法人カードは経費処理を含めて非常に便利ですが、初めてビジネスカードを作る場合はどのようなクレジットカードが届き、引き落とし口座をどのように指定すればいいのか分からないことが多いです。
例えば、よくある勘違いとしてクレジットカードの名義(刻印名)があります。法人カードとはいっても、個人名の記載のあるクレジットカードが届くため、本当にこのカードで問題なく引き落としが完了するのか悩んでしまうのです。
また、法人カードを使って支払するときの手順も最初は戸惑ってしまうことが多いです。例えばサインするとき、法人名義を記載するのか個人名義で書くのか迷うのです。
法人カードの使い方にはルールがあります。そこで、ビジネスカードで勘違いしやすい名義や引き落とし口座、サインについて解説していきます。
もくじ
法人カードの刻印は法人名義ではなく個人名義である
先に述べた通り、法人カードでは名義が個人になります。法人カードにあなたの会社名が印字されることはあるものの、そのすぐ下には個人名が記載されることになります。
例えば、JCB法人カードで法人カードを作るとき、以下のように個人名が記載されることになります。
※上写真は旧券面になります。
刻印名は「CORPORATE CARD KAZUO YAMAMOTO」です。CORPORATE CARD(コーポレートカード)という、法人カードであることを示す刻印の下に「KAZUO YAMAMOTO(山本 和夫)」という名前(名義人)が記載されているのが分かります。
法人カードには代表取締役の個人名が刻印されます。そのため、このクレジットカードの使用者は代表者だけです。
それでは、他の法人カードではどうなのでしょうか。ビジネスカードによっては、会社名を記載していることがあります。
例えば、三井住友ビジネスゴールドカード for Owners(Visa)の法人カードを発行するとします。このとき、「(株)世界一商事」という会社の代表取締役社長を務めている「国際 太郎(KOKUSAI TARO)」という人が法人カードを作ったとき、送られてくるクレジットカードは以下のようになります。
この場合、会社名が記載されています。ただ、あくまでも使用者は代表取締役の国際 太郎さんであり、本人以外が使用することはできません。
「SEKAIICHI SHOJI」と法人名が刻印されてはいますが、これは飾りのようなものだと考えてください。
法人カードの場合、カード会社との契約者は法人ではありません。実は、契約者は代表取締役になります。そのため、法人カードの審査では会社の状況だけでなく、代表者まで審査対象に入るのです。また、法人カードの連帯保証人も代表取締役です。
社長が契約者である以上、法人カードの刻印名も個人になります。法人カードに記載される名前が法人名義ではなく、個人名義なのは意味があるのです。
個人事業主の場合、名義人の刻印名はどうなるのか
それでは、個人事業主(自営業)の場合はどうなるのでしょうか。
個人事業主であっても、問題なくビジネスカードを発行できます。個人事業主は会社ではないため、このときは当然ながら個人名が名前としてカードに記載されます。契約者は個人であるためです。
このとき、法人カードによっては法人名の代わりに屋号(○○商店、△△事務所などの名称)が記載されることがあります。その下に個人名が印字されるため、作りは会社用の法人カードと変わりません。
ただ、基本的に屋号が記されることはなく、個人事業主が発行する法人カードでは個人名だけが刻印されるようになります。
それぞれの個人名で法人カード(追加カード)を発行できる
個人事業主でも会社組織でも、法人カードでは個人名が記載されていることから分かる通り、発行される法人カードは特定の使用者(カードの刻印名がある人)しか使うことができません。法人カードの規約では、本人以外が使用することを禁止しています。
同じ組織で働いている社員など、事情があって他の人に一時的に貸したり、代わりにネット決済をしたりするくらいであれば問題ありません。しかし、役員や従業員用に法人カードを常に持ち歩かせたい場合、社員用の法人カード(追加カード)を作るようにしましょう。
例えば、先ほどのJCB法人カードのように代表者が山本 和夫さんの場合、「KAZUO YAMAMOTO」という名前の法人カードが作られます。そこで、追加カードとして役員である「東京 次郎(TOKYO JIRO)」さんの法人カードを新規発行したい場合、「JIRO TOKYO」と刻印された法人カードを発行するようにするのです。
なお、追加カードは役員や従業員に発行され、刻印名もその人の名前(名義人の名前)になります。本人以外が使用することはできないため、社長が勝手に社員・役員の追加カードで決済することはできません。ビジネスカードを借りて他の人が使いまわしをする場合、決済を拒否されることもあります。
このように、ビジネスカードを役員や従業員用に作りたい場合、追加カードを作れば問題ありません。このとき、追加カードは以下のように刻印されるようになります。
使用者 | 刻印名 | 決済口座 |
代表:山本 和夫 | KAZUO YAMAMOTO | 法人口座 |
役員:東京 次郎 | JIRO TOKYO | 法人口座 |
社員:新宿 太郎 | TARO SHINJUKU | 法人口座 |
社員:渋谷 浩一 | KOICHI SHIBUYA | 法人口座 |
これは個人事業主も同様であり、従業員用として代表者以外へ追加カードを発行する場合、その従業員の個人名が記載されるようになります。
ビジネスカードの決済口座はどのようになるのか
法人カードには個人名が記載されるようになりますが、法人カードを使用したときの引き落としはどのようになるのでしょうか。この場合、法人カードなので法人口座で決済されます。
例えば、先ほどの東京 次郎さんの名義で発行された法人カードで決済した場合、実際の請求は会社にいきます。法人口座から引き落とされるため、個人口座が関わることはありません。
ただ、個人事業主は会社組織ではないため、法人口座をもっていません。この場合、法人カードを使用した場合は専用の事業用個人口座から引き落とされることになります。
