですが、個人事業主から法人成りした人はクレジットカードを新規発行した方がいいのでしょうか。ここでは、法人成りしたときのクレジットカードの扱いについて解説していきます。

法人成りした場合、法人カードが必要になる

個人事業主として活動しているときであれば、個人名義のクレジットカードを使っていても問題ありません。個人のクレジットカードで経費を落とし、支払いをした分は領収書などとして取っておいて後で帳簿に記録しておくのです。

または、個人事業主用のクレジットカードを活用する人は多いです。個人事業主の専用カードを作っておけば、個人での支払いと事業での支払いを完全に分けることができます。これによって、ビジネスでどれだけお金を使ったのかを含めて管理が非常にスムーズになります。

ただ、法人化した場合は個人のクレジットカードや個人事業主用クレジットカードを使うのは好ましくありません。

少額なら問題ないですが、何十万円もの大きなお金を個人カードで支払っていると「立て替え金」として計上されるようになります。大きな立て替え金がいつになっても計上されているとなると、非常に不自然です。

また、こうした状態が続くようであると税務調査が入ったときに疑問をもたれることがあります。そのため、会社を設立した後は法人用のクレジットカードをもつことを考えましょう。

節税効果を考えると、ビジネスカードは必須

また、個人事業主が法人成りして会社にした場合、節税を考える必要があります。会社にした方が多くのお金を節税できるからです。

それまで個人事業主(自営業)やフリーランスとして働いていた人の場合、節税できる項目が非常に少ないので「節税」といってもあまりピンときません。ただ、会社にすると節税の威力に気が付くようになります。

まず、個人事業主であれば携帯代を個人のお金で支払っていると思います。これを法人携帯にするだけで、携帯電話代が全額会社負担になります。ただ、条件があり「会社が携帯代を支払っている場合」に限ります。

携帯電話会社の窓口に行き、法人携帯(法人契約の携帯電話)を手にしたとしても、法人カードの支払いでなければ税務調査で否認されます。個人クレジットカードの支払いではダメです。会社がお金を支払い、それを貸したという形式にしないといけません。

また、福利厚生などでコンサートやスポーツのチケットを購入する場合、ビジネスカードで支払う必要があります。福利厚生も同様に会社がお金を出し、それを役員や従業員に渡したという建前が必要になるのです。

もちろん、一人社長の場合であっても福利厚生費は通用するため、このときは法人カードでの決済が必要です。

このように、税金や経費のことについて学ぶほど、法人カードが必須であることがわかるようになります。そのため、法人成りしたらできるだけ早く法人カードを手にするようにしましょう。早く手にすることができるほど、無駄な税金の支払い額が少なくなります。

設立当初は法人カードなしでも問題ない

しかし、中にはビジネスカードをもっていないため仕方なく個人用のクレジットカードを活用するケースがあります。その一つが法人成りした直前です。

設立1年未満で会社の信用がない状態であっても、問題なく法人カードを作ることができます。ただ、法人成りした直後は当然ながら全員が法人カードをもっていません。申請して法人カードが届くまでには、早くても2~3週間ほどの期間が必要です。

そのような特殊な状態であれば、経費処理で個人用のクレジットカードを活用しても問題ありません。経費に必要なものを個人用クレジットカードで処理して、本来は会社が支払うべきお金を立て替えておくのです。

もちろん、あとで会社からお金を戻す処理を行います。

実際の経費処理方法

それでは、実際にはどのように帳簿をつければいいのでしょうか。ビジネスではお金の管理が非常に重要になるため、あらかじめどのような処理をすればいいのかを把握する必要があります。

きっちりと帳簿をつける場合であれば、以下のようになります。

使用日 購入品 100 / 立替金 100

清算日 立替金 100 / 現金 100

例えば、500円のボールペンを8月6日に個人クレジットカードで購入し、その立替金を9月27日に精算した場合は次のような仕訳になります。

8月6日 消耗品費500 / 立替金500

9月27日 立替金500 / 現金500

もちろん、クレジットカードを使ったときは領収書まではきちんと取っておく必要があります。個人事業主として活動していたときと同様に、「経費を支払った」という証拠を保管するようにしましょう。

法人カード作成の手順

それでは、実際に法人カードを新規に作成するときはどのような手順を踏めばいいのでしょうか。これには、「法人印の作成 → 法人口座の開設 → 法人カードの申請」という流れになります。

法人登記をするとき、事前に法人印を作成する必要があります。法人印がなければ会社としての処理を行うことができないため、印鑑の作成は必須です。

法人印については、「法人印 楽天」などで調べて作ってもらうようにしましょう。ネット上の店舗なら、数千円で作ってもらえます。私もネット店舗で以下のような法人印を作ってもらいました。

次に行うべきこととして、銀行口座の開設があります。会社のお金を管理するためには、会社用の銀行口座を用意しなければいけません。これには、あなたがいつも使っている銀行(メインバンク)へ行って「どのようにすれば法人用の銀行口座を作成できるか」を聞けば問題ありません。丁寧に教えてくれるはずです。

こうして法人印と銀行口座の開設が終えた後に法人カードへ申請するようにしてください。

もちろん、このとき申し込むのは「設立1年未満の会社でも問題なくクレジットカードを発行してくれるカード会社」でなければいけません。設立3年未満の会社は審査で落とされるケースが多いため、最初から申請すべきカード会社を見極める必要があります。

