個人事業主(フリーランス)や会社経営者にとって、法人カードは必須となります。ただ、それまでビジネスカードをもったことのない人の場合、なぜ法人カードをもたなければいけないのか分からないことが多いです。

まず、法人カードと個人カード(個人クレジットカード:一般カード)ではどのような違いがあるのでしょうか。また、なぜ法人カードを活用したほうがメリットが多いのでしょうか。

こうした理由について説明していき、個人事業主や会社経営者がどのような法人カードを保有すればいいのかについても解説していきます。

法人カードは審査が厳しく、機能が少ない

個人用のクレジットカードであると、非常に多くの機能があります。普通にカード払いできるのは当然として、キャッシング機能があったりリボ払いできたりします。当然、電子マネーにも対応しています。こちらが頼まなくても、勝手にカード会社側がさまざまな機能を付加しようとしてきます。

それに対して、法人カードでは一般的にそうした機能がありません。一括払いが基本ですし、キャッシングできる法人カードは少ないです。

なぜ、このようになっているのかというと、会社では倒産リスクが高いからです。個人で自己破産する人はほとんどいませんが、会社組織ではむしろ倒産する方が普通です。存続する方が難しいため、会社の場合はクレジットカード発行の審査が厳しくなり、それと同時に機能が少なくなっているのです。

そもそも、キャッシングしたりリボ払いしたりする法人の場合、資金繰りが悪いと予想できます。そのため、そうした機能を付けないようにしているのです。

法人カードと個人カードを比較すると、大まかに以下のようになります。

クレジットカードの種類法人カード個人カード
発行対象個人事業主・法人個人
引き落とし口座事業用口座個人口座
支払い方法原則一括のみ分割払い、リボ払いなど多数
審査の基準厳しいゆるい

利用限度額については法人カードでも個人カードでもほぼ変わらないものの、基本的には法人カードでは制限が厳しいと考えてください。また、ポイント還元率についてはビジネスカードでは0.5%が普通となっており、個人カードに比べると低めです。

ステータス性の高いカードについても、個人カードであると「一般、ゴールド、プラチナ、ブラック」があります。ただ、法人カードではブラックカードが存在せず、「一般、ゴールド、プラチナ」とプラチナ法人カードが一番上になっています。

カード会社にとって、ビジネスカードの発行はリスクが大きいのでこのようになっています。実際、非常に種類の多い個人クレジットカードに比べて、法人カードでは格段に発行できるクレジットカードの種類が少ないです。

一般カードでなく、ビジネスカードを利用するメリット

このように考えると、個人クレジットカード(一般カード)を活用したほうが得なのではと考えてしまいます。特典は多く、一般的に還元率が優れているからです。確かに、クレジットカードの機能だけを考えるとそう思えてしまいます。

しかし、経理精算の簡素化や節税の観点からいうと、たとえクレジットカードのスペックが劣っていたとしても、個人カードではなく法人カードを利用しなければいけません。

これには、以下のような理由があります。

個人のクレジットカードでは節税ができない

会社の支払いについては、法人カードで支払わなければいけません。個人クレジットカードを活用して立替払いをしてもいいですが、税務調査のときに否認されることがあります。

例えば、法人携帯(実際には個人的にも利用するプライベート携帯)については、会社のお金で支払うことで全額を経費化できます。個人クレジットカードで支払いをする場合、半分までしか経費にできません。そういうルールになっているため、法人カード払いでなければいけないのです。

個人カードで立替払いをしてもいいですが、節税することができなくなる場面が出てくるため、結果的に大幅に損をすることになります。無駄にたくさん税金を支払うことになってしまうのです。

こうしたことを避けるため、事業用のお金については法人カードを活用して決済しなければいけません。個人事業主や会社経営者であると、必ずビジネスカードをもつようになりますが、これには節税の意味合いが大きいです。

経理処理が楽になる

個人カードを使う場合であると、利用明細の中に個人的な支払いと事業用の支払いが混ざることになります。領収書などがきちんとある場合なら忘れることは少ないかもしれませんが、ネット決済など領収書をもらえないケースは多いです。

そうしたとき個人クレジットカードだけを利用していると、本来は経費として落とさなければいけないものを見逃してしまうことが非常に多くなります。その結果、経費計上が漏れます。無駄に利益の額が増えて税金を多く払い、節税できなくなってしまいます。