いずれにしても、個人事業主であれ会社であれば、法人カードには個人名が記載されてはいるものの、実際の引き落としはビジネスに関わる銀行口座からになります。
裏面にある署名の名前は何を記載すればいいのか
法人名義ではなく個人名義で記載され、決済口座は法人口座(ビジネス用の口座)であることは分かりました。それでは、クレジットカードの裏面にある署名は何を記載すればいいのでしょうか。
クレジットカードである以上、法人カードの裏面にある署名を書かなければいけません。署名がない場合、店によっては使用拒否されます。署名は「使いまわしができないようにする」という意味もあります。
例えば、以下はビジネスカードで使用されるオリコ EX Gold for Bizの裏面です。個人クレジットカードと同じように、名前の記入欄があります。
裏面の署名には、会社名ではなく必ず個人名を書くようにしてください。契約者は会社ではなく、代表者なので個人名である必要があるのです。例えば、代表者の山本 和夫さんが法人カードを発行した場合、裏面の署名には「山本 和夫」と記載する必要があります。
これが追加カードであれば、発行してもらった人の名前を記載します。例えば、役員である東京 次郎さんの追加カードならば「東京 次郎」と記載します。
裏面の署名は漢字でもいいし、ローマ字でもいいです。何でもいいので、カード発行された本人の署名をすることが重要になります。
署名がないとクレジットカードの補償対象外になるなど、デメリットが多いのでカードが届いたら必ず裏面の署名をするようにしましょう。
法人向けクレジットカードのサインは個人名を記載・入力する
それでは、実際に法人カードを使用して決済を行うときはどのような処理を行えばいいのでしょうか。例えば居酒屋でクレジットカードを使用すると、サインを求められます。また、インターネット上でクレジットカードを使用して商品を購入する場合、名前の入力を求められます。
このとき、法人名と個人名のどちらを記入すればいいのか最初は迷うことがあります。法人カードには適切な使い方があり、これを間違ってはいけません。
結論をいえば、法人カードを使用するときであっても個人名でサインすれば問題ありません。
例えば国際 太郎さんであれば、法人カードの使用時にサインを求められたときは「山本 和夫」と記載すれば大丈夫です。インターネット上で決済するときであれば、「KAZUO YAMAMOTO」と入力しましょう。
これが東京 次郎さんのビジネスカードであれば、サインでは「東京 次郎」と記載すればいいですし、ネット上の決済では「JIRO TOKYO」と入力すればいいです。どのような場合であっても、基本的にはクレジットカードが発行された個人名義の名前を記入すれば問題ないと考えてください。
領収書の宛名はどうするのか
ただ、法人カードで支払うときにサインだけで終わることはありません。必ず領収書をもらうようになります。このとき、領収書の宛名は気を付けるようにしましょう。法人カードの使い方を間違い、領収書の宛名を個人名でもらうと、うまく経費精算できなくなることがあります。
法人カードでのサインは個人名であったとしても、領収書のあて名は会社名にしてください。例えば先ほどの山本 和夫さんが居酒屋での飲み代を法人カードで支払う場合、居酒屋から求められるサインでは「山本 和夫」と名義人名で記入し、領収書の宛名には会社名が書かれた紙をもらう必要があります
法人カードは個人ごとに渡されるものであるとはいっても、実際の引き落とし口座はビジネス用の銀行口座です。法人口座で経費処理をすることを考えると、領収書のあて名は会社名(個人事業主であれば屋号名)でなければいけません。
ちなみに領収書をもらうとき、迷ったら宛名を空欄でもらうと確実です。店員から宛名を聞かれたとき、「空欄でお願いします」と伝えれば問題ありません。ホテルなど、格式の高い店舗以外は領収書の宛名を空欄でもらうことができます。
私の場合、以下のようにいつも宛名空欄でもらっています。領収書の宛名が空欄でも問題なく経費精算でき、税務調査で指摘されることもないので問題ありません。
法人カードの使い方として、「サインは個人名(名義人の名前)を記載し、領収書の宛名は会社名または空欄でもらう」ことを意識するようにしましょう。
適切な法人カードを選び、決済することを意識する
ここまで、法人カードの名義について解説してきました。既に法人カードをもっている人であれば、こうしたことは既に知っていますし、問題なくクレジットカードを活用しているはずです。
ただ、初めて法人カードを発行する人であれば、「なぜ法人カードに個人名が記載されているのか」「サインは会社名と個人名のどちらを書けばいいのか」「使いまわしはできないのか」など、分からないことが多いです。
「契約者は代表者であり、本人以外は使用できない」「使用者を追加したい場合、追加カードを発行する」「サインや裏面の署名には個人名を記載し、領収書の宛名は法人名(個人事業主は屋号)または空欄でもらう」など、法人カードは使い方にルールがあります。
ここまで述べてきたことを理解したうえで、ビジネスカードの作成にチャレンジしてみてください。
それでは、どのような法人カードが適切なのか以下で確認していきます。個人事業主や会社経営者が法人カードをもつとき、初心者用の法人カードを保有するといいです。
三井住友カード ビジネスオーナーズ
ビジネス初心者に適切な法人カードとして、有名なカードに三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。年会費は永年無料であり、追加カードについても永年無料で発行できます。
法人カードによっては、追加カードの発行枚数に制限があります。三井住友カード ビジネスオーナーズであれば、19枚まで追加カードを発行可能です。
法人ETCカードについては「追加カード1枚につき、法人EICカードを1枚」で発行でき、個人事業主や設立一年未満の会社であっても問題なく申請することができます。
還元率は0.5%と法人カードの中では一般的です。ただカード利用枠は~500万円(所定の審査あり)と優れており、最初にもつカードとしては最適です。