既に法人カードをもっている場合はどうするのか

ただ、個人事業主(自営業)やフリーランスの中には、既にビジネスカードをもっている人が多数存在します。

法人カードという名前ではあっても、実際のところ会社組織ではない個人事業主やフリーランスであっても問題なく法人カードを発行することができます。個人事業主なので法人口座は作れないものの、「個人事業主で活用しているビジネス用の事業口座」と法人カードを結びつけてカード決済するのです。

前述の通り、個人事業主が法人カードを活用し、個人のクレジットカードを明確に分けることで経費処理が非常にスムーズになります。

ただ、法人成りした場合、多くは法人カードを新規発行する必要があります。カード会社によって異なりますが、以下のように違いがあります。

・個人事業主用の法人カードを取り扱っている

法人カードの中でも、例えばオリコ EX Gold for Bizは個人事業主用と法人用を明確に分けています。「オリコ EX Gold for Biz S(エス)」は個人事業主用であり、「オリコ EX Gold for Biz M(エム)」は会社用です。

法人成りした場合、個人事業主用の法人カードは不要になります。そのため、会社用のオリコ EX Gold for Biz M(エム)へ新たに申請し、個人事業主用の法人カードは破棄する手続きを取るようにしましょう。

・名称は法人用と同じだが、新たに発行する必要がある

先ほどの「オリコ EX Gold for Biz」のように、個人事業主と法人でカード名が異なる場合、当然ながら法人成りしたときは新規で申し込む必要があります。

ただ、個人事業主と法人でカード名が同じであっても、法人成りしたときは新たに申請する必要のあるカードがあります。例えば、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードがこれに該当します。

アメックスのブランドで知られる法人カードですが、個人事業主から法人成りした場合、新たに申請しなおすようにしましょう。つまり、個人事業主のときにアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードを使っていた場合、法人成りしてもアメックスを使いたいのであれば、新たに申請して同じカードが二枚になります。

当然、年会費は2倍かかります。また、同じ柄のクレジットカードのなので間違って使ってしまうこともあります。そのため、特別な理由がない限りは個人事業主用のアメックスは廃止するといいです。

・銀行口座の移設だけで問題ない法人カード

法人カードの中には、法人成りしたときに再審査が必要ないクレジットカードがあります。つまり、新たに申請しなおす必要がありません。

こうした法人カードとして、三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。

再審査が必要ないため、法人口座の指定など、必要な書類を送付するだけで手続きが済みます。カード引き落としの銀行口座を「個人事業主用のビジネス口座」から「法人口座」へ移すだけなので、個人事業主のときに使っていた法人カードをそのまま活用できます。

新たに法人カードが届くことはなく、解約手続きも必要ありません。たまったポイントはそのまま活用できるため、法人成りするときは最も手間を必要としない法人カードだといえます。

これと同じことはJCB法人カードにもいえます。JCB法人カードは個人事業主でも申請できますが、法人成りした場合は登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の提出を行い、新たに法人口座を指定する手続きを取ります。

個人事業主の法人成りで便利なおすすめ法人カード

それでは、個人事業主(自営業)やフリーランスとして活躍していた人が法人成りした場合、どのような法人カードが適切なのでしょうか。

既に個人事業主のときに法人カードを活用していた場合、新規申請するときは同じカード会社で申請すれば問題ありません。ただ、新たに法人カードを作るとき、どのようなカード会社が適切なのか迷ってしまいます。

このとき、前述の通り「審査に通過しやすい法人カード」に申し込むのは必須です。それに加えて、それぞれのクレジットカードのスペックを比較検討しながら好みの法人カードへ申請するようにするといいです。

以下では、そこまで審査が厳しいわけではなく、法人成りして会社設立一年未満の会社であっても問題なく審査に通過するおすすめ法人カードを紹介します。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

ビジネス初心者が申し込む法人カードとして、最も優れたものに三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。

個人事業主に限らず、設立直後の会社であっても審査に通過するクレジットカードです。

年会費は永年無料なので、手軽にもつことができます。還元率は0.5%、カード利用枠は~500万円です(所定の審査あり)。法人カードとしてのスペックも優れています。

法人成り直後でビジネス歴が浅い場合、法人カード支払いの実績を積むために最初は三井住友カード ビジネスオーナーズを活用するといいです。登記簿謄本や決算書の提出が不要なので、非常に審査に通過しやすい法人カードです。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

アメックスが発行するカードの中でも、法人カードとしてセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。

年会費は22,000円と高めですが、あらゆるクレジットカードの中でもハイステータスなサービスが提供されるカードです。

個人クレジットカードでのアメックスでは、コンシュエルジュサービスやプライオリティ・パス(空港ラウンジの利用)の発行が無料になるなど、さまざまな特典があります。これは法人カードでも同様であり、同じサービスを利用することができます。

個人カードでのアメックスとは異なり、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは法人カードの中でも審査に通過しやすいことで知られています。

「法人成りしてステータス性にこだわりたい」「審査に通過するか不安なので、創業直後でも可能なカードに申し込みたい」などのように考えている場合、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードが適切です。

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