それに対して、法人カード払いをすれば「ビジネスカードの利用明細書に載っている項目については、すべて経費処理すべきもの」であるとわかります。そのため確実に節税できるだけでなく、経費処理が非常に楽になります。

また、社員用に追加カードを発行することもできます。追加カードを利用すれば、社員に対して立替払いをしなくて済みます。支払いを法人口座(事業用口座)の一本にまとめることができるため、非常に楽です。

個人用クレジットカードでは法人口座を指定できない

個人カードについては、カード払いによる引き落とし先を個人口座しか指定できません。法人口座(個人事業主なら事業用口座)を支払先にすることはできないのです。

法人口座の場合、「株式会社〇〇 代表取締役〇〇」という銀行口座の名前になります。個人名ではありません。個人事業主の場合でも、屋号の銀行口座は多いです。こうした銀行口座については、個人カードで指定できないようになっているのです。

一方でビジネスカードであれば、問題なく事業用の銀行口座であっても指定できるようになっています。以下のように、申込書で法人口座を記載して問題ないのです。

クレジットカード払いで法人口座を指定するためには、法人カードを新規発行する以外に方法はないと考えてください。

法人カードと個人カードの見分け方

サラリーマンであれば、個人用のクレジットカードを一枚だけもつことになります。メインとなるクレジットカードで決済すれば問題ありません。

ただ、個人事業主(フリーランス)や会社経営者だと、メインで使用するクレジットカードが2枚以上になります。少なくとも、個人カードと法人カードの2枚持ちは確実に必要となります。

このとき、「個人クレジットカードと同じ会社」のでビジネスカードを発行する場合、券面(クレジットカードの柄)が似ているので見分けがつきにくいです。

そこで見分け方としては「ビジネス」「コーポレート」などの言葉が券面にあるかどうかを確認しましょう。法人カードは別名でビジネスカードやコーポレートカードとも呼びますが、こうした文言がカード券面上に記載されてある場合は法人カードになります。

例えば、以下は同じANA ワイドゴールドカードになります。両方ともカードのスペックは同じですが、個人カードと法人カードという違いがあります。

法人カードの場合、下のクレジットカードでは「Corporate」という文字が記載されています。ここから法人カードであると判別できます。

他の見分け方としては、クレジットカードの裏面があります。法人カードの場合、問い合わせ先が法人デスクになっています。例えば、以下のようになります。

ここから、法人カードであることの見分けがつきます。

メリットのある法人カードをもつ

法人カードと個人カードには、このように違いがあります。ビジネスを動かす人は、個人用のクレジットカードだけをもつのは不十分です。必ず、ビジネスカードを発行しなければいけません。

ただ、法人カードを使うにしてもメリットの大きい法人カードを利用するのが適切です。そうしたとき、どのような法人カードを利用すればいいのでしょうか。

当然ながら、ビジネスカードごとにスペックが異なります。それぞれの違いを理解したうえで申し込まなければいけません。そうしたとき、初心者におすすめの法人カードとしては以下のビジネスカードがあります。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

クレジットカード大手の三井住友カードが発行する法人カードとして、三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。年会費が永年無料の法人カードです。

登記簿謄本の提出が不要なので、カード会社側は法人の状況を把握できません。そのため、創業直後や赤字企業でも問題なく審査に通過するほど審査は甘いです。

還元率は0.5%、カード利用枠は~500万円(所定の審査あり)です。初心者向けの法人カードになります。ただ、タクシーチケットの手配ができたり、新幹線にお得に乗車できたりと、ビジネス利用するときの特典は非常に優れています。電子マネーによる支払いもでき、1回払い・2回払い・リボ払い・分割払い・ボーナス一括払いにも対応しています。

法人カードをもつとき、最初に保有を検討するべきクレジットカードの一つが三井住友カード ビジネスオーナーズです。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

プラチナ法人カードで知られるものにセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。年会費22,000円の法人カードです。

還元率は1.125%と非常に高いです。還元率が高いため、高額決済をする人ではセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードが得です。

しかもプラチナカードなので空港ラウンジを利用でき、高額な海外旅行傷害保険補償が自動付帯になり、利用限度額は高く、コンシェルジュサービスもあります。ある程度のカード決済額が見込める場合、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードに申し込みましょう。

登記簿謄本を出す必要がなく、ビジネスをしたことのない個人事業主や、創業1年未満の会社経営者でも審査に通過する法人カードです。プラチナ法人カードでは珍しく、審査がゆるいビジネスカードとしてセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。

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